上 下
225 / 349
第6章 力を求めて -再臨ニケ編-

第190歩目 女神と転移!最強神vs最強種⑤

しおりを挟む
前回までのあらすじ

再び【黒死化】したモリオン!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

□□□□ ~それは突然に~ □□□□

「歩様。歩様」
「ん、んぅ.....」

 体を揺さぶられ、心地好い感覚の中で目を開けると、そこには微笑みをたたえた女神様ニケさんがいた。

「おはようございます」
「お.....はようございます?」
「お体で、どこか気になるところはございませんか?」
「?」

 どうやら俺は気を失っていたらしい。
 一応、確認してみるも、体のどこにも問題は無さそうなので「大丈夫です」と返事をしておいた。

「.....」

 ただ、確かに体のどこにも異常は無いのだが、妙な違和感だけが少し残っている。
 それは、本来なら気にも留めない小さなものなのだろうが、俺にはこの妙な違和感に覚えがあった。

 強制的に体を引っ張られたような、この妙な感覚.....。

 神界での強制転移の時に感じたそれととてもよく似ている。
 いや、今回はあの時よりもずっと濃密だったような気がする。

「コンちゃーん、おーきてー(・ω・´*)」
「う、うぅ.....」

 どうやら、俺と同じくドールも気を失っているようだ。
 アテナが激しく体を揺さぶっている。も、もう少し優しく起こしてやれよ.....。

「やはり、慣れない者には少しきつかったでしょうか?
 距離も結構ありましたしね」

「えっと.....。ここは?」

 周りを見渡すと、先程まで居た空き地とは全く異なる場所に居るようだ。
 一番最初に目に飛び込んできたのは、白塗りの壁に赤い屋根。瀟洒しょうしゃな造りの三階建ての洋館。
 それに芝生が植えられた広い庭に、小さな噴水付きの池もある、まさに豪邸と言っても過言ではない場所だ。

 俺達はいま、そんな豪邸とも言える場所の芝生の上に寝転がっている状態である。

「はい。魔力の多い場所にやってきました」
「.....」

 それ、答えになっていません!

 ニケさんのトンチンカンな答えに、思わずそうツッコミたくなってしまった。
 これはあれだ。韓国のとある市を訪れて「ここは何市ですか?」と尋ねたら、「アジアですね」と返答されたようなものだ。少し違うか。

「戦う問題無さそうです」
「はぁ.....。そ、そうですか。.....はっ! モ、モリオンは!?」

「.....」

 急いで辺りを見渡すと、俺達の傍らにゴロンッと横たわる黒蝶の繭みたいなものがあった。
 良かった。モリオンも無事一緒にいるようだ。

 ただ、少し様子がおかしい.....?

 先程まで、まるで息をするかのようにドクンッ!ドクンッ!と不気味に脈打っていたそれが、今は何事もなく沈静化している。
 まるで息をしていないような.....、まるで生きていないような.....、ちょっと不安な感じになる。

「ご安心ください。ただ気絶しているだけでございます」
「気絶!? これから覚醒しようって時にですか!?」
「はい。気絶です。ドラゴンもまた、耐えられなかったようですね」
「気絶.....」

 ちょっとほっこりした。
 俺達の身に何が起こったのかはいまだ不明だが、それでもモリオンはモリオンだった。

 通常、『覚醒している最中はあらゆる攻撃が無効』というお約束が存在する中、それに反してしっかりと気絶している点は俺の知るモリオンそのものだ。
 例え【黒死化】しようとも、モリオンは俺の知るかわいいおバカなままのモリオンなのである。

 そう確信すると同時にふと思った。
 あれ? モリオンが気絶している今なら、このまま何事もなく解決できるのでは? と。

 しかし、俺のそんな考えに、すかさず反対の意見が上がる。

「それでは戦えないじゃないですか! 困ります!」
「そ、そうですか.....」

 えー!そんなー!みたいな衝撃を受けた表情で詰め寄ってくるニケさん。
 酒の為なら何でもやるアルテミス様とはまた違った意味で、この女神様ニケさんはダメなタイプだった。

 事態うんぬんよりも戦いたいらしい。
 相当な戦闘狂バトルジャンキーである。もう好きにさせてあげる他ないだろう。

「それで、ここはどこなんですか?」
「異世界ですよ」
「異世界?」
「はい。先程まで居た世界とはまた異なる別次元の世界です」

 別次元の世界.....?

 意味はよく分からないが、どうやらパルテールとは異なる世界に転移してきたらしい。
 そして、ニケさんの言う通り、確かにこれならパルテールの人々の誰の目にも触れることはないだろう。異世界に転移するとはさすがはニケさん! 目の付け所が違うぜ!

「なるほど。と言うことは、どなたかが管理する世界ということですかね?」

 別次元ということは、オリンポス12神のうちの誰かの世界という可能性が高い。
 一応、ニケさんが選んだ場所なので問題は無いだろうが、それでも失礼が無いようにするのは最低限のマナーだと思う。もし何かあったら、神界訪問時に影響が出そうだし。

「いえ。さすがに、他の主神の方々の管理する世界ではありませんよ。
 仮に何かあったらご迷惑ですし、アテナ様の名声に泥を塗る事態にもなり得ますから」
「はぁ.....? では、どなたが管理する世界なのですか?」

「それは存じません」
「.....え? ど、どういうことですか?」

「言葉の通りです。ここは別次元。
 アテナ様達、オリンポス12神が治めている世界とは全く異なる次元の世界なのですから」

 はぁぁあああ!?
 ほ、本当の意味での異次元なのかよ!?


 こうして、俺達はニケさんのただただ戦いたいという純粋な戦闘意欲によって、奇しくも異次元の世界へとやってきてしまったのである。


□□□□ ~『勝利』という神護~ □□□□

 ニケさんの力の一端である【異次元転移】によって、俺達は異世界へとやってきてしまった。
 それも、本当の意味での異次元な世界へと.....。

「つ、つまりここは、アテナ達オリンポス12神様が管理する世界ではないということですか?」
「仰る通りです。ここがどこで、誰が管理している世界か、私には全く分かりません」

 いやいやいや。
 それ、本当に大丈夫!?

「ア、アテナも分からないのか?」
「ぜーんぜんだねー。あーははははは( ´∀` )」

 おぅ.....。
 これはマジなやつだ。

 一応、智慧の女神を司っているアテナが全く知らないとなると、これはマジで異次元な世界なのだろう。
 と言うよりも、簡単に異次元に来れてしまうニケさんって、どれだけ凄いのだろうか.....。さすがは最強の女神というべきか。

 いや、感心している場合ではなかった。

 今からドンパチ始めようというのに、どこの世界かも分からないところで勝手に暴れてしまっても大丈夫なのだろうか。
 この世界を管理する、神様?管理者?に怒られたりしないものなのだろうか。

「だいじょーぶ! ニケがいるじゃなーい( ´∀` )b」
「ご安心ください。相手に問答無用よろこんで認めさせますので、何も心配はございません」

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

 別に、ニケさんのことを信用していない訳じゃない。
 むしろ、ニケさんがいて安心しているぐらいだ。とは言え、この不安の原因を作ったのはニケさん自身ではあるのだが.....。HAHAHA。

 しかし、異次元な世界の神様?管理者?が相手だ。
 何があるか分かったもんじゃない。用心するに越したことはないだろう。

 そう思っていたのだが.....。

「本当に問題ありませんよ。
 この世界の神々の力量も分かりましたので、私の神護『勝利』で十分対応可能でございます」

 そう、胸を張って自信満々に語るニケさん。

 どうやら、この世界の管理者は神様らしい。
 そして、その神々の力量も分かってしまったようだ。ニケさん凄すぎない!? と言うか、いつの間に!?

「結界を破った際に、ある程度分かりました」
「結界?」

「はい。基本的に、世界ごとによって一つ一つ結界が設けられております。
 これは、異なる世界からの召喚や侵略を防ぐ目的の為に張られているのです」

 つまり、こういうことらしい。

 とある場所で産まれた人々は、そのとある場所にて生きる権利と安全を神様から認められている。
 そして、普通は認められた世界で、そのまま生を終えるのが一般的らしい。

 しかし、稀に俺や他の勇者のように、神様から突然異世界へと召喚されてしまうケースがある。
 その場合、そのとある場所を管理してる神様の召喚ならば全く問題はないらしい。

「も、問題無いって.....。召喚された側の都合や人権的なものはどうなっているんですか?」
「一応、意思を伺う規定ですが、あくまで規定ですので.....」

 お、おぅ.....。
 つまり、どうするのかは神のみぞ知るということか.....。

 ただ問題となるのは、管理者以外の召喚の場合だ。
 これは明確な規定違反にあたるのだとか。

 それ故、管理者以外の召喚を防ぐ為に、次元に、星に、世界に、巨大な網目のような結界というものを張って管理しているらしい。
 更に、この網目のような結界は、異世界または異次元を漂う異分子の侵入をも防ぐ意味合いもあるのだとか。

「これは、アテナ様達オリンポス12神が管理している世界に限った話ではございません。
 多くの世界にてそう決まっているのです。そして、恐らくこちらの世界でもそうなのでしょう」

 なんとなくだが、結界というものの存在理由は理解できた。
 しかし、同時に疑問に思うことがある。

「先程、「多くの世界にて」と言いましたが、なぜ他の世界の事情も知っているんですか?」

「神に反逆を企てておいて形勢不利と見るや、異世界に逃げようとする愚か者も稀にいるんですよ。
 さすがに、そんな愚か者を見逃す訳にはいきませんので、逃げた先まで追い掛けていった結界、色々と知る機会を得ました」

 ちなみに、その前例がフェンリルであったり九十九尾だったりするらしい。
 冗談じゃない。そういう結界の類いは『B級妖怪までしか通れない』とかいうお約束があって然るべきだ。どう考えたって、神に抗おうとか考えちゃうフェンリルや九十九尾クラスはS級妖怪だろ!

「B級というのが何なのかは分かりませんが、何者も通しません」
「何者も.....。それは神様であっても、ですか?」

「神にもよりますが、これを破るのは至難の技でしょう。結界とはそういうものなのです。
 特に、次元が異なる場合の結界は通常の結界よりもうんと強固となりますので、これを破るのは不可能だと言えるでしょう」

 どうやら、B級どころか異分子は全く受け付けないようだ。
 
 そうそう、御大層な結界とかいうものはそれでいいんだよ。
 なんでもかんでも可能な神様が色々とおかしい!

 と言うか、「だったら、結界は網目でなくともいいんじゃないだろうか?」とも思ったのだが、結界とは神様でいうところのあやとり遊戯のようなものらしい。
 つまり、あやとりで遊ぶ感覚で、糸というか結界の網目を張るものなんだとか。

 遊び感覚で何人なんぴとも通れない結界を張れてしまう神様という存在は、やはり何もかもが無茶苦茶である。

 そう思ったところで、ある矛盾に気付いた。
 神によっては破るのが難しいという結界を、次元を跨ぐと破るのは不可能だという結界を、ニケさんは容易く破ってしまっているという事実に.....。

「私の場合は、神護『勝利』のおかげですね」
「そもそも、その『勝利』という神護はどういうものなんですか?」

 改めて聞く内容でも無いかもしれない。
 恐らくは、文字通りな内容の気がする。

 ただ気になるのは、『その効果がどの範囲まで及ぶのか』、これに尽きる。
 と言うか、さすがにそれは秘密だろうか。

 ただ、なんでもかんでも適用されるという訳にはいかないだろう。
 仮にそうだとしたら、その力はあまりにも強大過ぎる。少なくとも、付き神に与えられるべき力ではないと思う。

「いいえ! 歩様に隠し事など、だ・ん・じ・て、致しません! ご希望とあらば喜んで!」

 お、おぅ.....。
 ニケさんからの愛がとても激しい。

 そもそも、何かしらの規定はあるのではないだろうか。
 まぁ、喜んで教えてくれるというのなら、それはそれでいいのだが.....。

「私の神護『勝利』とは、『必ず勝つ』という力ではありません。
『負けることはない』という力を発揮します」

「それって、何か違うんですか? 負けることがないなら、それは勝利なのでは?」
「全く異なります。『負けることはないが、勝つこともない』ということもありますので」

 なるほど。
 状況によっては『引き分ける』ことも有り得るということか。

 やはり、思った通り、ある程度の制限はあるようだ。
 かと言って、それでも付き神に与えるには強大過ぎる力に思えてならないが.....。

 とりあえず『勝利』という神護についてはよく分かったのだが、それが結界破りとどう関係があるのだろうか。
 まさか『結界に勝利した』とでも言うのだろうか。いや、それはそれで無茶苦茶というか、意味が分からない。そもそも、『結界に勝利した』ってなんだよ。HAHAHA。

「いえ。今回の場合は不可能という『概念』に勝利致しました」

『概念に勝利した』って、なに!?
 そっちのほうが意味が分からないのだが!?


 やっぱり、神様という存在は無茶苦茶だった。


□□□□ ~時、きたる~ □□□□

 ニケさんの神護『勝利』は、概念にすらも勝つことができるらしい。
 と言うか、「概念にも勝てるのなら、引き分けることもないのでは?」とも思ったが、そういう訳にもいかないようだ。

 つまり、遥かなる頂きのことは、凡人である俺には計り知れないということだろう。

 うん、それでいいような気がしてきた。
 これ以上、深入りするのは危険だろう。

 そして、ニケさんは結界を破った際に、この世界の神様の力もある程度推測できたとのこと。
 故に、何かあったらニケさんがきちんと対応してくれるらしい。最悪、制圧という名の説得をも辞さない構えとか.....。

 それは本当に止めて!
 異次元の神と争うとか、さすがに戦闘狂バトルジャンキー過ぎる!


 ・・・。


 ここは、とある亜空間。
 モリオン覚醒まで残り僅かということで、俺達はとある亜空間へと場所を移した。

 さて、このとある亜空間なのだが、実は現地の勇者に提供してもらった場所だ。
「ドンパチするなら、ここが最適だ」と言うので、お言葉に甘えることにした。(ニケさんによる友好的な話し合い済み)
 当然、場所を提供する代わりに、ニケさんとモリオンの戦いを「ぜひ見学したい!」と申し出られた訳なのだが.....。

 はぁ~。戦闘狂バトルジャンキーが多すぎて嫌になるわ~。

「ふわー! いいところだねー( ´∀` )」
「うむ。とても快適な環境なのじゃ」
「これは.....。ヘカテー様の使う魔術に少し似ていますね」

 アテナ達の言う通り、この亜空間はとても心地好い環境である。
 暑過ぎず寒過ぎず、思わず昼寝でもしたくなる、そんな春うららかな陽気だ。

「いいねー! いいねー! じゃー、おやすみなさーい(^-ω-^)Zzz」
「寝るのはモリオンをなんとかした後にしろ!」
「えーr(・ω・`;)」

 えーr(・ω・`;)じゃねえよ!?
 お前、モリオンの姉だろ!

 アテナも大絶賛なこの亜空間だが、現地勇者曰く。
 なんでも、個人に合わせた最適な環境になるよう自動的にプログラミングされているのだとか。
 しかも、個々体に合わせた環境の影響で、様々な植物や動物などが季節や生存条件を問わずに生息できるらしい。

 事実、牛だか羊だかなんだかよく分からない動物を始めたとした多くの動物が、一切争うことなく悠々自適に過ごしている。
 更に、ここでは、環境だけではなく精神も安定させていることから、天敵同士でも争うことはないそうだ。所謂、生存競争や弱肉強食を無視したチート環境ということになる。

 ちなみに、餌はちゃんとあげているらしい。
 つまり、餌があるから動物間で争いが起きないということなのだろう。

 そんなチート環境に驚き呆れている俺の前に、一匹の変なうさぎが.....。

「あー!! うさぎさんだー! ふかふかでかわいいねー(〃ω〃)」
「ふ、ふん! 妾のほうがふかふかのもふもふなのじゃ!」
「あまり強そうに見えませんね。.....非常食でしょうか?」

 ドールは何を意地になっているんだよ.....。
 あと、ニケさんは何かおかしい!


 また、この亜空間では地球で見たことのあるお馴染みの野菜や果物が所狭しと成っている。
 更には、まさに今が食べ頃と言わんばかりに、その実をおいしそうに熟しているのが非常に気になるところだ。

 ただ少し変な点は、人参や大根などが木から成っているところだろうか。
 いや、全ての野菜や果物が木から成っているようだ。.....なんだこれ?

 ちなみに、これらの野菜や果物なのだが、なんでも和食を愛する現地勇者の為に実験に実験を重ねて、やっとの思いで実らせることに成功したものなのだとか。現地勇者、愛されてんな!
 この野菜一つ一つ、果物一つ一つには、現地勇者への愛が詰まっていると紹介された時には、思わず口から砂を吐いてしまいそうだった。

「もぐもぐもぐー!」
「妾達の世界のものとそう変わりはないのじゃな。いや、勇者様が革命を興したくれたおかげかの」
「栽培する必要があるのですか? 非効率では? 取り寄せればいいだけですよね?」

 アテナは食べながら話すな!
 あと、ニケさんはちょっと黙って! 現地勇者一行が苦笑してるから!!


 それ以外にもガーデニングとおぼしき場所では、きれいな花々が己の美しさを競わんとばかりに華麗に咲き乱れている様は圧巻だった。
 イメージ的には富良野のラベンダー畑を想像して欲しい。但し、そこに広がるのはラベンダーだけではなくて、地球や日本の四季折々に見られる花や植物、更には見たこともないようなものまであるのだ。

 そして、これだけ様々な花や植物が咲き乱れているというのに、少しも煩雑さや下品さを感じず、むしろ素晴らしいと感じてしまうのは、ここを管理している人のセンス並びに愛情の賜物なのだろう。
 その人の笑顔もたんぽぽみたいで、このガーデニングにはお似合いだと紹介された時には、思わず激しく同意したものだ。ひぃ!? ニケさん、そんなに睨まないで!

「きれーだねー(o゜ω゜o)」
「これは姉さまに同意じゃな。それに、トカゲが好きそうなのじゃ」
「これは見事です! アテナ様のお部屋もこのように致しましょう!」

 モリオンは何気に食べ物だけではなくて、自然と戯れるのも好きだという一面を持っている。
 確かにドールの言う通り、モリオンはこの光景をきっと気に入ることだろう。ドールも大概モリオンのことが好きだよな?


 ザッと軽く紹介したが、この亜空間はまさにこの世の理想郷ユートピア、人々が長年探し求め続けた楽園エデンと言っても過言ではない空間である。
 しかも、この亜空間を現地勇者が一人で創り上げたというのだから更に驚きである。げ、現地勇者すげぇな.....。

「そうでしょうか? 歩様は半神と言えど、今は神の身です。
 決して、現地勇者あの者に引けを取りません! いえ、むしろ勝っています!!」

 ニケさん、それ何のフォローにもなっていないです.....。
 自前の現地勇者とは異なり、俺の半神状態は借り物の力なんですよ?


 そんな寂寥感に包まれていた俺に、まさかの救いの手が差し伸べられる。

「のぉぉぉぉぉおおおおおだぁぁぁぁぁあああああ!」

 ついに、新生モリオン(敵)の登場である。

 そして、禍々しい如何にもといった黒蝶の繭から出てきた正体が、小さくてかわいい女の子だという事実に現地勇者一行は驚いているようだ。ふふん。この子は俺の(自称)娘なんだぜ?

「思った以上に、出てくるまでに時間が掛かりましたね。
 これは.....。どうやら、厳しく教育しないといけないようです」

「あ、あの.....。ほどほどでお願いしますよ?」
「お任せください。.....徹底的ほどほどに教育します」

 それ、言ってることとやってることが違いますよね!?

 俺の求めに、若干目を逸らしたような気がするニケさんが華麗にサムズアップ。
 本当に任せてしまっていいのか不安になるが、この場はニケさんに頼る他はない。まさか現地勇者に任せる訳には行かないだろうし.....。

「では、早速死合いましょうか」
「のだぁぁあああ!」


 こうして、最強神であるニケさんと最強種であるモリオンの戦いが、いま火蓋を切って落とされようとしていた───。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

次回、本編『最強神vs最強種⑥』!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今日のひとこま

~地球の結界は?~ 

「そう言えば結界でしたっけ? あれは必ずどの世界にもあるものなんですか?」
「そうですね。今のところ結界が無い世界というのは存じ上げません」
「となると、俺のいた世界にもあるんですよね?」
「当然、存在します」

「そうなのか。ちなみに、誰が管理しているんですか?」
「アテナ様ですよ。ですから、地球人の多くが勇者となっているのです」
「え!? その言い方だと宇宙人の勇者もいるんですか!?」
「いないとは言いませんが、あまり多くはないですね」

「そ、それは侵略者とは違うんですよね?」
「はい。あくまで管理している世界間でのやりとりとなりますので」
「そうですか.....。でも、ちょっと心配になりますね。俺のいた世界は大丈夫なんですか?
 あそこは魔法とかとは無縁な世界ですし、侵略されたら手も足も出ないような.....」
「現代兵器がありますよね?」

それはそうなんだろうが.....。
ただ、万が一、それが切っ掛けで第三次世界大戦とかにでも発展したらシャレにならんぞ?

「でも、ご安心ください」
「と言いますと?」
「歩様のいた世界はどこよりも安全でございます」
「そうなんですか!? ちょっと意外です。.....あれ? でも、俺は簡単に召喚されたような?」

まぁ、簡単にというか、な"ーの召喚に巻き込まれただけだけどな! HAHAHA。はぁ.....。

「歩様を召喚後、私がかなり強固に結界を張り直しました。
 そうですね。強さ的には、私でも破れないほどにガッツリと、です」
「ニ、ニケさんでも!?」
「はい。歩様の世界は例えポセイドン様であろうと、ヘカテー様であろうと、
 それこそ、最高神であるゼウス様であろうとも、恐らくは破れないものだと自負しております」
「あ、ありがとうございます。でも、なんでまた、そこまで強固に?」

「だ、だってぇ.....」
「?」
「将来、私と歩様が結婚した後、一緒に住まう土地になるかもしれないじゃないですか!
 もうっ! 歩様ったら! 恥ずかしいこと言わせないでくださいよ!!」
「.....」

お、おぅ.....。随分と気が早いことで。

顔を赤くして、いやんいやんしているニケさんはとてもかわいい。
とりあえず、ニケさんのおかげで、俺は帰ることができる場所がちゃんとあるらしい。

ありがとうございます。ニケさん。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...