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囚われの身

地獄の扉

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*庵視点






















「庵。こっちを向け。」



翡翠という男にそう言われた俺はすぐに言うことを聞いた。すると昌也という男が少し驚いたように話し始めた。



「あれ意外と従順じゃん。まぁ従順なフリだろうけど。」

「っ…!?」



な、なんでバレてんだ…。俺なりに頑張ったつもりだったのにどうして…。



「へぇ、兄貴の言う通りこいつほんとに可愛いな。」



俺は声には出さなかったもののかなり慌ててしまった。しかもそれを態度に出してしまった。だからなのか拓海という人物が俺の顔を見て不敵な笑みを浮かべながらそう言ってきた。



「拓海兄さんが本気でそう言ってんの珍しいね。」

「なんかこいつは良い。惹かれんだよ。だから普通に気に入った。」

「奇遇だね。俺もだよ。」

「や、やめ…っ、」

「はは、こうやってちょっと触っただけでも怯えまくってる。ほんと可愛い。」



昌也と呼ばれていた男はまるで俺を弄ぶかのようにして俺の体を触ってきた。服越しではあったが背中やらお腹やら色んなところを撫でくり回され俺は恐怖から抜け出せなくなってしまう。



「敏感だな。」

「だねぇ。こりゃ抱いた時絶対可愛いよ。」

「おいそこまでだ。あんまり調子に乗るなよ昌也。拓海、お前もだからな。たく、お前らは直ぐに調子に乗るする癖をどうにかしろ。」

「悪い悪い。」

「ごめんね兄さん。」



そうやって2人は謝っていたけど未だに俺の体を触りまくってくる。本当に気持ちが悪い。気色が悪い。触るな。今すぐ逃げたい。けどそれは今したらダメだ。ここで反抗して抵抗してもきっといい事はなんてないから。



「ほんっとにお前らは…。手間のかかる弟だ。もういい。話を戻すぞ。」



翡翠と呼ばれていた男は終始呆れ顔をしながらそう言った。俺はその間声を出さないように必死に耐えていた。昌也って人が俺の体を触り続けてくるんだけど稀に乳首とかその周辺を触ってくる。それに耐えきれなくて俺の体はビクビクしてしまう。その反応を面白がって拓海って人も面白半分で俺を虐めてくる。だけど声だけでも我慢だと俺は必死に耐えていたのだ。



「なぁ兄貴。話を戻すのはいいけどよ。その間俺達こうしてていいか?」

「あ?そしたら庵がまともに話を聞けねぇだろうが。馬鹿かお前は。」

「そうだけど身をもって知れることになるぞ。俺達がこうすることで逆らったらどうなるのか…ってな。」

「確かに。それはそうだな。拓海にしては頭がいいことを言うじゃねぇか。」

「一言余計だけどありがとよ。」



拓海って人の言葉に翡翠って人が笑った。その笑みを見ただけなのに俺は震えた。そのくらいに怖かった。けどダメだ。このくらいで怖気付いているようでは逃げることすら出来ない。耐えるんだ自分…と俺が自分に言い聞かせていると突然俺は名を呼ばれた。



「庵。」



俺は自分が呼ばれたことで返事はしなかったものの翡翠って人の顔を見た。そしたら翡翠って人が話し始めた。その間も相変わらず昌也って人達が俺の体を触ってくるけど大分その刺激に慣れてきたから翡翠って人の話を集中して聞ける状況になっていた。



「お前が従順なフリをしてんのは逃げるためだろ。だがな、ここからは逃げられねぇぞ。それだけは覚えとけ。南里の所のセキュリティは低い上に立地も悪い。だからお前なら頑張ったら逃げれただろうな。けどここは無理だ。どれだけ足掻こうともな。」

「…………っ。」



それは俺が薄々ではあるが感じていたことだった。強がって絶対に逃げる…そう自分に言い聞かせていた。けれど不可能だ。龍の所とは事務所の規模が違う。ここは何階なのか…どんな建物なのかすら分からない。周りに窓がないから。その上この人たち。きっとこの人たちは強い。暴力もそうだしそれ以外にも長けているだろう。そんな現実を突きつけられて俺は悔しさのあまり唇を噛み締めた。



「もう兄さん怖がらせすぎだってば。まずは自己紹介でもしようよ。庵、俺は昌也だよ。昌也さんって呼んでね。それ以外の呼び方で言ったら死ぬほうがマシってほど抱き潰すから。」



…それだけは嫌だ。気持ちが悪い。従順なフリをしていることもバレてしまった今抵抗してやろうか。だけどそんなことをしたら駄目な気がする。この人たちを怒らせてはいけない…そんな気がする。



「それでこっちが拓海兄さん。で、こっちが翡翠兄さん。みんなさん付けで呼ぶんだよ。あ、そうだ。あと弟がいて翔真って言うんだけど弟の事もちゃんと敬ってね。わかった?」



俺は昌也さんの問いかけに頷いた。だけど昌也さんはその俺の行動が気に食わなかったようで…。



「なぁ庵。なんの為に口がついてると思ってるの?まぁいっか。一々言うのめんどくさいし体で教えてあげるよ。」

「…え?」



俺はこれから何をされるのか理解する余裕なんて与えられず気づいたら仰向けの状態になっていた。その後すぐに起き上がろうと抵抗を始めたが昌也さんが馬乗りになってきたことでそれが出来なかった。



「拓海兄さん。庵を抑えといて。」

「いやっ、やめろよ…っ!」

「へぇ。庵ってそんな声してたんだ。可愛いね。」



そう言って昌也さんが俺の頬を撫でてきた。その時とんでもない嫌悪感に襲われて俺は思わず顔を背けてしまった。そしたら当然昌也さんを怒らせてしまい…。
 


「庵は馬鹿だね。それとも俺に虐められたくてわざとそうしてるの?」

「ち、ちが………っ、」

「違う?どこが違うの?」

「おい昌也。やめとけって。」



昌也さんを怒らせてしまい俺がどうしようかと本気で焦っていると拓海さんがそう言ってきた。そのおかげで昌也さんの意識は俺から拓海さんへと移っていった。

しかしーーー。



「いいじゃねぇか別に。拓海、抑えてやれ。」

「なんだ。いいのかよ。兄貴がそう言うと思わなくて昌也を止めようとしたんだ。」

「そうだったのか。そりゃ変に気を使わせちまったな。すまない拓海。でもまぁ俺がいいと言っているんだから良い。早くやれ。」

「へいへい。」



翡翠さんの許しが出たからか拓海さんは表情を変えて俺の腕を拘束し始めた。その拓海さんの力の強さに俺は驚きを隠せなかった。だってビクともしないんだ。俺は全力で暴れているのに。



「やめろっ、離せよっ!」

「やっぱ抵抗した方が気持ちが高ぶるな。前のやつらだったら殺してただろうけどこいつは殺すには勿体ねぇ。それどころか余計に興奮すんだから不思議なもんだ。」

「やめっ、離せってばっ!!」



拓海さんは俺の抵抗などまるで気にしていない様子で俺の事を見下ろしていた。それも満面の笑みで。昌也さんも拓海さん同様だ。本当は「さん」付けなんてしたくないけど言われたことだけでもちゃんとして痛めつけられるのを回避しなければならない。本来なら抵抗もしないはずだった。けど反射的にしてしまった。それくらいの身の危険を身体も感じ取っているんだろう。そんな俺を気にもとめず翡翠さんが話し始めた。



「それで昌也、お前は何をするつもりだ?」

「そりゃもう最高のことだよ兄さん。庵をちょっとばかり泣かせようと思ってね。」

「そうか。それなら俺は高みの見物でもしておこう。」

「最高だね翡翠兄さん。よーしじゃあ庵、お前はこれから何回イケるか試してみよっか。」


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