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第5章 最愛の女神!

第132歩目 ありのままのあなたを!女神ニケ⑤

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前回までのあらすじ

最愛の女神ニケさんとついに恋人となった!

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1/5 前話の次回告知を訂正しました。
   本編『ニケの愛情弁当』! → 本編『ありのままを』!に変更。
   大変申し訳ありません。

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ニケさんにどうしても隣を歩いて欲しい俺は順を追って仲良くなることを提案した。
その提案の手始めというのが.....。

「ニケさん。あなたが好きです」

告白することだった。
神界では恥ずかしさのあまり口にすることのできなかったこの想いも、俺とニケさんの間での認識の違いやニケさんと対等でのお付き合いをしたいという物理的な欲求が、俺に決断をさせ、そして恥ずかしさを上回ることとなった。

その結果.....。

「こんな俺ですが付き合って頂けますか?」
「はい!喜んで!」

ニケさんの美しい笑顔とともに添えられたラプソディー。
こうして、俺の年齢=彼女なしの26年間の人生にようやく終止符が打たれ、初めての春を迎えることになった。


(いいいいいよしゃあああああ!)


□□□□ ~隣を歩いて!~ □□□□

さて、ニケさんと念願の恋人になれた今ならきっと隣を歩いてくれるだろう。
早速、にまにまと口元が緩んで嬉しさを全開に表現しているニケさんにお願いをしてみる。

「隣を、ですか?」
「はい。お願いします」
「それは構いませんが.....。どうしてそこまでこだわられるのでしょうか?
 歩様を立てることにデメリットなど無いように思われますが.....」

どうやら隣を歩いてはくれそうだが、納得はしていないようだ。
ニケさんの顔には『納得できるそれなりの説明をして欲しい』とハッキリと書かれている。

やはり問題は、雑誌の存在ということだろう。
下界の文化を学ぶという意味では、雑誌を参考にすること自体はとてもいいことだ。

ただ如何せん、ニケさんは規則バカであり、マニュアルバカでもある。
ゆえに、雑誌に書いてあることを忠実に守ってこようとしてくる。

別に、それ自体も悪いこととは思わない。
しかし、ニケさんの場合はなんと言うか、融通が利かない。応用が利かない。

だから、よほどのことがない限りは己の考えを改めようとはしないだろう。
特に参考にしているものが、ニケさんの共感を得られた場合などは説得など困難極まる。

だからこそ、それを少しでも打開すべくステップアップしていこうと提案した訳だ。

「不遜なのかもしれないですが、俺はニケさんと対等に付き合いたいと思って告白しました」
「はい。私も歩様と等しくお付き合いしたいと考えております」
「ありがとうございます。.....でも、だからこそ俺の隣を歩いて欲しいとも思っています」
「.....どういうことでしょう?」

訳がわからないといった表情をしているニケさんを手招きして隣に侍ってもらう。

この状況こそ、俺が待ち望んだものだ。
とは言え、欲を言えば、俺を引っ張っていってくれるぐらいが本当は望ましいのだが.....。

さすがにこれ以上は贅沢というものなので話を進める。

「ニケさんにはこれを感じてもらいたかったんです」
「これ.....とは?」

別に何かをしている訳ではない。

ニケさんとただ前方を見ているだけだ。
同じ位置で、同じ風を受けているだけだ。

「俺と同じ目線で、同じものを見て、同じことを感じてもらいたいな、と。
 ニケさんが俺を立ててくれる、その気持ちはとても嬉しいです。
 ですが、それよりもニケさんと同じ思いを共有できることのほうがもっと嬉しいです」
「歩様.....」

ニケさんの『三歩下がって』の行動は、俺の為にしてくれていることなので、きっちりとフォローをしておく。
無駄な行動、迷惑な行動だったなんて勘違いさせてしまったら、それこそニケさんに申し訳ない。

「それに.....」
「まだあるんですか?」
「このほうが見映え的にも対等に見える気がしませんか?」
「なるほど。確かに歩様の仰る通りですね」

なるべくおどけた拍子で言うように努めた。
理由は上記と一緒だ。.....そ、そういうことにしておいて欲しい。

ぶっちゃけ、説得の内容が個人的にクサすぎたので、さっさと忘却の彼方に流してしまいたいという気持ちが無きにしもあらずだが.....。

「では、隣を歩いて頂けますね?」
「もちろんです!」

こうして、ようやく俺の隣を歩いてもらえることとなった。
なんてことない問題なのに、まさかこんなことで苦労するとは露にも思わなかったが.....。


□□□□ ~本当の願い~ □□□□

さて、当初の目的を果たすことができたので、ここからが本題だ。
そもそも、ニケさんに隣を歩いてもらうことが本当の願いではない。

俺がニケさんに告白してまで叶えたかった願いというものは別にある。それは.....。

「次はニケさんがどうぞ」
「次と言いますと?」

俺の唐突な言葉に首を傾げるニケさん。
確かにこれだけでは何のことかわからないだろう。

「対等なお付き合いなんですから、俺がわがままを言った以上、次はニケさんがわがままを言う番です」
「わがまま.....ですか」
「ニケさんのやりたい事、やって欲しい事を遠慮なく言ってください。可能な限り叶えようと思います」
「私のやりたい事.....」

ニケさんはチラチラッと俺の様子を窺いながらもどこか遠慮がちだ。
何かしらの要望は恐らくあるのだろうが、規則バカ、マニュアルバカゆえに言い出し辛いのだろう。

『もっと気軽に接して欲しい』
俺の本当の願いの1つ目はこれだ。

先程の隣を歩く件もそうだし、神界でのやりとりでもそうだったが、どこか態度が固い。
他人行儀と言う程ではないが、それに近い感じの印象を受ける。

なぜ、そう感じるのかと言うと.....。

俺も普段はそうだからだ。
だから、同類のことはよくわかる。

なら「お前が言うな!」とツッコまれそうだが、俺はいま可能な限りフレンドリーになろうと努めているので、そこは勘弁してもらいたい。

・・・。

話が逸れたが、戸惑っているニケさんのこの後の行動は、恐らくだが誰でもわかることだろう。
規則バカ、マニュアルバカなニケさんが困った場合、頼りにするものといったらあれしかない。

「ちょっ、ちょっとお待ちください。今、確認しますので.....」
「.....」

ニケさんはそう言うと、多分アイテムボックスだと思われる異次元から一つの雑誌を取り出した。

もはや想定内すぎて笑うどころか、アテナの言うところの(´・ω・`)←こんな顔になってしまった。
ニケさんにとっての雑誌とは、もはや参考書というレベルを軽く越えて、バイブルになりつつあるんだと思う。

つまり、デートにおいては雑誌に記載されていることが行動基準になるのだろう。

(.....おかしいだろっ!)

これではいつまで経っても、ありのままのニケさんとはデートができない。
まるで雑誌と付き合っているようで味気ないし、一向に二人の仲が深まることもない。

だから.....。

「雑誌は没収します!」
「あっ.....」

ニケさんから雑誌を素早く回収する。
すると、ニケさんがまるで「この世の終わりだ」とでも謂わんばかりの表情で不安そうに見つめてきた。

(そ、そんな絶望した表情をしないでくださいっ!胸が痛みます!!)

・・・。

回収した雑誌を俺のアイテムボックスにしまいつつ、俺の真意を伝える。

「ニケさん。雑誌を参考にするな!とは言いません。
 むしろ、ニケさんのその向上心を好ましく思います」
「だ、だったら.....」

「ですが!」
「!?」

「ほら!雑誌は何も間違ってはいないじゃないですか!」みたいな表情をしていたニケさんを強く牽制する。

確かに雑誌は間違ってはいないだろう。
だが、正解こそが正しいとは限らない。

「別に俺は完璧なニケさんを求めている訳ではありません。失敗してもいいんです」
「.....」
「雑誌などには頼らず、ありのままのニケさんを見せてください」
「ありのままの私.....。し、しかし、それでは幻滅されてしまうかもしれませんよ?」

幻滅なんてしない!とは決して言わない。
そんな無責任かつ不誠実な言葉を気安く使いたくはない。ニケさんとは本当の恋だからこそ!

.....とは言え、嫌いになんてならないけどなっ!

「そういう一面も、また好きになれたら嬉しいです」
「!?」

ニケさんの美しい顔が驚きの色で覆い尽くされる。
そんなことを言われるとは微塵も思っていなかったと謂わんばかりに。

これまでのニケさんは常に完璧な仕事をこなしてきたに違いない。
そもそも完璧を求められていたかもしれないし、そうならざるを得ない環境だったのかもしれない。
そして、いつしかそれが当たり前となり、またニケさんもそう思うようになってしまったのかもしれない。

それがつまるところ、規則バカ、マニュアルバカに繋がってしまったのではないだろうか。
勝手な憶測だが.....。

ただ、それもニケさんの魅力の一つだと言われれば確かにそうだ。
デキるお姉さんの雰囲気を放つニケさんはカッコいいし、何よりも頼りたくなる。

だが.....。

(俺はありのままのニケさんを見てみたい!ありのままのニケさんと触れあいたい!!)

という訳で、不安そうにしているニケさんには悪いが、雑誌抜きでデートをしてもらおうと思う。

「不安ですか?」
「と、とても.....。歩様にご迷惑をかけないでしょうか?嫌われたりしないでしょうか?」

小動物のようにおろおろしているその姿は、女神として泰然としていた姿とは異なり、一人の女の子なんだなと感じさせるものがある。

ただ、このままではデートどころではない。
少なくとも、平常心を保つぐらいになってもらわないと俺が初デートのプレッシャーに押し潰されてしまう。

だから.....。

「では、こうしましょう」
「.....?」

「既に完璧なニケさんは好きになりました。
 だから、次はありのままのニケさんを好きになってみたいです」
「!」

ニケさんの表情が一気に晴れ渡る。

さすがはニケさん。
俺の言いたいことを瞬時に理解してくれたようだ。

どういう事かと言うと、要はニケさんに保険をかけたのだ。
ニケさんは俺に嫌われることをひたすら恐れている。
だから、俺が嫌いにならない根拠を示して安心させてあげたという訳だ。

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図式としては以下となる。

   完璧なニケさん → 好き
ありのままのニケさん → 好き
   ニケさんの総評 → 好き

これが理想の形だが、仮にありのままのニケさんがダメとなっても.....。

   完璧なニケさん → 好き
ありのままのニケさん → ダメ
   ニケさんの総評 → 好き

「既に完璧なニケさんを好きになっているので、ありのままのニケさんが仮にダメでも嫌いになることはありませんよ」と暗に伝えたことになる。
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よほど安心したのか、ニケさんの表情が柔らかい。
これはとてもいい傾向だろう。俺のプレッシャーも、少しだが和らいだような気がする。

なんやかんやあったが、ここにきて、ようやく初デートのスタート地点に立つことができた。

そして、俺の2つ目の願いも叶うこととなった。
『女神としてのニケさんではなく、ありのままのニケさんを見せて欲しい』という切なる願いが.....。

「では、ニケさんのわがままを聞かせてください」
「こ、恋人らしい事でもよろしいのでしょうか?」
「えぇ。俺に出来ることなら」
「でしたら.....」

ありのままのわがままを綴ったニケさんは嬉しそうに、でもどこか恥ずかしそうに頬を赤く染め、少女のようなあどけない笑顔ではにかんだ。美しい。





ちなみに、





「これでお願いしますっ!」
「ぶふぅぅぅぅぅううううう!?」


ニケさんのわがままは、初デートにしてはあまりにもハードルが高過ぎたので叶うことはなかった。


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後書き

次回、 本編『ニケの愛情弁当』!

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今日のひとこま

~ありのままのあなたに~ side -ニケ-

「はぁ~~~~~」
「ど、どうされたんですか!?」

突如、歩様が吐かれた深い溜め息に驚いてしまいました。
いや、驚いた理由は溜め息だけではありません。

「ど、どこかお加減でも悪いんですか!?」
「落ち着いてください。体に異常はありませんから」
「そ、それならいいのですが.....」
「ご心配をかけてすみません」

病気ではないようなのでホッと一安心です。
ただ、歩様が端から見たら病気を疑われてもおかしくないレベルでぶるぶると震えておられるのは気になります。

「でしたら、なぜそんなに震えられているんですか?」
「理解してもらえるかは自信ありませんが.....、極度の緊張から解放された為ですかね」
「はぁ?緊張ですか?」
「緊張です」

「歩様がそこまでになられるなんて.....。何に緊張されておられたんですか?」
「つい今しがたのニケさんとのやりとりですよ」
「え!?私が原因ですか!?」
「それは違います!断じて違います!」

慌てふためいて否定されるところがとても怪しいです。
ですが、歩様の優しさに免じてわからない振りをしましょう。

「ニケさんに偉そうに語ってはいましたが、実は心臓バクバクものでした。
 俺だってニケさんに偉そうに言える経験も何もないですからね」
「で、ですが.....。歩様が緊張していたなんて微塵も感じませんでしたよ?」
「火事場のバカ力ともでも言うんでしょうか?
 よくわからないんですが、これだけはハッキリと言えます」
「なんでしょう?」

歩様が照れ臭そうに頬を掻いています。かわいい。

これはきっと期待できるお言葉をもらえるに違いありません!
私の脳内メモリーにて録音を開始します!

「あの時の俺はただひたすらニケさんのことを考えていました。
 だから、ニケさんが俺に勇気をくれたんだと思います。ありがとうございます」
「!!!」
「.....って、ちょっとクサかったですかね?」
「そ、そんなことはありません!嬉しいです!」

お優しい歩様。
私はありのままのあなたに恋をしてとても幸せです!
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