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第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-

第221歩目 はじめての国境!

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 前回までのあらすじ

 大満足したドールだった!

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 ドールの発情問題を解決してから更に1年が経った。

 俺達一行は『前線の都市ジュールリア』・『干渉地帯の村ラードン』・『傭兵の町ケルクーナ』を経て、現在は『国境関所ゲルゴナ』を目指している。



「ゲルゴナってところはもう他国なんだっけ?」
「そうじゃな。ドワーフが治める国なのじゃ」

 歩いている俺と並走するように魔動駆輪を操縦しているドールに話し掛けてみた。

 旅の間、俺はレベル上げも兼ねて歩く。
 その隣をドールが運転する魔動駆輪が走る。

 こうして、ドールと(たまに小型魔動駆輪で遊んでいる最中のモリオンとも)会話をしながら旅をするのが、魔動駆輪を手に入れてからの基本的な旅のスタイルとなっている。

「他国に行くのは何気に初めてなんだよなぁ」
「何を言うておる。途中で寄ったベルジュも他国だったであろう?」
「それはそうなんだけどさ......」

 ベルジュはどうにも他国という印象は受けなかった。
 いや、人や土地の雰囲気はフランジュと比べてもガラッと変わったのは確かだけど......。

 なんというか、あれだ。
 海外旅行ではなく、日本国内を旅行しているような感覚に近かった。

 遊びに出掛けるぞと言われて親戚の家に行くような、そんな微妙な感覚。

「まぁ、主の言いたいことは分かる。あの国は特殊じゃからのぅ」

 ドールの言う通り、フランジュとベルジュが特殊なのが原因なのかもしれない。
 所謂姉妹国というやつで、フランジュとベルジュの2国で1国みたいな、そんな感じ?

「それで、そのドワーフが治めるカルディア王国ってのはどんなところなんだ?」
「妾が知る訳なかろう? 妾は主に拾われるまでは籠の中の鼠だったのじゃぞ?」
「ア、ハイ。ソウデスネ」

 現代社会に生きる俺としては情報不足というものは何とも心許ない。

 情報は武器だ。情報の有無で全てが変わったりもする。
 俺も営業マンだった時は、客の食い付きそうな話題集めに奔走したものだ。

 そういう意味では、情報を知り得る機会が少ないこの世界はなんとも不便である。
 そして、こういう時にギルド職員であり情報通なラズリさんの存在を恋しくも想う。

「......というか、こっちでは籠の中の鳥じゃなくて鼠なのか」
「うむ。これぞ文化の違いというやつかの」
「だろうなぁ。でもさ、そこは籠の中の狐にしておいたほうがかわいくないか? ドールは狐の獣人族なんだしさ」

 はい、ナイス提案。ナイスバルク!

「はぁ? 主は何を馬鹿なことを言うておるのじゃ? 今のは単なることわざに過ぎぬのじゃ」
「そんなこと知ってるぞ!?」

 ドールからは「やれやれ」との呆れた溜め息が聞こえてくる。
 それに加えて、ドールの目からは凍てつく波動がほとばしっているような気も......。

「......というか、某漫画のように新聞を持ってきてくれるカモメとかはいないのか?」
「新聞を持ってくるカモメ......? 主よ、ちょっと何を言っておるのか分からぬのじゃ」
「HAHAHA。気にするな、こっちの話だ」
「主の世界の話をするのであらば、妾にも分かるよう説明して欲しいのじゃ!」

 キラキラと目を輝かせ、「さあ! さあ!」とねだるドール。

 興味あることには貪欲で、俺が地球に帰還なら一緒に付いてくるとまで豪語しているドールだ。俺の世界のことなら何でも知りたいのだろう。
 
(......というか、今は魔動駆輪を運転中なんだから前を見て運転しろ!)

 とりあえず、「また今度な」と返して、ドールの知りうる限りの情報を聞き出してみる。

「そうだのぅ。妾が知っておることといえば、70年程前まではフランジュ王国と戦争をしておったということぐらいかのぅ」
「70年前の話か......。情報としては古すぎるな」
「だから言うたであろう? 妾は知らぬと。それに、たかだか70年足らずなのじゃ」
「たかだかって......」

 反論しようとするも口を噤んだ。

 そうだった。
 この世界の人々はやたら過去を気にする人種だった。

 200年も前の話なのに、当時魔王の配下だったからという理由で、今なお続いている獣人族への差別なんかは良い例だ。
 そんな人々からすれば、70年前などものの数にも入らないのかもしれない。

「それもあるが、人間族と他種族ではそもそもの寿命が違うからの。時間の受け止め方が違うのじゃ」
「そんなに違うのか?」
「全く違う。人間族は他種族と比べても短命過ぎるのじゃ」

 曰く、人間族の平均寿命は約50年~60年らしい。

(......ん? 魔物が跋扈しているような世界では割かし長生きなのでは?)

 戦争あり、魔物あり、文明レベルが未成熟なことを考慮すると驚くべき数字だと思う。
 少なくとも、日本の戦国時代が平均30年だったことを考えれば、倍近くは生きている。
 
「勇者様のおかげだとそう聞いておる」
「凄いな、勇者!? それで具体的には何をやったんだ?」
「詳しくは知らぬ。人間族のことなど興味も無いからの」
「そこは重要なところだろ......。ドールは相変わらずだなぁ」

 少しずつ慣れてきたとはいえ、酷い過去を持つドールだ。
 どうしても根底に存在する人間嫌いの感情を拭い去ることはできないのだろう。

「対して、妾達獣人族の寿命は100~150年近くはあるのじゃ」
「人間族の倍近くも生きるのか」
「確か......ドワーフも同じぐらいだったはずかのぅ?」
「ふーん。ドワーフもね」

 本来なら、の部分はさらっと流して会話を続ける。
 どういう意味か訊ねなくても分かるし、それをドールに訊ねるほど俺もバカではない。

 ちなみに、エルフは300~600年近くは生きるらしい。
 間が随分と開いているのは、ただのエルフかハイエルフかで異なるとかなんとか。

 その他の種族についてはドールは全く知らないみたいだ。

「というかさ? ドールが将来的には100~150年も生きるということは......」
「なんじゃ? よくある、いつまでも若々しくいられるうんぬんのことかの?」

 ドールは続けて「くふふ。実際そうだがの。主も嬉しかろう?」としたり顔。
 こちら側からは見えないが、きっと2本の尻尾もぶんぶんと振られているに違いない。

「ん? いや、まぁ、それもあるんだが......」
「......だが、じゃと? それ以外は何もあるまい? 他にあるなら言うてみよ」
「獣人族の寿命が100~150年なら、今のドールって子供の中の子供ってことだよな?」
「なッ!?」

 今のドールは14歳。寿命の内の10分の1しか生きていない。
 こちらの世界の人間族に換算すると、ドールは4歳ということになる。

(子供......というよりかは完全に幼児だよな?)

 そうなってくると、ドールを見る目が少しずつ変わってくる。

 今まではちょっと───いや、かなりエロい中学生ぐらいだと思っていた。
 しかし、4歳の幼児ということになると、さすがの俺でも性的対象として見るには......。

(..................ん? さすがの俺でもってどういう意味だ? 俺はロリコン好きではないぞ!?)

 そこは断固否定しておきたい。
 いや、確かにPTはロリロリしくなっているが、俺は依然としてお姉さんが好きだ。

「わ、妾を子供扱いするでないッ!」
「いやいやいや。どっちにしてもまだ子供だろ」
「だから、妾を子供扱いするでないと言うておろう! 妾はもう孕めるのじゃ!!」

 出た出た。ドールの子供ではないと言い張る為の謎理論。
 今まではそこで引いていたが、見る目が変わった今の俺は一歩も引くつもりはない。

 というよりも───。

「子供が「もう孕める」とか、そういうことを言うもんじゃないぞ?」
「なんか余計に悪化しておるのじゃ!?」
「子供は子供らしくしないとな。そうだな......少しはモリオンを見習ったらどうだ?」
「更に悪化したのじゃ!?」
 
 こうして、ドールと楽しく会話をしていたら、目的地である『国境関所ゲルゴナ』に到着した。

───がやがやがや。
───がやがやがや。
 
 関所前では大勢の人々が入国の手続き待ちで列をなして並んでいる。
 といっても、そのほとんどが冒険者であったり商人だったりするのだが。
 国境を越えてまで旅行しようとする酔狂者はほとんどいないようだ。

 当然、俺達もその列に並ぶべく、アテナとモリオンに準備をさせて並ぶことに。

「やっと着いたのー(。´・ω・)?」
「やっともクソもあるか。お前は何もしてないだろ」
「してたってー! お風呂入ってたよー( ´∀` )」
「そういうことを言ってんじゃねぇよ!?」

 窓から顔を覗かせているアテナの髪がしっとりと濡れている辺り、確かに風呂に入っていたのだろう。シャンプーだかなんだかのかなり良いかほりが風に乗ってこちらにまで漂ってくる。

「アユム! ご飯なのだ!?」
「あのな、ご飯じゃなくて......いや、まずは飯にするか」
「やったのだー!」

 アテナと同じく、窓から顔を覗かせているモリオンのお腹が「くぅぅううう」とかわいく鳴っている。関所の向こうから漂ってくるおいしそうなかほりがあっては仕方がないことだろう。

 そして、しばらく待ち、関所前近くにやって来た時にそれは起こった。

───ガタッ!

「な、なんだ!?」
「な、なにー!? Σ(・ω・*ノ)ノ」
「な、なんなのだ!?」

 突如加速する魔動駆輪。

「う、うわぁぁあああ!」
「き、きゃぁぁあああ!」
「ど、どうした!? 敵襲か!?」

 そして、低速な魔動駆輪に次々と轢かれ阿鼻叫喚と化す大勢の人々と衛兵達。

「ド、ドール!? 何をやっているんだ!?」
「いやぁぁあああ! こわぁぁあああい(´;ω;`)」
「う、うぅぅううう。き、気持ち悪いのだ......」

 魔動駆輪はまるで意思を持たぬ暴走車のように荒れ狂っている。
 もう何がなんだか訳が分からないままに被害は拡大していく一方だ。

 その時、魔動駆輪サクラより一つのメッセージが届く。

「ますたぁ」
「サクラか! ドールは何をしている......いや、そんなことよりも、今すぐ魔動駆輪を止めろ!!」
「はぁい。今止めますねぇ」

 サクラの緊急停止にて、ようやく暴走を止めた魔動駆輪。

 後ろを振り返ると、泣き喚いている者、怪我をしている者など多数。
 そこには魔動駆輪によってもたらされた見るに堪えない地獄絵図が広がっていた。

(......いやいやいや。ドールさん、ドールさんや。何をしてくれちゃってんの!?)

 あまりの惨状に俺は顔面蒼白になった。

「ますたぁ」
「......悪い。後にしてくれ」
 
 サクラが何かを言いたそうにしていたが、それを振り切る。

 既に俺の頭の中はドールのことでいっぱいだった。
 ドールがなぜこんな暴挙に出たのかが全く分からない。

 何か気に食わないものや人でもいたのだろうか。
 いや、それにしたって、こんなことをして良いはずがない。

(ドール。なんでや......)

 結局、考えたところで答えが見つかる訳ではない。
 ここは主人として、旅の仲間として、直接本人に訊ねる他はないだろう。

 そう決心して、窓から中を覗きこむと───。

「ドール!?」
「......」

 そこには気を失って倒れているドールの姿があった。



(420日分の取得品)

①攻略の証5個(ジュールリア2個・ラードン1個・ケルクーナ2個)
②ダンジョン5つ攻略       (↑2,500,000)
③転送陣65個設置による特別報酬 (↑32,500,000)
④素材売却による収入       (↑8,500,000)
⑤420日分の生活費       (↓132,000,000)

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『アテナ』 レベル:3 危険度:極小

種族:女神
年齢:ーーー
性別:♀

職業:女神
称号:智慧の女神

体力:50
魔力:50
筋力:50
耐久:50
敏捷:50

装備:殺戮の斧

女神ポイント:841,890【↑342,000】(420日分)

【一言】歩が転移してからまもなく5年ー( ´∀` )
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アユムの所持金:163,452,200ルクア【↓88,500,000】(420日分)
冒険者のランク:SS(クリア回数:31回)

このお話の歩数:約41,100,000歩(420日分) 
ここまでの歩数:約142,698,200歩

アユムの旅行年:58ヶ月+28日(↑420日)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アユム・マイニチ』 レベル:16893【↑2642】

種族:人間
年齢:26
性別:♂

職業:凡人
称号:女神の付き人/竜殺しドラゴンスレイヤー
所有:ヘリオドール/ねこみ/ねここ

体力:16903(+16893)【↑2642】
魔力:16893(+16893)【↑2642】
筋力:16898(+16893)【↑2642】
耐久:16898(+16893)【↑2642】
敏捷:19353(+19293)【↑2642】

装備:竜墜の剣ドラゴンキラー(敏捷+2400)
   神剣デュランダル   (???)
   魔神槍ゲイ・ヴォルグ (体力&魔力+20000)

技能:言語理解/ステータス/詠唱省略

Lv.1:初級光魔法/初級闇魔法

Lv.2:浄化魔法

Lv.3:鑑定/剣術/体術/槍術/索敵/感知/隠密
   偽造/捜索/吸収/治癒魔法/共有
   初級火魔法/初級水魔法/初級風魔法
   初級土魔法/ 物理耐性/魔法耐性
   状態異常耐性

Lv.4:初級風魔法 (※『竜墜の剣』装備時のみ)

Lv.5:???   (※『神剣デュランダル』装備時のみ)

共有:アイテムボックスLv.3
   パーティー編成Lv.3
   ダンジョンマップLv.3
   検査Lv.3
   造形魔法Lv.3
   奴隷契約Lv.3

待機:申請魔法Lv.3
   ワールドマップLv.3
   マッピングLv.3

加護:『ウォーキング』Lv.16893 3024/16894
   『NTR』   Lv.14138 5735/14139
   『不協和音』  Lv.9083  5009/9084
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後書き

 次回、本編『けじめ』!
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