上 下
124 / 209
日常

しおりを挟む
3人に代わる代わるキスをされて庵の唇は腫れまくっていた。それでも3人はなかなかキスをやめてくれなくて庵が気づいた時には深いキスになっていた。



「んぅ……っ、ぅ、ん!」



キスが深くなればなるほど庵は酸欠になっていく。そのため庵は必死に息をしていた。そんな庵がさらに可愛くて今庵にキスをしている瀧雄は益々やめられなくなってしまう。



「ん゛っ……っ、んんっ、た、きぃっ、ん!」



もう何周回ったか分からない。最初に龍之介、そして亮、瀧雄。その3人が代わる代わる何周にも渡ってキスをしてくる。そのせいで庵はただキスをされているだけなのに変な気分になってしまった。要は疼いてしまうのだ。そんな庵にいち早く気づいた龍之介。そのため龍之介は瀧雄に…。



「瀧、もう終わりな。」



と、言った。そのため瀧雄は庵にキスをするのをやめた。それは龍之介の指示だったから。



「…っ、はぁ………はぁ………っ、ぅ、」



瀧雄のキスからやっと解放された庵。そのため失った酸素を取り戻そうとゆっくりと呼吸をしていた。そんな庵を見て龍之介が庵を引き寄せ優しく背中を撫でてくれた。しかしそれを見て瀧雄がどう思うのか。それは絶対にいい気分にはならないだろう。それはさっきまで瀧雄のターンだったのだから。それを奪われて今庵は龍之介の腕の中にいる。そのため瀧雄は耐えきれず龍之介に…。



「…なぜ?なぜですか組長。」



と、怒り気味に言った。そんな瀧雄に亮は呆れ顔だ。しかし龍之介は優しい顔をしていた。それは先程龍之介がした行動も全て庵のためだから。そしてそれは今もだ。



「庵と二人っきりで話したいことがある。」



怒るな。庵が怯える。その意味を込めて龍之介は瀧雄にそう言った。すると瀧雄にもその龍之介の意図が伝わったようで瀧雄は先程までの怒りが嘘のように消え去っていた。



「組長、承知しました。」



全ては庵のため。それを悟った瀧雄は真面目な顔をしてそう言った。そしてそれに続くように亮も…。



「ゆっくりお話されてくださいね。俺達はその間に出来ることをしておきます。」

「ああ。」



物分りのいい部下だ。そう思いながら龍之介は立ち上がろうとした。しかしその時庵が龍之介に続いて立ち上がろうとした。まだ身体中痛むはずなのにだ。そのため龍之介はすぐさま庵を止めるべく声を荒らげた。



「おい馬鹿。歩かなくていい。俺が連れて行くから。」

「もう俺歩けるよ。」

「仮にそうだとしても俺はまだ庵に歩いて欲しくねぇんだよ。歩けるっつっても痛みを殺して歩くみたいな感じだろ。」



龍之介がそう言うと図星だったのか庵は黙り込んでしまった。庵はもう痛いほど分かっている。龍之介達は庵が傷つくことが大嫌いってことを。そのため庵は黙り込んだのだろう。いや3人の様子を探っていたと言った方が正しいかもしれない。そんな庵を見て龍之介は思わず笑ってしまいそうになった。あまりにも庵が可愛かったから。そのため龍之介は庵にそれ以上は怒らなかった。怒らず優しく言うことにした。



「だからな、庵。俺が連れていくからお前は黙って俺に抱かれとけ。」

「わかった。」



ここで龍之介に反抗してはだめ。それを察した庵は龍之介にそう言った。そして龍之介のされるがままに抱き抱えられて亮と瀧雄に見守られながらリビングを出た。そして庵は龍之介の寝室に連れていかれた。そこに着くと庵は龍之介によってベットの上に下ろされた。



「りゅー話ってなに?」



庵は自分の隣に座ってきた龍之介にそう問うた。しかし龍之介から返ってきた返事は意外なものだった。



「別に話はねぇよ。」

「え?」

「あ?」



龍之介に何を言ってるんだと言わんばかりの顔をされて庵は混乱した。だってさっき話がしたいと言ったのは龍之介だから。そのため庵はそういったのだ。それなのに意味のわからないことを龍之介に言われた庵はたまらず声を荒らげた。



「さっき龍が俺と二人っきりで話したいことがあるって言ってたじゃん。」

「あーあれはただの口実だ。」

「口実?」

「そうだ。」



なんのための口実…?それが分からなかった庵は少し不安そうに龍之介にそう聞いた。知らないうちに龍之介を怒らせたかもと思ったからだ。そのため2人っきりになって説教されるのでは…?そう思ってしまったのだ。



「…なんのためにそんなことしたの?」

「そんなの決まってんだろ。」

「………?」

「こうするためだ。」

「うわっ…!!」




怒られる。そう思っていた庵。しかし実際は真逆だった。その証拠に庵は龍之介に押し倒され抱きしめられたのだから。



「ちょ、ちょっとりゅう…っ!」

「なんだよ。」

「なんだよじゃない!」

「急に押し倒してキスしたのが気に食わなかったか?」

「そ、そう…っ!!」

「ほぅ…。」



そう言った龍之介はとんでもないほど悪い顔をしていた。その顔を見て庵は思った。龍之介にいじめられてしまう…と。そのため庵は逃げようとした。スイッチの入った龍之介はしつこいから。



「おらどこに行くつもりだ。せっかく二人っきりになったのに逃げる奴がいるかよ。」

「はなせ…っ!」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

いつかコントローラーを投げ出して

せんぷう
BL
 オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。  世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。  バランサー。  アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。  これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。  裏社会のトップにして最強のアルファ攻め  ×  最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け ※オメガバース特殊設定、追加性別有り .

処理中です...