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終章 魔王討伐へ

五十二話 炎と氷(2)

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レイピアをたった一振。

それだけで大聖堂を埋め尽くすほどの氷が発生する。

『攻撃範囲バグってるでしょ!剥き出しの左腕が冷える~』

アリスも負けじと剣を振る。

炎が氷を溶かし尽くす。

聖堂の床がびしょ濡れになる。

『身体強化魔法がスキルにも適応されてる。私の『絶対高温』がこいつと張り合えるぐらいに底上げされてるんだ』

「炎天斬!」

アリスがカマルの間合いに入り込む。

「鈍い」

カマルがアリスの剣を弾く。

「お前の真似をしてやろう、『氷之輪舞曲アイスロンド』」

全てを凍らせる冷気が輪となってアリスに襲いかかる。

「くっ」

アリスが後ろに飛び退く。

カマルが追従する。

大聖堂の中を赤と青の軌跡が駆け巡る。

「スピードだけはいっちょまえだな」

カマルがアリスと打ち合う。

「褒めるところはそこだけかしら!」

アリスが技を繰り出す。

「陽炎放蕩」

緩急のある剣戟をカマルが見極める。

『太刀筋が読みにくい……二本、三本と増えていく』

カマルの後ろにも炎がゆらめきだす。

『やはりこいつは……』

カマルが床を浸す水を氷に変化させてアリスを攻撃する。

『マジか、こいつやけくそになったか』

氷を切り裂きながら後ろに跳びすさる。

ありとあらゆる方向から氷が迫る。

「鑪!」

炎が床を嘗める。

「水を蒸発させたか……だが、それは悪手だなぁ!」

カマルが飛び上がる。

アリスが警戒する。

カマルが水蒸気を凍らせて氷柱を造り出す。

「アイスフォール!」

氷柱がアリスの元に降り注ぐ。

「うおお!」

アリスが気合いで全部弾く。

「気炎万丈!」

今度はアリスが飛び上がってカマルに斬りかかる。

「ふん」

カマルが水蒸気を凍らせて足場を造って回避する。

足場は炎の熱ですぐに溶けてしまう。

「はあああああ!」

アリスが剣を振り下ろす。

剣の切っ先がカマルの胸をかする。

「私はかつて炎を使う転生者と戦ったことがある。十五年ほど前だな」

カマルがレイピアを構える。

『突きが来る』

アリスが防御の構えをとる。

アリスは何も見えていなかったのだ。

カマルのレイピアは既にアリスの心臓を貫いていた。

「奴の姿がお前に重なる。娘かどうかは知らんが、そいつがつけた傷は今も俺を焼き続けている。この恨み、今晴らさせてもらったぞ」

「あ、か……」

アリスが下に落ちていく。

身体が凍り付いていく。

『炎を使う転生者としては弱かった……いや、あんなもの、そうそう生まれてなるものか』

カマルがアリスを氷像と化したアリスを見下ろす。

『お前は成れなかったようだな、《爆炎の権化ノリオ・アヤメヤ》に』

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