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援助

楽しい

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「おい庵。楽しみなのは分かるが俺らから離れんじゃねぇぞ。」



と、瀧雄は先程から落ち着きのない庵にそう言った。庵は外に行くのが楽しみなあまりに羽目を外しそうになっている。だから目を離した隙にどこかに行ってしまいそうで瀧雄は不安だったのだ。そんな瀧雄とは打って代わり庵は…。



「分かってるよっ!」



と、庵は適当に答えた。庵の頭にはもう外に出れるという嬉しさしかないのだろう。そんな庵を見せられては瀧雄もこれ以上何も言えない。こんなに楽しそうな顔をしている庵を守りたかったから。だから瀧雄は庵を叱り付けるんじゃなくて自分が気をつけることにした。庵から目を離さないように。



「そうか。ならいい。今日は楽しもうな。」

「うんっ、ねぇ瀧、それより龍遅くない?」

「ああ。確かに組長遅いな。準備してんだろ。もう少し待っててやれ。」



そう瀧雄が庵に優しく言ったので庵は頷いて玄関で龍之介を待つことにした。しかしその数秒後庵はまた待てなくなってしまったようで…。



「龍っ、早くー!!」



と、庵はリビングにいるであろう龍之介に向かって叫んだ。そしたら龍之介はすぐに返事をしてくれた。



「悪い悪い。準備に手間取っちまった。」

「もう、遅いよ…!」



謝りながら玄関に小走りで来た龍之介に庵は口を尖らせてそう言った。そんな庵をみて龍之介は何故か嬉しそうに笑った。そしてそのまま龍之介は庵の頬にキスを落とす。



「はは、そんなに楽しみなのか?嬉しそうな顔しやがって。」



そう言いながら龍之介は庵の頭を撫でていた。そんな龍之介を瀧雄も嬉しそうに笑いながら見ていた。きっと瀧雄は嬉しいのだろう。いつも仕事漬けで笑うことの無い龍之介がこうして嬉しそうに笑っている姿を見れたから。



「楽しみに決まってるじゃんっ、外に行けるんだよ…っ!」

「ま、そうだな。お前からしたら相当の褒美だもんな。」

「うん…っ!」



庵は瀧雄の言葉に嬉しそうに頷いた。先程から庵はずっと笑っている。ワクワクして落ち着きがないがそれもまた可愛いと思う瀧雄と龍之介だった。



「お前のその顔はたまんねぇな。」

「同感です組長。」

「そうだよな。」

「はい。」



瀧雄と龍之介がそんな会話をしながら庵のことをまるで捕まえた獲物をこれから捕食するような目で見ていた。そのため庵は慌てて話し出した。



「ちょ、ちょっと今から外に行くんだからねっ、俺はやらないからね…っ!」

「分かってるって。そんな顔すんな。食っちまいたくなるだろ。」

「…っ、なっ、」



瀧雄にお尻を揉まれながら庵はそう言われて顔を真っ赤に染めた。そんな庵を見て龍之介は少し庵から目を逸らした。そうでもしなければ抑えが効かなくなりこの場で庵を抱いてしまいそうだったから。そして少し落ち着いた龍之介は庵に笑いながら話し始めた。



「冗談だから安心しろ。食うのは帰ってからにしてやるから安心しろ。」

「う、うん…?」



帰って、から…?帰ってからならまぁいっか…。庵は少し龍之介の発言が気になったが今は外に行くことを考えて一旦帰ってからの事は考えないようにした。



「おら庵、早く行くぞ。」

「あ、うん…!」



龍之介に手を引かれて庵は玄関を出た。そのまま駐車場に3人で歩いていき車に乗り込んだ。運転しているのは瀧雄。その後部座席に庵は乗っている。そして当たり前のように龍之介は庵の隣に座っている。



「龍、これからどこ行くの?」

「秘密だ。」

「なんでよ。」

「そっちの方が楽しみも増すだろ。な、瀧。」

「はい。俺もそう思います。だから楽しみにしてろ。な?庵。」

「分かった!」



どこに行くんだろうというワクワクが庵は止まらない。そもそも外に出てこうして2人とドライブ出来ていることだけでも庵は嬉しくてたまらなかった。そしてそんな庵はこれからもっと喜ぶことになる。それは…。



「庵。着いたぞ。」



瀧雄にそう言われて庵は辺りを見渡したが特に建物がある訳でもないし人が多い訳でもない。そのため庵はここがどこなのか分からなかった。



「ここどこなの?」

「車の外に出てみろ。」



龍之介にそう言われたので庵は言われるがままに外に出てみた。そしたらそこにはなんと…。



「海だ…っ!」



そう。海があったのだ。海は庵が閉じ込められてから行きたかった場所だ。それは海には壁がないから。上にも下にも自由に行けてなにより壮大だ。そんな自由な海が庵は見たかったのだ。



「結構前の話になるがお前海に行きたいって言ってたろ?」



庵の頭を撫でながら瀧雄がそう言った。だから庵は嬉しかった。ちょっとした日常会話ですら瀧雄はちゃんと覚えてていてくれていたから。



「覚えててくれたんだ…。」

「当たり前だ。お前の事は何でも覚えてるぞ。」



そう言ってくれた瀧雄に庵はありがとうと言うとその場で目を閉じてみた。そして風を感じるように手を広げた。そしたら庵は全身が潤うような感覚になって気づけば無意識に深呼吸していた。



「風気持ちいい…。」



庵はいっぱい酸素を吸ってフーっとそれを吐き出した。その後庵は背後にいる2人の顔を見て見た。こんな素敵なところに連れてきてくれたお礼が言いたかったから。しかし庵が振り返ったら龍之介と瀧雄はどこか申し訳なさそうな顔をしていたのだ。



「どうしたの…?なんでそんな顔してるの2人とも。」

「あ、いや…なんつーか、やっぱお前には窮屈な思いさせちまってんだなって思ってよ。」

「え?」



急に瀧雄がそんな事を言いながらばつ悪そうな顔をした。そのため庵はその瀧雄の隣にいる龍之介の顔を見て見た。そしたら龍之介も瀧雄と同じような顔をしていたのだ。それが庵には分からなかった。今庵は幸せでたまらない。なのに窮屈と言われてしまったから。



「何言ってんの?俺窮屈じゃないよ。」

「いや…だってよぉ。こうして外にも出してやれねぇし。まぁ俺らの仕事柄そうするのは危険だから仕方ねぇんだが…。」

「もうそんな顔しないでよ!」



瀧雄がらしくなく弱気なことを言う。だから庵はそんな瀧雄に声を荒らげた。だって庵は今幸せだから。今さえ幸せだったら庵はいいのだ。過去なんて気にしない。今か未来を思い描きたいのだ。



「俺はこうして外にも出れた事だし今すごい幸せだからこれでいいの。だから瀧も龍もそんな顔しないで!」

「それは本心か?」



庵がそう言ってくれたことが正直嬉しかった龍之介と瀧雄。だがそれが本心かどうか分からなかった。そのため龍之介は庵にそう聞いた。そしたら庵は当然…。



「2人には嘘は言わないよ。本心に決まってる。」

「そうか。なら良かった。また連れてきてやるからな。」

「ほんと!?」



また外に出れる。外に出してくれる。そう龍之介が言ってくれたから庵は嬉しくて思わず龍之介に抱きついた。そんな庵を龍之介は抱き締め返した。



「ああ。約束だ。今度は亮も連れてきてやろう。」

「そうですね組長。あいつ相当拗ねてましたから。」

「そうだな。仕事に支障がなければいいが。」

「大丈夫ですよ。亮はそんな野暮なことしませんから。」

「それもそうだな。」



今度は4人で遊びに行ける…!庵は今でさえ幸せだったのに未来まで幸せになってしまった。



「龍っ、俺すごい楽しみ!」

「だな。つか庵、腹減ってねぇか?」

「うーん…少しだけ。」



龍之介にお腹の心配をされた庵だが正直あまり空いていなかった。そのため庵はそう言ったが龍之介はとりあえず庵に食べたいものだけでも聞きたいようでまた話し始めた。



「どっか食べに行こうと思ってんだが何食べたい?」

「蕎麦!」



龍之介にそう聞かれて庵は咄嗟にそう答えた。何故か急に食べたくなったのだ。いつも食べれるようなものじゃないからというのもあるだろう。そのためだろうか。龍之介も瀧雄も驚いたような顔をしていた。



「は?蕎麦?」



と、龍之介。



「お前蕎麦好きだったのか?これまで一度もそんなこと言ってなくね?」



と、瀧雄が言った。そんな2人に庵は…。



「好きとかじゃないけどなんか食べたくなった…。」

「はは、なんだよそれ。可愛いやつだな。」



理由があまりにも可愛くて瀧雄は思わず笑ってしまった。そんな瀧雄に釣られて庵も気づけば笑っていた。



「笑いすぎだろお前ら。まぁけどそういう事なら蕎麦を食いに行くか。」
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