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三章 人魔戦線
三十一話 カンティーナ事変(6)-天誅
しおりを挟む――その後、七歩は狼月会に引き取られることとなった。
朧の番として、将来の伴侶として……。
そして3か月後の夜、二度目の発情期を迎えそうになったのだった。
「αの野郎どもは七歩さんに近づくな! あてられねえようマスクしろ!!」
「――うっす!」
αの舎弟および若衆たちに黒田はこの時のために常備するよう言って置いたマスクをつけるよう言い放った。朧以外のα性の若衆たちは慌ててマスクを常備する。
「βだから欲情はしねえけどすげえにおいッスね、俺でも分かります」
「あぁ、あてられたらひとたまりもなかったろうな」
シゲも七歩が発情期を起こしてフェロモンの強烈さに圧倒されそうだと言うと、黒田もそれに同意する。すると、自分たちの前に狼月会会長である朧の父が姿を現した。
「会長、騒がしくしてすいやせん」
「七歩さんが発情期で、今……若が部屋に向かっています」
「そうかい。」
黒田が騒がしくしてしまって文句を言いに来たと思い、先に詫びた。
そして現状をシゲが狼月会会長に報告する。
「なぁに……めでたい日は少しぐらい騒がしい方がいいのよ」
「アンタ、あんまうろつかない方がいいよ。マスクしてないんだから」
朧の義母が、七歩のフェロモンが凄いからあまりうろつかない方がいいと夫である狼月会会長に忠告してきた。「そうだな」と会長は忠告を了承すると……、
「ただ、てめえらも警察にガサ入れされるような騒ぎは起こすんじゃねえぞ?」
「――うっす!」
「承知してます。」
警察も黙ってはいないような騒ぎになるような事はするなと言いつけると、黒田とシゲはそれに答える。
「準備してきやした、後は若と七歩さんが番成立まで交代でフェロモンにあてられたα性の奴らが邪魔しない様見張るだけです」
ほかのβの若衆が、七歩と朧がいつでも情事を行える準備をしてきたと黒田たちに報告する。
それを了承し、黒田たちは七歩がいる部屋を見張った。
朧が渡り廊下を歩いて行き、朧が七歩の部屋にたどり着くと……、
「七歩さんはこちらに……」
「番の儀の準備は整ってます」
「――ご苦労。」
七歩がこの部屋にいると教え、番成立の準備も出来ていると話した。
――スパン
障子をあけると、発情期にもだえ苦しむ七歩の姿があった。
首輪はもうすでに取り外してある……。
障子を開けた途端、七歩のフェロモンが朧を誘う。部屋に入ると後ろ手ですぐ障子を閉める。
(七歩の服が浅葱色の長襦袢に差し替えてやがる……シゲだな)
七歩の服装が変わっていたのに気づき、シゲが雰囲気を持たせるために七歩に着せたのだと分かった。
もだえ苦しむ七歩の姿と長襦袢が映えていて扇情的な姿に思わず喉が鳴った。
「おぼろ、さ……」
「七歩……」
七歩が布団の上で自分に手を伸ばしてせがんでくる、朧は我慢できずに七歩を押し倒した。
今まで番探しなんてしていなかった為、発情期が来てる状態でΩと肌を重ねること自体初めてだった、そのうえ七歩とちゃんと肌を重ねるのも初めてだった。
最初は過去のトラウマもあった為、七歩の傷を抉らない様にしていたのだが抑えが利かなくなりそうだ。
「んっ、ふぁ……あっ」
キス行為をしただけで止まらなくなる、そして七歩の下半身に触れると……
「あっ、いや……」
七歩は叫んでそう言った、朧はどこか庇護欲をそそる愛らしさにごくりと喉を鳴らす。
「大丈夫だ、七歩……俺はあいつらじゃない」
そう言って七歩に言い聞かせる、少しでも七歩の恐怖が拭えるように……。
七歩の下半身に顔を埋めると朧は七歩の窄まりを見つけ、そこを愛撫し始めた。
ピチャ……れろれろ
「あっ、そんな、ところ……舐めたら!」
七歩の身体がびくびく揺れる、発情期も来ているせいか七歩の身体が過敏に反応し朧もほくそ笑む。
「やっ、やぁ……、へん、しびれ、そう」
――びくびく!
愛撫されるたびに七歩の身体は、過敏に反応して体が跳ね上がる。七歩の陰部は愛撫に反応して濡れていた。フェロモンの効果なのか理性が抑えられなくなりそうだ。
「あぁ、すごい……ぜんぶもっていかれそうだ」
そう呟くと朧は、着ていた服を脱いで十分に濡れた七歩の秘部に当てようとした……その瞬間、七歩の身体が強張る。
「あっ、そこ……」
本番に入ろうとした瞬間、あの高校生から受けた恥辱を思い出してしまったようだ。
一瞬で七歩の顔が快楽に悶える顔から恐怖の顔になる。
「七歩、幸生サンの分までお前を守ると決めた……目の前にいるのは誰だ? 言ってみろ」
暗示をかけるように朧は七歩に訴える。
その言葉に七歩は「朧さん」と愛しそうに答える、そのその言葉に朧は笑みを浮かべると……、
「止めとくか?」
とわざと聞いた。わざと聞いたと分かっていた七歩は……、
首を横に振った後、七歩は朧に「来て」と言った。
その言葉で一気に爆発したように朧はゴムの封を一気に破り、装着すると七歩の秘部に押し当てて、陰茎を挿入したのだった。
――ズププッ
「あぁ――っ!!」
七歩の絶叫が部屋に響き渡る、七歩のナカに朧が侵入を果たしたのだった。
「あぁ、おなか……くるし……」
朧の陰茎は大きくて、お腹が破裂してしまうのではないかと思うくらいだった。
――ぞくっ
七歩の言葉に煽られた朧は腰を振った。
七歩のナカは気持ちよくてすべて持って行かれそうだった、朧は遠慮なしに腰を振る。
「すげ……屋敷にいた時は、抑制剤飲んでいたから理性聞いたけど……」
抑制剤がなければ本当に腰が止まらない、Ωのフェロモンの強烈さが良く分かる。
――くっそ、これじゃあまるで犬じゃねえかよ!
そう思いながらも朧は突き上げる腰を止めることはできない。
「あっ、そこ……ひっ、あっ……ひぁ」
「ななほ……、ななほ……」
「あっ、ひゃっ……ひぅ、そこ……いい」
七歩の喘ぎ声が部屋の中に響き渡る、七歩もみっともなく喘ぐ自分の声に戸惑いを隠せていないようだった。華奢で白い身体に朧はキスマークをつけていく。
奥を突かれる感覚に、七歩は朧に抱きついて「そこ、もっと……」とねだり始める。
――そうだ、番の証……残さなきゃ……
番の印を残すのを忘れていた朧は、七歩の首元に顔を埋め歯を立て始める。
「七歩、これでお前は……俺の“番”だ!」
――がりっ!!
そう言って七歩の首に噛みついて、番の証を残した。
「あぁああ――っ!」
噛まれた痛みと奥を突き上げられた快感に、七歩はまた甲高い絶叫をあげたのだった……。
「あぁ……七歩」
「つがい……せいりつしたの?」
「あぁ、成立だ……」
七歩の項にはくっきりと朧の歯形が残っている……。
二人が“番”だと成立した証だった、朧も七歩も嬉しそうに噛み跡をなぞった。
その頃、七歩のフェロモンに避難していたαの舎弟や幹部たちは……、
「においなくなりやしたね」
「番が成立したか……」
臭いがしなくなったのを証拠に、二人が番成立したということを察したのだった。
αの舎弟や幹部たちはようやくかと言わんばかりにマスクを取り始め、胸を撫で下ろした。
「くくくっ、ようやくか。七歩ちゃんも大変だったねぇ」
「アンタ、その辺にしなよ」
からかうように番成立したのを酒を煽りながら狼月会会長は喜ぶ、その様子に朧の義母は呆れてもう酒を止めるように忠告する。
もちろん、二人の行動を知っていたシゲと黒田も……、
「成立、したんですね」
「あぁ……」
二人が番成立したことに気付いていた。
二人は番が成立した後も何度も何度も肌を重ね合った、そして休憩が入った途端シゲが「失礼しやす」といい、飲み物をくれた。
Ωにあてられたαの射精はただでさえ、多量で長い……。
使用したゴムが部屋にそこらじゅうに散乱していた。
さすがにこの状況は恥ずかしかった……。
(義母さんに見られたらしめられるな……これ)
朧の義母は七歩をとても可愛がっている為、無理をさせたと言って立腹するだろうと朧は考える。
七歩は窓を開けて見える朧月を見ており、「きれい」と呟いていた。
「わるいな、遠慮が聞かなくてよ……」
詫びながら朧は七歩に飲み物を差し出した、そう詫びてくる七歩に朧は首を振った。
「てか、今更聞くなって話だけどよ……本当に俺でよかったのか?」
自分が番で本当に良かったのか朧は七歩に聞いて来た、七歩もそれに失笑すると「何を言ってるんですか」と言い……、
「朧さんは、僕の“運命の番”でしょ……? どんな困難が待ち受けていたって朧さんとなら乗り越えられる。そう信じてるから……」
自分たちならどんな運命が待ち受けていても乗り越えられる、あの屋敷から出られた自分たちなら二人でならどんなことが待ち受けていても必ず乗り越えられると信じていると七歩は言う。
その言葉に朧はふと笑うと……、
「そうだな、幸生サンとも……斑鳩とも約束したんだからな」
斑鳩に七歩を支えてあげてほしいと言われたため、幸生と斑鳩の死を無駄にしない為にも七歩を守ろうと朧は改めて思ったのだった。
「そうだ、今度……お前の親父さんと小夜人に番成立の報告するか?」
「! ……うん」
自分たちが番としての関係を持ったことを、大切な人たちが眠る墓に報告する提案を朧がすると、朧もその提案に乗った。
「小夜人に化けて出られたりしてな?」
「止めてよ、もう」
恐ろしげな冗談を言う朧に、七歩は呆れつつも朧に近づいてキスをした。
・
・
・
――数日後、七歩は朧とともに墓場で眠る詩音に番成立を報告しに言ったのだった。
「父さん……。この人なら間違いないって思う人と、番になったよ?」
七歩が手を合わせて詩音に、朧と番になったことを教えた。
「彼と会って、父さんの事色々知ったよ? それに朧さんがいたから白屋家とも決別できた、僕を父さんの二の舞にしない様に朧さんはいつも守ってくれたよ?」
何時だって朧は守ってくれたと、白屋家の呪われた因果から解放してくれたと七歩は報告する。
「お父さんが誰と番だったのかも知った……あの人を許すことは多分できないと思う」
「……」
先代当主が詩音にした仕打ちをおそらくずっと許せないと思うと、詩音の墓の前で言う七歩を朧は黙って見守っていた。
「僕ね、何で流伽兄さんたちと違うようになれたのか今漸くわかった気がするんだ。
幸生おじさんと……父さんが、いつも“愛”をくれたから。僕はそれを信じてる」
七歩は何故白屋家の血筋を引きながら、白屋家の者たちのようにならなかったのは二人が真っ直ぐに自分に愛情を注いでくれたおかげだと七歩は感謝していた。
「僕ね……Ωでよかったって今思えるんだ、今……すごく幸せだよ?」
「――!」
襲われた過去もあったせいで今まで自分がΩ性であることを良く思わなかったが、朧に出会ってそれが変わり、Ω性でよかったと詩音の墓の前で告げた。
それを聞いていた朧はふと笑い……、
「俺も……、七歩に出会えてよかったって思えるよ」
七歩がいなければ、小夜人を失った悲しみからずっと抜け出せなかったと朧は告げた。
「こう考えるとさ……“運命”って、数奇なものだね?」
「本当だな。」
そう言って二人は手を繋ぎながら詩音の墓を去って行った。
「今度、夜景がきれいな場所でも行こうか?」
「いいね。」
そう会話を弾ませながら二人は黒田たちが待つ車に向かって歩いて行く。
悲劇を生み、悪魔を生んだ最悪の屋敷に囚われ……数奇な運命に導かれて結ばれた二人。
絡み合う糸を手探りで探し、自分の指に結ばれた赤い糸を辿って二人はようやく巡り会えたのだ。
二人はきっとどんなことが待ち受けていたとしてもその運命に立ち向かうだろう……。
二人でなら……きっと、その試練を乗り越えられると信じて。
朧の番として、将来の伴侶として……。
そして3か月後の夜、二度目の発情期を迎えそうになったのだった。
「αの野郎どもは七歩さんに近づくな! あてられねえようマスクしろ!!」
「――うっす!」
αの舎弟および若衆たちに黒田はこの時のために常備するよう言って置いたマスクをつけるよう言い放った。朧以外のα性の若衆たちは慌ててマスクを常備する。
「βだから欲情はしねえけどすげえにおいッスね、俺でも分かります」
「あぁ、あてられたらひとたまりもなかったろうな」
シゲも七歩が発情期を起こしてフェロモンの強烈さに圧倒されそうだと言うと、黒田もそれに同意する。すると、自分たちの前に狼月会会長である朧の父が姿を現した。
「会長、騒がしくしてすいやせん」
「七歩さんが発情期で、今……若が部屋に向かっています」
「そうかい。」
黒田が騒がしくしてしまって文句を言いに来たと思い、先に詫びた。
そして現状をシゲが狼月会会長に報告する。
「なぁに……めでたい日は少しぐらい騒がしい方がいいのよ」
「アンタ、あんまうろつかない方がいいよ。マスクしてないんだから」
朧の義母が、七歩のフェロモンが凄いからあまりうろつかない方がいいと夫である狼月会会長に忠告してきた。「そうだな」と会長は忠告を了承すると……、
「ただ、てめえらも警察にガサ入れされるような騒ぎは起こすんじゃねえぞ?」
「――うっす!」
「承知してます。」
警察も黙ってはいないような騒ぎになるような事はするなと言いつけると、黒田とシゲはそれに答える。
「準備してきやした、後は若と七歩さんが番成立まで交代でフェロモンにあてられたα性の奴らが邪魔しない様見張るだけです」
ほかのβの若衆が、七歩と朧がいつでも情事を行える準備をしてきたと黒田たちに報告する。
それを了承し、黒田たちは七歩がいる部屋を見張った。
朧が渡り廊下を歩いて行き、朧が七歩の部屋にたどり着くと……、
「七歩さんはこちらに……」
「番の儀の準備は整ってます」
「――ご苦労。」
七歩がこの部屋にいると教え、番成立の準備も出来ていると話した。
――スパン
障子をあけると、発情期にもだえ苦しむ七歩の姿があった。
首輪はもうすでに取り外してある……。
障子を開けた途端、七歩のフェロモンが朧を誘う。部屋に入ると後ろ手ですぐ障子を閉める。
(七歩の服が浅葱色の長襦袢に差し替えてやがる……シゲだな)
七歩の服装が変わっていたのに気づき、シゲが雰囲気を持たせるために七歩に着せたのだと分かった。
もだえ苦しむ七歩の姿と長襦袢が映えていて扇情的な姿に思わず喉が鳴った。
「おぼろ、さ……」
「七歩……」
七歩が布団の上で自分に手を伸ばしてせがんでくる、朧は我慢できずに七歩を押し倒した。
今まで番探しなんてしていなかった為、発情期が来てる状態でΩと肌を重ねること自体初めてだった、そのうえ七歩とちゃんと肌を重ねるのも初めてだった。
最初は過去のトラウマもあった為、七歩の傷を抉らない様にしていたのだが抑えが利かなくなりそうだ。
「んっ、ふぁ……あっ」
キス行為をしただけで止まらなくなる、そして七歩の下半身に触れると……
「あっ、いや……」
七歩は叫んでそう言った、朧はどこか庇護欲をそそる愛らしさにごくりと喉を鳴らす。
「大丈夫だ、七歩……俺はあいつらじゃない」
そう言って七歩に言い聞かせる、少しでも七歩の恐怖が拭えるように……。
七歩の下半身に顔を埋めると朧は七歩の窄まりを見つけ、そこを愛撫し始めた。
ピチャ……れろれろ
「あっ、そんな、ところ……舐めたら!」
七歩の身体がびくびく揺れる、発情期も来ているせいか七歩の身体が過敏に反応し朧もほくそ笑む。
「やっ、やぁ……、へん、しびれ、そう」
――びくびく!
愛撫されるたびに七歩の身体は、過敏に反応して体が跳ね上がる。七歩の陰部は愛撫に反応して濡れていた。フェロモンの効果なのか理性が抑えられなくなりそうだ。
「あぁ、すごい……ぜんぶもっていかれそうだ」
そう呟くと朧は、着ていた服を脱いで十分に濡れた七歩の秘部に当てようとした……その瞬間、七歩の身体が強張る。
「あっ、そこ……」
本番に入ろうとした瞬間、あの高校生から受けた恥辱を思い出してしまったようだ。
一瞬で七歩の顔が快楽に悶える顔から恐怖の顔になる。
「七歩、幸生サンの分までお前を守ると決めた……目の前にいるのは誰だ? 言ってみろ」
暗示をかけるように朧は七歩に訴える。
その言葉に七歩は「朧さん」と愛しそうに答える、そのその言葉に朧は笑みを浮かべると……、
「止めとくか?」
とわざと聞いた。わざと聞いたと分かっていた七歩は……、
首を横に振った後、七歩は朧に「来て」と言った。
その言葉で一気に爆発したように朧はゴムの封を一気に破り、装着すると七歩の秘部に押し当てて、陰茎を挿入したのだった。
――ズププッ
「あぁ――っ!!」
七歩の絶叫が部屋に響き渡る、七歩のナカに朧が侵入を果たしたのだった。
「あぁ、おなか……くるし……」
朧の陰茎は大きくて、お腹が破裂してしまうのではないかと思うくらいだった。
――ぞくっ
七歩の言葉に煽られた朧は腰を振った。
七歩のナカは気持ちよくてすべて持って行かれそうだった、朧は遠慮なしに腰を振る。
「すげ……屋敷にいた時は、抑制剤飲んでいたから理性聞いたけど……」
抑制剤がなければ本当に腰が止まらない、Ωのフェロモンの強烈さが良く分かる。
――くっそ、これじゃあまるで犬じゃねえかよ!
そう思いながらも朧は突き上げる腰を止めることはできない。
「あっ、そこ……ひっ、あっ……ひぁ」
「ななほ……、ななほ……」
「あっ、ひゃっ……ひぅ、そこ……いい」
七歩の喘ぎ声が部屋の中に響き渡る、七歩もみっともなく喘ぐ自分の声に戸惑いを隠せていないようだった。華奢で白い身体に朧はキスマークをつけていく。
奥を突かれる感覚に、七歩は朧に抱きついて「そこ、もっと……」とねだり始める。
――そうだ、番の証……残さなきゃ……
番の印を残すのを忘れていた朧は、七歩の首元に顔を埋め歯を立て始める。
「七歩、これでお前は……俺の“番”だ!」
――がりっ!!
そう言って七歩の首に噛みついて、番の証を残した。
「あぁああ――っ!」
噛まれた痛みと奥を突き上げられた快感に、七歩はまた甲高い絶叫をあげたのだった……。
「あぁ……七歩」
「つがい……せいりつしたの?」
「あぁ、成立だ……」
七歩の項にはくっきりと朧の歯形が残っている……。
二人が“番”だと成立した証だった、朧も七歩も嬉しそうに噛み跡をなぞった。
その頃、七歩のフェロモンに避難していたαの舎弟や幹部たちは……、
「においなくなりやしたね」
「番が成立したか……」
臭いがしなくなったのを証拠に、二人が番成立したということを察したのだった。
αの舎弟や幹部たちはようやくかと言わんばかりにマスクを取り始め、胸を撫で下ろした。
「くくくっ、ようやくか。七歩ちゃんも大変だったねぇ」
「アンタ、その辺にしなよ」
からかうように番成立したのを酒を煽りながら狼月会会長は喜ぶ、その様子に朧の義母は呆れてもう酒を止めるように忠告する。
もちろん、二人の行動を知っていたシゲと黒田も……、
「成立、したんですね」
「あぁ……」
二人が番成立したことに気付いていた。
二人は番が成立した後も何度も何度も肌を重ね合った、そして休憩が入った途端シゲが「失礼しやす」といい、飲み物をくれた。
Ωにあてられたαの射精はただでさえ、多量で長い……。
使用したゴムが部屋にそこらじゅうに散乱していた。
さすがにこの状況は恥ずかしかった……。
(義母さんに見られたらしめられるな……これ)
朧の義母は七歩をとても可愛がっている為、無理をさせたと言って立腹するだろうと朧は考える。
七歩は窓を開けて見える朧月を見ており、「きれい」と呟いていた。
「わるいな、遠慮が聞かなくてよ……」
詫びながら朧は七歩に飲み物を差し出した、そう詫びてくる七歩に朧は首を振った。
「てか、今更聞くなって話だけどよ……本当に俺でよかったのか?」
自分が番で本当に良かったのか朧は七歩に聞いて来た、七歩もそれに失笑すると「何を言ってるんですか」と言い……、
「朧さんは、僕の“運命の番”でしょ……? どんな困難が待ち受けていたって朧さんとなら乗り越えられる。そう信じてるから……」
自分たちならどんな運命が待ち受けていても乗り越えられる、あの屋敷から出られた自分たちなら二人でならどんなことが待ち受けていても必ず乗り越えられると信じていると七歩は言う。
その言葉に朧はふと笑うと……、
「そうだな、幸生サンとも……斑鳩とも約束したんだからな」
斑鳩に七歩を支えてあげてほしいと言われたため、幸生と斑鳩の死を無駄にしない為にも七歩を守ろうと朧は改めて思ったのだった。
「そうだ、今度……お前の親父さんと小夜人に番成立の報告するか?」
「! ……うん」
自分たちが番としての関係を持ったことを、大切な人たちが眠る墓に報告する提案を朧がすると、朧もその提案に乗った。
「小夜人に化けて出られたりしてな?」
「止めてよ、もう」
恐ろしげな冗談を言う朧に、七歩は呆れつつも朧に近づいてキスをした。
・
・
・
――数日後、七歩は朧とともに墓場で眠る詩音に番成立を報告しに言ったのだった。
「父さん……。この人なら間違いないって思う人と、番になったよ?」
七歩が手を合わせて詩音に、朧と番になったことを教えた。
「彼と会って、父さんの事色々知ったよ? それに朧さんがいたから白屋家とも決別できた、僕を父さんの二の舞にしない様に朧さんはいつも守ってくれたよ?」
何時だって朧は守ってくれたと、白屋家の呪われた因果から解放してくれたと七歩は報告する。
「お父さんが誰と番だったのかも知った……あの人を許すことは多分できないと思う」
「……」
先代当主が詩音にした仕打ちをおそらくずっと許せないと思うと、詩音の墓の前で言う七歩を朧は黙って見守っていた。
「僕ね、何で流伽兄さんたちと違うようになれたのか今漸くわかった気がするんだ。
幸生おじさんと……父さんが、いつも“愛”をくれたから。僕はそれを信じてる」
七歩は何故白屋家の血筋を引きながら、白屋家の者たちのようにならなかったのは二人が真っ直ぐに自分に愛情を注いでくれたおかげだと七歩は感謝していた。
「僕ね……Ωでよかったって今思えるんだ、今……すごく幸せだよ?」
「――!」
襲われた過去もあったせいで今まで自分がΩ性であることを良く思わなかったが、朧に出会ってそれが変わり、Ω性でよかったと詩音の墓の前で告げた。
それを聞いていた朧はふと笑い……、
「俺も……、七歩に出会えてよかったって思えるよ」
七歩がいなければ、小夜人を失った悲しみからずっと抜け出せなかったと朧は告げた。
「こう考えるとさ……“運命”って、数奇なものだね?」
「本当だな。」
そう言って二人は手を繋ぎながら詩音の墓を去って行った。
「今度、夜景がきれいな場所でも行こうか?」
「いいね。」
そう会話を弾ませながら二人は黒田たちが待つ車に向かって歩いて行く。
悲劇を生み、悪魔を生んだ最悪の屋敷に囚われ……数奇な運命に導かれて結ばれた二人。
絡み合う糸を手探りで探し、自分の指に結ばれた赤い糸を辿って二人はようやく巡り会えたのだ。
二人はきっとどんなことが待ち受けていたとしてもその運命に立ち向かうだろう……。
二人でなら……きっと、その試練を乗り越えられると信じて。
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「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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