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一章 予兆編

七話 フュートレック降臨

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「これがオーク達を率いていた魔人……」

アスフェンが死体をまさぐる。

「ん?なんだこの宝玉は?」

アスフェンがクーティの胸の辺りから緑色の宝珠をつかみだした。

「これが動力ってわけか……やつが人造魔人だったらだが」

アスフェンが宝珠を握りつぶす。

「これで動けないだろう。さて、オーディナリーに戻るか」

アスフェンが丘を駆け降りる。

「あ、アスフェン!」

ケラスターゼがオークキングの死体を踏みつける。

「ふふん、このケラスターゼ様が討伐したのよ!何か言うことは?」

この時、ケラスターゼの頭では……


ア『なんてすごいんだ、今まで馬鹿にしていたことを謝るよ!』

ケ『オーホホ、わかればよろしくってよ、オーホホ!』

ア『あなたは世界最高の冒険者だ、是非とも弟子にしていただきたい!』

ケ『よろしい!ついでに結婚もしてあげるわ、世界最高の冒険者とキャッキャウフフできることの有り難みを噛み締めなさい!』

ア『俺は幸せ者だー、アーハハ!』


という妄想が展開されていたが、その妄想を搔き消すかのようにアスフェンが言い放つ。

「曲がりなりにも一族の王だぞ、敬意を払え、痴れ者」

「あ、スンマセン……」

ケラスターゼが足を降ろす。

『思ってたのとちがーう!』

ケラスターゼが落胆する。

「ケラスターゼさん、すごかったんですよ!誉めてあげてください」

レグルスが思わずケラスターゼを擁護する。

アスフェンが溜め息をつく。

「誉めるってどう誉めるんだ、あれぐらい片手間で倒せよ」

「あれぐらいって、曲がりなりにも王でしょーが。敬意払わんかい」

「うぐ、ま、まあBランク冒険者としては破格の功績だ。Aランク冒険者になれると思うぞ、多分……」

ケラスターゼが仰け反りながらアスフェンを指差す。

「フーハハハ、やっと私の実力に気が付いたか、これからアンデラートに行ってAランクに推薦してくれても……ってオーイ!」

アスフェン達がどこかへ立ち去ろうとするのに気が付いてケラスターゼは慌ててアスフェン達を追いかける。


⭐⭐⭐

「クーティが殺られたようだ」

背の高い男が、円卓を囲む人影に言う。

「クーティ、あのお調子者がねぇ、笑わせてくれる」

「笑い事じゃ無いわよ、パール。私たちと同等の力を持った奴がいるのよ?」

「パール、ヨアン、落ち着け。ディーノ、創造者クローバーはなんとおっしゃっている」

大柄な人影が男に尋ねる。

「ヨアン、お前に調査を命じられた」

「うっそ、あたしぃ?張り切っちゃうなぁ!」

小柄な影が魔方陣の光に照らされて姿があらわになる。

白い髪に青い目の少女だ。

「クーティを殺した奴を見つけたら?」

「殺して構わないとのことだ」

「そうこなくっちゃ!」

少女がどこかへ転送される。


⭐⭐⭐

レグルスの家族や獣人族の族長家族も無事だったので、アスフェンたちはオーディナリーに戻ってきた。

爽やかな風がふく。

「はぁー、清々しい気分ね。風が気持ちいい」

ケラスターゼが両手を広げて風を感じる。

「この風が気持ちよく感じるお前を羨ましく思うよ」

アスフェンがゲンナリしたように言う。

「どう言うことですか?」

レグルスが首を傾げる。

「ふふ、こう言うことよ」

レグルスの耳元で甘い囁きが響く。

小さなつむじ風が巻き起こり、一人の女性が現れる。

緑色のベールに身を包み、手には底知れぬ魔力を秘めた杖が握られている。

「久し振りね、アスフェン」

女性は親しげにアスフェンに微笑みかける。

「フュートレック……次から次へと」

アスフェンが天を仰ぐ。

この後、フュートレックからとんでもない情報がもたらされるのである。

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