中二病少女

木下寅丸

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妹の本性

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ノック。トン、トン、トン。
「は~い」妹は返事をする。「入って良いよ」私は部屋に入った。
「珍しいね、お兄ちゃんが私の部屋に来るなんて!」妹は何だか嬉しそうだ。
「まぁな」私は曖昧な返事をする。
「少しお話しようか」私はそう切り出した。
 妹は少し考えているようだった。そして、横になっていたベッドから、机のイスに移った。
「はじめに言っておくわ。いやよ」そう妹は言った。
「それとも、違うお話かしら?」妹の目は笑っていなかった。私は、やれやれのポーズを決めた。
「そう、そうだとも。話が早くって助かるよ。さぁ学校に行くのだ。妹よ」
「いや、絶対にいや」
「もう一度言うよ。学校に行きなさい」妹は少しうろたえた。
「なんでそういうこと言っちゃうのかな? 学校に行かなくて良いって言ったのはお兄ちゃんだよ」
「そういうの良いからさ。学校に行くと約束しなさい」
「ふぅー。なんでこうなるのかなー? もう分からないや。私は今、貴方のことが無機質に見えるわ。他の人と同じようにね」妹が寂しそうに見えた。
「いーから、はよう」私は言う。
「大体さ。私がこうなったのも貴方に責任があるとは思わない? 変な本ばっかり勧めてさ、もう周りの人が何言っているのか分からなくなってしまったじゃない」
「そうだね。悪いことをしたと思っているよ」
「だったらさ、じゃあこうしない?」妹は喜んでいる振りをしている。
「さっきまでの事はなし。何もなかったのよ! 私も忘れるし、お兄ちゃんも忘れる。聞かなかったことにしてあげる」
「だからさ、もう帰ってくれないかな?」
「それでもさ、私は学校に行ってほしいんだ」私はボソッと聞こえる声で呟いた。
「あれは何だい?」私は頭で矛先を示した。妹は本棚を指し示されていることに気づいた。
「なんか学園ものばっかりだな。馬鹿みたいに」そう捨て去る。
「大体なんだその格好。そんなもん着たら自分じゃなくなるとでも思ってんのかよ。しかも、なんだあの本の山。変身願望が駄々洩れなんだよ。本当は学校に行きたいんです。だれか助けてください。っていうのが見え見えなんだよ」私は口調を荒げる。
「良いから学校に行きなさい」妹は悲しそうだった。
「なんでかなー? なんでなのかなー? お兄ちゃんは例外だと思ったんだけどなー?」妹はとぼけた振りをしている。
「何で分かっちゃうのかなー? やっぱりこうなるのよね。例外なく誰も」妹は諦めている様子だった。
「貴方はなんで期待させること言ったの? 最初から行けっていう人間たちより、たち悪いと思わない?そういうの、上げて落とすって言うんだよ」
「そういうの、良いからさ…」妹は泣いていた。
「何でも分かるって残酷じゃない? 分かってしまうの。頭の中にこびりついてしまうのよ。例え、自分が望ましくないものであってもさ。貴方だったら理解してもらえると思ってた。むしろ、貴方もそうなんじゃないかって、心の底から期待していた。本当にそう思ったんだから!」
「もう終わりにしましょう」そう言って妹は、机の中に用意していたと思われる、包丁を手に取った。
 私は妹の向かいに立っていた。何言うわけでもなく立っている。私がしている唯一のことは、妹を睨み付けているそれだけだった。
 包丁を持った妹が目の前にいる。呼吸は荒立っている。
「私、もう限界なのよ。さよなら私のお兄ちゃん」
 妹はそう言い、私の胸に包丁を突き刺した。
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