血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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龍之介の心情の変化

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*庵視点







「もうむりっ、おねがっ、あはっ、はははっ、ごめんっ、ごめんなさいっ、はははっ、やめてっ!!」



ほんとにきつい…っ、耐えらんないっ!むり!くすぐったい。早く解放されたい。きつい…。息ができない。なんでこんなにいつもいつも龍って容赦ないんだろ…。苦しいってば…っ!



「おねがっ、おねがいっ、あははっ、ははっ、やめてっ、りゅっ、りゅうっ、やめてよっ!」

「まだだ。」



まだ…!?なんで…!?てかそもそもくすぐるのは5分って言ったじゃん!絶対5分なんて過ぎてるから!



「やだっ、あはっ、ははっ、あははっ、いやっ、くるしっ、あはっ、ははっ、やめっ、おねがい!」



俺…このまま龍にくすぐり殺されそう。そうまでも思えた。そんな俺の様子を見てさすがにまずいと思ったのか亮が…。



「組長。そろそろ庵の事許してやってください。」



そう言ってやっと亮が龍を止めてくれた。けど遅いよ…。もっと早く言ってくれれば俺はこんなに苦しまなくて済んだかもしれないのに。そもそも約束の5分すぎてるし…っ!



「りゅっ、ぅ、りゅうっ、あはっ、やめっ!」

「だがなぁ…ここで甘やかしたりしたらこいつまた同じ事やるだろ。」



そんな…!!もうやらないよ絶対…!約束する!だからお願いやめて…っと、俺は龍に縋る思いで訴えた。だがその時亮が…。



「いいえ組長。庵はもう大丈夫ですよきっと。」



って言ってくれたんだ。俺はそれが嬉しかった。それは亮が俺の事を信用してくれてるってことだから。けどその嬉しさをかき消すように龍は擽りを続けてくる。



「りゅっ、あはっ、おねがっ、いっ、手とめてっ、おねがいっ!」

「うるせぇ。お前は黙ってろ。んで亮、お前はなんでそう言い切れるんだ。」



黙ってろなんて酷い!くすぐったくて黙ることなんて出来ないのに!俺は思わず龍を睨んでしまった。けどその時龍は亮のことを見ていたから俺の睨みに気づかない。そんな龍とは反対に亮は俺の事を見てくれていた。

そして…。



「だってこいつ俺達の事大好きですもん。」

「は?」



龍がやっとここで手を止めてくれた。亮の言ったことに驚いたんだろう。けど俺はなんにせよくすぐり地獄から解放された。それの安堵から俺は失っていた酸素を取り戻すように必死に息をし出した。



「それはどういう意味だ亮。」

「そのまんまですよ。こいつは俺らのことが好きでたまんないんですよ。それに俺達の幸せを願って逃げ出そうとするなんて可愛いじゃないですか。」

「……………。」



龍が黙り込んだ。だから俺は身構えた。亮の言うことを信じてくすぐりを辞めてくれるのか…あるいはそんな事どうでもいいとくすぐりを続けてくるのか…。龍がどちらに傾くのか分からなかったから。そんな俺の心情に気づいたのか瀧が俺の頭を撫でてくれた。きっと大丈夫だ、と言う意味を込めて。



「まぁまぁ組長。またこいつが同じ事したらその時考えましょ。だから今は許してやってください。庵も反省してるみたいですしね。」



と、瀧。



「瀧の言うとおりです。それにこんなに泣き喚くぐらいにはお仕置きもしましたし二度と同じ事はしないでしょうよ。」



と、亮が言った。先程まではなかった光景。あの時は俺の事を誰も庇ってくれなかった。だから俺は嬉しかった。あの日常が…俺が逃げ出す前にあった幸せな日々が取り戻せそうだから。



「…そうだな。お前らの言う通りだ。」



そう言って龍は俺の上から退いた。そして俺の事を抱き上げ抱きしめてくれた。え…まって。てことはもうお仕置きは終わりってこと…?



「りゅ、う。」

「どうした?」

「……………おわ、り…?」

「ああ。終わりだ。」



龍がそういった途端俺はまた涙を流してしまった。そんな俺の涙を亮が拭ってくれる。そして瀧も俺を慰めるように背中をさすってくれた。



「もう泣くなって。明日も声枯れるぞ?」

「だって、っ、ぇ、」



亮に泣くなと言われたけどそんなの無理だ。俺はもうこの日常を取り戻すことは出来ないと思っていたから。だから言葉には表せないほど嬉しかった。



「可愛い顔しやがって。」



龍がそう言って俺の頬にキスをした。



「まぁお前は俺達の事大好きだもんな。なぁ庵。」



うん…亮の言う通り。だいす…ん?待てよ。それだと俺だけが龍達のこと大好きみたいじゃないか。なんか…恥ずかしいじゃんかそれ…っ。



「ち…っ、」



俺は恥ずかしさのあまり違うと言おうとした。だがそれよりも先に亮が…。



「違うって言ったらまた泣くまでくすぐる。」



って言ってきたから俺は違うという事が出来なくなった。もうくすぐられのは懲り懲りだから。



「…違わ、ない。」

「だよな。」



亮がいい子いい子なんて言いながら俺の頭を撫でてくる。けど今はそれが心地よかった。3人の温もりが気持ちよかった。そんなふうに俺が3人の温かさに包まれていると俺はある事に気づいた。それは足についている足枷のことだ。もうお仕置きも終わったんだから足枷は取って欲しい。



「…あの、」

「ん?」



俺が3人に問いかけると龍が返事をしてくれた。なんてことだ…。1番手ごわい相手が返事をしてしまった。けど言ってみなくちゃ分からない。だから俺は当たって砕けろ精神で龍に言ってみることにした。



「足枷取って…ほしい、な。」

「ん?足枷?あーどうします組長。」



俺が龍に恐る恐るそう言うと亮が俺の足枷を見ながらそう言った。やっぱり決定権は誰がなんと言おうと龍にあるんだなと俺は改めて思った。だから俺は龍のことをジッと見た。龍がなんて言うか…俺はドキドキが止まらない。



「これは暫く取らねぇ。」

「ですよね。」



まさかの龍の発言に俺は目を見開いた。しかもさらに驚いたのは亮の発言。『ですよね』ってなんだよ!なんで!そこは取ってあげてくださいって言ってよ!



「な、なんで…っ、おれ、もう逃げないのに…。」

「それは知ってる。けど駄目だ。俺がいいと言うまではな。」



そういった時の龍の顔は本気だった。だから俺はもう諦めた。龍がいいよと言うその日まで…。



「…わかった。」

「いい子だ。よし、飯を食おう。」

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