32 / 36
妹の本性
しおりを挟む
52
ノック。トン、トン、トン。
「は~い」妹は返事をする。「入って良いよ」私は部屋に入った。
「珍しいね、お兄ちゃんが私の部屋に来るなんて!」妹は何だか嬉しそうだ。
「まぁな」私は曖昧な返事をする。
「少しお話しようか」私はそう切り出した。
妹は少し考えているようだった。そして、横になっていたベッドから、机のイスに移った。
「はじめに言っておくわ。いやよ」そう妹は言った。
「それとも、違うお話かしら?」妹の目は笑っていなかった。私は、やれやれのポーズを決めた。
「そう、そうだとも。話が早くって助かるよ。さぁ学校に行くのだ。妹よ」
「いや、絶対にいや」
「もう一度言うよ。学校に行きなさい」妹は少しうろたえた。
「なんでそういうこと言っちゃうのかな? 学校に行かなくて良いって言ったのはお兄ちゃんだよ」
「そういうの良いからさ。学校に行くと約束しなさい」
「ふぅー。なんでこうなるのかなー? もう分からないや。私は今、貴方のことが無機質に見えるわ。他の人と同じようにね」妹が寂しそうに見えた。
「いーから、はよう」私は言う。
「大体さ。私がこうなったのも貴方に責任があるとは思わない? 変な本ばっかり勧めてさ、もう周りの人が何言っているのか分からなくなってしまったじゃない」
「そうだね。悪いことをしたと思っているよ」
「だったらさ、じゃあこうしない?」妹は喜んでいる振りをしている。
「さっきまでの事はなし。何もなかったのよ! 私も忘れるし、お兄ちゃんも忘れる。聞かなかったことにしてあげる」
「だからさ、もう帰ってくれないかな?」
「それでもさ、私は学校に行ってほしいんだ」私はボソッと聞こえる声で呟いた。
「あれは何だい?」私は頭で矛先を示した。妹は本棚を指し示されていることに気づいた。
「なんか学園ものばっかりだな。馬鹿みたいに」そう捨て去る。
「大体なんだその格好。そんなもん着たら自分じゃなくなるとでも思ってんのかよ。しかも、なんだあの本の山。変身願望が駄々洩れなんだよ。本当は学校に行きたいんです。だれか助けてください。っていうのが見え見えなんだよ」私は口調を荒げる。
「良いから学校に行きなさい」妹は悲しそうだった。
「なんでかなー? なんでなのかなー? お兄ちゃんは例外だと思ったんだけどなー?」妹はとぼけた振りをしている。
「何で分かっちゃうのかなー? やっぱりこうなるのよね。例外なく誰も」妹は諦めている様子だった。
「貴方はなんで期待させること言ったの? 最初から行けっていう人間たちより、たち悪いと思わない?そういうの、上げて落とすって言うんだよ」
「そういうの、良いからさ…」妹は泣いていた。
「何でも分かるって残酷じゃない? 分かってしまうの。頭の中にこびりついてしまうのよ。例え、自分が望ましくないものであってもさ。貴方だったら理解してもらえると思ってた。むしろ、貴方もそうなんじゃないかって、心の底から期待していた。本当にそう思ったんだから!」
「もう終わりにしましょう」そう言って妹は、机の中に用意していたと思われる、包丁を手に取った。
私は妹の向かいに立っていた。何言うわけでもなく立っている。私がしている唯一のことは、妹を睨み付けているそれだけだった。
包丁を持った妹が目の前にいる。呼吸は荒立っている。
「私、もう限界なのよ。さよなら私のお兄ちゃん」
妹はそう言い、私の胸に包丁を突き刺した。
ノック。トン、トン、トン。
「は~い」妹は返事をする。「入って良いよ」私は部屋に入った。
「珍しいね、お兄ちゃんが私の部屋に来るなんて!」妹は何だか嬉しそうだ。
「まぁな」私は曖昧な返事をする。
「少しお話しようか」私はそう切り出した。
妹は少し考えているようだった。そして、横になっていたベッドから、机のイスに移った。
「はじめに言っておくわ。いやよ」そう妹は言った。
「それとも、違うお話かしら?」妹の目は笑っていなかった。私は、やれやれのポーズを決めた。
「そう、そうだとも。話が早くって助かるよ。さぁ学校に行くのだ。妹よ」
「いや、絶対にいや」
「もう一度言うよ。学校に行きなさい」妹は少しうろたえた。
「なんでそういうこと言っちゃうのかな? 学校に行かなくて良いって言ったのはお兄ちゃんだよ」
「そういうの良いからさ。学校に行くと約束しなさい」
「ふぅー。なんでこうなるのかなー? もう分からないや。私は今、貴方のことが無機質に見えるわ。他の人と同じようにね」妹が寂しそうに見えた。
「いーから、はよう」私は言う。
「大体さ。私がこうなったのも貴方に責任があるとは思わない? 変な本ばっかり勧めてさ、もう周りの人が何言っているのか分からなくなってしまったじゃない」
「そうだね。悪いことをしたと思っているよ」
「だったらさ、じゃあこうしない?」妹は喜んでいる振りをしている。
「さっきまでの事はなし。何もなかったのよ! 私も忘れるし、お兄ちゃんも忘れる。聞かなかったことにしてあげる」
「だからさ、もう帰ってくれないかな?」
「それでもさ、私は学校に行ってほしいんだ」私はボソッと聞こえる声で呟いた。
「あれは何だい?」私は頭で矛先を示した。妹は本棚を指し示されていることに気づいた。
「なんか学園ものばっかりだな。馬鹿みたいに」そう捨て去る。
「大体なんだその格好。そんなもん着たら自分じゃなくなるとでも思ってんのかよ。しかも、なんだあの本の山。変身願望が駄々洩れなんだよ。本当は学校に行きたいんです。だれか助けてください。っていうのが見え見えなんだよ」私は口調を荒げる。
「良いから学校に行きなさい」妹は悲しそうだった。
「なんでかなー? なんでなのかなー? お兄ちゃんは例外だと思ったんだけどなー?」妹はとぼけた振りをしている。
「何で分かっちゃうのかなー? やっぱりこうなるのよね。例外なく誰も」妹は諦めている様子だった。
「貴方はなんで期待させること言ったの? 最初から行けっていう人間たちより、たち悪いと思わない?そういうの、上げて落とすって言うんだよ」
「そういうの、良いからさ…」妹は泣いていた。
「何でも分かるって残酷じゃない? 分かってしまうの。頭の中にこびりついてしまうのよ。例え、自分が望ましくないものであってもさ。貴方だったら理解してもらえると思ってた。むしろ、貴方もそうなんじゃないかって、心の底から期待していた。本当にそう思ったんだから!」
「もう終わりにしましょう」そう言って妹は、机の中に用意していたと思われる、包丁を手に取った。
私は妹の向かいに立っていた。何言うわけでもなく立っている。私がしている唯一のことは、妹を睨み付けているそれだけだった。
包丁を持った妹が目の前にいる。呼吸は荒立っている。
「私、もう限界なのよ。さよなら私のお兄ちゃん」
妹はそう言い、私の胸に包丁を突き刺した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる