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極道の世界
朝
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「…………ん………。」
庵は何やらドアの向こうから聞こえてくる声により目が覚めた。今庵が眠っている部屋には窓がない。だから朝かどうかは分からないがこの起きた感覚から何となく朝を迎えていることはわかった。
「……い、っ、たい………。」
お腹がすいたので起きて龍之介らのところに行こうとした庵だがあまりの身体の痛さに起き上がることが出来なかった。最悪の状況だ。ここには龍之介と連絡する手段がない。庵には携帯電話すらないから。だから庵は歩いてリビングまで行かなければならない。しかしそれは出来そうにない。本当に身体が痛いから。
「……ぜったい、ゆるさないっ、」
身体の痛みと空腹の限界から腹が立ってきた庵は心底龍之介らを恨んだ。もちろん亮もその中に入っている。だが今恨んだところで状況は変わらない。だから庵はせめてこの部屋から出ようとする。そうすればきっとドアの向こうに龍之介らがいるはずだから。
「うっ…、いたすぎっ、なにこれ…。」
これまで抱き潰された経験などなかった庵は朝起きてからというものあまりの腰の痛さに終始驚いていた。こんなに痛くなるものなのか…と。それが毎日だなんてやはり耐えられない。その事も龍之介らに伝えなければならない。その一心で庵は頑張って動いた。頑張って痛みをこらえて動いていた。しかしそれにも限界があり上手く立ち上がるが出来ず庵は床に身体を打ち付けてしまった。
「………いたい。」
庵が倒れたことで自分でも分かるほど大きな音がした。そしてその音はどうやらリビングに居た龍之介らにもきこえていたようで走ったこちらに向かってくる足音が庵の耳に入ってきた。
「おい大丈夫か…ってお前何してんだよ。」
焦った様子で寝室に入ってきた亮だが床に倒れて痛みに耐えている庵をみてそう言った。その亮の発言には流石の庵も腹が立った。誰のせいでこうなっていると思ってるんだ…と。
「…だれの、せいだと!」
「俺らだな。」
庵が亮に対する怒りから拳を握りしめていると龍之介が寝室に入ってきてそう言ってきた。その龍之介の声を聞いた庵は何故か少し安心した。きっと亮と2人っきりだと喧嘩になってしまうから。だがだからといって怒りがおさまるというはずもなく…。
「そうだ…っ、りゅうのせいだ!」
「ああ。そうだ。悪いと思ってる。すまない庵。」
龍之介が床に倒れる庵を起こしながらそう言った。そしてその後龍之介は庵の頬に軽くキスをしてくる。だが庵はもちろんそれを拒む。
「…やめっ、ゆるさないっ。」
「そうかそうか。まぁとりあえず飯でも食おう。腹減ったろ?」
そう言うと龍之介は問答無用で庵を抱きかかえた。今の庵の意見を聞いたところで無駄だと判断したのだろう。だがそれは庵からしても良かった。今龍之介らに何を言われても反抗したくなっていたから。それほど腹が立っていたのだ。だからこの龍之介の無理やりの行動には少しだけ感謝した。庵は正直お腹も空いていたから。
「…りゅう。」
「どうした?」
「いま何時…?」
「今は10時ぐらいだな。だからお前は10時間ぐらいは寝てたぞ。」
「そんなに!?」
「ああ。まぁ寝る子は育つと言うだろ?そんだけ疲れてたって事だし驚くことでもないだろ。」
寝室からの移動中2人はそんな会話をしていた。それを亮と瀧雄は見守るように見ていた。もちろん亮と瀧雄は隙あれば2人の会話に入りたいと思っていたが今はやめといた。それは龍之介が幸せそうな顔をしていたから。いつぶりだろうか。亮らがこの龍之介の顔を見たのは…。それは数年ぶりかもしれない。だから2人はこうして黙って見守っていたのだ。大切な主だから。そして皆がそれぞれそんなことをしているうちにリビングにあるテーブルに到着した。
「おら着いたぞ庵。でもまだ腰辛いだろうから俺の上に座れ。」
「…やだ。」
庵も龍之介の膝に座った方が身体が楽ということはわかっている。だが嫌だったのだ。昨日抱き潰された時辛かったから。だからその分龍之介が怖かった。また手を出されるのではないかという不安があったのだ。しかし龍之介も龍之介で譲る気はないようで庵がいくら拒もうとも離さないといわんばかりに庵の体を片手で抑えてきた。
「まぁお前の事だからそう言うと思った。けど駄目だ。大人しく言うことを聞け。分かったな。」
「……なんだよそれ。どうせ龍は俺がどんだけ拒否っても離してくれないくせに。」
「よく分かってるじゃねぇか。ほら庵、食うんだ。文句は後で聞いてやるから。」
龍之介はそう言うと庵を自分の膝に座らせたままご飯を庵の口まで運んだ。その間ももちろん庵が逃げないように身体を抑えている。抑えているというよりかはホールドしていると言った方が正しいかもしれない。そんなだから庵は当然逃げられない。だから不服だったが庵は口に運ばれてきた食べ物を大人しく食べることにした。
「…おいしい。」
「そうか?そりゃよかった。これは瀧が作ったんだぞ。」
「瀧が…!?」
「何そんなに驚いてんだよ。失礼な奴だな。俺はこう見えて料理すんのが好きだからな。」
「…意外すぎる。」
瀧雄がこんな見た目をしているのに料理ができるなんて相当意外だったようで庵は目を見開いてそう言った。そんな庵をみて亮が笑ってきた。
「はは、お前ってほんと素直な奴だよな。俺は好きだぜ。お前のそういうとこ。」
「なんだよそれっ!」
「おい亮。いちいち庵を興奮させんな。」
庵は何やらドアの向こうから聞こえてくる声により目が覚めた。今庵が眠っている部屋には窓がない。だから朝かどうかは分からないがこの起きた感覚から何となく朝を迎えていることはわかった。
「……い、っ、たい………。」
お腹がすいたので起きて龍之介らのところに行こうとした庵だがあまりの身体の痛さに起き上がることが出来なかった。最悪の状況だ。ここには龍之介と連絡する手段がない。庵には携帯電話すらないから。だから庵は歩いてリビングまで行かなければならない。しかしそれは出来そうにない。本当に身体が痛いから。
「……ぜったい、ゆるさないっ、」
身体の痛みと空腹の限界から腹が立ってきた庵は心底龍之介らを恨んだ。もちろん亮もその中に入っている。だが今恨んだところで状況は変わらない。だから庵はせめてこの部屋から出ようとする。そうすればきっとドアの向こうに龍之介らがいるはずだから。
「うっ…、いたすぎっ、なにこれ…。」
これまで抱き潰された経験などなかった庵は朝起きてからというものあまりの腰の痛さに終始驚いていた。こんなに痛くなるものなのか…と。それが毎日だなんてやはり耐えられない。その事も龍之介らに伝えなければならない。その一心で庵は頑張って動いた。頑張って痛みをこらえて動いていた。しかしそれにも限界があり上手く立ち上がるが出来ず庵は床に身体を打ち付けてしまった。
「………いたい。」
庵が倒れたことで自分でも分かるほど大きな音がした。そしてその音はどうやらリビングに居た龍之介らにもきこえていたようで走ったこちらに向かってくる足音が庵の耳に入ってきた。
「おい大丈夫か…ってお前何してんだよ。」
焦った様子で寝室に入ってきた亮だが床に倒れて痛みに耐えている庵をみてそう言った。その亮の発言には流石の庵も腹が立った。誰のせいでこうなっていると思ってるんだ…と。
「…だれの、せいだと!」
「俺らだな。」
庵が亮に対する怒りから拳を握りしめていると龍之介が寝室に入ってきてそう言ってきた。その龍之介の声を聞いた庵は何故か少し安心した。きっと亮と2人っきりだと喧嘩になってしまうから。だがだからといって怒りがおさまるというはずもなく…。
「そうだ…っ、りゅうのせいだ!」
「ああ。そうだ。悪いと思ってる。すまない庵。」
龍之介が床に倒れる庵を起こしながらそう言った。そしてその後龍之介は庵の頬に軽くキスをしてくる。だが庵はもちろんそれを拒む。
「…やめっ、ゆるさないっ。」
「そうかそうか。まぁとりあえず飯でも食おう。腹減ったろ?」
そう言うと龍之介は問答無用で庵を抱きかかえた。今の庵の意見を聞いたところで無駄だと判断したのだろう。だがそれは庵からしても良かった。今龍之介らに何を言われても反抗したくなっていたから。それほど腹が立っていたのだ。だからこの龍之介の無理やりの行動には少しだけ感謝した。庵は正直お腹も空いていたから。
「…りゅう。」
「どうした?」
「いま何時…?」
「今は10時ぐらいだな。だからお前は10時間ぐらいは寝てたぞ。」
「そんなに!?」
「ああ。まぁ寝る子は育つと言うだろ?そんだけ疲れてたって事だし驚くことでもないだろ。」
寝室からの移動中2人はそんな会話をしていた。それを亮と瀧雄は見守るように見ていた。もちろん亮と瀧雄は隙あれば2人の会話に入りたいと思っていたが今はやめといた。それは龍之介が幸せそうな顔をしていたから。いつぶりだろうか。亮らがこの龍之介の顔を見たのは…。それは数年ぶりかもしれない。だから2人はこうして黙って見守っていたのだ。大切な主だから。そして皆がそれぞれそんなことをしているうちにリビングにあるテーブルに到着した。
「おら着いたぞ庵。でもまだ腰辛いだろうから俺の上に座れ。」
「…やだ。」
庵も龍之介の膝に座った方が身体が楽ということはわかっている。だが嫌だったのだ。昨日抱き潰された時辛かったから。だからその分龍之介が怖かった。また手を出されるのではないかという不安があったのだ。しかし龍之介も龍之介で譲る気はないようで庵がいくら拒もうとも離さないといわんばかりに庵の体を片手で抑えてきた。
「まぁお前の事だからそう言うと思った。けど駄目だ。大人しく言うことを聞け。分かったな。」
「……なんだよそれ。どうせ龍は俺がどんだけ拒否っても離してくれないくせに。」
「よく分かってるじゃねぇか。ほら庵、食うんだ。文句は後で聞いてやるから。」
龍之介はそう言うと庵を自分の膝に座らせたままご飯を庵の口まで運んだ。その間ももちろん庵が逃げないように身体を抑えている。抑えているというよりかはホールドしていると言った方が正しいかもしれない。そんなだから庵は当然逃げられない。だから不服だったが庵は口に運ばれてきた食べ物を大人しく食べることにした。
「…おいしい。」
「そうか?そりゃよかった。これは瀧が作ったんだぞ。」
「瀧が…!?」
「何そんなに驚いてんだよ。失礼な奴だな。俺はこう見えて料理すんのが好きだからな。」
「…意外すぎる。」
瀧雄がこんな見た目をしているのに料理ができるなんて相当意外だったようで庵は目を見開いてそう言った。そんな庵をみて亮が笑ってきた。
「はは、お前ってほんと素直な奴だよな。俺は好きだぜ。お前のそういうとこ。」
「なんだよそれっ!」
「おい亮。いちいち庵を興奮させんな。」
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