血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

文字の大きさ
上 下
102 / 210
囚われの身

新しい人物

しおりを挟む
*庵視点





















「なぁ庵。命が欲しけりゃ俺の可愛い息子達に尽くすんだぞ。」



そんなの嫌に決まっている。俺には龍達がいるんだ。けど…見かけだけでも従順に見せておいた方がいいかもしれない。懐くだけ懐いて逃げる隙を探す。そうしたら早めに逃げ出すことが出来るかも…。だから俺は見かけだけ大人しくこの男に従うことにした。



「ん?いい子じゃねぇか。物分りが良い奴だ。」



俺が栗濱の言葉に素直に頷いたからかこの男の機嫌が分かりやすく良くなった。まだ出会ったばかりだしこの男がどんな人物なのかどんなことをするのかが全く分からない。それさえ分かれば俺はこの男に対する態度をどんな風にすればいいのかが大体分かる。だがそれが分からないことには下手に動けない。そのため今はこうして大人しくするしかない。



「思ったより痛めつける必要はなさそうだな。」



やっぱりそうか。こいつは俺の事を暴力で支配する気だったんだ。ヤクザなのだからそうなるのも納得はいく。けど俺はそうはいかない。龍の時に学んだ。それ以前にも学んだ。反抗してもいいことはないって。龍にこれまで反抗していたのは怒らないって分かっていたから。龍なら大丈夫って分かってたから。けど今は違う。だったら俺は俺なりに…。



「庵、こっちを向け。」



これからどうしようかと俺が考えていると栗濱にそう言われた。そのため俺は素早く栗濱の方を向いた。あくまでこれは作戦だ。本当は嫌で仕方がない。従わないでいいのならばずっと反抗しておきたい。けれどそれではダメなのだ。だから俺は直ぐに栗濱の言う通りに動いた。



「はは、いい子だ。これ取ってやるからな。」



栗濱はそう満足そうに笑うと俺の口に着けていた猿轡を取ってくれた。これでやっと発言ができる。栗濱のことを探れる。ここから出られるのがいつになるか分からないけれどもし出られた時…龍の元に帰れた時に栗濱の情報を少しでも多く渡せるよう俺は俺なりに頑張るんだ。



「……ありがとう、ございます。」

「おお、礼まで言えるのか。この状況で?はは、賢い奴だ。」



そう言って栗濱は俺の頭を撫でてきた。気持ちが悪い。触るな。触れるな。気色が悪い。けれどそれを出してはいけない。



「あの、質問してもいいですか…?」

「ああ。なんでも聞くといい。」

「俺は…どうなるのですか?」

「それはさっき言ったろ。俺の息子を満たしてもらう。内容は言わなくても分かるだろう。お前がこれまでもしてた事だ。」



それはつまり性欲を満たせ…そう言っているんだろう。たしかに俺が今までしてきたことだ。だけど好きでしてきたわけじゃない。なのに…くそ、弱音を吐いてしまう。だめなのに。そうだ。弱音を吐いては駄目。龍の所に帰るために。龍だってきっと探し出してくれる。その日を俺は待つんだ。



「そうでしたね。俺は俺なりに最善を尽くします。」

「………はは、あの頃とはえらい違いようだな。」

「あの頃?」



栗濱のいったあの頃が俺は分からなかった。出会ったことがあるっけ?いやない。俺は覚えていない。こんなおじさん俺は知らない。おじさんだけど悔しいけどこの人は龍並に顔立ちが綺麗だ。そんなやつきっと忘れない。だからそれは栗濱の思い違いだ。


「まぁいい。思い出したら逃げ出す恐れがあるからな。お前には任務を全うしてもらわねぇと。」



逃げ出す…?こいつは何を言っているんだ。俺はこいつに何かされた覚えはない。ここに連れてこられたこと以外まだ何もされてない。本当に分からない。まぁいっか。勘違いしているならそれも何かの形で使えるかもしれない…と俺が思っているとこの部屋のドアが開いた。益田が帰ってきたんだ。



「栗濱さん。戻りました。」

「ご苦労。」



益田の声が聞こえて俺は縛られている身体の中益田の方を全力で向いた。するとそこには益田以外の人物が3人もいた。



「親父。遅くなってすまない。それと翔真はあとから合流する。」

「仕事が立て込んでいたのだろう?それは仕方がない。翔真の件も承知した。お前が謝る必要は無いさ翡翠。」



栗濱はそう言いながら今来た男達の元に歩いていった。そんな栗濱とはすれ違いに益田が俺のところに来た。きっとこいつは俺を見張りに来たんだ。こんな体では俺は逃げ出すことも出来ないのに。



「相変わらず優しいな親父は。」

「当然だ。お前は優秀だからな。お前らも謝罪する必要はないからな。」

「ありがとう親父。」

「それはそうと親父、俺たちしばらく会ってないけどその間親父は元気だったか?」

「ああ。元気さ。」



そういえば栗濱は息子が4人いると言っていた。ということはこの3人全員が栗濱の息子なのだろう。この栗濱の息子だ。きっと息子達も常識範囲では通用しない。絶対気を抜かないようにしないと…。それじゃなくても益田の目があるのに…。



「話が一段落着いたところで…。親父、今日は一体どうしたんだ?」

「ああ、その件だがお前たちにあげたい物があるんだ。」

「物?なんだそりゃ。」

「いいからとりあえずこっちに来てみろ。」

「分かった。」

「親父がそう言うなら。」



その声を最後に今度は足音が聞こえてきた。その瞬間俺は足が震えそうになる。だけど耐えた。怯えていることを悟られたくなかったから。



「こいつだ。」

「おお…これはこれは。」

「今までで1番の上玉だな。」

「そうだろ?こいつならお前らを満足させてやれると思ってな。もっと早めに手に入れたかったんだが誤算があって遅くなってしまった。」



物と言われて連れてこられたのにこいつらは俺の姿を見ても驚かなかった。ということは日頃からこういったことをしているのだろう。龍とは全く違う。最低な奴らだ。鬼畜極まりない。



「親父、礼を言うぞ。」

「兄さんも珍しく気に入ってるね。いつもは乗り気じゃないのにさ。」

「こいつは俺が昔会ったことがあるやつだからな。俺はこいつの事が忘れなくて他の奴を抱けなかったんだ。どうもこいつ以外を抱く気になれない。気持ち悪くてな。」



翡翠とよばれていた男はそう言ったんだ。だから俺はもう混乱だ。栗濱に限らずこいつまで俺に会っていると言った。でも俺は覚えていない。翡翠と呼ばれていた男もきっと1度会えば忘れないほどの美形。性格。刺青。なのに俺は覚えていない。そんなことあるのか?それともただ単にこいつらの勘違いなのか?



「なーんだ。そういうことだったんだ。それならそうと言ってくれれば俺は兄さんに協力したのに。」

「お前の力じゃ無理だろ昌也。」

「なんてことを言うんだよ兄さん。俺は兄さんのためなら何でもする覚悟なのに。」

「やめろ昌也。無駄口を叩くな。」

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

処理中です...