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三章 人魔戦線

三十一話 カンティーナ事変(6)-天誅

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バーミックスは同僚とショッピングに行こうとしていた。

「ごめんね、バー君、遅れちゃった」

同僚のユスナ・ナルバリッジが走ってくる。

「大丈夫、俺も今来たとこだから」

二人が連れだってアンデラートを出る。

「水族館から行くか」

「うん!あそこでお寿司食べるんだ~」

「おいおい……」

その時

「バーミックスさん!あ、ユスナさんも!」

同じく同僚であるコリンズが慌てた様子でこちらに走ってくる。

「コリンズ君、何か焦ってるみたいね」

ユスナが怪訝そうに眺める。

「どうしたコリンズ」

「え!?聞いてないのか?」

「仕事残ってた?」

「違えよ!現在、カンティーナ東部でAランク相当の魔人二名が戦闘中なんだよ!」

「Aランクの魔人?『機甲兵団』なら難なく抑えられるはずだぞ」

『機甲兵団』とはオベリスクが有するパワードスーツを着用した重装備兵の部隊のことである。

パワードスーツの性能は凄まじく、相手の攻撃予測や飛行、海中曳航も可能となっている。

コリンズが首を横に振る。

「僕もそう思ったよ、でも『機甲兵団』はアンデラートに配備されるらしい。今、東部からの避難民も搬送されてるんだ!」

「それって、上層部が『機甲兵団』じゃ対処出来ないって判断したの?」

ユスナが綺麗な碧い目を見開く。

「というか、モンスターのクラスがAまでしかないのでAランクと称しているけど、あれはAランクなんかじゃない。Sランクを新しく創るべきだよ……」

ユスナが絶句する。

「『スターハイツ』は遠征に行っている。もし魔人の目的がこちらになった場合は……」

「私達教員が皆を守るのね」

コリンズが頷く。

「『機甲兵団』もいますし、倒せないにしろ、足止めすることは出来るだろう。『スターハイツ』に至急帰還するように連絡させてくるよ!」

コリンズが走り去る。

『デートなんてしてる場合じゃないな……』

バーミックスが苦笑いする。


⭐⭐⭐

ヨアンは宙を舞っていた。

『別格、この世の理を超越しているとしか思えない強さ……!』

「そんなものか!絡繰魔人!」

ケラスターゼの姿声をした魔王がヨアンを煽る。

「黙れ!」

ヨアンは反撃しようとしたが、魔王に襟元を掴まれ地面に放り投げられる。

「ぐあっ!」

ヨアンが地面を転がる。

直ぐに起き上がって宙に浮いているはずの魔王の元へ跳ぼうとする。

「あっ……」

直ぐに魔王の拳が振り下ろされ、ヨアンの頭を地面に叩きつけた。

地面がへこみ、ヨアンが一段下に落ちる。

「魔法を使わんのか?弱いやつと肉弾戦をしてもつまらん」

魔王の煽りがヨアンに火をつけた。

「うおおおお!」

魔核解放し、魔法を発動する。

「ボルケーノ・キャノン!」

火柱が魔王を飲み込もうとする。

魔王が避ける。

風の力を纏ったヨアンが超高速で追跡する。

「フハハ!そうだ!それで良い!」

魔王が嬉しそうに笑う。

ヨアンが印を組む。

地面から岩の二本の手が飛びだし、ビルを掴んだ。

「はああああ!」

岩の手がビルを動かし、宙に浮く魔王を押し潰した。

かのように思えたのだが。

ビルが豆腐のように切り裂かれ、ヨアンの立っている足場をも切断する。

「うぐっ!」

ヨアンが魔王の姿を見失う。

『しまった!どこだ……』

一瞬、魔王の姿を捉えた。

次の瞬間、ビルに叩き込まれる。

ドリブルの如く蹴りつけられ、空高く蹴りあげられる。

『絶対に越えることの出来ない、越えることを許さない壁、絶対に触れてはならない禁忌……!私は天誅を受けたのか』

「もう終わりか、絡繰!」

魔王がヨアンの顔を掴んで降下する。

そのままビルの最下層まで突っ込んで行く。

「ゲホォエ……」

ヨアンの口から血が滴り落ちる。

魔王が上を見る。

「陽の光が入っているな、お陰で貴様の無様で見るに耐えない惨状が良く見える」

侮蔑と愉悦の混じった声でヨアンを煽る。

「準備運動にもならん。本気を出せ雑魚」

魔王がヨアンの襟元を掴んで引き上げ、耳元で囁く。

『私が命じられたのは魔王の足止め。しかし、雑魚と煽られて、クローバー様を侮られて、殺さずにはおれまい!』


⭐⭐⭐

空が曇り出す。

ビルから炎が吹き出し、渦を巻く。

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