血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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囚われの身

庵の苦手なこと

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「こいつの身体のことはお前も分かりきってるだろ。」



と、龍之介が亮に言った。それも自信満々に。だから庵は少しだけ背筋が凍った。そりゃそうだろう。誰しも自分のことを知られるのは嬉しいことだ。しかし体のことまでになると話が違う。庵は特に龍之介らからの過激な愛を直に受けているから少し怖くなったのかもしれない。そんな庵の頭を撫でながら亮が口を開いた。



「まぁそうですね組長。なので俺はそれを確かめたくて早いうちにこいつをくすぐってました。そのおかげでこいつには相当ビビられちまいましたけどね。」

「はは、それはそれでいいな。」



と、龍之介がいいながら笑ってきた。しかし庵からすればそれは全然面白くない。なので庵は…。



「どこがだよ…っ、龍之介のばかっ、ぜんっぜん良くないから…っ!!」



そう庵は思わず声を荒らげた。しかしそれが良くなかった。腹が立ったとは言え龍之介に暴言を吐いてしまった。そんなことを庵がしたら亮らが黙っていないというのに。だから案の定…。



「おい庵。組長になんてことを言うんだ。」



と、瀧雄。それに続くように亮も庵を脅してきた。



「そうだぞ庵。そんな舐めた口聞いてっとまた泣くまでくすぐり続けるぞ。」

「……………っ。」



2人にそう言われては黙るしかない。今は3人が目の前にいるから。だから庵はどう足掻いてもこの状況では逃げることが出来ない。それなら黙って言うことを聞くしかない。そんな庵を見て瀧雄が庵の顔を上げてきた。



「ほんとに嫌いなんだな。くすぐられんの。」

「…嫌いなものは嫌いなんだもん。」



瀧雄にほっぺたをムニムニされながらそう言われた庵。そんな瀧雄に庵はぶっきらぼうに返した。誰だって苦手なものはある。しかもそれを克服するのは至難の業だ。それが庵の場合はくすぐられること。だから正直こうしてくすぐりの話の話題になることすら嫌だった。きっとこれから庵が何かをやらかした時必ずくすぐりが使われるだろうから。



「…俺もうこの話したくない。」

「だったらこれから気をつけることだな。俺らとの約束をちゃんと守って俺を怒らせねぇようにすんだぞ。そうしねぇと俺は手加減なしでお前を泣かすからな。」



これは脅しじゃない。龍之介は本気でそう言っている。それがわかった庵はすぐさま頷いた。そんな庵を見て龍之介が笑ってきた。



「お、いい子じゃねぇか庵。まぁでもお前がちゃんと俺達との約束を守りさえすれば何もしねぇからそう怯えんな。」



と、龍之介が言ってきた。あまりにも庵はこの話をすることが嫌すぎて顔に出てしまっていた。そんな不安そうな庵を見たから龍之介はそう言ったのかもしれない。だけどそれは庵からすればなんのフォローにもなっていなかった。不安しかない。これからの生活に気をつけていかなくちゃいけない。そんな事を考えていると余計に不安になってしまった。その庵の気持ちを察したのだろう。亮が庵の頭をまた撫でてきた。



「まぁまぁ組長。それはその時にまた話しましょう。今は庵を休ませないとです。」

「そうだな。」



亮がフォローしてくれたおかげもあってこの話はやっと終わることが出来た。だから庵は安心した。この話をこれ以上続けなくていいから。それにこれでご飯も食べられる。庵がそう思っていると龍之介が急に両手を広げてきた。



「庵。おいで。」

「……………。」



龍之介はこれまでとは違い優しい口調で庵にそう言った。しかし庵は龍之介の所に行かなかった。きっとまだ庵は龍之介を警戒しているのだろう。その証拠に瀧雄の腕の中からも出ようとしないのだから。そんな様子の庵を見て龍之介は思わず笑いそうになった。警戒心マックスの庵が可愛かったから。



「庵。」

「……………っ。」

「ほら来いって。今は何もしねぇから。」



庵がどれだけ無視しても龍之介は怒らなかった。そんな龍之介の様子を見て今は本当に何もされない。そう思ったのだろう。庵が瀧雄の腕の中から出てきた。



「わかった。いく。」

「ん。いい子。」



そう言って龍之介は庵を腕の中にいれた。そして抱きしめた。龍之介は庵の温もりが大好きなのだ。庵は暖かい。ずっと抱きしめていたくなるほど心地がいい。だがこの時龍之介はある事を思い出した。それは庵がお腹がすいたと言っていたことだ。



「なぁ庵。」

「なに?」

「まだ腹減ってるか?これ食べれそうか?」



その時その時で体調は変わる。特に今の庵は要注意だ。あんなことがあったあとだから急に気持ち悪くなるなんてこともあるかもしれない。だから念の為龍之介は庵にそう聞いたのだ。



「うん。食べれる。」

「いい子だ。」



庵が笑ってそう言うと龍之介も嬉しそうにしていた。そして龍之介は庵を自分の膝の上に乗せると瀧雄が作ったお粥を自分の口にいれた。そうすることで暑さ加減を確認しているのだ。



「熱さはいい感じだな。ほら、口開けろ。」

「じ、自分で食べるよ…っ!」



いつもこうなるが庵は食べさせてもらうという行為が毎回恥ずかしくて慣れない。だから今回もそう言ってきた龍之介に自分で食べると訴えたが…。



「駄目だ。俺が食わせるから大人しくしてろ。」



と、龍之介に言われてしまった。それも少し怖い顔をされて。だから庵は何も言い返すことが出来なかったが顔だけでも不服そうにしてやった。そんな庵を見て亮が笑いながら…。



「諦めろ庵。組長は一度決めたことは覆さねぇよ。」

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