中二病少女

木下寅丸

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信じると言える人とモーニングルーティン

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 病院に着くと、ベッドから妹は起き上がっていて、ボーっと外を見つめていた。その顔は無表情であり、少し寂しそうにも見えた。私がベッドの横にあるイスに座ると、妹は怯え始めた。暫くした後、やっと言葉を発した。
「私先生に虐められているの。もう学校に行きたくないの。お願い信じて」
「行きたくないなら学校なんて行かなきゃ良いよ。生活は私がいるし問題ないでしょ」そう言うと、妹は安心したように「ありがとう」とだけ言った。
 病院はその日のうちに退院した。病院側には、不注意の結果二階から落ちたと伝えているし、ケガもないものだから、すんなりといった。
「救急車ってどんな感じだった?」と聞くと、「覚えてないんだ、気がついたらベッドの上よ」なんて言っていた。

5

「朝か…」私は缶コーヒーを手に取り、換気扇の前まで行き、タバコを吸っていた。毎朝のモーニングルーティンってやつだ。すると妹が起きてきた。「おはよう、お兄ちゃん」まだ眠そうな感じだ。「やあ、おはようお姫様。ここにいると、せっかくの衣装がタバコ臭くなっちゃうよ」と言ってみたけど、返事はなかった。ただ、側にずっと立っていて、こちらを見つめていた。
 それからというものの、特に何をするわけでもなく、私の側にいる時間が増えた。元々、私と妹の関係は、特に仲が良いというわけではなかった。良い意味で普通。可もなく不可もない関係だった。
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