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第四章「得られた仕事」と「異国の地」
お父様とともに1
しおりを挟む「レイシェン、忘れ物はないね?」
「もちろんです!」
ようやく、この日が来ました。
今日から傍付きとしての仕事が始まります。興奮もありますが、やっぱり緊張してしまいます…。
「それじゃあ、出かけようか。」
王宮の正門を抜けました。
「あれ、なぜ中央の門に向かうのですか…?」
知識では文官の仕事場は右手にあったはずです。
確か中央は謁見室などと、王族の方々のお住いのある宮殿のはず…。
「ん?言ってなかったっけ?仕事を始める前に簡易だが陛下からの任官式があること。いまは、陛下の使われている執務室に向かってるんだよ。」
「え……。言われていませんよ!何でそんなことを急に言うのですか…。」
心臓に悪いです。
陛下に謁見する。そう思うと、余計に緊張が激しくなってしまいます…。
「え~、別に何も準備するものはないし、大丈夫でしょ。セバスが謁見の作法も教えたって言ってたし。」
「それはそうですが…。」
そんなこんなのうちに、父上は一つの戸の前で足を止めました。
目の前には、豪華な装飾が施された両開きの扉があります。
その左右には、騎士が一人ずつ控えていました。陛下の護衛でしょうか。
「宰相補佐、ユーリ・ハインリッヒ参上いたしました。(レイシェン、挨拶を!)」
お父様が小声で僕に促します。
「ユーリ・ハインリッヒが子、レイシェン・ハインリッヒ参上いたしました。」
「入ってくれ。」
低い男性の声が響きます。
「失礼いたします。」
戸を開けると、歴史を感じさせる木製の机の前で、仕事をする壮年の男性がいました。
この人が国王陛下なのでしょうか?
どことなく威厳というものを感じさせます。
「私も忙しい身なのでな、手短に行わせてもらう。」
その人が、椅子から立ち上がりこちらに向かってきます。
それに合わせて、お父様が跪きました。
僕もお父様の斜め後ろで、それに習います。
「レイシェン・ハインリッヒよ、この王国のために、身を粉にすることを誓うか。」
僕に、問いかけてきます。これは、任官式の際の定型文です。
勿論、
「誓います。」
「その身は何のためにある?」
「わが身は、王国の、ひいてはすべての民草のために。」
「よろしい。では汝を、余、ヨハネス・スェイデリゼの名において、ハインリッヒ宰相補佐官の傍付きに任官す。」
「承りました。」
「今この時から、そなたは文官の末席に位置する。そこなユーリが天才だと自慢し続けたその頭脳期待しておるぞ。何せ、本来ならば、10歳でも傍付きになるのは早いとされるくらいじゃしな~!」
「え、…。発言してもよろしいでしょうか?」
「よかろう。」
「僕は、5歳前後でなるものといわれてきたのですが…。」
「では、ユーリに一杯食わされたのだろうな。そろそろ、下がりたまえ。余はまだ職務がたまっておるゆえに。ユーリ、そなたの自慢の子をきっちり育て上げるのじゃぞ。」
「もちろんにございます、我が君。」
そう答えるお父様の姿はどことなくかっこよかった。
陛下の声にも、どこか親しみと信頼があった。
”我が君”それは、生涯をかけて仕える主にのみ向ける言葉。
お父様は陛下にのみ仕えると決めているのでしょう。
そして、陛下もそんなお父様を信頼しているのでしょう。
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