魔王を倒した勇者

大和煮の甘辛炒め

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一章 予兆編

十四話 魔人討伐~前編~

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月明かりに照らされた街道の上ををアスフェン達が天馬で駆ける。

「今夜だけで何人死ぬかな」

「全滅もあり得るぞ」

不穏な言葉をかわすアスフェンとイザベラに、アリスと一緒に馬に乗っているレグルスがビビり散らす。

「怖いこと言わないでください」

アリスのお腹をより強く締める。

「うげ、苦しいよ……」

遠くにボルギリッド邸が見える。

「見えた」

イザベラが双眼鏡のようなものを覗き込む。

「とんでもない魔力だ。どうやら魔人はいるようだな」



⭐⭐⭐

「おおー、なんかいっぱい来たなー」

ヨアンが目を凝らす。

「遊んであげちゃう……!きゃはは!」

ヨアンが指を天馬の群れにさす。

「ジャベリンシュート」

指先に魔方陣が現れ、魔弾が発射される。



⭐⭐⭐

「総員、攻撃が来る!展開しろ!」

イザベラが天馬を駆り、飛んできたヨアンの攻撃を避ける。

「とっくにこっちに気付いてたのか」

イザベラが剣を抜き払う。

「奴を討ち取るぞ!」

騎士達が同様に剣を抜き払う。

ヨアンの攻撃が着実に騎士団の数を減らしていく。

「団長、七十いたナイトが五十にまで減っています」

副官がイザベラの隣に並ぶ。

「アスフェンたちは無事のようだな、流石だ」

イザベラが攻撃を弾くアスフェンを見る。

アスフェンが怒鳴る。

「モタモタしてたらここで全滅するぞ!速度を上げる!」

アスフェンが天馬を駆り、猛スピードでボルギリッド邸、いや、そこから攻撃を仕掛けてくるヨアンの元に突っ込んでいく。

「お供します、師匠!」

アリスも着いていく。

「我々も行くぞ、遅れを取るな!」

イザベラたちも先を急ぐ。



⭐⭐⭐

「天馬ってあんなスピードでるんだ」

ヨアンが感心したように呟く。

空気が爆発するのが見えた。

「……!」

ヨアンの身体が一気に大人になる。

アスフェンが物凄い勢いで突っ込んできた。

アスフェンの刃とヨアンの刃がぶつかる。

『くっ、あそこからここまで一瞬で……どんな速度で飛んできたのよ!』

ヨアンがぶっ飛んで邸宅の中に叩き込まれる。

「師匠!」

アリスとレグルスも追い付いた。

「ふふふ、あなた、ただ者じゃないわね。改めてそう感じるわ」

瓦礫をはねのけて立ち上がったヨアンが剣を構える。

辺りに黒い靄がかかる。

靄が人の形を成す。

「まずこの子たちと遊んでもらうわ!アンデッドナイト!」

ヨアンの声に反応したゾンビ達がアスフェンに襲いかかる。

「遊んでる暇は無いんだ、仲間を傷つけられておいてな」

アリスが剣を横なぎに一閃する。

ゾンビ達が成す術なく両断されて燃え盛る。

ヨアンがアリスを睨む。

『創造主クローバーが危険視するだけのことはあるな、あとは……』

ヨアンがレグルスに視線を向ける。

『この獣人はなんだ?警戒すべきなのか……』

ヨアンが隙をついて仕掛けてきたアリスの剣を受け止める。

「余所見なんて良い度胸してるじゃあないか」

ヨアンは顔色一つ変えない。

剣を逆に持ち変えつつ、アリスにカウンターをお見舞いする。

「ごはっ!」

アリスが吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

「……獣人はどこ行った……?」

ヨアンがレグルスを探す。

「時計によじ登って、何してるんだ」

ヨアンがニヤッとする。

レグルスが時計をグルグル回す。

鐘が響き渡る。

大広間の扉が開き、イザベラたちが駆け込んでくる。

「貴様が例の魔人か」

「ええ、そのとうり」

ヨアンが頷く。

「あなたなら聞いたことがあるかしら」

「何がだ」

「不思議な矢のお話よ」

「……矢に選ばれた者に絶大な力を与えるという眉唾物のおとぎ話か」

「噂によればカルテット王国に保管されているらしいけど」

「そんなもの知らん。仮に知っていたとしても貴様に教えると思うか?」

イザベラが剣を構える。

「ふん、教える?私が吐かせるんだよ」

ヨアンの攻撃がイザベラの肩から腰までバッサリ切り裂く。

『何も見えなかった……!』

イザベラが傷口を抑える。

「矢の場所を教えろ」

イザベラが歯を食い縛る。

『しくじった……!ついアスフェンに頼ってしまった』

アスフェンは時計の針を必死に回すレグルスを眺めている。

『あいつ、なに見てんだ、こっちを助けろや』

イザベラがアスフェンを睨む。

「はあっ!」

復帰したアリスがヨアンに飛びかかる。

「生きてたのか」

ヨアンが軽く剣を振る。

それだけでアリスを大きな衝撃が襲う。

「うがぁ!」

アリスは何とか踏ん張る。

ヨアンの意識がアリス向いた隙に、イザベラが傷口に逆転魔法を使用し、傷を完治させる。

「援護感謝する。二人でこの魔人を落とすぞ」

イザベラが剣を構える。

刃が淡いオーラに包まれる。

「了解した」

アリスも口に溜まった血を吐いて頷く。

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