血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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囚われの身

再会

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*庵視点






























「それってつまり旭川さん自身が庵を探してたってことですか…?」

「ああ。そうだ。」

「でもなんで旭川さんが…?」



俺は旭川さんって人が誰なのか分からなくて口を挟むことが出来なかった。けど翔真さんが色々聞いてくれるからここは任せておこう。それにこの松下康二さんって人は何でかわかんないけど信頼出来る気がするから。



「頼まれたんだよ。」

「それは誰にですか…?」

「んーなんだったけな?名前は確か亮?って言ってたような気がする。」



亮?今亮って言った!?ほんとに亮が!?俺はずっと黙って聞いていたけど亮の名前が出た途端黙っていられなくなった。



「それほんとですか…?」



って思わず聞いてしまうほどに俺は興奮していた。だって亮の名前が出たから。あれだけ会いたかった亮が助けてくれていた。こんな形だけど俺は実際に助かった。だから多分翔真さんが助けてくれなくても俺は助かっていた。だけど翔真さんが助けてくれたことでより早く助かったんだ。俺、みんなに感謝しなきゃいけない。



「そうだよ。だから君はもう安心していい。」



と、松下さんが言ってくれた。その隣に座っている俺よりちょっと年上のお兄さんも笑っていた。確か名前は駿里さん…?だったよね。すごくかっこいい。亮達もかっこよくてびっくりしてたけど駿里さんはずば抜けて顔が綺麗だな。そんな風に俺が駿里さんに見とれていると翔真さんが俺のことめちゃめちゃ見てきた。



「…翔真さん?」

「お前はそれでいいのかよ。」

「え?」

「だからお前はそのまま帰ったんでいいのかよって聞いてんだ。」

「どういうことですか…?」



翔真さんが急に変なことを言ってきた。その言葉の意味がわからなくて俺は少し混乱した。全く意味がわからなかったから。帰れるのは嬉しい事だ。なのにそれでいいのかってどういうことだ?いくら考えてもやっぱり分からない。そんな風に俺が混乱してたら松下さんが…。



「お前なんで庵にそんな事言うんだよ。つかお前名前なんだっけ?」

「…えっと、翔真です。」



翔馬さんは栗濱さんの息子だ。だから栗濱翔真。だけど翔真さんは苗字を言いたくないんだろうな。その証拠に下の名前だけを松下さんに言っていた。



「そっか。上の名前は言いたくねぇんだな。まぁそれならそれでいい。翔真、とりあえず亮って奴の所まで車飛ばすことになったからそれまでお前らはゆっくりしてろ。」

「ありがとうございます!」



多分この言葉は翔真さんに言ったもの。だけど俺は元気に思わずそうお礼をした。帰れるのがそれだけ嬉しかったんだ。龍にも瀧にも亮にも会える。3人にはやく逢いたい。その想いが膨れ上がるほど俺は嬉しさに包まれていた。だけどなんでかやっぱり翔真さんは機嫌が悪い。さっきからムッとした顔をしてる。



「翔真さんどうしたの…?」



翔真さんはあまりにも様子がおかしい。だから俺は心配になったんだ。そんな俺の問いかけに翔馬さんは何かを言おうとした。だけどそれよりも前に松下さんが話し始めちゃったから翔真さんは言おうとしたことが言えなかった。



「庵。あんま聞いてやんな。翔真は今自分と戦ってっからよ。」

「…分かりました。」



よく分からないけど俺が言うことより大人の言うことの方が正しい気がする。だから俺は松下さんの言う通りにこれ以上は翔真さんに何も聞かなかった。けれど翔真さんの機嫌が治ることは無かった。それは俺の家に着いた時もだ。



「庵。お前の家ここであってる?」

「はい…!」



俺は元気よく松下さんに返事をした。そしたら松下さんが笑ってくれた。隣にいた駿里さんも笑っていた。みんな優しい人。これまで俺が多分辛い目に遭っていたからこうして人の優しさに触れると余計に嬉しくなるんだろうな。



「翔真。お前は俺の隣にいろ。」

「な、なんでですか?」

「嫌がってんじゃねぇよ馬鹿。」

「はは、面白い…。」

「お前も笑うな駿里。」



まるでコントをしているかのように松下さんはツッコんでいた。こういうことがきっと日常茶飯事なんだろうなって俺は思った。



「ち、違います松下さん!嫌とかじゃなくて急だったのでびっくりしただけです。」

「そうかよ。それならお前は俺の隣にいろよ。庵、お前は組長とこに行け。あの人だ。分かるか?」



松下さんが指を指している。けれど人が2人…?ぐらいいるからどっちの人のことを言っているのか分かんなくて俺は松下さんに聞き返すことにした。



「どっちの人ですか?」

「背が高い方だ。」

「分かりました!」



背が高い方と言われて一瞬でわかった。その時俺は気づいた。奥から出てくる龍達に…!だから俺は急いで車を出ようとしたけど松下さんに止められた。



「おい庵待て!」

「…え?」

「お前自分の身なり分かってねぇだろ。傷だらけなんだぞ。そんな体で走るな。」

「…ごめんなさい。」

「別に謝ることはねぇが。そうだ。駿里、お前が案内してやれ。案内って言ってもすぐそこだがな。庵が走らねぇように組長所まで送り届けてやれ。その後俺もすぐ行くから。」

「わかった。じゃあ行こっか庵くん。」

「はい…!」



俺は駿里さんと一緒に出れることになって正直嬉しかった。すごくかっこいいから。ほんの少ししか会っていないのに俺は駿里さんに憧れている。だけど気がかりなことが俺には一つだけあった。それは翔真さんだ。ずっと不機嫌なんだもん。



「庵くん行くよ。」

「は、はい…!」



そう言って俺が車から降りて駿里さんと歩いていった。そしてもう少しで組長さんのところまで着きそうになったその時…!



「おい翔真!」



後ろから大きな声がして思わず振り返ってしまった。そしたら翔真さんがこっちに向かって走ってきていたんだ。それだけならまだよかったけど翔真さんは俺の腕を引いて腕の中に閉じ込めてきたんだ。



「ちょ、あの、翔真さん…!?」



俺はさすがに混乱して翔真さんの顔を重視した。その時龍達も玄関の外に出てきてしまった。そんな龍が今の俺の状況を見て怒らないはずがなくて…。



「翔真?お前何してんだ?つかお前なんでここにいるんだよ。」

「お前ら知り合いなのか?」

「そうなんです旭川さん。」



龍が組長って言われて人にそう言った。そうか。この人が旭川さんなのか。俺がそんなふうに納得していると翔真さんが急に大きな声で龍之介さんと呼んだ。だから龍は翔真さんの方を見た。けど俺を無理やり引き剥がすなんてことはしなかった。龍も龍で何かを思ったのかもしれない。そしてそれはみんなもそうだった。ノコノコと歩いてきた松下さんも翔真さんを見るだけで何もしなかった。



「やはり龍之介さん。あなた達に庵は返せません。」

「「「…は?」」」

「翔真さん何言ってるの…?」
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