血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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援助

嘆き

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「…は?どういうことですか組長。なんなんですかそれ…。どうして俺なんかを守ったんですか…?」

「松下さん。あなた正気ですか…?」



亮は思わず松下に失礼なことを言ってしまう。それほどまでに松下の言葉に腹が立ってしまったのだ。あの時寛也がどんな思いであの決断をしたのか…松下がそれを理解していなかったから。



「は?どういう意味だ亮。」

「その選択をした寛也さんが今どんな気持ちなのか分かりますか?」



駿里にあんなに叫ばせた。あの駿里の声を聞いた寛也はどれだけ辛かっただろうか。亮でさえ辛かったのだから寛也は計り知れないほど辛くてたまらなかっただろう。なのに松下はそれをわかっていない。だから分からせようとした亮だが松下にも松下の言い分があるようだ。



「だったら!!俺なんかを助けずに駿里を助けたら良かったじゃないですか!なんで俺を助けたんですか組長!」

「…すまんな康二。」



寛也は自分の無力さに絶望していた。それはそうだろう。精神を今保っているのが不思議なぐらいな出来事だったのだから。だからこそ亮は松下にこれ以上寛也を追い込まないで欲しかった。



「俺が聞きたいのはそんな言葉じゃないです組長!!」

「松下さん…!!!」

「てめぇは黙ってろ亮!!」

「黙りません!」



亮も自分で今は本当は口を出す場面では無いとわかっている。これは旭川組の問題なのだから。だから部外者が口を出す場面ではない。しかし黙ってはいられなかった。だって松下だけは寛也を責めたらいけないから。



「ちゃんと考えて下さい松下さん…。あなただけはそんな事いっちゃだめなんです。寛也さんは駿里くんを誰よりも助けたいと思っている。けどそれと同じぐらいあなたが大切なんです。だからあなたを助けたんだ。それなのに松下さんがそんな事を言ったら寛也さんが潰れてしまう。あなたがすべきことは寛也さんを責めることじゃない!」

「…けど、」



松下もそれを分かっている。だがそれよりも松下は駿里を助けたかった。自分の命を犠牲にしてでも…。だから悔しかったのだ。寛也が松下の命を助けたことで駿里にあんな思いをさせてしまったから。



「松下さん。あなたの思いも分かります。だけど寛也さんを責めないで下さい。松下さんだけはそんな事すべきではない。絶対に。」



亮のその言葉を聞いた松下は悔しそうに拳を握り締めた。どうすることも出来ない自分の無力さと自分がやってしまった愚かな行動を反省して…。



「組長…。すみません…。」

「違う。俺が無力なんだ。だからあいつを救えなかった。お前にもこんな思いをさせちまって悪いな康二。」



1番辛いのは寛也のはずだ。なのに寛也は松下に謝った。すまない…と。そんな寛也を見て益々松下は自分を責めた。そして松下はどこまでも愚かな自分を嘆いた。



「とりあえず今日は帰ろう。少しでも早く駿里を助ける為に。」



と、寛也は言って車に乗った。そんな寛也に続くように圷、そして松下、亮も車に乗りこんだ。それからというもの誰も言葉を発さなかった。無言で事務所にたどり着き寛也は一直線に自室へと入っていった。そんな寛也を亮だけが追いかけた。



「…寛也さん。」



亮が寛也の自室に入ると寛也は荒れ狂ったように部屋を散乱させていた。ものを投げ椅子を壊し、テーブルには穴が空いている。そんな寛也の名を亮は静かに呼んだ。



「…亮。俺はどうすればいい。どうしたらいいんだ。」



駿里を助けることも出来なかった。松下も傷つけさせてしまった。拳銃で撃たれた傷はなかなかふさがらないのに。そんな結果になってしまった今回の件により寛也は精神が狂いそうなほどおかしくなりそうになっていた。



「寛也さん。今は嘆く暇なんてないですよ。」

「…ああ。分かっている。だが康二の言う通りだ。駿里に…あんな思いをさせずに済む方法があったはずだ。」

「いいえ。ありません。だから今すべきは駿里くんの為に力をつけること。周りの人の力を借りることです。」



嘆く暇があるなら前に進まねばならない。前に進もうとしなければ何も変わらないのだから。絶望して落ち込んでも何も進むことは無い。駿里を助けたいのならなにか行動しなければならない。



「…………。」

「寛也さん。駿里くんを救うんでしょう?」

「……………。」

「あなたがそんな調子でどうするんですか。ほら早く、やるべきことが詰まってますから。」



と、亮は言って強引に寛也を椅子の上に座らせた。壊れた椅子の上に…。



「寛也さん。あなたはある人物と繋がっていますよね。それも誰にもバレずに。その人物に電話をかけて下さい。今は我々だけでどうにかできる問題ではない。国、そして我々よりも強い力を持つ人物に借りましょう。」

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