中二病少女

パンドラの箱

33

　夜。寝る前にシーツに書かれている文字に気が付いた。
「『カギ』ね。さてはて、私は何を伝えたかったのかなー？」良いね。良いねこういうの。無意識が私を導いている。なんてな。とはいっても、部屋に鍵つきなんてものは一つしかないんだよな。
　『宝物ボックス』小学生くらいから、ガラクタをため込んだ鍵付きの引き出しをそう呼んでいた。
「十何年ぶりだろう」中を見てみる。なになに、友人にもらったキーホルダーに、当時集めていたアニメグッズ。乳歯まで入っている。少しヲタッキーだったかもしれないな。懐かしいぜ。
　一番下に気になるものが入っていた。茶封筒の中に、ワードで書かれたような紙が入っている。封筒には、「困った時に開けるべし」とミミズが這ったような字が書かれていた。私は紙を取り出し読むことにした。


　　天才になれなかった君へ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　15歳
　これを読んでいるということは、さぞかしお困りのことだろう。精々悩むが良い。答えにたどり着くことが出来ないのは、実に簡単明白。
　もう君は天才ではなくなってしまったのだよ。「二十歳超えればただの人」残念ながら私が調べた結果、この俗説は正しい。だが気にすることはしないでほしい。これは自然の摂理なのだよ。
　君に思い出してほしいことが二つある。
　一つ目は、確かに君は天才であったということ。ごく少数、いや一人だが、呼ばれていた時代もあったのさ。
　二つ目は、君の人生は一つの臨床実験だということ。私は十五歳でこの世がつまらないものだと結論づけた。私の天才性はピークに達し。これから自分に何が起きるのか？　どういう人生を歩むのか？　全て分かってしまった。天邪鬼な私は、その運命に反逆する為一つの臨床実験を開始した。
「マンガの主人公は現実の世で生活出来るのか？」我が人生の最大のテーマ。君はこの実験の対象者なんだ。
　この二つのことを決して忘れないでほしい。困った人がいたら救いの手を。老人にはパンを。当たり前だろ？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　決して忘れるな


「何だ。これは？」