魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め

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二章 学園交流会編

二十話 モンスタースポット攻略

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交流会本番、外ではアヴェンドが開会宣言をしている。

クアルトが入場の準備をしているアスフェン達に話しかける。

「合図が出たらこの入口がダンジョンに変わる。ダンジョンというか、モンスタースポットみたいなものだね」

因みにモンスタースポットとは、ダンジョンの突き当たりにたまに出現するモンスターの巣窟である。

「あと、外から君たちのことは丸見えだから、ズルはしないでおくれよ?」

「ズルするまでもない」

アスフェンが答える。

「さあそろそろだ。健闘を祈るよ」

クアルトが立ち去る。

隣の通路にはシャルロッテ達がいる。

「さて、今回はどんなモンスターがいるのかな?」

「前みたいにやっちゃう?」

「四人あわせて三十匹、わけないな」

「試合開始と同時に身体強化かけるねー」

『スターハイツ』のメンバーは余裕綽々のようだ。

「それでは、ダンジョン攻略開始!」

アヴェンドの声が聞こえてくる。

入口が真っ黒になった。

「いくぞ、お前らァ!」

シャルロッテ達が走り込んでいく。

大歓声がこだまする。

「オオーっと、早速『スターハイツ』のメンバーが仕掛けたァ~!あ、実況はキュービックが担当するぜ、よろしくな!」

「きゃー!シャルロッテ様ー!」

「スターハイツ!スターハイツ!スターハイツ!」

会場に『スターハイツ』コールが沸き起こる。

「さあー順調な滑り出しを見せたスターハイツ!対するのは~、『名無しギルド』ー!ギルド名泥棒にとられちまったかぁー?」

会場が笑いに包まれる。

「あのじいさん、ギルド名がどうとか言ってなかったよね!?」

アリスがモンスターを斬りながら叫ぶ。

「おおー、さすがアリス・サイファー!見事な剣裁きですッ!」

「いちいちうるさいわッ!」

アリスが解説席にいるであろうキュービックに怒鳴る。

「ここのモンスター、B級以上は確実ね、レグルス、無理しないで!」

ケラスターゼがレグルスの援護に入る。

「ケラスターゼさん、ありがとう!」

レグルスがケラスターゼに飛びかかったモンスターをジャガウォックで殴り飛ばした。

『ジャガウォックが戦えている、大丈夫そうね……それで』

ケラスターゼがアスフェンを見る。

『何いじけてんだオッサン』

「オッサン動けー!」

「身体動かねーのかー!オッサン!」

「四十肩かー?オッサン!」

「……まだ若いし。二十七はまだ若者だし」

「喧しいわぁー!何を今さらー!」

ケラスターゼが突っ込む。

「ありゃ~、アスフェンが落ち込んじゃったぜー!あんまりオッサン言うのやめてやれー、ハゲちまうぜ?禿げたら爺さんだ、それクアルトじゃねーか!」

キュービックの実況でまた会場が笑いに包まれる。

「はは!傑作だな!」

シャルロッテがモンスターを切り刻みながら大笑いする。

さすがはA級冒険者、目の前に立つモンスターを軒並み屠っていく。

「シャルロッテ、ヒールかけるよー!」

「ありがと、メリッサ!」

メリッサと呼ばれた魔法使いがシャルロッテにヒールをかける。

シャルロッテの動きがさらに鋭くなる。

「『スターハイツ』がモンスターの半分をやっつけたぜー!名無しはまだ1/3ダァー!」

「一言余計だ!師匠、なにやってんですか!

おい!オッサン!」

アリスも無意識にアスフェンを罵倒する。

ケラスターゼが懸命に剣を振るう。

『このままじゃ確実に負ける!アスフェンのやる気を出す方法を……』

アリスが斬ったモンスターの腕が飛んでくる。

焼けた肉の匂いがする。

ケラスターゼがはっとする。

『ブリエッタさん、いるわよね』

ケラスターゼがアスフェンに怒鳴る。

「交流会で勝ったらステーキ好きなだけ奢ってやるってブリエッタさんが言ってたわよ!」


⭐⭐⭐

来賓席に座っていたブリエッタは面食らった。

突如、

「ほんとか、ブリエッター!」

とアスフェンに訪ねられたのだ。

『何がだ?何のこと?』

何のことだかさっぱりだが、彼が嬉しそうなのはわかる。

『乗ってやるか』

ブリエッタが息を吸い込む。

「ほんとだー!」

ブリエッタが叫び返す。


⭐⭐⭐

「何の話してんだ?」

シャルロッテが立ち止まる。

『静寂……キュービックですら黙りやがった』

モンスターが消える。

「な、終わった!?」

シャルロッテが驚く。

ダンジョンも消え、会場が露になる。

会場中の目が一人の男に注がれる。

肉包丁を握った血まみれの男に。

「あ……五秒、いや三秒か?全部のモンスターの首が飛んだ」

キュービックは自分が何を言っているのか分からないようだ。

「どうなってるんだ、あんなの人間にできてたまるかよ……実況できるようにしてくれよ」

「さっさと終わらせよう、ステーキが俺待ってる」

アスフェンがシャルロッテに話しかける。

来賓席にいるブリエッタが微笑む。

『さあ、どんどん技術を盗むといい。君たちの前にいる男はこの世の誰よりも強い男だ。そんなやつと闘える機会なんて滅多にないぞ』


⭐⭐⭐

次競技、決闘!

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