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第6章 力を求めて -再臨ニケ編-
第205歩目 貴族邸の動乱③
しおりを挟む前回までのあらすじ
俺のニケさんをブタなんかにあげる訳にはいかない!
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6/23 世界観の世界編!に一部追記をしました。
追記箇所は、『冒険者』・『依頼』となります。
追記場所はそれぞれ『冒険者ギルド』の前後となります。
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□□□□ ~お嫁に行きます!~ □□□□
時刻は昼時。
カイライ侯爵の屋敷を訪問して既に二時間。
俺とニケさんはカイライ侯爵の勧めもあって昼食を頂くことになった。
今まで見たこともないような豪華(に見えるだけであまり美味くない───調味料が少ない?)な料理に、年代物とか自慢された高そうなワイン。
それに、今日この日の為にと一流の職人に命じて急遽作らせたとかいう銀食器の数々など、大貴族の食卓というものは実に豪勢かつ華やかだ。
そんな厳かな食事の風景に、とある少女達の声が響き渡る。
「お父様」
「パパ」
「なんだね?」
「「わたくし、決めました! 竜殺し様の元へ嫁ぎたく思います!」」
「ぶふぅ!?」
「.....」
───ベキッ。
少女達の唐突な申し出に、ワインを吹き出す俺と眉をひそめ手にしていた銀食器のスプーンをへし折るニケさん。
そして、その様子を見て、吹き出されたワインを素早く拭き取るメイドさんと、へし折られたスプーンを回収し新しいスプーンを提供してくる別のメイドさん。
「竜殺し様、前を失礼致します。僭越ながら、お口回りも拭わせて頂きます」
「ニケ様、新しいものをご用意致しました。どうぞ、こちらをお使いくださいませ」
さすが大貴族に仕えているメイドさん達だ。配慮というか教育がしっかりと行き届いていて動きに乱れがない。
それに、どんなシチュエーションでも完璧にこなしてみせるとの自信が漂っている。どこか異次元世界にいた専属メイドさんの纏っていた雰囲気にとても似ているような.....。そうか、これがプロというやつか。
いや、それはどうでもいいとして、このとんでもない申し出をしている少女達はカイライ侯爵の娘さん達───所謂、侯爵令嬢とか言われる娘さん達だ。
それぞれ8歳と6歳になる、まだまだかわいらしいという言葉がお似合いな元気な少女達である。
いまこの昼食の場には俺とニケさん、そして、カイライ侯爵と第一侯爵夫人、後継ぎである息子さんとご令嬢である少女達といったカイライ侯爵一家の面々が顔を揃えている。
その他には、俺達の世話をするメイドさんの他に、料理を用意するメイドさん達といったメイド隊の皆さんがズラッと総勢20名前後居るぐらいだ。
さて、そんな娘達の様子を見て満足げに頷くカイライ侯爵。
「んっふっふ。そうか。ワシに異存はない。しっかりと竜殺し殿に仕えるのだぞ?」
「ありがとうございます! お父様!」
「ありがとうございます! パパ!」
「良い。良い。───それで、竜殺し殿。娘達の輿入れはいつが良いかね?」
「いやいやいやいやいや。勝手に話を進めないで頂けますか? 私はご令嬢方を娶る気はないですからね?」
「これも何かの縁じゃ。貰っておけ。ワシは何も『娘達のどちらかを第一夫人にせよ』などとは言うておらぬでな。それならば文句はなかろう? んっふっふ」
(それ、「どちらかを第一夫人にしろ」と言外に言ってるようなものじゃねぇか!)
「.....」
───ベキッ。
どうやら察しの良いニケさんもカイライ侯爵の意図に気付いたようで、手にしていた真新しいスプーンを再びへし折っていた。
すると、まるでシュバッ!とニケさんに忍び寄る一つの影。
「ニケ様。新しいものをご用意致しました。こちらをどうぞ」
「お、おぅ。こ、こっちはこっちで洗練されているな.....」
「お誉めに与り光栄です。ですが、私達はメイドとしてあるべき姿で普通に仕事をしているだけでございます」
「は、はぁ.....」
うん。それ、既にメイドの枠を越えているよね。まぁいいか。
と言うか、そもそも前提がおかしい。なぜご令嬢方を娶ることが前提なのか。俺の意思は?
それに、ご令嬢方はいくらなんでも若過ぎる。8歳とか6歳とか、26歳である俺からしたら結婚の対象としてはどうしても見れない。これなら、まだドールの方がよっぽど結婚相手として見れるぐらいだ。
とりあえず、話が大事にならない内に完全否定をしておく。すると.....。
「竜殺し様はわたくしのことが.....お嫌いなんですか?」
「うっ.....。うっ.....。うぇぇ.....」
(ちょっ!? それはいくらなんでもズルくはないですか!?)
「竜殺し殿は娘達にすっかりと好かれているのだな。んっふっふ」
「!!」
カイライ侯爵の口角がいやらしく歪んだのを見逃さなかった。
まるで、しめしめ上手くいった、とでも謂わんばかりの満足げな下卑た笑いを。
(こ、このブタ! これも計算ずくかよ! お前、どんだけだ!!)
そうと分かると、絶対にこの話を認める訳にはいかなくなった。
貴族故に───いや、違う。貴族だからこそ仕方がないとは言え、目的を達する為ならば手段を選ばないあまりなやり方に腸が煮えくり返る思いだ。
ただ、悲しそうな表情で尋ねてくる8歳の娘さんや既に泣きの態勢に移行しようとしている6歳の娘さんの、こんな姿を見せられては罪悪感を感じるというか言葉が詰まる。
いや、それこそがカイライ侯爵の狙いなのだろうが.....。
そもそも、この二人のご令嬢がここまで俺を慕っているのには理由がある。
それは約二時間前のことだ。
□□□□ ~規定路線part.1~ □□□□
ニケさんにおよそ平民らしくない態度で勧誘を拒絶されたカイライ侯爵は、「信じられぬ.....」と何度もぶつぶつとつぶやきながら放心状態となっていた。
正直、このままではもう話は無理だろうと踏んだ俺は早々にお暇しようとしたのだが.....。
「あいや。お待ちくだされ、竜殺し様。侯爵様は気分が優れぬご様子。まだ重要な話が残っておりますれば、少しお待ち頂きたい。お待ち頂いている間は次の場へとご案内させて頂きます故に」
そんな俺の様子に気付いたのか、同席していたいかにも小賢しそうな貴族に先手を打たれてしまった。
こちらは招かれた身、「まだ話が残っている」と言われてしまっては勝手に帰るにはいかないだろう。それは無礼千万というものだ。貴族うんぬんというよりも一社会人としてな。
そして、案内された先というのが、ご令嬢方がお茶を楽しんでいたサロンだった。
ちなみに、サロンへは俺一人が案内された。ニケさんは別室にて待機している。
始めは同行すると渋られたのだが、サロン内はそういう場所だと説明されたので、無理矢理強行して不興を買うのもマズいと判断した上で俺が説得するに至った。
「あら? あなたが例の?」
「お姉ちゃん。このおじさん、誰?」
「お、おじさん!?」
「お父様から聞いていないの? 本日お見えになると伺った竜殺し様よ」
「ふーん。このおじさんが竜殺し様.....本物?」
どうやら、カイライ侯爵は元より俺をご令嬢方に紹介するつもりでいたらしい。
正直、ご令嬢方による色仕掛けが行われる可能性があることは、ドールにもあらかじめ注意されていたことだったので、今更驚くには値しない。
ただ、俺を色仕掛けするには少し───いや、大分若過ぎることには驚いてしまったが.....。「ま、まさか、これも幼女に好かれる呪いだとでも言うのか!?」と一瞬勘繰ってしまった程だ。
「はじめまして。ご令嬢様方。私は竜殺しのアユムと申します。見目麗しいご令嬢様方にお会いできて大変嬉しく思います」
「「!?」」
素早く拝謁のポーズをして挨拶を済ませた後、俺はそれを待つ。
すると、俺の唐突な行動に一瞬驚いた様子を見せたご令嬢方だが、それの意味するところを察してくれたらしい。なぜか嬉しそうに手を差し出してきた。
こういうのを見ると、まだまだ少女にしか見えなくとも貴族の令嬢なんだな、と思わされる。
特に、うちには王女なのに作法の『さ』の字すら最近まで分からなかった子や、歴とした王女なのに全く王女に見えない子がいるから余計にそう思う。
(まぁ、モリオンとかモリオンとかモリオンとか?)
とりあえずご令嬢方を待たせる訳にはいかないので、差し出された右手を頂き、手の甲にそっとそれぞれをキスをしていく。
ここまでが貴族の淑女に対する一連の挨拶となる。
そう教わっていたのだが.....。
「「竜殺し様、ありがとうございます!」」
「はぁ.....?」
ご令嬢方からは何故か花開いた満面の笑顔でお礼を言われてしまった。
俺としては教わった通りに挨拶をしただけなので、ご令嬢方にお礼を言われるようなことは何もしていないはずなのだが.....。
これは後に知ったことなのだが、この貴族の淑女に対する礼は大人の女性に対して行うものらしく、15歳未満の女の子には例え貴族であろうと(王女、皇女は除く)普通に挨拶をすればいいらしい。
つまり、ご令嬢方が喜んでいたのは、俺がご令嬢方を大人の女性として扱ったからという訳だ。
「さあさあ、竜殺し様もお座りになって。一緒にお茶を楽しみましょう」
「竜殺し様、わたくしの隣へどうぞ」
「では、ありがたくそうさせて───」
「あっ。こら! 妹のくせに生意気よッ! 竜殺し様、わたくしの隣へどうぞ」
「お姉ちゃんばっかりズルい! 竜殺し様はわたくしの隣なの!」
「お、おぅ.....」
どうやら、第一印象はバッチリだったようだ。そう、バッチリだったようだが.....。
どうでもいいことで、姉妹が言い争ってしまっている。こういうところはまだまだ子供なんだろう。
結局、俺はご令嬢方の間に座ることで、このどうでもいい問題を解決することにした。
「まぁ! 竜殺し様はお優しいのですね!」
「やったー! ありがとうございます! 竜殺し様!」
別に大したことでもないのに持ち上げてくれるので、妙にこそばゆい。
それに、俺としても両手に花状態で満更でも───いやいや。ご令嬢方はまだまだ子供。そんな子供相手に両手に花とか言っていたら、俺がロリコンだと認定されかねない。気を付けねば.....。
ただ、そう思ってしまう程には、ご令嬢方は美しいというかかわいらしかった。ブタであるカイライ侯爵にはとても似ても似つかないかわいらしさである。
きっと、ご令嬢方はご夫人似なのだろう。
(.....良かったね、ブタに似なくて(笑))
・・・。
その後はご令嬢方とお茶を楽しみながら、楽しいひとときを過ごした。
特に、ご令嬢方が興味を寄せられたのは冒険の話である。
と言っても、ご令嬢方が気に入ったのは俺の華々しい冒険譚ではなく、アテナのへっぽこ話の方だが.....。HAHAHA。
(おのれ、アテナ! この場に居ないくせに、ご令嬢方に好かれるとか!!)
ちょっと悔しかったので、俺はある一芸をご令嬢方に披露することにした。
取り出したるは何の変哲もない一本の細長い紐。
「よく見ていてくださいね? これをこうして、ああして───はい。カニさんです」
「「おぉ!」」
───パチパチパチパチ。
───パチパチパチパチ。
「ふっ.....」
降り注がれる拍手がとても気持ちいい。
よーし! お兄さんがとっておきのものを見せちゃうぞ!!
「更に、こうして───東京タワー!(どやッ!)」
「「おぉ.....?」」
───パチ.....。パチ.....。
───パチ.....。パチ.....。
「.....あれ?」
「お姉ちゃん。とうきょうたわーって、なに?」
「さ、さあ?」
「なん.....だと!?」
ガーン!! あやとりのド定番とも言うべき東京タワーが、ご令嬢方にはいまいちだったことにちょっとショックを受けた。
だが、仕方がない。なんたって、ここは異世界だしな。ご令嬢方にも分かるものにしなかった俺が全面的に悪い。
ちなみに、あやとりは俺の特技の一つでもある。
とは言え、某猫型ロボットマンガに出てくる眼鏡少年の腕前には遥かに劣るが。
そして、あやとりが俺の特技になった理由は、単純に姪の相手をしていたら勝手に覚えてしまったからだ。
あれは俺が社会人になったばかりの頃で、甥と姪はご令嬢方と同じ年頃のこと。
その頃から、俺が長期休暇中(と言っても、一週間程度だけど)にはくそ生意気な甥と姪を預かるという地獄が始まることとなった。
ちなみに余談だが、俺の部屋を監視するようになった後輩である須藤さんが初めて甥と姪を見た時、甥と姪が俺の子供だと勘違いしたらしく、それはもう発狂したとかなんとか。
閑話休題。
話を戻して、男の子である甥は割りとすぐにゲームに楽しみを見出だしていたらしく面倒を見るのは楽だったのだが、問題は女の子である姪だった。
当然のことながら、当時の俺は姪が普段何をして遊んでいるのかが全く分からない。
だから、「お絵描きする?」「おままごとする?」などと、俺の知る範囲で女の子の遊びを色々と聞いてみたのだが、姪には「おじさんって、子供ね(笑)」と、鼻で笑われるレベル。
思わず、「子供はお前だろッ!?」と大人気なくツッコミを入れてしまうところだった。
かと言って、普段姪と一緒に居るだろう甥は一人でゲームを楽しんでいたので、助けを求めることもできず.....。
結局、悩んだ俺が行き着いた答えがあやとりだった。
なんというか、今時ではとても珍しいあやとりで、もの珍しさで、姪を釣った的な?
そして、それが大成功だったという訳だ。
ただ、その翌年には「あやとりとか(笑)」と、再び姪に鼻で笑われてしまうのだが.....。HAHAHA。
だから、ご令嬢方もあやとりという未知の娯楽に目を輝かせていた。
と言うか、そもそも、この世界には娯楽があまりにも少な過ぎる気がする。
俺の知る限りでは、日本でいうところの昭和───では、文明レベルが高過ぎるので、いいとこ江戸時代(....ぐらいか?)辺りの娯楽レベルだ。
いや、魔道具店には文化革命の影響で昭和~平成初・中盤レベルの娯楽が色々と揃っていたりするのだが、どれもこれも高過ぎてなかなか手に入らなかったりする。
恐らく貴族であろうとも、そう簡単にはいかないだろう。
そもそも、未知のものにそこまでの価値を見出だせるかどうか.....。
だからこそ、その価値を知り得たご令嬢方はあやとりという未知の娯楽に興味津々だ。
「わたくしもやりたい! 竜殺し様! わたくしにもできますか!?」
「えぇ。できますよ。難しくはないですしね」
「わたくしも! わたくしにも教えてくださいませ! 竜殺し様!」
「もちろんです。妹君もご一緒にどうぞ」
俺の教えを素直に受け入れてどんどん上達していくご令嬢方。
「竜殺し様、いかがですか?」
「お見事です。姉君はお美しいだけでなく賢くもあられるのですね」
「えへ。えへへ。う、嬉しいですわ」
どうやら、お姉さんの方は相当飲み込みが早いようだ。
一度教えただけで、あやとりをほぼほぼマスターしている。
所謂、賢姫というやつなのだろう。将来が楽しみな子だ。
「むー。できなーい。できないー!」
一方、妹さんの方はかなり苦戦している。
ぶすっとした表情でテーブルをバンバンと叩いて不満を露にしてしまっている。
所謂、不器用なタイプなのだろう。でも、これはこれでかわいいかも。
「では、私と一緒にやりましょうか。妹君、お手を拝借します」
「あっ.....。パ、パパ以外の殿方に触れられたの初めてかも.....」
「あー! 妹のくせに生意気よッ! 竜殺し様、わたくしもお願いします!」
「お姉ちゃんはダメー! 竜殺し様はわたくしで忙しいのー! べー、だ!」
「お、おぅ.....」
またしても、どうでもいいことで言い争ってしまうご令嬢方。
だが、見ていてなんだかほのぼのとする。
多分、この時をもって、俺とご令嬢方はかなり仲良くなったんだと思う。
ただ、この時のご令嬢方は俺に好意などといった感情を抱いていたのではなく、単に俺を『面白い人』や『一人前の女性として扱ってくれる人』などといった興味の対象としてしか見ていなかったと思われる。
そう、この時までは───。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き
次回、本編『貴族邸の動乱④』!
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今日のひとこま
~淑女への作法~
「「では、竜殺し様。せっかくですので、淑女への作法もお教えしますね」」
「淑女への作法?」
「「はい。今回の指名依頼は恐らく招待状。となれば、伺う時間帯から考えても昼食を誘われる可能性は非常に高いかと思われます」」
「なるほど。でも、なぜそれで淑女への作法を?」
「「会食ともなれば、ご婦人も同席される可能性は十分にありえますので」」
「ふーん。まぁ、ついでだし習っておくか。どうすればいいんですか?」
「「やり方は簡単です。先程お教えした拝謁の仕草をお願いします」」
「拝謁の仕草ですね(.....あれ? 胸に手を当てるのはどっちの手だっけか?)」
貴族の細かいルールを覚えるのに必死で、仕草を微妙に忘れてしまった。
とりあえず、それっぽい仕草をしておけば問題はないだろう。
俺は顎を少し引くように頭を伏せ、左手の拳をグーの形にして右胸に添え、片膝をつく仕草をした。
「拝謁の仕草って、確か.....こうでしたっけ?」
「「逆です、逆です。竜殺し様」」
「あっ。すいません。ありがとうございます」
「「いえいえ。では、続きをお教えしますね。淑女の前で拝謁の仕草をしますと、淑女側から手を差し出されます───こんな感じに、ですね」」
そう言って、右手を差し出してくるナシーネさん、ニシーネさん。
「「それを確認できましたら、竜殺し様は空いている左手でもって私達の右手を恭しく戴きます」」
「なるほど。こうですね」
「「はい。それで大丈夫です。そうしたら、軽くでいいですので、手の甲にキスをします」」
「.....はい?」
「「ですから、手の甲に軽くキスをします。それが淑女への作法となります」」
「そ、そうですか.....。えっと? 練習ですし、キスした方がいいんですかね?」
「「あっ! い、今はしなくていいですからね!? と言うか、絶対にしないでください!!───ひぃ!?」」
「?」
いきなりどうした?と思ったら、原因はニケさんだった。
もの凄い形相でナシーネさん、ニシーネさんを睨んでいる。
まぁ、俺の視線に気付いた途端、にこっと微笑まれたが.....。HAHAHA。
「そう言えば、さっき俺は拝謁の仕草を間違えましたが、あれは何か別の意味があったりするんですか?」
「「(.....ほっ)。は、はい。ありますよ。と言うか、先程のは軽々しくやらないことをお勧めします」」
「と言いますと?」
「「先程竜殺し様がやられたのは【誓いの礼】を意味します」」
「誓いの礼、ですか?」
「「はい。特に淑女への作法としては最敬礼となりますので、お気を付けください。いいですか? 絶対に軽々しくやってはいけませんからね?」」
「それは気を付けますが.....そこまででですか?」
「「はい。誓いの礼は『ここぞ!』という時や『誓いを立てる時』にのみするようにしてください」」
ふーん。まぁ、する機会はないだろうが、頭の片隅にでも置いておくか。
あっ! 『誓いを立てる時』と言うのなら、ドールには改めてしてあげた方がいいのかな?
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