上 下
8 / 17
第1章:『悟る、クレイジーサイコレズ』

悟る、クレイジーサイコレズ7

しおりを挟む

 「この子は弟さん。そして、この人は木下君」
 「この黒い影は何なんだ?神崎」
 「きっと衝動とかストレスを具現化したものだと思う」


 絵を手でなぞる神崎。


 「理解されるってそんなに良いことのかな」


 「そうか」
 「そうか神崎。弟は救われたんだな?確かに?」
 「そうよ」
 「そうか」


 木下サトルは、理解出来ない事象が起きていることを理解していた。神崎の話はあまりにも常軌を逸している。とうてい信じられる話ではない。でもさ、きっとそうなんだろう。憶測に憶測を重ねただけなら、自分の知りえなかったこの絵まではたどり着けない。狂人だからこそ分かり合える世界というものがあるのかもしれない。


 「弟さんはね。恥ずかしかったのよ自分の思いを伝えることが」
 「照れ隠しね。人がベッドの裏側を見る機会ってそう多くないのよ。たぶん、木下君が大人になって、自立して、この部屋から出るときに気が付いてほしかったのかな?もう死んでいるのに。それともサプライズのつもりだったのかな?時を経って、お兄ちゃんになら伝わるって思ってのかな?」

 「よかったなー。ああ、よかった」


 棒よみで良かったと言う木下サトル。泣いているじゃない。とうてい喜べることじゃないじゃない。


 「良かったんだよ。俺には分からないけどさ。そんなサイコな考え分からいけどさ。俺にはこの絵が不幸の産物にはどうしても見えねえーよ。どうやっても幸せに描いたものにしか見えねえよ」
 「分からないけど、理解するよ。おまえが良かったと思うなら、お兄ちゃんも良かったって思うことにするよ」

 「木下君、、、」


 「ありとう神崎。でも少しだけ泣かせたままにしてくれ」
 「・・・」




 数時間の時が流れた。やっと涙が治まったてきた。くそう悲しすぎる。神崎は何も言わずに隣にいてくれた。



 「神崎」
 「どうしたの木下君」
 「おまえが人に理解されないって思っていることってなんなんだ?」
 「え!?」
 「何に悩んでいるのか分からないけどさ、俺は絶対に肯定するよ。到底分からない価値観だとしても悟ってみせるよ。俺は君を否定しない」


 神崎瞳は、弟さんの絵を見つめていた。どうせ理解されないから人に話す必要もないと思っていたから、誰にも言ったことはない。でも、理解されるってそんなに良いことなのかなって絵を見て思った。


 「私ね、サイコパスなの。たぶん弟さんと同じような類のもの」
 「俺は君を否定しない、肯定する」
 「そしてレズなの」
 「お、おう」


 木下サトルはカウンターパンチを喰らった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

【ショートショート】おやすみ

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました

千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。 レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。 一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか? おすすめシチュエーション ・後輩に振り回される先輩 ・先輩が大好きな後輩 続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。 だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。 読んでやってくれると幸いです。 「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195 ※タイトル画像はAI生成です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

処理中です...