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僕が恋することはもう無い

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僕の記憶の中には今では誰も、彼の産み親でさえも忘れてしまった人との思い出で溢れている。

そんな僕は彼との思い出だけが記憶の中を埋めていて愛しい彼の顔も、声も、名前も記憶の中のたんすのひとつが盗まれたようにぽっかりと空いている。

思い出すのは彼の影ばかり。
いつもいつも夢に出てきては、僕が手を伸ばしたところで消えてしまう。
僕にはただ…それが怖かった。
彼は死んだ訳では無い。ある日、気づけば彼は僕の傍にいなかった。誰に問いただしても彼の事を奴らは覚えていなかった。
ただただ恐ろしかった。寂しかった。虚しかったのだ。いつも僕のそばで笑っている君は何処にもいなかったことがただ...僕の居場所が無くなったような、心にぽっかりと穴が空いて、今にも彼以外のもので埋めようとする僕の心臓が痛かったのだ。
彼らは僕が彼の顔、声、名前も覚えてないというのに、僕に『彼はきっとどこかにいる』と言ってきた。いや、僕が僕に言い聞かせたのだ。やがて僕は大人になった。心にぽっかりと穴を開かせたまま。僕は仕事に熱中した。この穴を誤魔化すかのように。彼女も作った。この穴を埋めてくれるのでは?と期待を込めて。でも上手く行きはしなかった。結局彼じゃないとダメだったのだ。ずっとずっと探してるのは他でもない思い出の中でいつも隣に寄り添ってくれる彼だと。そして僕は未だ彼はきっとどこかにいると言う期待を捨てた。

僕が生きる意味はなんなのか。
僕ににはわからなくなった。
人を笑顔にしたいから?
笑顔を人に届けるため?
小さい頃の夢はなんだったのか
警察官?花屋さん?社長?
全部全部違う。

僕が生きる意味、それは彼を笑顔にするため。
小さい頃の夢、それは彼のそばに寄り添いずっと支え合っていくことだった。
そうでなくとも彼が幸せになってくれれば...

それだけでよかったのだ。

僕にはもう生きる意味も、存在し続ける意味もないのだと、彼はいないのだと思った。

呼吸が苦しくなってきた。
水に溺れて死にそうな僕を見たら彼はきっと急いで助けに来るだろう。彼はそ言うやつだった。

バシャバシャと誰かが近づいて来る音が聞こえる。

あぁ、誰かが助けに来たのか。

僕は誰かに持ち上げられ陸へと向かってるようだ。

体の感覚がほぼなくなってきた頃だろうか、少しの聴覚と視覚だけが残っている。

うっすらと目を開けると、彼と同じ茶色い髪をと思わしきものが見えた。匂いも雰囲気も彼と似たようなものがあった。
あはは...なんでこんな時に限って思い出すのかな彼の顔を、声を、匂いを、雰囲気を、そして名前を。

彼との思い出だけが僕の頭の中をよぎってく。走馬灯ってやつか。

「■■!!:(<'?,_!!!!、,)....!!」

よく聞こえないが慌てた声が彼のように感じた。よく似たもんだ。


あぁ、最後に...彼に伝えたいこと...まだ言ってなかなったなぁ。

僕は最後の力を振り絞って、目の前の彼に触れ、声を発する。

「ずっと...お前のことを...探した...すき...あい..してる...」

それが彼でなくとも、伝えなきゃ行けないような気がした。後悔したくはなかった。

そこで僕の視界は黒く染まりきって、力尽きた。

あぁ、もう満足だ。これでゆっくりとあの世へ行ける。








ふと声が聞こえた

「...い帰りしてお前にあいに行こうと思っても居ないし、10年探してやっと見つけたと思ったら死ぬ寸前だし!!何俺を置いて死のうとしてんだ馬鹿野郎!!絶対許さない!!ずっと探してたのは俺だつぅの!!好きなのも、愛してるのも俺もだよ!!くそ!!絶対お前のことを死なせねぇから...もし、この術がこの世界で通用したら...ぜってぇお前のことを離さねぇから、覚悟しとけよバカ!!」

あぁ、きっとこれは彼だろう。そうか彼も僕を探してくれていたのか、好きなのか...そう思うと僕は死んだはずなのに嬉しさが込み上げてくる。もし...もう一度彼に会えるのなら、好きだと彼の目を見つめて言いたい。

そこで僕の記憶はプツリと途切れた。

次に目を覚ましたのは病室だった。

あぁ、僕は生きていたのか...

僕は手を閉じたり開いたりしてちゃんと生きてるか確認する

あぁ、これでやっと会える。
僕が嬉しさを噛みしめてると扉が乱暴に開く音が聞こえた。

僕は振り向くとそこに居たのは、ボサボサの茶髪、鋭い瞳、乱暴そう雰囲気をまとう...息を切らした彼だった。

「...ぁあっ」

僕はあまりの嬉しさに声を漏らしてしまう。
10年間ずっと探していた彼がいるのだから、無理もない。

彼は僕を見ると安心したように、足を崩した。

「あぁ...■■が生きてる....」

彼は思い立ったように、即座に立ち上がり僕に向かってドスンっドスンっと効果音が出そうな感じで来た。僕は彼がいる事が嬉しいあまり直感してるが、彼は恐る恐ると言った感じで僕の頬に触れた。

それだけで心に空いた穴はすぐに塞がっていったように感じた。僕は思いの外、涙が溢れてしまった

あぁ、彼はいたのだと実感した。
僕は思いがけず「好きだ」と声に出してしまったが、その感情は抑えることを知らないらしくずっと「好きだ」と僕の口は言ってる。
僕は彼の腰に腕をまわし抱き締めた。そんな僕を彼は撫でてくれた












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はじめまして「ARIA」と申します。
初めてBLを書いたんですが、楽しんでいただけたでしょうか???
個人的には『僕』の死で物語を締めようと思ってましたが、書き始めると止まらなくなってしまい、『僕』が『彼』を抱きしめて終わるという感じにさせてしまいましたが、ハッピーエンドにできて私はハッピーエンド何より!!と思っております。
ちなみに、『僕』が『彼』を見つけられなかったのは『彼』のいないパラレルワールドに10年間居たからということになっていて、『彼』がとある術?を使えるのは『彼』が異世界経験者だからです。
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