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phase1 三章 第十一回イベント

二十九話 驕りの代償(1)

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次の日、『スペースウォーリャーズ』にログインした俺と峰岡と楓はユカにミドリの場所を聞き、そこへ向かうことにした。

有栖川は用事があるといってログインもせずに帰ってしまった。

「ユカさんはフューラン基地に向かえって言ってたけど、、、、、」

《バカヤロウ!後ろについてるぞ!》

《援護してくれ!》

無線から怒号が飛び交う。

「戦争やってね?」

「俺たちゃ傭兵ってか」

ミネーが苦笑いして言う。

「なんでボク達に頼むんだろうね、プライマルクランなんて腐るほどプレイヤーがいるだろうに」

「さあな、色々事情があるんだろ」

三機のエリアルアーマードスーツが戦火煌めくフューラン基地に接近する。   

「あのー、ミドリさんはいますかー?」

俺は戦場に向けて問いかけた。

《あ?誰だてめえら!》

すぐに怒鳴り声が返ってきた。

「ピースコンパスの」

《リーダーが言ってた奴らか!頼む、手伝ってくれ!》

「わ、分かりました」

ミドリのあまりの勢いに少々尻込みしながら戦闘態勢に入る。

「エリアルヘロン、交戦」

「エリアルシュトレイン、交戦」

「エリアルゴースト、交戦」

《俺とユート、カジノの識別信号を送った!俺たち三人以外は全部敵だ!》

ミドリから指示が飛ぶ。

「分かった!」

敵のアーマードスーツから通信が入る。

「ゼ、ゼウス、敵の増援が来たよ」

「落ち着けよ、ショウタ。こっちにはバーストマグナムとビットンがあるんだぞ」

「そうだぞ、ショウタ。俺たち『サイキョースコードロン』は最強なんだぜ」

「どうせ雑魚だろ、行くぞー!」

ミドリ達と敵対していたプレイヤー達の声はまだ声変わりしきっていないようだ。

オープンチャンネルなのでその会話はミドリ達に筒抜けだった。

《ちっ、ガキども、、、、、!》

ミドリが苛立ちを募らせる。

「この子達、中学生ぐらいか?」

ミネーが切り結びながら呟く。

《くそっ!》
プライマルクランのアーマードスーツがやられたようだ。

《ユートがやられた!戦力差は歴然だ!一旦退こう》

カジノが撤退を促す。

『ちっ、アーマードスーツだけならまだしもコイツら、ビットンやらバーストマグナムまで使ってきやがる。つくづく忌々しい兵器だぜ、コイツらは』

《おい、ピースコンパス、頑張っているところ悪いが態勢を立て直したい。撤退するぞ!》

ミドリが後退する。

「え!ちょ、ちょっと!」

俺たちも慌てて後を追う。

《へへー!ざまーみろ!》

《ザーコザーコ!二度と来るんじゃねーぞ!》

子供達の煽り文句が耳に障る。

「なんなんだ?アイツら」

ミネーが困惑する。

「あんな若い子達珍しいねー」

ヴァリュートも少々驚いたようだ。

《話は船に着いてからだ》

ミドリが吐き捨てるように言う。

⭐️⭐️⭐️

俺たちはミドリに従ってプライマルの戦艦に着艦させてもらった。

すぐにコックピットから出る。

「さっきはすまなかったな、怒鳴っちまって」

「いやいや、大丈夫です。ところで、あの子達はなんですか?」

「アイツらはなぁ、つい昨日襲撃を仕掛けてきたんだ。素性も分からん。『サイキョースコードロン』とかほざいてたから大方中学に上がりたてのガキだろうが」

ミドリがため息をつく。

「さっきの奴らはビットンやらバーストマグナムに物言わせてるだけで素体はそこまでの脅威じゃない」

「んじゃどうして攻めあぐねてるの?」

ヴァリュートが尋ねる。

「単純な人員不足、要塞の防衛設備、ガキどものリーダー格三人。これが攻めあぐねてる理由だ」

「人員不足って、カガリさんに言えばなんとかなるでしょ?」

ヴァリュートの至極当然な指摘を受けたミドリはバツが悪そうに俯く。

「いや、俺たちだけで大丈夫だって言っちまったから、、、、、」

「、、、、、頼るに頼れないのね、自分でそんなこと言った手前」

「リーダーは分かってたんだろう。俺たちが攻めあぐねるだろうってな。お前達を紹介という形でここに送り込んだのもリーダーの気遣いだったのかもしれんな」

ミドリにもプライドってやつがあるんだろう。

カガリはそれを傷つけないようにプライマルクランの増援じゃなく、第三者の俺たちを向かわせたんだろう。

優しくて強くて気遣い出来るとかどんな聖人だよあの人。

「話を戻すぞ。防衛設備の件だが、こちらはもういい。基地の主導権を握らなければどうにもならんからな」

「それじゃ残りは、、、、、」

ミドリが俺の言葉を引き継ぐ。

「リーダー格三人だ。コイツらは腕がいい。フューラン基地を返してほしければそいつら三人を倒せ、とかほざきやがる。ガキの戯言に付き合ってる暇なんてないから昨日と今日奇襲を仕掛けたんだが、、、、、この有様だ」

「なるほどね、とりあえずピーチクパーチクうるさい取り巻き共を先に潰しちゃいましょう。リーダー格は出てきた時点でボク達三人が対処するから」

「分かった。装備は好きなように選んでくれ」

ミドリがすぐに同意する。

よほど怨みが募っているのだろうか。

「ノータイムでオッケー出したぞ」

「アイツら相当煽ったんだろうな」

自機に乗り込むミドリを眺めながら俺とミネーが囁き合う。

「あの子達中学生ぐらいでしょ?バッドマナーはイケナイってこと、しっかり叩き込んであげないとね」

ヴァリュートが笑いながらエリアルゴーストへ向かう。

「ま、黒蛇ソロで倒したお前がいるし負けんだろ」

ミネーは俺の肩をポンポンと叩くとエリアルシュトレインに乗り込んだ。

「さて、俺も頑張るか」

エリアルヘロンのコックピットに入り、操縦席に座る。

ハッチが閉まる。

⭐️⭐️⭐️

フューラン基地では『サイキョースコードロン』の面々が二度の勝利に大騒ぎしていた。

アーマードスーツがダンスを踊ったりしていて中々滑稽である。

《プライマルクランに二回も勝ったんだぜ、俺たち》

《大したことねーじゃん!》

《今度は俺たちから仕掛けに行こうぜ!》

甲高い声がピーピー飛び交う。

《ねえ、ゴッド様達はいつ来るの?》

《あと十分ぐらいだと思うよ》

《ふーん。あ、レーダーに敵を捉えた!》

《また来た!カモだカモ!》

サイキョースコードロンのメンバー達が突撃していく。

⭐️⭐️⭐️

「見て、真っ直ぐ突っ込んでくるよ」

ヴァリュートが笑いながらフルチャージバーストマグナムをぶっ放す。

バギュゥゥゥゥン!!

《きゃー!》

《うわー!》

相変わらずオープンチャンネルなので悲鳴が聞こえてくる。

「今ので五機は墜としたよ」

ヴァリュートが呆れる。

「バーストマグナム強すぎ」

《よし、ビットンに気を付けろよ!》

ミドリが忠告する。

「了解!」

俺とミネーはこちらに向かってくるアーマードスーツに全速力で突っ込んだ。

《うわー!ぶつかる!》

誰かがそう叫び、全員が散開した。

「よしやるぞ」

ミネーと俺は背中合わせになり、ライフルで、敵を各個撃破していった。

《ビットンでもくらえー!》

撃ち損じたアーマードスーツからビットンが射出される。

《ビットンが来てるぞ!数が多い!距離を取れ!》

ミドリが焦って忠告する。

が、しかし。

エリアルヘロンはビットンから繰り出される激しい攻撃を難なく避けきり、エナジーブレードで一つずつ切り裂いて始末していく。

これにはミドリも唖然とする他ない。

ミネーもハナサギほどではないが、これといった被弾もなくビットンの処理に成功した。

「凄いでしょ、ボクのハナサギ君は」

ヴァリュートが自慢げにミドリに言い放つ。

《ハナサギ、、、、、ってあの!?》

「うん、もしかして知らなかった?」

《ああ、もう一人のシンギュラリティ、、、、、!》

ミドリが呆然とする。

襲いくるビットンを全て処理したエリアルヘロンはビットンを射出した主に狙いを定めた。

《チーターだ!チーターがいるぞ!逃げろ!》

まさかビットンがやられるとは思っていなかったのだろうか、驚きと恐怖の混じった、ホラーゲームでしか聞かない悲鳴が聞こえてくる。

無論、エリアルヘロンが見逃すわけもなく、一瞬でやられてしまった。

《ハナサギもすごいが、シュトレインの方もなかなか凄いな》

ミドリはもう褒めることしか出来なくなっていた。

その時、また通信が入った。

《なんだよ、みんなやられちゃったのかよー》

《使えない奴らだな》

《弱すぎぃー!マジありえなーい》

基地の方から三機のアーマードスーツが出撃してきたのだ。

「これまたガキ臭い奴らが来たな」

「コイツらがリーダー格か」

「さっさと潰して基地を取り返そっか」

エリアルヘロン、エリアルシュトレイン、エリアルゴーストが並ぶ。

《勝てるのか?》

ミドリが心配そうに尋ねるが、ヴァリュートたちが一蹴する。

「なに言ってんの?ボク達はあんなのに負けないよ」

「ああ、完封する」

「黒蛇より断然マシだよ。心配しなくてもフューラン基地は取り返すよ」
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