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囚われの身
4人の息子
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*庵視点
「はは、相変わらずだなお前らは。」
「兄さんが短気なんだよ。」
「違ぇよ。兄貴は短気じゃねぇ。むしろ普段怒んねぇよ。昌也、お前が余計なことを言うからだ。」
「そう?」
「ああ。そうだ。だから黙れ。」
「わかったよ兄さん。」
まだ誰が誰なのか分からない。名前は出てきたけど覚えれそうにない。こいつらに従順になるふりをしなくてはいけないのに…。早いこと名前だけでも覚えよう。
「ああ、そういえばお前ら暫くここにいるんだろ?」
「親父がよければな。」
「俺はいいさ。ただ、暫く家を空けることになるからちょうど良かった。」
なんてことだ。栗濱が家を空ける事実が知れた。そうなれば多分だけど益田もついて行くはず。だったら逃げられるのでは?栗濱は素人の俺でもヤバいやつだと分かる。けれど翡翠と呼ばれていた男や他の男たちなら隙があるかもしれない。そうしたら俺は簡単に…。
「そうなのか親父。重要な商談か?」
「ああ、そうだ。だからその間この家を翡翠、お前に託す。」
「そういう事なら任せとけ。」
「はは、頼もしいな。」
「なぁ親父、なんで俺じゃねぇの?」
話す感じを見る限りこの人達は相当親密な感じだ。まぁ家族だから当たり前だろうけど龍達がそうじゃなかったからなんか不思議な感じだ。
「拓海には任せきれねぇな。」
「はは、だってよ兄さん。」
「昌也、お前もだからな。」
「は、はい…。」
俺をほったらかしてあの人たちは楽しんでいる。その隙に俺は逃げ道を探すことにした。だけどさっきから相変わらず益田が逃がさないと言わんばかりに見てくる。それもずーっと見てくる。だから俺は下手な真似が出来なくて…けどどうしてもこの家の配置を知りたかったので周りを見渡した。すると案の定…。
「庵。」
「……っ!」
「何してんだ。」
益田に見つかってしまい名を呼ばれてしまった。しかも益田は俺と目線を合わせるようにしてしゃがみこんできた。俺はそれが怖くて目を逸らす。だけどそんな暇なかった。益田が俺の名を呼んだことで俺が何かをやらかした。それを感じとった栗濱達が近づいてきてしまった。
「どうしたんだ益田。」
「庵が怪しい事するもんですから叱りつけようとした所です。」
「ほぅ…。」
みんなの視線が俺に集まる。それに耐えきれなくなって俺は目をぎゅっとつぶった。だってそうじゃないか。ただでさえ怖いのに数人に睨まれているのだから。それも極道達に。
「どういうつもりだ庵。」
まずい。栗濱が怒っている。怒らせてしまった。けど言い訳できない。どうしよう…。
「ち、違いますっ、変なことしようとしたとかじゃなくて…っ、」
「じゃあなんで周りを見渡そうとしていたんだ?」
益田は一筋縄ではいかない。誤魔化せない。俺がなにか怪しい事をしようとする度にきっとこうして追い詰めて来るんだろう。最悪だ…もっと考えて行動すべきだった。けどやってしまったという事実は消せない。だから俺は自然に言い訳をすることにした。
「それは…だって普通に気になります…から。」
「普通にねぇ。」
益田同様に栗濱も分からないをそのままで終わらせないタイプだ。ちょっとでも怪しい行動をすれば消し去る。そういった人物だろう。
「まぁいいじゃないか親父。俺達がその辺も躾けていくからさ。」
「お前らがいいと言うなら俺は口出しはしない。だがあまりにも手に負えないようならいつも通り殺すからその時は言え。」
「うん。分かった。」
素直にわかったと言った昌也と呼ばれていた男も中々やばいやつだ。いやここにはきっと常識が通用する人はいない。気を抜ける時なんて1分足りともない。
「それじゃあ俺はそろそろ行くからあとは任せたぞ翡翠。」
「ああ。気をつけてな親父。」
「益田、行くぞ。」
「承知しました。」
そう言って益田と栗濱はこの部屋を出ていった。さぁどうなるか。俺はこいつらによって変わってくる。だけど栗濱がこの家自体を託した。それはいわば事務所自体を翡翠に託したということだ。だから翡翠と呼ばれていた男もかなりのやり手だろう。そう思うと俺は怖くなってきてしまった。
「どうしたのさ庵。」
「おいおい昌也。今度はなんだ。」
昌也?って呼ばれてた人…。その人が俺の近くに来て俺の顔を覗き込んできた。その昌也って人の言葉に拓海と呼ばれていた男が噛み付くようにそう言った。
「いやぁ、なんか庵が怯えんなぁって思ってさ。」
「当然だろう。こんな所に連れてこられて怖くないはずがない。昔の飼い主には大分可愛がられていたようだからな。」
「昔?ああ、兄さんの言うそれって南里龍之介のこと?」
「そうだ。」
翡翠という人がそう言うと昌也と呼ばれていた男の顔つきが変わった。なんなんだこいつは。龍のことが嫌いなのか?龍を知っているのは間違えない。だけどこの感じは敵意…?いや違う敵意なんて軽いものじゃない。きっとこいつらは龍のことが憎いんだ。
「へぇ…そうなんだ。庵は南里に可愛がられてたんだ。宏斗と玲二に可愛がられたって話は益田から聞いたけどそれは知らなかったなぁ。拓海兄さんは知ってた?」
昌也と呼ばれていた男が俺の頬を撫でながらそう言ってきた。本当は嫌で気持ち悪くて仕方がなかったけれど昌也という人物が怖くて俺は硬直してしまった。
「いや知らねぇよ。多分昌也と俺には知らされてねぇ事だろ。翔真にもな。」
「なんだよそれ。翡翠兄さんだけ特別扱いじゃないか。」
「それは今に始まったことじゃねぇし実際兄貴が俺たちよりも優秀なのも事実だ。それよりか俺はこいつが南里の奴に可愛がられてたって方が気に食わねぇよ。」
「拓海の言う通りだな。まぁ俺は南里よりも先にこいつの体を堪能したがな。」
「それさっきも言ってたよね翡翠兄さん。堪能したってどういうこと?」
「こいつがガキの頃にちょっとな。」
俺がガキ?それって…。え…うそ。それがほんとだったら俺をレイプした犯人こいつらだ…。そんな…。知らない方が良かった。最悪だ。そんな奴と俺…再開してしまったんだ。
「なんだよちょっとって。教えてくんねぇの?」
「別に教えてもいいがそれはあとだ。今は庵の事が先だ。」
「はは、相変わらずだなお前らは。」
「兄さんが短気なんだよ。」
「違ぇよ。兄貴は短気じゃねぇ。むしろ普段怒んねぇよ。昌也、お前が余計なことを言うからだ。」
「そう?」
「ああ。そうだ。だから黙れ。」
「わかったよ兄さん。」
まだ誰が誰なのか分からない。名前は出てきたけど覚えれそうにない。こいつらに従順になるふりをしなくてはいけないのに…。早いこと名前だけでも覚えよう。
「ああ、そういえばお前ら暫くここにいるんだろ?」
「親父がよければな。」
「俺はいいさ。ただ、暫く家を空けることになるからちょうど良かった。」
なんてことだ。栗濱が家を空ける事実が知れた。そうなれば多分だけど益田もついて行くはず。だったら逃げられるのでは?栗濱は素人の俺でもヤバいやつだと分かる。けれど翡翠と呼ばれていた男や他の男たちなら隙があるかもしれない。そうしたら俺は簡単に…。
「そうなのか親父。重要な商談か?」
「ああ、そうだ。だからその間この家を翡翠、お前に託す。」
「そういう事なら任せとけ。」
「はは、頼もしいな。」
「なぁ親父、なんで俺じゃねぇの?」
話す感じを見る限りこの人達は相当親密な感じだ。まぁ家族だから当たり前だろうけど龍達がそうじゃなかったからなんか不思議な感じだ。
「拓海には任せきれねぇな。」
「はは、だってよ兄さん。」
「昌也、お前もだからな。」
「は、はい…。」
俺をほったらかしてあの人たちは楽しんでいる。その隙に俺は逃げ道を探すことにした。だけどさっきから相変わらず益田が逃がさないと言わんばかりに見てくる。それもずーっと見てくる。だから俺は下手な真似が出来なくて…けどどうしてもこの家の配置を知りたかったので周りを見渡した。すると案の定…。
「庵。」
「……っ!」
「何してんだ。」
益田に見つかってしまい名を呼ばれてしまった。しかも益田は俺と目線を合わせるようにしてしゃがみこんできた。俺はそれが怖くて目を逸らす。だけどそんな暇なかった。益田が俺の名を呼んだことで俺が何かをやらかした。それを感じとった栗濱達が近づいてきてしまった。
「どうしたんだ益田。」
「庵が怪しい事するもんですから叱りつけようとした所です。」
「ほぅ…。」
みんなの視線が俺に集まる。それに耐えきれなくなって俺は目をぎゅっとつぶった。だってそうじゃないか。ただでさえ怖いのに数人に睨まれているのだから。それも極道達に。
「どういうつもりだ庵。」
まずい。栗濱が怒っている。怒らせてしまった。けど言い訳できない。どうしよう…。
「ち、違いますっ、変なことしようとしたとかじゃなくて…っ、」
「じゃあなんで周りを見渡そうとしていたんだ?」
益田は一筋縄ではいかない。誤魔化せない。俺がなにか怪しい事をしようとする度にきっとこうして追い詰めて来るんだろう。最悪だ…もっと考えて行動すべきだった。けどやってしまったという事実は消せない。だから俺は自然に言い訳をすることにした。
「それは…だって普通に気になります…から。」
「普通にねぇ。」
益田同様に栗濱も分からないをそのままで終わらせないタイプだ。ちょっとでも怪しい行動をすれば消し去る。そういった人物だろう。
「まぁいいじゃないか親父。俺達がその辺も躾けていくからさ。」
「お前らがいいと言うなら俺は口出しはしない。だがあまりにも手に負えないようならいつも通り殺すからその時は言え。」
「うん。分かった。」
素直にわかったと言った昌也と呼ばれていた男も中々やばいやつだ。いやここにはきっと常識が通用する人はいない。気を抜ける時なんて1分足りともない。
「それじゃあ俺はそろそろ行くからあとは任せたぞ翡翠。」
「ああ。気をつけてな親父。」
「益田、行くぞ。」
「承知しました。」
そう言って益田と栗濱はこの部屋を出ていった。さぁどうなるか。俺はこいつらによって変わってくる。だけど栗濱がこの家自体を託した。それはいわば事務所自体を翡翠に託したということだ。だから翡翠と呼ばれていた男もかなりのやり手だろう。そう思うと俺は怖くなってきてしまった。
「どうしたのさ庵。」
「おいおい昌也。今度はなんだ。」
昌也?って呼ばれてた人…。その人が俺の近くに来て俺の顔を覗き込んできた。その昌也って人の言葉に拓海と呼ばれていた男が噛み付くようにそう言った。
「いやぁ、なんか庵が怯えんなぁって思ってさ。」
「当然だろう。こんな所に連れてこられて怖くないはずがない。昔の飼い主には大分可愛がられていたようだからな。」
「昔?ああ、兄さんの言うそれって南里龍之介のこと?」
「そうだ。」
翡翠という人がそう言うと昌也と呼ばれていた男の顔つきが変わった。なんなんだこいつは。龍のことが嫌いなのか?龍を知っているのは間違えない。だけどこの感じは敵意…?いや違う敵意なんて軽いものじゃない。きっとこいつらは龍のことが憎いんだ。
「へぇ…そうなんだ。庵は南里に可愛がられてたんだ。宏斗と玲二に可愛がられたって話は益田から聞いたけどそれは知らなかったなぁ。拓海兄さんは知ってた?」
昌也と呼ばれていた男が俺の頬を撫でながらそう言ってきた。本当は嫌で気持ち悪くて仕方がなかったけれど昌也という人物が怖くて俺は硬直してしまった。
「いや知らねぇよ。多分昌也と俺には知らされてねぇ事だろ。翔真にもな。」
「なんだよそれ。翡翠兄さんだけ特別扱いじゃないか。」
「それは今に始まったことじゃねぇし実際兄貴が俺たちよりも優秀なのも事実だ。それよりか俺はこいつが南里の奴に可愛がられてたって方が気に食わねぇよ。」
「拓海の言う通りだな。まぁ俺は南里よりも先にこいつの体を堪能したがな。」
「それさっきも言ってたよね翡翠兄さん。堪能したってどういうこと?」
「こいつがガキの頃にちょっとな。」
俺がガキ?それって…。え…うそ。それがほんとだったら俺をレイプした犯人こいつらだ…。そんな…。知らない方が良かった。最悪だ。そんな奴と俺…再開してしまったんだ。
「なんだよちょっとって。教えてくんねぇの?」
「別に教えてもいいがそれはあとだ。今は庵の事が先だ。」
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