血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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極道の世界

だれ…?

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「ん?瀧か?」

「はい。」



リビングに誰かが入ってきた音を聞き和紀がそう聞いてきた。その問いかけに瀧雄はすぐさまそう答える。そして和紀はその時庵の姿を視界にとらえた。その瀧雄の腕の中にいた庵をみて和紀は顔をしかめる。



「庵はどうだ。まぁその様子だと良くはなさそうだな。」

「…はい。未だに目を覚ましません。」



瀧雄は心配そうにそう言ったが和紀はその瀧雄の言葉に安心した。目を覚ましたりしてパニックを起こすより全然そっちの方がいいから。



「そうか。なら庵を寝かせといてやれ。」

「…え?」



瀧雄は和紀の言葉に思わず本音が漏れそうになった。庵はこの状態から何も変化がない。起きる気配もないし顔色も悪いままだ。なのに和紀がそう言ったので瀧雄は意味がわからず和紀を重視してしまった。そんな瀧雄に和紀は優しく微笑み再び口を開いた。



「大丈夫だ瀧。この子は強い子だから。現に龍之介にも相当な事をされても負けなかったろ?」

「…それはそうかもしれないですけど、」



瀧は和紀にそう言われても尚不安が消えない様子だった。それもそうだろう。瀧は庵のことを愛しているのだから。そんな瀧雄をみて今度は益田が口を開いた。



「瀧も心を許せる奴と出会えたようだな。いい兆しだ。」

「な、何の話ですか…!」

「はは、図星か。」



わかりやすいにも程があるほど瀧雄は狼狽えた。そんな瀧雄をみて思わず益田は笑ってしまう。そのため瀧雄は恥ずかしくて仕方がなくなった。



「やめてくださいよ益田さん…恥ずかしいじゃないですか。何を言ってるんですか全く…。」

「そう言うなって。まぁとりあえず庵をソファに寝かせといてやれ。ブランケット持ってきたからよ。」

「ありがとうございます。」



瀧雄はそうお礼を言うと益田に言われるがまま庵をソファに寝かせた。そして益田が持ってきてくれていたブランケットを庵に被せる。そんなことを瀧雄がしていると後ろから益田が近づいてきた。



「益田さん…?」

「ん?どうした?」

「あ、いや…益田さんがあまりにもまじまじと見られてたので何か気になったのかと思ったんです。」

「はは、悪い悪い。変な意味じゃねぇんだ。ただお前が他人を好きになるなんてことないと思ってたからな。だからなんだか不思議な気持ちになってる。」

「なんですかそれ。」

「嬉しいって意味だ。」

「ほぅ…。」



どうして益田がそんなことを思ったのか…瀧はそれを誰よりも理解している。瀧雄が龍之介に拾われる前そういった系で揉めた過去があったから。それを益田は知っている。だからそう言ったのだが瀧雄からしてみればものすごく昔の話だ。それに加えて瀧雄はあまりその過去のことは気にしていなかった。しかし瀧雄は正直益田がその事を覚えてくれていたことにもそのことをずっと心配してくれていたことにも嬉しさを感じた。だが恥ずかしくなってしまい照れ隠しに瀧雄は益田に無愛想な返事をしてしまった。そしてそのまま瀧雄が照れ隠しに話を逸らそうとしたその時…!



「……たき?」



その声が聞こえた瞬間まるで時が止まったかのようにしてリビングが静まった。その理由はただ1つ。その声の主が庵だったから。だから瀧雄は嬉しさのあまり目に涙をためる。そしてその場に立ち尽くしてしまった。そんな瀧雄をみて益田が瀧雄の背中をしばく。



「おい益田。坊ちゃんを呼んでこい。」

「は、はい!」



そうだ。庵は龍之介を待っている。だから目が覚めた時絶対に庵の目の前には龍之介がいなくてはならない。それを思い出した瀧雄は急いで龍之介を呼びに行こうとしたがちょうどその時リビングと廊下を繋ぐ扉が開いた。



「若!!!」



あまりにもナイスタイミングで龍之介がリビングに入ってきたので瀧雄は嬉しさと驚きからそう声を荒らげてしまった。そんな瀧雄をみて何事かと龍之介は瀧雄を重視する。



「なんだ益田。」

「庵が起きました…。だから早く…早く来てください。」



瀧雄は目を見開きながらそう言った。すると龍之介は途端に庵の元まで駆け寄っていく。もちろん亮もその後に続くように庵の元に行った。そして庵の所まで来た龍之介は庵と視線を合わせるようにして座り込んだ。



「庵。俺が分かるか?」

「…当たり前じゃん。りゅうのすけ。」



庵はそうしっかりと答えた。良かった。受け答えがまともに出来ている。変な薬を入れられている様子もない。龍之介は庵のこの姿を見て心から安心した。



「良かった。」

「龍之介…?なんで泣いてるの?」



どうしてかなんてそんなの決まっている。庵が無事に帰ってきたからだ。なのに庵はそんなことを聞いた。そんな庵に正直龍之介はここで違和感を覚えた。だがそれは龍之介だけではなく益田も亮も皆が思っていたようだ。



「なんでってそりゃお前が無事に帰ってきたからだ。」

「何言ってんの?帰ってきたのは龍之介でしょ…?」

「…は?」



帰ってきたのは龍之介…?何を言っているんだと龍之介は硬直してしまった。だが庵がそんな意味のわからないことを言う理由として…ある可能性があった。その可能性というのは庵が記憶をなくしてしまっているということ。あまりのショックからそうなる可能性はゼロではない。だから龍之介はそれを確かめるべく口を開いた。



「お前…、」

「坊ちゃん待ってください。」



庵に記憶を失っているのかどうか直接聞こうとした龍之介だがそれを益田に止められた。だが龍之介はイラつくこともせず素直に待った。こういう時の益田は誰よりも頼りがいがあるから。



「庵、俺の事分かるか?」



益田は庵の目をしっかりとみてそう言った。もし庵に記憶がなければ益田のことを庵は知らないはず。帰ってきたのは龍之介というワードを聞いて益田はそう思ったのだ。庵はずっとここにいた。だから帰ってきたのは龍之介だと思っているとすると絶対に庵は益田のことを知っているはずがないから。だから益田はそう聞いたのだ。そんな益田の言葉に対して庵はどこか迷っている様子だった。だから庵のことを益田も龍之介も亮も皆が静かに待った。すると庵が口を開き話し始めた。



「あなたは………。」

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