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14話 魔王は冒険者が大嫌い

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 ユーナのレベルを上げさせない作戦。

 思いの他、我が魔王軍の兵士たちがいい感じで結果を出してくれていた。

 冒険者に扮してダンジョンを攻略したり、重たい荷物を持ったおばあちゃんを助けたり、迷子の子どもを無事に両親の元へ送り届けたりと……、とにかくユーナのレベルが上がりそうな事象はしらみ潰しにしていった。

 そんな、ある日の夜のことだ。
 
 私は、イラッとくるのを我慢しながら、変態四天王のノゾッキーにスーツを見繕ってもらった。

 この変態は何を隠そう、メンズスーツの選び方については魔王軍の中で右に出るものはいないのだ。

 私はスタイリッシュかつ、やや光沢があり体型にジャストフィットしたスーツに着替える。
 最後にスクエアで折った真っ白なハンカチをポケットに挿せば、フォーマルスタイルの魔王の誕生だ。


 ……そして私は今、ユーナが滞在している『始まりの街アルファ』某所の、冒険者ギルドの中にいた。

 目的はもちろん決まっている。

 最近、ユーナとパーティーを組んだとされる冒険者たちに、勇者パーティーを辞めていただくためにやってきたのだ。

 だが……数分後。

「ユーナはどこにいるんだ……?」

 私はガヤガヤと騒がしい、夜の冒険者ギルドの中で呆然と呟いた。

 夜の冒険者ギルドは、日中よりもかなり混雑している。明らかに冒険者ギルドというよりは、ただの酒場に成り下がっていた。

 楽しそうに笑いながら酒を飲む冒険者たち。

 私は冒険者たちが楽しく笑うということに反対の意見はない。

 ないが、私は魔王として冒険者たちに許せないことがある。

 たとえば、酔っ払ってベタベタとか弱い女性に痴漢しているクズや、誰彼構わずナンパしているクソみたいな者。

『てめぇえーは追放だ、本日限りで俺のパーティーをクビにするッ!』

 と、謎のセリフを大声で叫んでいるパワハラモラハラ満載のゲスな冒険者。

 このような、カスみたいな冒険者たちを目にすることも少なくないのだ。

 そしてどちらかといえば、冒険者というのはガラの悪い奴らが多い。

 こんなバカどもに、私は言ってやりたい。

『貴様を人生から追放してやろう、喜ぶがいい、私が直々にぬっころしてやるのだから』

 と。

 まったく、同じ種族でありながら仲間同士で傷つけ合い、辱めをするなど滑稽だし愚かと言わざるを得ない。

 私はだから、冒険者ギルドが大大大大大っっっ嫌い! なんだ。

 吐き気すら覚える。
 ほんと、人の気持ちを踏みにじるのは絶対、絶対に良くないと思う。

 ……いつも四天王をぬっころす私が言うのもなんだけど。
 

 それと、私が冒険者を嫌う最大の理由はこうだ。

 酔っ払いのわけの分からん男がユーナをナンパをしたり!

 ユーナが食事している席の隣にしれーっと座って偶然を装い、声をかけるバカがいたり!

 中には交際を申し込もうとする身の程知らずがいたり……!

 いいか冒険者たちよ。
 百歩ゆずって、おまいらの気持ちは分からんでもないよ?

 たしかに、ユーナはとびきり可愛くて、思いやりと慈愛に満ちた地上に舞い降りた天使だ。女神と言っても過言じゃない。

 太陽や月も見劣らせてしまうほどの輝きに、バカどもがうっかり見惚れてしまうのは仕方ないと思う。

 温厚な私も、嫌だけどそれくらいは許してやろう。美しい者に惹かれてしまう気持ちというのを。

 だがな、冒険者たちよ。

 ユーナは、『私のユーナ』であって、貴様ら下賤な輩が簡単に口を聞いて良いわけがないのだ。

 貴様らは咲き誇るユーナという花にたかる小虫に他ならない。

 頭が高い、マジでぬっころすぞ。

 と、こんな奴らに後で裁きの鉄槌を与えるのは言うまでもないのだが……!

 私は、ユーナにプレゼントした魔導水晶板の『監視ストーカー』の機能を動かして、ユーナを見守ること数日。

 悪い虫どもが相変わらずユーナに近づこうとするので、私は気が気ではなかったのだ。


 と、そんなこんなでユーナのことばかり考えてる私。
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