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三章 人魔戦線

三十三話 カンティーナ事変(8)

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アンデラートの前にいくつも車両が止まり、避難民がワラワラと降りてくる。

「さっきの炎見たか?」

バーミックスがユスナに話しかける。

「うん……何が暴れてるのかしら」

ユスナが不安そうに立ち上る煙を眺める。

「魔人同士の戦闘なんて教科書でしか見たことないぞ」

「生徒達も怯えているわ。上級生に手伝ってもらいたいことが山ほどあるのに……」

「教員がフルで働いてこれだからな。『機甲兵団』はここの守りの要だ。手伝わせるわけにはいかんし……」

地面がグラリと揺れる。

「ひっ!」

ユスナが悲鳴を上げる。

避難民がパニックを引き起こす。

「落ち着いて!くそっ、次はなんだ!」

バーミックスが悪態をつく。


⭐⭐⭐

魔王とカマルの表情が険しくなる。

「……この気配」

「気付いたか、カマル」

魔王が首を鳴らす。

「先に俺の城に戻っていろ。残っているよな?」

「かなり破壊されていますが」

「ちっ、忌々しい勇者め」

「魔族一堂、あなた様の帰還を心待ちにしておりますので」

「うむ、ゆけ」

「はっ」

カマルが消える。

「……全く、地面を掘ってくるとは思わんぞ」

魔王が飛び上がる。

魔王の真下から真っ黒い化物が地面を突き破って飛び出してきた。

化物がドシンと着地して魔王の方を振り返る。

「こいつ……どこかで戦ったような……?」

魔王が目の前に仁王立ちしている黒い化物を見定める。

黒い化物が音もなく魔王に近付いて右手を振り上げる。

魔王が咄嗟に腕でガードする。

衝撃波が走り、地面がひび割れる。

『その剣は……!』

化物の手に握られている剣が淡く光る。

魔王が化物を蹴り飛ばす。

化物が建物に突っ込む。

『今の剣、強力な聖霊力を発していた。魔族特化の剣か、前の身体であったならばさっきの一撃で再起不能になっていたな』

魔王が構える。

化物が悠然と歩いてくる。

「『サルプルモギ』だったか?」

魔王が尋ねる。

化物は答えない。

『肝心の能力が思い出せんな……まあ良い』

魔王が指を払う。

「『ラオフー』」

三本の斬撃が化物を切り裂き、剣を破壊した。

しかし化物は何事も無かったかのように魔王に迫る。

「やるか!」

化物が拳を合わせて振り下ろす。

魔王は拳と身体の間をすり抜けた。

そして化物の拳を軸に逆立ちしながら回し蹴りを叩き込む。

化物がぶっ飛ぶ。

化物が吹っ飛びながら身体を膨らます。

「ふっ、上手い」

魔王が笑う。

「ゴオオンン!」

化物が空気を爆発的な勢いで吐き出す。

魔王も吹っ飛ばされる。

ビルの窓に着地した魔王に化物が追撃を仕掛ける。

化物のパンチをバク転しながら避けて上に登っていく。

化物も追いかける。

魔王が飛び上がって掌から縄を引きずり出す。

「ふっ」

魔王を追って飛び上がった化物に縄を巻き付けて振り回す。

それを別のビルにぶつけて『ラオフー

で切り裂く。

ビルに爪痕のような傷がつく。

「やったか?」

魔王が様子を伺う。

その時、鐘の鳴り響く音が響き渡った。

「……何かしたな?」

壁に空いた穴から化物が出てくる。

傷一つついていない。

「思ったより厄介そうだな」

魔王が愉しそうに言う。

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