マムシの娘になりまして~悪役令嬢帰蝶は本能寺の変を回避したい~

犬井ぬい

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第一部(幼少編)

34話 頭上には、選択肢があらわれまして

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 私は、決めた!
 織田信長と明智光秀を、本能寺の変が起きないように監視しよう。

 歴史上で起こる事件がひとつもわからないから、私の行動や言動が、歴史を変えていけているのかはわからない。
 けど、できることをやっていこう。
 これはずっと、前世を思い出してから、私が「蝶」になってから、自分で選択したことだ。
 やることは変わらない。
 ピンチの時のために引き続き、筋肉は鍛えていこう。素振りは真剣でやろう。ウエイトあった方がいいし。


「これで俺たち、夫婦だな!」
「ええ」

 祝言は無事終わり、お城の皆さんにもきちんと祝福してもらえた。
 私のご挨拶がうまくいったかどうかは、お察しで。
 信長くんがこんなかんじだから、皆さん大目に見てくれたんだと思うけど、正直、お義母かあ様とたくさんいた信長くんの弟君達には、白い目で見られた。義両親と同居じゃなかったのが救いだわ。

「信長様、今夜は、私の部屋へ来てくださいね。良いものをお見せしますわ」
「おう!なんだ?楽しみだなー!」

 そして今夜からしばらく、信長と十兵衛と私は、夜な夜な3人で真剣稽古をすることになる。
 だって、勝てないの悔しいし!
 十兵衛も私も、表立って信長と斬りあいをしているのを見られたらまずいので、夜やるしかないのだ。

 明智光秀を強くすることにどんな意味が……という感じだけど、もうこのさい、信長より強くなってもらって、本能寺じゃないところで倒してもらうとか。

 十兵衛は私を殺すことは今のところないとは思うが、兄上にも言われた「身内だったとしても殺しあうこともある」は、肝に銘じていくつもりだ。
 ずっと私についてきてくれたこの子だって、私が憎むべき魔王ラスボスの片腕女幹部になったら、刺さないわけがない。

 それでいいと思っている。
 私はしょせん、立ち位置的に悪役令嬢だしね。

 というわけで私は、
 織田信長と明智光秀を監視しつつ、
 織田信長より明智光秀より強くなってやればいい!
 という結論に至った。

 頑張るぞ、と拳を握る。
 大丈夫、どこへ行ったって、私はマムシの娘なんだから。
 自分で選んで、斬れる。



 乙女ゲームはやったことないけど、頭の中に、選択肢バーが見えた気がした。

 ▶ 織田信長を選ぶ
  明智光秀を選ぶ









 ***

 この子は、うまくやってくれるかもしれない。

 そう思いながら、本を閉じた。
 特に何かが書かれているわけでもない、白紙の本。
 いつの日か、書き記すのをやめてしまった。

 はじめの方のページを、そっと開いてみる。
 紙の乾いた音が、何もない室内へやに響いた。


 むかしむかしあるところに、仲のわるい兄弟がおりました。
 色んな人を巻き込んだ激しい争いの末に、兄は、弟を謀殺してしまいます。


 どうやって伝えようか。
 どう伝えても、彼女にはどうしても伝わらないのだけど。
 次こそは、この子こそは、さいごまでうまくやってもらわないと。

 もう、あとがないのだから。


 ***
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