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第3幕 イースト・エンドの惨劇
3-1 消えた薬瓶
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九月七日金曜日。宮殿の事件から一週間近く経過したが、エドワードは相変わらず落ち込んでいた。
事件を未然に防ぐことができなかった挙句、犯人を取り逃がしてしまった。悔やんでも悔やみきれない――彼の心には底なしの、ぽっかりとした大穴が開いてしまったようだった。
その日の夕方、一日の講義を終えたエドワードが自身の研究室へ向かっていると、見覚えのある人影が扉の前にあった。その人物はこちらを見つめ、軽く会釈をした。
驚いたエドワードは小走りで扉の前へ向かう。
「な、夏目……」
「大丈夫ですか? 教授。あれから眠れていないのですか?」
エドワードは、不意に廊下の窓ガラスに映った自分の顔を見た。顔はやせこけ、目の下にはくまがある。嘆息し、頷いた。
「すまないね、夏目。君に心配をかけて。こんな顔を生徒たちの前で見せているようじゃ、教授としては失格になってしまうね」
エドワードは乾いた笑いを浮かべていた。
夏目は首を横に振り、否定する。
「無理もありません。事件が立て続けに起こったのですから。教授が気に止むことはありません。誰を標的にしているのかが分からないのに、どうやってその人間を守ることができるというのでしょう?」
エドワードは夏目の言葉にいったんは頷くも、「いや……」と、言ってから自身に言い聞かせるように言葉を続ける。
「どこかにヒントは眠っているはずなんだ。犯人の狙いが分かれば、謎は自ずと解けて……」
「マイヤー教授!」
どこからともなく突然、廊下で反響して聞こえた声に、その先の言葉がかき消される。エドワードは肩を震わせた。
「この声は……」
エドワードと夏目の前に、白衣を着た男性が息を切らしながらやって来た。背はエドワードと同じぐらいの高さで、アッシュブロンドの髪に青みがかった灰色の瞳、小ぶりの丸い眼鏡をかけている。
「エヴァンズ教授……」
「ちょうど良かった。大変なんだ。君、探し物の類は得意だったよな?」
トーマス・エヴァンズは、理学部で主に化学を教えている。彼はわらにもすがるような表情でエドワードを見つめていた。
「……いったい、今度は何をなくされたんです?」
エドワードは、エヴァンズから何度か探し物の依頼を受けたことがある。依頼といっても、そんな大層な話ではない。身に着けていたはずの老眼鏡をなくしたので、一緒に探してほしい。机の上に置いたプリントが風に飛ばされてしまったので、回収するのを手伝ってほしいといった、とにかく人騒がせな教授なのだ。今回もそういった類に違いないとたかをくくっていたエドワードだったが……。
「いいか、落ち着いて聞いてくれ! シアン化カリウムの入った薬瓶が薬品庫から消えたんだ!」
「シアン化カリウム⁉」
エドワードと夏目は声を揃えて驚いた。
「シアン化カリウムって、あの劇薬の……」
「そうなんだよ。月に一度、研究室の学生と薬品庫の中の在庫を調べているんだが、そうしたら今回、シアン化カリウムの薬瓶が消えていたってわけなんだ」
「実験で学生に貸し出したってことは?」
「うーん、シアン化カリウムを貸し出すには、学部に許可申請を出さないと貸すことはないし、私もここ最近見た覚えがないが……」
「在庫を確認した時に、学生が勝手に持ち出したということはないのですか?」と、夏目も二人の会話に割って入った。
「……あまり人を疑いたくはないんだがね」
エヴァンズの部屋や研究室の中を捜索した後、念には念をと、寮にいる理学部の学生を対象に持ち物検査が行われた。
だが、彼らの部屋から薬瓶が出て来ることはなかった。
「困ったな。あとは、実家から通っている子たちか」
エヴァンズは頭を抱えた。
「明日以降、聞いてみてください。それから一応、学長にも報告を」
「もちろんだ。ありがとう、二人とも」
エヴァンズが去って行くのを見送り、エドワードは夏目にも寮の自室に戻るように促すが、夏目は合点がいっていない様子だった。
「おかしい。タイミングが良すぎはしませんか?」
「君もそう思うかい? 夏目。宮殿で起こった青酸カリによる毒殺、消えたシアン化カリウムの薬瓶――これらに因果関係があるとしたら」
エドワードは、ロンドン警視庁に向かって馬車を走らせる。到着してすぐ、署の入り口にいた職員に声をかけた。
「ホワード警部と話がしたいのですが」
「あいにく、警部は事件で出ております。イーストエンドの方へ向かっているはずです」
「……イーストエンド?」
「あれ? エドワードさん」
エドワードが振り返ると、ジョージ・ヘーゼルダインと、息子のスチュアートを連れたケリーが立っていた。
「ケリーさん⁉ ヘーゼルダイン卿も」
「こんばんは、マイヤー教授」
「お前に会うとろくなことがない、この死神め!」
礼儀正しい息子とは対照的に怒鳴り散らすヘーゼルダイン卿。
エドワードは無言で肩を竦めた。
「落ち着いてくださいよ。警部に御用でしたか?」
「ええ、少し気になったことがありましたので」
「それでしたら、代わりに僕が話を伺いましょう。事情聴取が終わって、息子さんに迎えに来てもらったんです」
「無事に父の疑いを晴らすことができて良かったです。お騒がせしました」
スチュアートがお辞儀をすると、ヘーゼルダイン卿は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
親子が署を離れた後、ケリーはエドワードを応接室に案内した。
「本日、うちの大学でシアン化カリウムの薬瓶を紛失していたことが発覚しました。宮殿の一件と何か関係があるのではないかと思いまして」
「大学で、ですか? ということは、犯人は学生、もしくは教授、職員の誰か……」
「まだ分かりませんが、可能性としては十分に考えられるかと」
「なるほど。この間の身体検査ではそれらしい物が出てこなかったから、どこかに落ちている可能性もありそうですね」
「身体検査は、あの場にいた全員に?」
「いや、残念ながら帰ってしまった方も何人かいらっしゃいましたね。伯爵令嬢のミランダ・ノエルさん、男爵家長男のスチュアート・ヘーゼルダインさんのお二人。スチュアートさんは先程事情聴取を終え、ミランダさんは後日お宅を訪問する予定です」
「ミランダさんなら、宮殿で殺害された男性から言い寄られて困っていたと聞いています。しばらくの間、彼女を連れて彼から遠ざけていたのですが、僕たちが捜査に協力していることを知り、いなくなってしまいました」
「エドワードさんと一緒にいらっしゃったんですね! 途中でいなくなったのが気になりますが……」
「捜査の邪魔になってしまうからと。僕より夏目の方がそばにいた時間が長いので、状況は彼の方が詳しいとは思いますが。それで、スチュアート君は何と?」
「ヘーゼルダイン卿から家にいるように言われていたのを、様子が気になって宮殿に向かったそうです。ところが、体調不良で途中帰宅せざるを得なかったと」
「そうでしたか。では、ヘーゼルダイン卿の方は?」
「そうですねぇ……まず、この間宮殿で亡くなったのは、男爵のエルマー・ジェンキンス卿。自身の賭博仲間で、ヘーゼルダイン卿と同じく寄付によって男爵に成り上がったということ。それから、次に狙われるとしたら自分に違いない……と、何度も言っていましたね」
「……ヘーゼルダイン卿が狙われる?」
エドワードは、宮殿でホワードがヘーゼルダイン卿を連行しようとしていた時のことを思い出した。
「そういえば、確かにそんなことを……ですが、いったいなぜ?」
「それが、我々がなぜかと聞いても教えてくれないんですよ。『順番的に自分だ。私は犯人じゃない』の一点張りで。まあ結局、今回イーストエンドで起きた事件がきっかけで、男爵のアリバイが成立して釈放に至ったわけですが」
「そうでしたか。ジェンキンス卿以外に亡くなった方は、いずれも女性でしたね。彼女らとヘーゼルダイン卿の関係は?」
ケリーは周囲を見回し、エドワードに耳打ちをする。
「それに関しては、まったくのノーコメント……ただ、女癖は悪そうなタイプでしたね。念のため、被害者の関係者たちに聞き込みをしているところです」
エドワードは、宮殿でのヘーゼルダイン卿の行動を思い返した。
二十歳以上歳が離れていると思われるクリスに対し、強引にダンスを申し込んだこと、そして、あの時にスチュアートの放った言葉――。
――こうなることは想像がついていましたから。馬鹿なことはやめて、早く帰りましょう。あの世で母上が悲しんでいます。
「想像がついていた……ということは、ヘーゼルダイン卿は過去にも女性に声をかけた経験があり、息子もそのことを知っていた。あの話からするに、奥方はすでに亡くなっている。寂しさを紛らわせるためか?」などと、エドワードが顎に手を添え、思案していたところに、
「失礼する!」
応接室の扉が大きな音を立てて開いた。
事件を未然に防ぐことができなかった挙句、犯人を取り逃がしてしまった。悔やんでも悔やみきれない――彼の心には底なしの、ぽっかりとした大穴が開いてしまったようだった。
その日の夕方、一日の講義を終えたエドワードが自身の研究室へ向かっていると、見覚えのある人影が扉の前にあった。その人物はこちらを見つめ、軽く会釈をした。
驚いたエドワードは小走りで扉の前へ向かう。
「な、夏目……」
「大丈夫ですか? 教授。あれから眠れていないのですか?」
エドワードは、不意に廊下の窓ガラスに映った自分の顔を見た。顔はやせこけ、目の下にはくまがある。嘆息し、頷いた。
「すまないね、夏目。君に心配をかけて。こんな顔を生徒たちの前で見せているようじゃ、教授としては失格になってしまうね」
エドワードは乾いた笑いを浮かべていた。
夏目は首を横に振り、否定する。
「無理もありません。事件が立て続けに起こったのですから。教授が気に止むことはありません。誰を標的にしているのかが分からないのに、どうやってその人間を守ることができるというのでしょう?」
エドワードは夏目の言葉にいったんは頷くも、「いや……」と、言ってから自身に言い聞かせるように言葉を続ける。
「どこかにヒントは眠っているはずなんだ。犯人の狙いが分かれば、謎は自ずと解けて……」
「マイヤー教授!」
どこからともなく突然、廊下で反響して聞こえた声に、その先の言葉がかき消される。エドワードは肩を震わせた。
「この声は……」
エドワードと夏目の前に、白衣を着た男性が息を切らしながらやって来た。背はエドワードと同じぐらいの高さで、アッシュブロンドの髪に青みがかった灰色の瞳、小ぶりの丸い眼鏡をかけている。
「エヴァンズ教授……」
「ちょうど良かった。大変なんだ。君、探し物の類は得意だったよな?」
トーマス・エヴァンズは、理学部で主に化学を教えている。彼はわらにもすがるような表情でエドワードを見つめていた。
「……いったい、今度は何をなくされたんです?」
エドワードは、エヴァンズから何度か探し物の依頼を受けたことがある。依頼といっても、そんな大層な話ではない。身に着けていたはずの老眼鏡をなくしたので、一緒に探してほしい。机の上に置いたプリントが風に飛ばされてしまったので、回収するのを手伝ってほしいといった、とにかく人騒がせな教授なのだ。今回もそういった類に違いないとたかをくくっていたエドワードだったが……。
「いいか、落ち着いて聞いてくれ! シアン化カリウムの入った薬瓶が薬品庫から消えたんだ!」
「シアン化カリウム⁉」
エドワードと夏目は声を揃えて驚いた。
「シアン化カリウムって、あの劇薬の……」
「そうなんだよ。月に一度、研究室の学生と薬品庫の中の在庫を調べているんだが、そうしたら今回、シアン化カリウムの薬瓶が消えていたってわけなんだ」
「実験で学生に貸し出したってことは?」
「うーん、シアン化カリウムを貸し出すには、学部に許可申請を出さないと貸すことはないし、私もここ最近見た覚えがないが……」
「在庫を確認した時に、学生が勝手に持ち出したということはないのですか?」と、夏目も二人の会話に割って入った。
「……あまり人を疑いたくはないんだがね」
エヴァンズの部屋や研究室の中を捜索した後、念には念をと、寮にいる理学部の学生を対象に持ち物検査が行われた。
だが、彼らの部屋から薬瓶が出て来ることはなかった。
「困ったな。あとは、実家から通っている子たちか」
エヴァンズは頭を抱えた。
「明日以降、聞いてみてください。それから一応、学長にも報告を」
「もちろんだ。ありがとう、二人とも」
エヴァンズが去って行くのを見送り、エドワードは夏目にも寮の自室に戻るように促すが、夏目は合点がいっていない様子だった。
「おかしい。タイミングが良すぎはしませんか?」
「君もそう思うかい? 夏目。宮殿で起こった青酸カリによる毒殺、消えたシアン化カリウムの薬瓶――これらに因果関係があるとしたら」
エドワードは、ロンドン警視庁に向かって馬車を走らせる。到着してすぐ、署の入り口にいた職員に声をかけた。
「ホワード警部と話がしたいのですが」
「あいにく、警部は事件で出ております。イーストエンドの方へ向かっているはずです」
「……イーストエンド?」
「あれ? エドワードさん」
エドワードが振り返ると、ジョージ・ヘーゼルダインと、息子のスチュアートを連れたケリーが立っていた。
「ケリーさん⁉ ヘーゼルダイン卿も」
「こんばんは、マイヤー教授」
「お前に会うとろくなことがない、この死神め!」
礼儀正しい息子とは対照的に怒鳴り散らすヘーゼルダイン卿。
エドワードは無言で肩を竦めた。
「落ち着いてくださいよ。警部に御用でしたか?」
「ええ、少し気になったことがありましたので」
「それでしたら、代わりに僕が話を伺いましょう。事情聴取が終わって、息子さんに迎えに来てもらったんです」
「無事に父の疑いを晴らすことができて良かったです。お騒がせしました」
スチュアートがお辞儀をすると、ヘーゼルダイン卿は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
親子が署を離れた後、ケリーはエドワードを応接室に案内した。
「本日、うちの大学でシアン化カリウムの薬瓶を紛失していたことが発覚しました。宮殿の一件と何か関係があるのではないかと思いまして」
「大学で、ですか? ということは、犯人は学生、もしくは教授、職員の誰か……」
「まだ分かりませんが、可能性としては十分に考えられるかと」
「なるほど。この間の身体検査ではそれらしい物が出てこなかったから、どこかに落ちている可能性もありそうですね」
「身体検査は、あの場にいた全員に?」
「いや、残念ながら帰ってしまった方も何人かいらっしゃいましたね。伯爵令嬢のミランダ・ノエルさん、男爵家長男のスチュアート・ヘーゼルダインさんのお二人。スチュアートさんは先程事情聴取を終え、ミランダさんは後日お宅を訪問する予定です」
「ミランダさんなら、宮殿で殺害された男性から言い寄られて困っていたと聞いています。しばらくの間、彼女を連れて彼から遠ざけていたのですが、僕たちが捜査に協力していることを知り、いなくなってしまいました」
「エドワードさんと一緒にいらっしゃったんですね! 途中でいなくなったのが気になりますが……」
「捜査の邪魔になってしまうからと。僕より夏目の方がそばにいた時間が長いので、状況は彼の方が詳しいとは思いますが。それで、スチュアート君は何と?」
「ヘーゼルダイン卿から家にいるように言われていたのを、様子が気になって宮殿に向かったそうです。ところが、体調不良で途中帰宅せざるを得なかったと」
「そうでしたか。では、ヘーゼルダイン卿の方は?」
「そうですねぇ……まず、この間宮殿で亡くなったのは、男爵のエルマー・ジェンキンス卿。自身の賭博仲間で、ヘーゼルダイン卿と同じく寄付によって男爵に成り上がったということ。それから、次に狙われるとしたら自分に違いない……と、何度も言っていましたね」
「……ヘーゼルダイン卿が狙われる?」
エドワードは、宮殿でホワードがヘーゼルダイン卿を連行しようとしていた時のことを思い出した。
「そういえば、確かにそんなことを……ですが、いったいなぜ?」
「それが、我々がなぜかと聞いても教えてくれないんですよ。『順番的に自分だ。私は犯人じゃない』の一点張りで。まあ結局、今回イーストエンドで起きた事件がきっかけで、男爵のアリバイが成立して釈放に至ったわけですが」
「そうでしたか。ジェンキンス卿以外に亡くなった方は、いずれも女性でしたね。彼女らとヘーゼルダイン卿の関係は?」
ケリーは周囲を見回し、エドワードに耳打ちをする。
「それに関しては、まったくのノーコメント……ただ、女癖は悪そうなタイプでしたね。念のため、被害者の関係者たちに聞き込みをしているところです」
エドワードは、宮殿でのヘーゼルダイン卿の行動を思い返した。
二十歳以上歳が離れていると思われるクリスに対し、強引にダンスを申し込んだこと、そして、あの時にスチュアートの放った言葉――。
――こうなることは想像がついていましたから。馬鹿なことはやめて、早く帰りましょう。あの世で母上が悲しんでいます。
「想像がついていた……ということは、ヘーゼルダイン卿は過去にも女性に声をかけた経験があり、息子もそのことを知っていた。あの話からするに、奥方はすでに亡くなっている。寂しさを紛らわせるためか?」などと、エドワードが顎に手を添え、思案していたところに、
「失礼する!」
応接室の扉が大きな音を立てて開いた。
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(※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)
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