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光に潜む影-王都暗部襲撃編-

【19】

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《東区》


「グハッ!?」
「兄さん!!」

男が家屋の壁に叩きつけられ、そのまま崩れた家の中に消える

「はぁ…はぁ、強い、な」
頭から血を流しながら血を吐いたせいで血溜まりが地面にできていた
整えられていた青い前髪が額に垂れ下がっている

駆け寄ろうとしたギリスはヘイムの鋭い視線に足を止めた
満身創痍に見えたヘイムはそれでも目に光を宿す

「はぁ…ぺッ……。久しぶりに自分の血の味を感じたぜ」
剣を杖代わりにして立つ
鎧の中の服には血が染み出していた

「兄さんそれ以上はダメだよ!逃げようよ!」
悲痛な声が響く
その通りだ
それはわかっている
周囲を見渡す
一五分前ほど前に溢れていた人並みも今はすっかり無くなり
静かな店通りに奴は現れた

巨大な目とそれを覆うように触手が蠢く化け物だった
最初は弟と連携し攻撃の手を緩めずダメージを与えたが
化物は斬ったそばから修復し何事もなかったかのように触手を振り回す
ギリスの炎の結界で瘴気を払い治癒しながら奮戦したが
、次第に劣勢になってこの有様だった


「猛き炎よ 今その火をもって穢れを祓わん!」



魔法陣がギリスの足元から現れ赤い光と黄色の輝きを放ちながら発動した
化物を包み込み焼く炎の柱
それはただの燃焼ではなく神聖力による浄化であった
それが功をなし化物は怯む
だが結界と攻撃と治癒、同時にこなすにはあまりに肉体が脆く目と鼻から血を流す
「……やめろ!それ以上はお前が持たないぞ!」
「でも、僕がやるしかないんだ!」
臆病でいつも自分の背に隠れ涙目で窺う幼いたった一人の弟
衝突することを恐れ本心を言わなくなり人の目を見ることができなくなった弱気な弟
夜中に御伽噺を読んでと本を抱え俺の自室に夜中忍び込んできた弟…
そして、あの事件が起き屋敷から一人で部屋から出ることもできなくなってしまった
可哀想で哀れな可愛い弟…
俺はいつしかそんなふうに見てしまっていた
今一人血と涙を流して敵を睨みつけ戦っているのは
成長した最愛の弟だった
血の跡に涙が静かに流れる。それを乱暴に拭い俺は剣を構える
「弟が頑張ってるのに兄ちゃんが寝転がってちゃ、兄貴失格だよな」
魔力を体に循環させる
独学で学んだ剣術も魔術も
あの人たちと出会って俺たちは変わった
弟と変わらないのに努力して上を見上げる可愛いご主人様と辛辣で猫のような美人の執事
時々おかしくなるが気の利く同僚と明るく素直な先輩
俺たちは人に恵まれた
だからこそ!役に立ちたいんだ!

歯を食いしばり魔術を発動させる
俺は魔術の才はほとんどなかった
いくら魔術書を読み理論を勉強しても適性がない
俺には一つしか使えなかった

「深く 深く」
剣先を空に向け胸の前に置く
騎士の構えのようだった
これを見たご主人様がいった
まるで誓いを立てるようだね
俺もそう思った
これは、俺の誓い

「心魂まで凍てつけ!グラキエス・ルーメン!」

青い光が形となって化け物に襲い掛かる
剣を振るたびに斬撃が氷となって触手を斬って砕く
再生が追いつかないようだった
いや、止められていた

「うぉおおおーー!!!」
連撃を放つ
己の体まで凍えるように冷えるが
それを包むように温かな温もりが伝わる
見なくてもわかる
大切な弟のことだからだ
俺たちは繋がっている


「はぁ………はぁ」


剣を地面に突き刺す
既に魔力は空寸前だった
片目が霞む

「兄さん!」
弟のギリスが駆け寄り、小さな体で支える
その温もりが心地よく抱きしめた
「ふぁ!?何するのさ!」
「ははっ、頑張ったな…」
「…うん。兄さんもね」
互いに賞賛し合う
こうやって今までやって来たのだ

「坊ちゃん達やルカ達もどうなったんだろうな…」
「大丈夫、だと思いたいな」
手から温かい光を放ちながらギリスが微笑む
治療してくれているようだ

「そんなに魔力、使って大丈夫か?」
「うん。まだなんとか。それより兄さんの方が大変だよ…。あの技すごいけど、消費がすごいよね」
「はは、そうだな」
その通りだった
発動中触れたものを瞬時に凍らせられるが
常に魔力を垂れ流しのような状態になる
普通の術者より魔力は多いがなかなか諸刃の剣だった

「まぁ、少し休めば、他の奴らを助けに行けるだろ」
「無理しちゃダメだよ兄さんは休んで「ッ!!」わっ!?」

地面から触手が現れギリスを攻撃した
無防備で結界もないこの攻撃は即死の攻撃だった
だがヘイムが素早く動き抱きしめ庇う
「に、兄さん….」

自分を抱えたまま倒れたヘイム
反応はない
生命の灯火が、消えていた

「兄さん、兄さん…兄さん!!ヘイムお兄ちゃん!!」
昔の呼び方をした
涙が溢れ前が見えない
小さく弱い自分では兄の体を支えることもできはしない
「うわぁああ!そんな、そんなぁ!お、お兄ちゃん!置いてかないでよ!いやだよぉ!ずっと、一緒にって約束、したのに…」

兄の冷たい体を抱きしめ泣き叫ぶギリス

「ーーーー!!」

化物が叫んでいる
「お前、お前が、お前のせいで、お兄ちゃんをッ!!ゆ、許さない!絶対に、許すものか!!」

赤い光を放つ
眩い閃光が周囲を赤く染める
そして、炎が生まれた

三重の魔法陣が浮かび
それぞれが回転して発動する
「祖の者よ 原初に至る始まりの炎よ!今 我の声を聞け!」
それは古代魔術だった
現代では廃れ扱えるものはごく少数
最上位魔法だ

「昏きものを照らし焼き尽くせ!インフェルノ・ルーメン!」

熱気に当てられた建物や彫像が溶けて燃える
眩むような眩しい業火が化物を包む
そして消えた…

「はぁ………はぁ」
息も絶え絶えだった
「ゴハッ!!」
血を吐き出す
過剰魔力放出による臓器の壊死と魔力器官の損傷だ
内から焼かれるような痛みが全身に走る
兄に寄り添うように倒れた
「………お、お兄ちゃん」
兄の手を握る
一筋の涙が流れた

「ーーー!!」

目だけを動かし音の発生した箇所を見る
まだ熱く熱気を放つ場所から
黒い化物が目を開きこちらを見つめていた

ああ、だめ、だったんだ
ごめんなさいお兄ちゃん
ごめんなさい…坊ちゃん
ごめんなさい、ごめんなさい…

もはや心の中で謝ることしかできなかった
唯一の救いは最愛の兄と共に死ねることだけだった
約束、守れなくてごめんなさい坊ちゃん
生きて無事に帰る
…守りたかったなぁ

力なく微笑む


化物の口が開き涎と嗚咽を上げながら触手を伸ばし近づいてくる
食べるつもりなのか
嫌だなぁ…
小さく思う
いっそのこと最後の力で自分ごと二人を燃やしてしまおうか
そんなことを思いついた時だった



「すまん。遅れて参上で候う」


目の前で若草色の布が揺れる
笠を被った男が現れた
この人は………

「すまん、すまんのぅ。説得したんだがあの頑固者首を縦に振らぬでな。力づくで連れてこようと思ったが某のお役目、御下命を拝した身であって断念した次第でござる。その上、道に迷ってしまって…面目ない」

申し訳なさそうに言って僕の頭を撫でる
この人、確か…
「某がわかるでこざるか?昼間会った男、ムラマサでござる」
そう言って人好きのする笑みを浮かべた

「……な、なにして、に、逃げて」
それが精一杯だった
指も動かすのが辛い状況だこの人を逃すこともできない

「そうじゃのう。だがすまない。某、引くことは己が許さんのよ」
ガシガシと後ろ首をかく
「サムライ…、男とは時に引けぬ時があるのだ。先程の貴様達のようにな」
なっはっはと笑う
何を言ってるの…

後ろから触手が近づく
損耗が激しかったのか、動きが遅い
だがその後ろではさらに増え続ける触手
もうすぐ生え揃ったら元通りだ

「あ、危ない」
「大丈夫。心配いらぬでござるよ」
優しく微笑む
触手が背後から頭に触れようとした
その時
音もなく触手が落ちた
「………え」

「こやつにこの刀は勿体無いが主命ゆえ仕方なし」

振り返り地面に剣で一線を引く
「ここから何者も通さん」
そして刀を構える

「流浪のサムライ、音無のムラマサ」
化物を睨む
「いざ、参る」

数多の触手が襲い掛かった
「ひぃ」
ムラマサの小さく呟かれた音だけが聞こえた

その瞬間、迫って来た触手が地面に落ちて床に触れる前に煙となって消える

「ふぅ」
後陣の触手も同じように消えた
なにが、起きているの?
理解できなかった
数を数えながらただ、静かに歩いている
世界から雑音が消えてしまったかのようだった

「よぉ」
スッ…

「いつ」


「むぅ」


「なな」


「や」


「ここの」


そして終わりが来た
「とお」
…カチン

刀が鞘に納められる音が聞こえた

「……な」
全ての触手が斬られ霧散した

あの距離までは届かないはずなのに
魔力すら感じられなかった
今の技は……

「ーーー!!!」

化物が黒い煙を吐き出しながら睨むと、でかい目玉だけになった本体の口から黒い液体を溢れ出した
湯気のように黒い煙を出しながら吐かれたものは呪詛だった
それが溢れ、周囲を飲み込もうとしている

このままじゃムラマサさんが呪われてしまう
既に戦闘は終わったかのようにこちらを向いて胡座をかき
僕の治療をしてくれている
「すまんな。治療術は苦手でうまくできないのだ。弟達がいれば何とかなるんだが、反抗期か一切言うことを聞いてくれなくてのぅ。辛いものでござるよ」
しょんぼりとした顔で言った
そ、それどころじゃ
「ーーー!」
化物が叫ぶ
「五月蝿いなぁ」
振り返らずに言った

「あの…」
「大丈夫でござる」
僕は不思議そうな顔で見つめた

「既に、終いでござる」
薄く微笑んだ顔は朗らかな人間の顔だった


突如に、暴れて黒い液を溢れさせながら動き出そうとした化け物は縦に一文字に裂け二つに分たれた
そうして煙となって消える


「な、言ったでござろう?」
人好きのする顔で笑いそう言い放つ


「そうじゃったそうじゃった。確かこんなものが…」
懐からゴソゴソと何かを取り出し
僕の額に貼る
「いたっ!」
「おうすまんすまん。じゃが男ならちょいと我慢するでござるよ」
そう言って兄さんの額にもビタンと大きな音を立てて貼る
それは、紙だった
というか
「に、兄さんは生きているんですか?」
「生きておるぞ。よかったな。主が聖なる炎の加護を与えていたから呪いを防いだようだ。日頃の行いだ誇るが良いぞ」
そう言って撫でられる
涙が溢れた
「兄さん、兄さん…」
深く安堵した


「ふむ。…‥ええと何じゃったかな、苦手でござるよ。…きゅうきゅうにょ、りつりょう」

札が淡く光る
「多分これで大丈夫でござろう」
「おわっ!?」
片手で拾われ背負われる
おんぶだった
「よしっ、行くか」
ムラマサは鼻歌を歌いながら歩き出す
「ちょ、どこに行くんですか!」
「ん~?」
ヘイムは気を失ったまま片手で抱えられている
大きい兄を片手で、すごい力だなと感心した

「どこって、治療所とかいうところにでござるよ」
「でも!他の人が戦っていて、その、僕たちを置いて行って向かってもらったほうが」
「拙者の役目は主らを無事に届けることでござるよ」
「……」
「そんなに心配しなくても大丈夫でござる」
「なんで、ですか?」
少し上を向いて話した
「この国には今確実な強者が六人おる」
「貴方みたいに強いんですか?」
「そうじゃのー、男として悔しいがその内二人は勝てるかわからんのう。勝負を挑むんだが躱されてしまうんじゃ」
いけずじゃのーと笑う

「おっ」
ムラマサが斜めに空を見る
僕もそれを追って見る
「あれ、なんだろ」
「もう一柱の邪神でござるな」
南の空に巨大な影ができていた
あれが、もう一つの邪神…

あっちはルカ君とカールトンさんがいる方だ
大丈夫かなと心配する


「おっ」
「へ」
また声を発したムラマサ
「気をつけよ。目をやられてしまう」
大きな手で目を覆われる
その隙間から見えたのは
空を貫く青い白光だった



≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
《南区》



「うっわぁ!あれ、近づいて来ますよ」
「よそ見してると死にますよカールトン先輩!」
「先輩?先輩って言いましたか!?ついに、ついに後輩ができてしまいました先生!」
「誰ですかそれ。てか危ないですってば!」
浮かれてはしゃぐカールトンを横抱きにして運ぶ
後ろからは建物を破壊しながら雄叫びを上げる邪神が迫っていた

「クソ!こっちははずれじゃないか!」
「そうです?アタリっていうんじゃないんですか?」
「そんなわけ無いでしょう!見ただけで石化させる邪神なんて、勝てるわけないでしょう」
器用に飛んでくる飛来物を避けながらルカは走る
既に彼は涙目で、抱えられたカールトンは楽しそうにバタついている
置いてってやろうかとルカは一瞬思った

「でもでもぉ、あれ倒さないと、坊ちゃんやユダさん達困りますよねぇ」
「ぐっ……」
「しかも私たち一応呪い返しの術は付与してもらいましたから少しは時間稼いで戦えると思うんですよ。あっ!もちろん殺す気で頑張りますよぉ~」
「それでも!あんなのに勝てるなんて想像できないです!」
「想像力の欠如ですね。可哀想に」
「エッ!?」
「ユダさんの声真似ですぅ~似てるでしょ?」
「最悪な特技ですね」
「それほどでもぉ~」

そんな話をしながら屋根を走る
巨大な邪神は生き物を全て石にし
応援にきた魔術師も騎士も石にされた

「どうすれば…坊ちゃん達助けに来てくれませんかね」
「必ず来てくれますよ!!絶対」
「そう、だといいんですが」
その前に俺たち、死んじゃいそうですね
邪神により投擲された家の影に飲み込まれそうになりながらそう思った

「ふぅ、っと」
「わっ!」
腕の中から脱出したカールトンが出現させたウォーハンマーで家を吹き飛ばした
「すごいですね…」
「えへ!すごいですか?嬉しいですぅ」
さらに飛んできたものを撃ち落とす
見事な動きだった
「……はわ!」

細かい大量の破片がカールトンを襲う
それを前に出たルカが蹴り落とす
「おぉ!かっこいいですぅ!」
「それは!どうも!」
後方に下がりながら蹴り落とす
やはり近づくことは難しそうだ

「…どうします?」
「うふふ…」
ニヤニヤと笑いだす
「…どうしちゃったんですか?」
「私、名案が浮かんじゃいました」
コソコソと耳打ちする
その行為自体に意味はない
辺りには二人しかいないのだから



「そ、それって作戦とは言わないですよ!ってもう!!」
既にカールトンは走り出していた
身を低くして走る
笑って走る
「アハハハハハハハハハハ!!」
狂ったように笑う
走った後の場所に電撃が発生する

「加速する痛み!泣く子は消えた!笑え!笑え!」
投げられた様々な物をウォーハンマーで潰す 潰す 潰す

「ハッ!」
素早く細かい物を的確にルカが蹴り落とす
着地して跳ねて蹴る
そしてまた着地して跳ねて蹴る
不思議とコンビネーションが出来ていた

「我が足に宿るは風 風の中を走る!」
空には風を纏って空中を跳ねて飛ぶ一人の男がいた


「迅雷!雷電!雷の華!」
鎚武器を振るたびに加速して
凄まじい電撃が生まれる
その余波に周囲が壊れる
地には迸る雷光を纏う獣がいた

「いきますよ!!」
「了解!」

二人は息を合わせる
眼前に迫った邪神に一撃を加えるために

「ストームライン!」
「泣き喚く赤子の叫喚!!」

二人の属性攻撃が直撃する
雷と風が渦になって辺りを砕きながら周囲を巻き込んだ

「ーーーー!!!」

邪神は叫び声を上げながら崩れ倒れた


ストン

「…ふう、倒せましたかね」
「あは、あはは!!」


「あー…まだハイなんですね」
戦闘で気が昂っているカールトンはゴロゴロと転がって笑っていた


周囲は煙で包まれていた
これ、あいつより俺たちで壊した被害多くないか
その事実に目を背けたルカだった
仕方ない、仕方ないんだ
雇われって、辛いなぁ
眩しくもない空を見る



「あはっ、まずいですね」
「わっ!?」

吹き飛ばされた
「いったぁ…何するん…先輩!」

吹き飛ばされて前を見ると血を吐くカールトン
今度は違う理由で転がる

「クッ」
急いでカールトンを抱き抱え退避する
一瞬の後いた場所が闇に沈んだ
「なんなんだよ、あれ…」

倒したと思ったやつの場所には黒い液体が広がっており
それが手を伸ばすように先程いた場所を飲み込んだようだ

十分距離を離し様子を見る
すると黒い液体が盛り上がり

空に飛んだ

「…マジかよ」


炎を纏った軟体のようなものが空に浮かんでいた
どう言う原理なのかも理解できなかった

手に負えないと思ってしまった
黒い煙が丸い球体となって渦を巻いている
本能的に察知した
あれは爆発して飲み込む爆弾だと

「……死にたくねぇな」
気絶したカールトンを抱き直して思った

「せっかくやり直せると、思ったんだけどな」
腐っていた自分を助けてくれた恩人
その人が大切にする主人
気の良い仲間
それがとても心地よかった

せっかく手に入れた居場所だったのに
それでも出会えて死ねたことは幸せじゃないかと変にプラス思考になった
せめてカールトンは助けたかったが自分の足でも爆発まで逃げ切るには間に合いそうになかった


「おうにいちゃんシケた面してんなぁ」
「…仕方なし。敵は邪神普通は無理」

「だよなぁ。ちっとそこで休んでなよ」

子供の声がした
後ろから音もなく現れたのは
子供の背丈の姿を布で姿を覆った二人だった


「お前達は…」

「今忙しいーの見てわからない?」
「あっ」
「迅速に行動。鉄則なり」

「わかってるよ。ここで活躍すれば俺だって認めてもらえるんだ!」
「……」
「どうしたんだよ?お前もそうだろ?あのバカ兄貴より有能って分からせたいんだろ。いつまでも子供扱いされたってこっちは嬉しくねぇんだよ」
「……」
「どうしちまったんだよ。怖くなったか?なら俺に任せろよ。俺はやるぜ!御師様見てくださいな!」
「違う…」
「な、何が違うんだよ。俺はビビってねーぜ!」
「……任務変更」
「はぁ!?今更かよ」
「…あれそのまま倒すと爆発。俺たち無事。周囲更地。俺たち無能。つまり失敗。そして失望」
「……それはやべーな、どうすんだよ」

「……タオにて拘束」
「それじゃああいつ倒せねーだろ」

「問題なし」
チラッと片方の少年が後方を睨む

「第四席待機」

「チッ、おいしーとこ奪いやがって!」
憤慨した様子で屋根を蹴り飛ばす


「何が起きているんだ」
「おいお前」
ビクッ
年下であろう少年に呼ばれる
「死にたくねーなら逃げな」
「お前達はどうするんだ」
「俺たちが逃げたらこの辺消えちまうだろ」
そう言い放つ

「始めんぞ」
「了解」
二人は敵を見据える


「「西から陽は登り 東へ沈む」」


「「北から鳥は飛び立ち 南へ落ちる」」

「「陰影八陣!!」」


地面から影が伸びるように黒壁ができて邪神の動きを阻む
邪神の黒玉は壁の内側だ

「準備完了。即時攻撃せよ」
『了解 目標補足』



『発射』

その声が聞こえた瞬間


一瞬で邪神は青い白光に貫かれた
眩しい光が辺りを照らす



光が消えて見ると邪神の姿形はなかった
二人の少年の姿と共に





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