中二病少女

木下寅丸

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映像で蘇らない記憶とリハビリみたいなもの

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 昔のことを思い出してみる。中学二年生の頃。私は、一体どんなことを考えていたのだろうか? 先生のことが嫌いだった。自分も嫌いだった。学校になんて本当は行きたくなかった。ずっと誰かに助けてほしいっていつも考えていた。
 確かにそんなことを考えてはいたのだけれども、何でそう考えていたのかは忘れてしまった。それはそうだろう。もう十四年前の事だ。当に記憶が埋もれてしまっている。
「本当、何でだっけかな?」ため息がこぼれる。暫くは、自分の過去を洗うことにするか。何か思いつくかもしれない。

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 妹が私を見るなり、「一緒に出かけるよう!」と言ってきた。休日は引きこもるのがモットーの私は、「ふへぇ」と間抜けな返事をしてしまった。全く動きたくはないというのに。返事をしてしまった以上は行くしかない。全く律儀なものだ。
 部屋で着替えを済ませて玄関に向かう。妹がやってきた。
「もしかして、その格好?」今日は、いかにもサンリオに出てきそうな薄ピンクの衣装だ。
「いやかな?」そう言って少し落ち込む仕草をみせてくる。その姿を見て、「いやなはずないじゃん」と言わざるを得なかった。
「流石お兄ちゃん」と意気揚々だ。傍目からみたらどんな風に見られるのだろう。お姫様の隣に、ユニクロです! みたいな平凡な格好をしている奴がいる。なんてアンバランスなのだろうか?
 目的地は近所のスーパー。妹曰く「リハビリみたいなもの」なのだそうだ。ただスーパーに買い物しているだけなので、特段に記すようなことは起きなかった。
 帰り道。家のすぐ近くの公園に、子どもが湧いていた。「ちょっと寄っていこう!」妹はブランコ目指して走りだした。
「懐かしいね!」ブランコに座り、テンションが上がっている。仕方がないので隣に座って漕いだり漕がなかったりしていた。
「子どもは良いね。何も考えなくて良くってさ…」哀愁漂わせてなんか言っていた。それを見て私は、「おっさんみたいだね!」とクスクス言ったら、「本物のおっさんに言われたくないです」と言われた。
 落ち込んだ。私だってまだギリギリ二十代だぞと思ったけれど。「そんなこと思っている時点でおっさんなんじゃないか?」と自己嫌悪でまた落ち込んだ。
 子どものグループが近寄って来た。「お姫様だ~」とか「お姉さん可愛い~!」とか、男女共にモテモテだ。妹は、子どもに連れ去られるまま行ってしまった。何故かサッカーをし始めた。
 折角の服が汚れるじゃないかと思っていたけど、妹は気にしている様子がなかった。童心に戻っているのか、ここからでは全員子どもに見えた。服で分かるけれど。
「これで良かったのかもしれないな」ふと感じる。以前の妹をだったらこうはならないだろうと思った。皆ワイワイ笑顔だ。
 以前なら、「子どもとか苦手。何するか分からないし~」なんて格好つけていただろう。まぁ、嫌々ながらも遊びには付き合うだろうが。「こう、変なプライドみたいのが消えたんだよなー」今の妹を見て思う。
 ひと段落ついたみたいだ。妹がこちらに戻ってくる。「帰ろうおっさん!」と満面の笑みで言われたので、私は無言で帰ることにした。
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