中二病少女

木下寅丸

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黒歴史

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 黒歴史。この歳になると自分の黒歴史も可愛く感じるものだ。最後文章なんて最高じゃない?
『困った人がいたら救いの手を。老人にはパンを』
 そんなこと当たり前じゃないか! 思わずニヤニヤしてしまう。しかし、何を考えてこんなものを書いたのやら? 全く記憶がない。
「天才だったねー」そう呼ばれたころも確かにあったな。でもね少年よ。社会人になると天才がどうのなんて気にしなくなるものさ。まだまだ青いな。フフッ。
 今では半分生きているか分からない、しがないサラリーマンさ。本をよく読んでいるのは天才だった名残ってやつかな。フフフ。
「自分にもこんな時代があったとはね」
『これから自分に何が起きるのか? どういう人生を歩むのか? 全て分かってしまった』
 これはどういう意味だろう? たしか私は、人の考えが聞こえるようになってからというもの。周りに生きている人たちが、まるで陸上のトラックを走っているように、決められたコースをただ闇雲に走っているようにしか見えなくなったんだっけかな?それが無性に怖かったんだ私は。それから、いつも誰かに助けを求めるようになったんだ、心の中で。
 私の世界の中で、次第に人口が減っていったことを思い出した。最終的に、人間はたった一人、私だけになったようでとても怖かった。
「誰か、誰でもいい。元に戻して。元に戻してください」
「変なことを考える前の自分に。普通だった頃の自分に」
 昔の記憶が少し蘇ってきて、頭が痛くなった。思い出したくない記憶っていうのは誰にでもあるんじゃないか? 私は、それ以上思い出さないようにした。
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