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三章 人魔戦線

四十話 決着

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「あんたは『矢』を置いていった。私が『矢』に選ばれた人間であるにも関わらず」

レグルスが拳を構える。

「『矢』が私をここまで導いてくれた」

フュートレックが驚愕する。

「こいつから矢を取り出した時、瀕死状態にしたはず……まさか、全ての矢を取り込んで復活したというのか!?」

「ねぇ教えて、この『矢』はなんなの?」

「それは……ノリオのスキルよ」

フュートレックから衝撃の事実が放たれる。

「どう言うことだ?」

アスフェンが困惑する。

「ノリオのスキルを『矢』に変換したものよ。彼の六つのスキルを六本の矢に変換したのよ」

『そういえばノリオのスキルに精神の具現化って奴があるって本人が言ってたな。ジャガウォックはそのスキルによって顕現されたのか』

アスフェンが後ろに下がる。

「能力の把握は?」

レグルスが頷く。

「スキルは混ざって一つになってます。『矢』が教えてくれた」

ジャガウォックが顕現する。

「……いっそ二人で天国に行くのも……」

物騒なことを言い出したフュートレックをアスフェンとレグルスが警戒する。

『こいつはすべての矢を取り込んだ現代のサルプルモギだ。『全事象の上書き』を会得している可能性がある。なら最大火力でこの街ごと消し飛ばすほかない!』

フュートレックが自身の魔力、周りに存在する魔力、死体を変換した魔力、ありとあらゆる魔力を練り上げる。

「アリス、あなたの技を使ってあげるわ」

フュートレックがわざわざアリスと同じ剣を精製する。

「えっと、咆哮流星爆砲だっけ」

絶大な威力の魔砲が放たれる瞬間、レグルスがスキルを発動した。
女神之時間ディナスタイム!」

時間が停止する。

たった三秒。

レグルスがアスフェンをフュートレックのもとにぶん投げる。

そして自分も走り出す。

時間が動き出す。

アスフェンが驚く。

「どーなってんだ!?」

しかし直ぐに適応する。

「一人で地獄に落ちてろよ!」

アスフェンが剣をへし折る。

しかし魔力は残ったままだ。

『なっ、嘘だろ!』

アスフェンが焦る。

「私は五百年生きてる魔術師よ、剣に込めなくたって打てるわ……」

ジャガウォックがフュートレックをぶん殴る。

「ぐはぁ!」

フュートレックがぶっ飛ぶ。

『アスフェンに追い付く速度を出したのか?あんなになよなよしていた獣人が?』

フュートレックが歯を食い縛る。

「良く追い付いたな」

アスフェンが感心する。

「少し種があるんですよ。アイツが気付く前に倒したいです」

「おう、俺もそのつもりだ」

二人が構える。

『どうせ魔力を介した瞬間移動だろう。反魔法結界アンチマジックエリアで完封できる』

フュートレックが二人の足元に反魔法結界を展開する。

『二人とも気付いていないわね』

フュートレックがほくそえむ。

アスフェンとレグルスが動く。

『アスフェンの攻撃でも腹を硬質化させれば

ギリギリ耐えられるはず』

アスフェンの拳が鳩尾に炸裂する。

「ガハッ!」

アスフェンの隣にはレグルスがいる。

『なぜ!あり得ない!』

衝撃波がフュートレックの身体を貫く。

血が吹き出す。

フュートレックが吹っ飛ばされてビルに激突する。

「私の能力は時間停止よ。読み違えたわね」

レグルスが憐れみながら言う。

「く、はあ、はあ、アスフェン……」

フュートレックが近付いてくるアスフェンを見る。

「世代交代は……うまくいってるみたいね……ゴフッ」

フュートレックが血を吐く。

アスフェンが身を屈め、フュートレックの耳元で何かを囁いた。

フュートレックの目から涙が溢れだす

フュートレックが大泣きする。

「ごめんなさい、ごめんなさい……!どうしてそんな優しいこと……うわあぁぁん!」

アスフェンがフュートレックの頭を撫でる。

フュートレックの意識が遠のいていく。

『バイバイ、アスフェン。まだこっちに来ちゃ駄目よ』

フュートレックの身体から金色の煙が天に向かって立ち上る。

「成仏したのか……あとは魔王だけだな」

パンタロンがチュンチュン達の手当をしながら金色の煙を眺める。

「俺達が魔王を倒す。ノリオと一緒に観戦しといてくれ」

アスフェンが金色の煙に語りかける。

『期待してるわ』

フュートレックの声が聞こえたような気がした。

日は暮れかかっていた。

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