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第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-

第240歩目 奴隷100人できるかな?

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 前回までのあらすじ

 謝ったらー、負けだと思ってるよー(`・ω・´)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 現在、朝食を終えた俺達は、リビングにて舞日家会議を開催している最中だ。

 出席者は俺とアテナ、ドール、モリオンの4人。
 サクラと『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーには遠慮してもらっている。

「それで、相談とはなんなのじゃ? 山賊共のことなのであろう?」
「さすがはドールだな」

 ただ、本当の意味での参加者はドールだけとなる。
 アテナとモリオンに至っては、再び舟を漕いでいる有り様だ。

 アテナは俺の膝上に座り、まるでドサッと音が聞こえてきそうな程の重量がある胸をテーブルの上に乗せて、それを自分の枕にするという、ある部分が大きい人だけにのみなしえる特大の荒技を使って───。

 一方、モリオンはドールの膝上に座り、まるで天使の羽が如く柔らかく、そして、もふもふで優しい気持ちになれる(ドールの)2本の尻尾を枕代わりにするという、うらやまけしからん荒技を使って───。

(......まぁ、食後は眠くなるから仕方がないよな。それに、アテナとモリオンだし?)

 そもそも、これは何も朝食に限った話ではない。
 この二人はいつも、食後はぐっすりとおやすみタイムを設けているぐらいだ。

「実はさ───」

 そんな天使のような寝顔を見せる二人はさておき、これまでの女山賊達との経緯をドールにざっくりと話すことにする。

 お題は『女山賊達が本当に話したかった内容』についてだ。

「そんなもの、断れば良かろう? 悩むほどでもないのじゃ」
「いやさ? せっかく申し出てくれているんだから、断るのもかわいそうとか思わないか?」

 しかし、話を聞いたドールの反応は渋い。

 いや、渋いどころの話ではない気がする。
 まるで、「また主が馬鹿なことを言い出したのじゃ」とでも謂わんばかりの表情だ。

「ハァ..................。主はどこまでお人好しなのじゃ?」
「そ、そうは言うけど......彼女らの気持ちは本物だと思うんだよ」
「優しいところが主の魅力の1つだとは言え......そこまでいくと、もはや病気なのじゃ。少しは自覚せい」
「......」

 ドールの「必要以上に情けを掛けるな!」との主張は良く分かる。
 甘い考えが、1つの判断の過ちが、最悪の事態に繋がり兼ねないとも限らないからだ。


 しかし、だからと言って───。


 ※※※※※


「それで、本当に話したかったことというのはなんだ?」

 時は朝食前まで遡る。
 場面はインカローズ達と話している頃だ。

「あ、あたいもさ、さすがに図々しいことだとは思っているんだよ?」
「「「首領マム......」」」

 一向に煮え切らない態度を見せるインカローズ。
 そして、そんなインカローズを心配する女山賊達。

(これは......余程のことだと思ったほうがいいな)

 当然、いい加減な気持ちで話を聞くつもりはなかった。
 それでも、気持ち軽めで聞こうとしていただけに、思わず居住まいを正すことに。

「遠慮しないで言ってみろ。可能なことぐらいなら融通するからさ」
「そうかい? なら、遠慮なく......。あのさ、あたいらに恩返しの機会をくれないかい?」
「お、恩返し!?」
「そう、恩返し」

 鶴の恩返しならぬ山賊の恩返し。

 正直、意外な申し出だったことで面喰らってしまった。
 声も1オクターブほど高く上擦って出てしまったかもしれない。

「ここまで世話になっているんだ。そう思うのは当たり前のことだろ?」
「気持ちはありがたいけど......具体的には何をするんだ?」
「なんでも言っておくれよ。あんたの為にならなんでもやってやるさ! なー、あんたらもそうだろ?」
「「「なんでもやりまーす! マイ・首領マム!!」」」

「......だから、具体的には?」

 もはや、コントのような女山賊達のノリは無視しよう。

 問題は恩返しの具体的な内容だ。
 どう考えても、できる恩返しなどそうそうない気がする。

(衣類の洗濯とかか?......いや、そんなことぐらいはサクラがやってくれるしな)

 別に、女山賊達の「恩返ししたい」という気持ちそのものを否定する気は全くない。
 ただ、その具体的な内容のイメージが、どうしてもハッキリとしてこないから困る。

 すると、インカローズの口から驚きの言葉が飛び出してきた。

「だから、なんでもさ。ここには山賊とは言え、多くの女がいるんだよ?」
「はぁ......それが?」
「料理ができる奴もいれば、掃除や洗濯ができる奴もいる。それに自慢じゃないが、腕っぷしにも自信がある。(食料調達の為の)狩りなんかもお手のものさ」
「はぁ!? そ、それって、つまり......監獄ここから出せ、と?」
「まぁ、そういうことになるかね。だから、最初に言ったろ? あたいも図々しいとは思っているってさ」
「いやいや。それは......図々しいで済む話か?」

 女山賊達の「恩返ししたい」という気持ちは痛いほどによく分かる。
 義賊を名乗るだけあって、そういうものには厳しく徹底しているのだと思う。

 だからと言って、監獄の外に出すとなると、それはそれでまた別の話だ。

「......やっぱりダメかい?」
「「「お願いしまーす! 役に立ちまーす!」」」

「ちょ、ちょっと待って!」

 どこか不安そうな表情と、まるで主人に請い願う犬のように純真(?)な眼差しを向ける、インカローズ始め女山賊達。

(うーん。彼女らの真摯な態度を見るに、謝罪の気持ちは本物だと思うんだよなぁ)

 いや、本心を言えば、そう思いたい。
 そうであって欲しいとさえ思っている。

 ただ、それを証明する手段が全くない。証明できない以上は、「俺がそう思っているから大丈夫だ!」みたいな個人的見解わがままで、女山賊達を監獄から解放する訳にはいかないと思う。

(その恩返しとやらを実際に見せてもらえばいいんだろうけど......)

 そうなると、監獄から解放してもいいのかどうか、という最初の問題に突き当たる。
 結局のところ、悪魔の証明にしかなりえないという訳だ。

(後は、みんなにどう説明するか、だよなぁ)

 俺は女山賊達の謝罪は本物だと思っている。
 だが、仮に女山賊達の謝罪を見せたとしても、仲間がそう思うかは分からない。

 いくら俺が捕らえた山賊とは言え、仲間の意思を無視してまで女山賊達を監獄から解放する、という行為はさすがにはばかられる。

 いや、山賊として捕らえた以上は、信じる信じないの話ではないはずだ。
 恐らく、捕らえた山賊を監獄から解放する、という考えすらないのだろうから。

 そして、一番問題なのが───。

(彼女らの「恩返ししたい」という気持ちは素直に嬉しいが......現状全く必要ないんだよなぁ)

 一旦、女山賊達の気持ちうんぬんの件は置いておくとしよう。

 そうした上で冷静に考えてみると───。
 いや、冷静に考えてみなくとも、全く問題なくやってこれていた。
 
 それは今までも......。
 そして、きっとこれからも......。

 そうなると、「恩返しの必要性ある?」という結論に───。

 また、現状は女山賊達の申し出を受け入れる必要性が全くないと分かっているのに、仲間から「それでも監獄から解放するの?」と言われてしまっては返す言葉が見つからない。

(さて、どうしたもんかな......)

 女山賊達の申し出を受け入れることで生じるメリットはあると思う。
 だが、仲間から理解を得られない状態では、逆にデメリットしか生まれないはずだ。

 そう、もしかしたら仲間から不信感を抱かれる可能性がある、という致命的なデメリットが───。

(うーん。彼女らには悪いが......さすがに、この申し出は難しいかな?)

 俺の気持ちは少しずつ傾いていた。
 申し訳ないが、女山賊達の申し出を断る方向に───。

「なぁ。頼むよ、竜殺し」
「「「お願いしまーす! 一生懸命働きまーす!」」」

「......」

 しかし、ここで頭をもたげてきたのが、先程一旦置いておいた女山賊達の気持ちだ。
 そして、今もなお縋り付くかのように懇願してくるインカローズ達の懸命な姿。

「あんたに捕まった時から(命の)覚悟はしていたさ。だから、それはもういい」
「......」
「だけどさ、恩を遺したままなのは我慢ならないんだよ。一義賊としても、あたいの誇りにかけてもさ!」
「......」

 なんという誇り高き山賊なのだろうか。
 プライドの欠片も持たない俺とは大違いだ。

 それに───。

「「「首領マムだけでもお願いしまーす!」」」
「なにバカなことを言っているのさ。あんたらを置いて、あたいだけでいけるかい」
「「「首領マム......」」」
「いいかい? やるなら、みんなで恩返しだ。だから、いま死ぬ気で頼みなッ!」
「「「お願いしまーす! マイ・首領マム」」」
「あたいじゃなくて、竜殺しに頼むんだよ! このバカどもが!」

「......」

 インカローズが女山賊達のことを想い、女山賊達がインカローズのことを慕う。
 まさか檻の中で美しくも心を打たれる主従関係を見せられるとは思いもしなかった。

(うぅ......こういうの弱いんだよなぁ)

 正直、「誇りだ」「プライドだ」なんてことは言われても良く分からない。
 そういうものをあまり持ち合わせてはいないからだ。

 感心することはあっても、共感にまでは至らない。
 個人的にはそういうものよりもずっと大事だと思うものがあるからだ。

(これ......断りづらくなったぞ)
 
 だが、義理人情の話となると、どうしても共感せずにはいられない。

 元々、普通であった俺は人との繋がりがとても重要だった。
 つまらないプライドよりも、もっと優先すべきことが多かったのだ。
 また、そうしていかないといけなかった場面も今考えると1つや2つでは済まない。

 だから、目の前のインカローズ達のような姿を見せられてしまっては、「どうにかしてあげたい」「なんとかしてあげたい」という気持ちが沸々と沸き上がってくる。

「本当に頼むよ、竜殺し」
「「「本当になんでもやりまーす! お願いしまーす!」」」

「......」

 結局、俺が出した答えは───。


 そして、冒頭に戻る。


 ※※※※※


 あれからずっと、ドールの小言は続いている。
 ドールには病気だと言われたが、とても病人に対する態度とは思えない。

 そんなことを秘かに思っていたら───。

「それは嫌みかの?」
「なんで気付いた!?」
「ふんッ! 妾を侮るでない。主のことならなんでもお見通しなのじゃ」
「お、おぅ」

(表情か!? 表情に出ていたとでも言うのか!?......というか、この様子では理解を得るのは難しいかもしれないな)

 そう思っていたのだが、ドールは意外にも簡単に折れてくれた。
 と言うよりも、これは───。

「のぅ、主よ。それはもはや相談とは言わぬのじゃ」
「え?」
「そうであろう? 主の中ではもう既に決めておることなのではないか?」
「そう......だな。俺は彼女らの好意を受けようと思っている。......なるほど、確かに相談とは言えないな」

 インカローズ達には「少し考えさせてくれ」と、そう言ってある。
 個人的には善処してあげたいとは思うが、まずは仲間の反応を見てからにしようと。

 そう、あくまで仲間の反応を見てから最終的に決めようと思っていた。

 しかし、ドールに指摘されて初めて気付いた。
 いや、敢えて気付いていない振りをしていただけなのかもしれない。

 インカローズ達には「仲間からの理解が得られなかったから申し出は受けられない」と、無意識の内に責任逃れを、押し潰されそうになる罪悪感から逃れようとしていたことに......。

(ドールはさすがだなぁ。本当になんでもお見通しという訳か)

 どうやら、目の前に居る小さな賢人には隠し事などできないらしい。
 そして、ぶつぶつと文句を言いながらも、ドールはドール流のやり方で俺の背中を押してくれたのかもしれない。

「であるならば、「どう思う?」ではなく「どうしたらいい?」と問えば良いのじゃ。それならば相談となろう?」
「ん? 「どうしたらいい?」とは?」
「結果は良いとしても手段が必要なのじゃ」
「......手段? それなら、今ドールから貰ったけど?」
「そういうことを言うておるのではない」
「うーん。言っている意味がさっぱり分からないんだが?」

 俺のその言葉に、目の前のドールが顔をしかめた。
 でも、そんな顔でも相変わらずかわいいのは美少女の特権だと言える。

 さて、結果というのは、恐らくインカローズ達の申し出を受けてもいいということ。
 では、ドールの言う、それに必要な手段とは一体......。

(みんなから理解を得るだけでは不十分だと言うのか?)

 俺が思っていた必要な手段というのが、まさしく『仲間からの理解を得ること』だった。

 その場合、アテナとモリオンに関しては確認を取る必要すらない。
 所謂、聞くだけ無駄というやつだ。確認せずとも答えは分かりきっている。

 次に『紅蓮の蒼き戦斧』のメンバーに関しては、竜殺しである俺を尊敬......というか、盲信(?)している節があるので、懇切丁寧に説得さえすれば問題はないだろう。

 そういう意味では、ドールだけが最大の障壁となっていた。
 今後とも、色々と頼りにしたいドールからの信頼を損なうことだけはどうしても避けたかった。

 だから、ここまで苦悩し、相談するにまで至ったのだが......。

 そのドールから理解を得られたことで、全てが解決したと思っていた。
 しかし、目の前の小さな賢人はそれを否定する。

「のぅ、主よ。妾達の安全性はどうやって確立するのじゃ? 山賊どもが逃げないという保証はどこにあるのじゃ?」
「え? 彼女らは十分に反省しているようだし、そんなことは───」
「バカもの。感情だけで判断するでない。主の駄目な点はそういうところなのじゃ」
「す、すまん......」
「つまりの、「感情なんてものを基準にせず現実的な手段を取れ」、妾はそう言うておるのじゃ」

 ドールの言うことはもっともだ。
 むしろ、真っ先にそこを気にかける必要性があったのかもしれない。

 ドールさえなんとかできれば、どうにかなりそうだった理解うんぬんよりも......。

(俺はダメだなぁ。絶対に政治家になれないタイプだ)

 今は違うが......その昔、「女性は政治家には向かない」と言われていた。
 その理由は、物事を感情で判断してしまうからだと。

 政治家に必要なものは状況に応じた適切な判断だ。
 その為には涙を呑む決断も迫られる。

 女性にはそれができないと......。

 もう一度言うが、今は全く違う。
 昔、そう言われていた時期があった、という話なだけだ。

 そして、俺はどうやら政治家にはなれないタイプだと判明した。
 一方、超現実主義者なドールさんは政治家向きなタイプだということも。


 閑話休題。


 話を戻そう。

 ドールからは「現実的な手段を取れ」と言われた。
 しかし、そんな考えがすぐに出てくる訳でもなく......。

 というか、指摘されるまでそんなことはこれっぽっちも考えてなどいなかったので、妙案なんてものが出てくるはずがない。

「開き直るでない」
「ごもっとも!」
「まったく主は......。だから、端から妾に「どうしたらいい?」と問えば良いのじゃ」
「何か妙案があるのか?」
「全てを一気に解決できる策なのじゃ。しかも、主にしかできぬ」
「俺だけが......?」

 余程その策とやらに自信があるのか、「ふんすッ!」とドールの鼻息は荒い。
 尻尾もふりふりしたそうに見えるが、愛妹のモリオンに枕にされていて歯痒そうだ。

 そして、ドールの口から語られた策とやらは衝撃的なものだった。

「なに、簡単なことなのじゃ。山賊共を1人残らず全員、主の奴隷とすれば良い」
「ど、奴隷に!?」
「うむ。さすれば、全てがまるっと解決するであろう?」
「た、確かに、そうすれば全てが丸く解決するかもしれないが......」

 お忘れの方の為に、簡単に説明しよう。

 俺が所有するスキルの中に【奴隷契約】というものがある。レベルは3。
 このレベルにまで至ると、相手の承諾なく、ある程度は奴隷とすることができる。
 その効果範囲は、奴隷の種類や命令を自由に変更することも可能というものだ。
 (詳しくは『世界編!』の【奴隷】を参照)

「主が奴隷というものに対して、良からぬ印象を抱いているのは知っておる」
「......」
「できることなら、あまり関わり合いになりたくないこともなのじゃ」
「......」

 ドールが淡々とした口調で、俺の想いを綴っていく。
 かつてドールに話した内容をそっくりそのまま淡々と......。

「だがの? それをしないと言うのなら、妾は認めぬ」
「!?」
「妾は端から山賊共など信用してはおらぬ。また、する必要もないしの」
「だ、だけど、彼女らはしっかりと反省を───」
「だから、知らぬと言うておるのじゃ。山賊共の気持ちなど微塵も興味がない。知りたいとも全く思わぬ。いつまた変心するとも限らぬしの」
「そんな身も蓋もないことを......」
「それぐらいのことを主は仕出かそうとしておる、ということなのじゃ」
「......」

 毅然と、そして冷淡に、そう言い放つドールに、俺はぐぅの音も出ない。
 暗に「わがままには責任が伴う」、そう言われている気がしてならない。

 そう、俺は無理を承知で『女山賊達を監獄から解放する』という、わがままをしようとしているのだから。

「何も、「ずっと奴隷にせよ」とは言うておらぬ。その恩返し(?)とやらの間だけで良いのじゃ」
「そ、そうか。期間限定の奴隷だと考えればいいのか。いや、それでも奴隷はな......」
「気に病むならば、山賊共には秘密にすれば良い。主にはその力があるのであろう?」
「いやいや。確かにできるが、それは人としてどうなんだ?」
「後は主が決めよ。必要な策と意見は既に出したのじゃ。どうするのかは主次第という訳じゃな」

 ドールはそう言い残すと、「ほれ、トカゲ。寝るなら寝室で寝よ」と愛妹であるモリオンを背負って、この場を後にしてしまった。

(奴隷......奴隷か......)

 リビングに1人残った俺は悶々としていた。
 アテナ? そいつなら俺の膝上で寝ていますが、何か?

(きっと、これ以上の手段は現時点では存在しないんだろうなぁ)

 そう、頭では十分に分かっているつもりだ。
 だが、心がどうしても『奴隷』というものを拒んでしまう。

(くそッ! それしかない! それしかないのは分かっているんだ! でも......!!)

 どうすればいいのか答えが出ているだけに、大いに苦悩した。
 そんな時、決まって俺を助けてくれる存在がいる。

───ビクンッ!

「うお!?」

 アテナの体が突然跳ねた。
 そして、急にわざとらしい(?)寝言を言い出し始めた。

「......すーすー......決める......時にねー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「な、なんだ?」

「......すーすー......決め......ないとねー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「ん? もしかして、これは......」

「......すーすー......後悔......しちゃうよー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「!!」

「......すーすー......それを......決断というのー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「お、おい! まさか起きているのか!?」

「......すーすー......やっぱりー......おかわりー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「お前の決断はそれかよ!?」

 どんな夢を見ているのか丸分かりなアテナだった。

 この際、この駄女神が起きているかどうかは些細な問題だ。
 重要なのは決断すること。

 そして、その一歩を踏み出すことだ。

「......すーすー......友達しんじゃ100人......できるかなー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「山賊を、奴隷を、友達扱いにするというのもどうなんだろうな?......というか、一緒に来るつもりか?」
「......すーすー......みーんな......私の友達しんじゃだよー......すーすー......(^-ω-^)Zzz」
「みんなか......。アテナらしいというか、それぐらいの気持ちで居るべきなんだろうなぁ」

 だらしなく涎を垂らしながら寝ている(?)アテナを背負い、俺は大いなる一歩を踏み出した。
 目的地は、俺の返事を今か今かと待ち続けている女山賊達の居る魔限監獄だ。

「さーて、行くか。奴隷100人できるかなーっと......HAHAHA」

 この日、俺に新しい奴隷が30人ばかりできた。
 当然、全員に確認を取っての奴隷であることを、ここに追記しておく。


 そして、これが『とあるもの』の結成に繋がっていくのだった───。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

 今日のひとこま

 ~気持ちを尊重しろ、と言ったろ?~

「ありがとう、竜殺し。絶対に損はさせないよ」
「いやいや。こちらもなんか悪いな。奴隷にまでしちゃってさ」
「それで信用と恩返しの機会を得られるなら安いもんさ」
「そうか? そう言ってもらえると少しは気が休まるよ」

「気が休まるってなんだい? 変な竜殺しだね」
「HAHAHA」
「それに、あたいらが奴隷となっても、あんたなら酷いことはしない。あたいはそう思っているよ」
「酷いこと?」

「暴力なんかはもちろんだけど、体の強要とかもそうだね」
「へー。失礼かもしれないけど、意外と言えば意外だな」
「あたいらは山賊であっても、心は義賊さ。自分を貶めたり、安く売るような真似は絶対にしないもんさ」
「なるほど。さすがは義賊」

「あー。でも、あいつらが望むなら、それはまた別の話さ。中には、あんたに恩以上の何かを感じている娘もいるだろうしね」
「HAHAHA」
「まー、あたいが言いたいのは「山賊とは言え、あいつらの気持ちを大事にしてやって欲しい」ってことさ」
「それは約束する。というか、しないけどな?」

「カーッカッカッカ! 強い男が女を侍らせてたくさんの子供を作る、それは自然界の掟だろ? あいつらから求められたら、遠慮なんてしなくていいさ」
「いやいや。遠慮とかじゃないから。ちなみに、インカローズはどうなんだ?」
「あたい? こんなガサツで、大女を抱きたいと思う男なんて居ないだろ?」
「そうか? 俺はそうは思わないけど」

「......へ? あ、あんたは......あ、あたいみたいなのが良いのかい?」
「良いというか、少なくとも女性としては魅力的だと思う」
「そ、そうかい。あたいが......」
「おっと! だからと言って、別にお願いすることはないから安心してくれ。それはインカローズに限らず、他のみんなも同じだ」

「......」
「あ、あれ? インカローズさん?」
「なんでもないよ!! ほら、さっさとあたいらに恩返しされな!!」
「なんで怒った!?......というか、恩返しの押し付けなんだけど!?」
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