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第5章 最愛の女神!
特別編 家族にメリークリスマス!②
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アテナがサンタをやってみたいと言い出した
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告知通り、今話も特別編となります。
2話分を1話にまとめましたので結構長くなっております。
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□□□□ ~話し合い?~ □□□□
外ではここ1週間ずっと全世界どころか、全宇宙でシンシンと雪が舞い踊っているらしい。
ただただサンタをやってみたいというアテナのわがままな理由なだけで.....。
そんな中、今リビングではアテナのサンタ計画について綿密な話し合いが行われているところだ。
「まとめると、サプライズサンタでみんなを驚かせたいということでいいんだな?」
「もぐもぐもぐ」
「飲み込んでから話せ」
「むぐむぐむぐ」
と言っても、結局はアテナを甘やかしながらの話し合いだから俺が主に舵を取る必要性がある。
どうせアテナは何も考えていないだろうから。
そもそも.....。
サンタなんてプレゼントをあげるぐらいしかやることがなさそうだし、話し合い自体がいらない可能性もある。
暴論ではあるが、要は『みんなは何が欲しいのか』これを調べればいいだけに尽きると思う。
「それで?」
「んー?」
「んー?じゃねえ。みんなの欲しいものはわかっ.....」
「歩、みかーん」
「はいはい」
あーんと開けているアテナの口の中にみかんを放り込む。
こたつにみかんは定番だ。
当然のことながら、こたつで寛いでいる以上、みかんはアテナから逃れることはできない。
「それで?みんなの欲しいものはわかっ.....」
「もぐー!もぐもぐー!」
「飲み込んでから話せって言ってんだろ!」
「(.....ごくん)。もー!筋残ってたー!」
───ズコー
「な、なんか必死に訴えてると思ったらそんなことかよ!?.....と言うか、あれって健康にいいらしいぞ?」
「そーなのー?でもいらなーい( ´∀` )歩にあげるよー」
「.....俺は筋だけを食えと?」
「みーかーんー!」
早く寄越せ!早く寄越せ!とテーブルをバシバシと叩いて主張するアテナ。
ぴーぴーとやかましく餌を寄越せと主張する雛鳥のほうがよっぽどマシなぐらいの暴れっぷりだ。.....ウザすぎる。
でも、結局はあげるんだけどね。
だって、かわいいから仕方がない。
「ふええええ(´;ω;`)」
「どうした?」
「手がいたーい」
「はぁ.....」
そして、ここからわかることは二つ。
一つ、みんなの欲しいものは全く知らない。
二つ、俺はみかんの筋だけしか食べられない。
ちょっと酷すぎないか?
みかんの筋だけしか食べられないのは百歩譲っていいとしよう。
ただ欲しいものすら全くわからないけれど、それでもサンタはやりたいという。
いや、最悪これすらも万歩譲っていい。
ただ何よりもイラッとするのは、
「みかんおいしーねー(*´μ`*)」
「.....」
サンタをやりたいと宣ったくせに、一向に考えることすらもしようとしないその態度。.....はぁ。
結局、俺が何から何まで手綱を握る必要性があるようだ。
(協力とは?これ主催じゃね?.....まぁ、いつものことだし?別にいいんだけどさ)
分かってはいたことだが、とりあえず話し合いの前にアテナからみかんを取り上げることから始めようと思う。
□□□□ ~聞き込み開始part.1~ □□□□
みかんを取り上げられ、ぶーたれているアテナとともに、みんなの欲しいものを早速聞き込んでいこうと思う。
俺がアテナにアドバイスすることは二つだ。
「いいか?それとなく聞くんだぞ?」
「はーい!」
「それと、ニケさんとラピスさん、ヘリオの3人は特に気を付けろ?この3人は察しがいいからな」
「わかってるってー( ´∀` )」
アテナはやる気満々なようだが、どうにも不安だ。
とりあえず、学校からまもなく帰ってくるちびっこ組から聞いてみるのが無難だろう。
そんなことを考えていたら、
「ただいまー☆」
「ただいまなのだー!」
噂をすればなんとやら。
うちの癒し担当であるちびっこ組のヘカテー様とモリオンが帰ってきた。
早速、アテナを突撃させようと思ったのだが.....。
───ドドド
廊下に響き渡るかけっこ音。
きっとちびっこ組だろう。
元気なことはいいことだ。若いって素晴らしいね。.....まぁ、二人とも俺よりも遥かに年上なんだけど。
───ドドドド
さらに大きくなるかけっこ音。
明らかにこちらに近づいてきている。
そして、
───バンッ!
「歩君!ただいまー☆」
「アユム!ただいまなのだー!」
リビングの扉が勢いよく開かれると同時に、俺の胸へと飛び込んでくるちびっこ組。
「二人ともおかえ.....」
───ドコッ!
「げふぅぅぅううう!?」
しかし、二人のそれはもはや飛び込みというかわいいものではなく体当たりに近いものだった。
その行為自体はとてもかわいらしいものなのだが、本当にやめて欲しい。
もはや異世界に居たときの力を有しない今の俺はただの人間。
二人に体当たりされると軽く死ねる.....。
「ごほっ。ごほっ。.....ア、アテナ。早速二人に聞いてみろ」
「まっかせなさーい!智慧の女神の本気を見せてあげるー( ´∀` )」
智慧の女神(笑)の本気を出す前に俺を気遣って欲しいものだ。.....見てくれ!苦しんでるから!
とりあえず、このちびっこ組ならサプライズがバレる心配はないだろう。
そう思っていたのだが、
「ねぇーねぇー、へーちゃん、モーちゃん」
「アーちゃん、どうしたのー?」
「お姉ちゃん、なんなのだ?」
アテナは俺の予想の斜め上を当たり前に飛び越えていった。
「私ねー、サンタさんやるんだー!いいでしょー( ´∀` )だから欲しいものおしえてー!」
「ぶふぅぅぅううう!?」
まさかの自分からバラしていくスタイル。
(.....え?なんでそれとなくバラしちゃったの?みんなには内緒にしたいんじゃないのか?
この駄女神は3歩歩くと自分で言ったことすらも忘れちゃう鳥頭なのか!?)
いきなりサプライズが頓挫してしまったことに軽く衝撃を受けた。
アテナマスターの俺がアテナのバカさ加減を見誤ってしまうとは.....。
だが、
「サンタさんってなにー?」
「サンタさんってなんなのだ?」
どうやら、ちびっこ組はサンタさんを知らないらしい。
小首を傾げている姿は天使そのもの。.....まぁ、ヘカテー様は死神みたいなものだけど。
(それにしても、アテナはこれを見越して.....。いや、ないな)
とりあえず言えることは、
「アテナ、アウトー」
「えええええ Σ(・ω・*ノ)ノ」
アテナに任せていたら、サプライズそのものが成立しないということだ。
結局、俺がみんなに聞いて回ることになった。
まぁ元々アテナには期待していなかったので、(バカさ加減には)呆れるものの(アテナに対して)落胆はない。
ちみなに、ちびっこ組の欲しいものは何かと言うと、
「ともだちー☆」
「おやつなのだ!」
よく伝わってはいなかったらしい。
アテナ、使えなさすぎぃ!
□□□□ ~聞き込み開始part.2~ □□□□
ちびっこ組とおやつを食べながら、俺はそれとなく二人の欲しいものを聞き出すことに成功した。
最初から俺がやれば早かったのだ。アテナに任せようと思ったのがそもそもの間違いだった。
「そう言えば、ヘリオは?」
「むぐむぐむぐー!」
「あ~。いいからケーキを食べてろ」
「のだー!」
アテナと一緒におやつをものすごい勢いで食べているモリオンが答えてくれようとしていたが、それを制止する。
食べ物を目の前にして口にしないモリオンはモリオンに非ず。
主語を付けなかった俺が悪い。
「アーちゃん、ほっぺにクリームついてるよー」
「ケーキおいしいねー(*´μ`*)」
おやつを後回しにしてアテナの世話を甲斐甲斐しくしているヘカテー様に改めて尋ねてみる。
それにしても、ヘカテー様は本当にええ子や!
「ドーちゃんは生徒会だってー」
「あ~。生徒会長なんでしたっけ」
ご苦労様なこって。
どうやらヘリオは自ら志願して生徒会長になったらしい。
なんでも、俺ひいては毎日家の名声をうんたらかんたらと野望に燃えているんだとか。
元々、行動力は凄まじくあるほうなので生徒会長は適職だと思う。
それにしても、相変わらずの忠誠バカぶりだ。もう俺の奴隷でもないのに。.....いや、感謝、感謝。
とりあえずヘリオの聞き込みは後にして、キッチンに向かうことにした。
ちなみにアテナはリビングに置いてきた。
居ても役に立たないし、むしろサプライズがバレてしまう可能性すらある。
廊下に出るとキッチンから漂ってくるおいしそうな匂い。
これは.....じゅるり。夕飯は期待できそうだ。
いや、異世界より帰還して以降、1日たりとて期待しなかった日はない。
むしろご飯がおいしすぎて、二重の意味で幸せ太りをしてしまったほどだ。
そんな愛しい二人の女性の様子を物陰からそっと窺う。
なんですぐに中に入らないかと言うと、それなりの理由がちゃんとある。
「ニケ様、これすごくおいしいです!また腕をあげましたね!」
「ありがとうございます。ラズリの教え方が上手だからですね」
「いえいえ。ニケ様のアユムさんへの愛の成せる業ですよ」
「当然です。歩様のお食事は最優先事項ですから」
本人の居ないところで話題にされるというのは何ともむず痒い。
それに内容も内容だけにちょっと照れる。
それにしても.....。
二人が仲良さそうにキッチンに立つ姿には感慨深いものがある。
こうして仲良くしてくれるだけでも、思わず涙が出てしまうぐらいに本当に色々あった。
そんな感慨に耽っていたら、
「ラズリも誉めてくれたことですし、今後は私一人でも十分そうですね」
「いえいえいえ。確かにニケ様は腕を上げられましたが、それでもアユムさんは私の料理を望まれておりますので」
「.....」
何やら雲行きが怪しくなってきた。
二人とも端から見れば笑顔なだけに非常に怖い。
「そんなことはありません。歩様は私の料理を「華やかさはないけれど落ち着く味だ」と言われました。
目立つことを嫌う歩様です。料理の『腕』はラズリに敵わなくとも、料理の『好み』は私のほうが上でしょう」
確かに言った。よく覚えてるなぁ.....。
ニケさんの料理は基本を徹底的に追求しているので、華やかさは全くないが、不味くなることは絶対にない。
安心できる味。気負わなくていい味。家庭的な味といった印象だ。
例えるなら、田舎で地元民しか知らない隠れ家的な名店といった感じだ。
一方。
「仰る通り、ニケ様のお料理はアユムさんの好みなのは否定しません。.....ですが!
アユムさんは意外とこだわりが強いんです。それに応えてこその愛、なのではないでしょうか?」
「う.....」
ニケさんの美しい顔がぐぬぬっと悔しさで歪む。
ラピスさんの言うことを一番身に染みて感じているのはニケさん自身なのだろう。
確かにニケさんの料理は俺の好みだ。
ただ料理に関しては、申し訳ないが、ラピスさんに軍配が上がってしまうのも事実。
出会った当初のラピスさんの料理はひたすら高級志向だった。
ただただ俺を喜ばせたい、その一心が料理に表れていたといってもいい。
当然おいしかったし、アテナにも大好評だった。
偉そうに比べるのは失礼だが、出会った当初のラピスさんだったのならニケさんのほうが上になる。
しかし、今のラピスさんは研鑽に研鑽を重ねた努力の天才。
母親であるスカイさんですら諸手を挙げて称賛している腕前だ。
ひねくれた考えを持つ俺に『才能だけでは覆せない実力』というのを思い知らせてくれたのがラピスさんだった。
このまま謎の言い合いが終われば一番いいのだが、当然勝利の女神というだけあって、ニケさんもこのまま引き下がることはなかった。
「ですが!.....ですが!!」
「はい、伺いましょう」
既に勝利を確信しているラピスさんの表情は柔らかい。
言い負かせるもんなら負かしてみんしゃい!とでも言いたそうなしたり顔。.....女性として、その顔はどうなんだろう。
しかし、そんな顔でも美人は美しいのだからさすがである。
「た、確かに料理の腕前はラズリに敵いませんが、女の魅力は負けてませんっ!」
「そうでしょうか?自惚れている訳ではありませんが、私はこれでも結構モテるんですよ?.....すぐフラれちゃいますが」
「そんなことではありません。わからないのですか?わからないのなら自分の「胸」に手を当てて考えてみては?」
「う.....」
律儀に触らなくていいんですよ、ラピスさん.....。
今度はラピスさんのきれいな顔がぐぬぬっと歪む。
ニケさんの言うことを、いや、誰が見てもわかることだが、一番身に染みて感じているのはラピスさん自身なのだろう。
俺は別に、巨乳好きでも貧.....ちっぱい好きでもないのだが、ラピスさんは気にしているらしい。.....あっ。おっぱいは好きだけどね。
普通、こういうコンプレックス系に触れるのはタブーだ。
しかし、それはあくまで人間の間での暗黙の了解な訳で、アテナを始めとして神様全員が疎いというのが事実だ。あのお利口さんのヘカテー様でさえそうなのだから。
人の行動、考えは神の力で読めても、心までは神様でさえもどうにもならないものらしい。
洗脳はできるみたいだが.....。
「ニケ様ひどいですよ.....」
「おあいこでしょう」
「.....まだあのことを根に持たれているんですか?あれはアユムさんの判断じゃないですか?」
「何を今さら。もともとは私だったんですよ?それを.....」
「.....」
何やらマズい空気が流れ始めている。
普段もしょっちゅう喧嘩している二人だが、それは『喧嘩するほど仲が良い』のそれだ。
だから俺も変なとばっちりが来ないよう迂闊に二人の間に入らないようにしている。
しかし、今の空気は.....。
と言うよりも、話の内容が非常に危険だ。
とりあえず、これ以上険悪になる前に二人の前に姿を現そうと思う。
「あ、あの.....」
「歩様!」
「アユムさん!」
ほんの少し前まで険悪な空気だったのが、俺の登場で一瞬でお花溢れるピンクワールドへと変貌した。
とてもちょろい二人だが、それぐらい俺を想っていてくれているらしい。.....へへへっ。
「どうしたんですか?.....あっ!もしかして摘まみ食いですか?」
「ふふっ。歩様ったら。夕飯前ですし、少しだけですよ?」
「.....え?」
「モリオンさんには内緒でお願いしますね?」
「アテナ様にも内緒ですよ?」
「.....わ、わかりました」
違う、と言い返す前に、勝手に摘まみ食い犯に認定されてしまった。
こういう時の二人の息はバッチリだ。
まぁ、せっかく食べてもいいと言うので、軽く摘まみ食いをさせてもらいながら本題に入る。
今日はどうやらおでんらしい。.....しらたきうまいよしらたき。
「欲しいもの.....ですか?唐突ですね」
「ですよね。何かの記念日でしたっけ?」
二人が怪訝な表情で俺を見つめてくる。
察しがいい二人だけに、バレやしないかと息が詰まる。
だが、
「「あ~」」
ラピスさんの「何かの記念日でしたっけ?」の一言で、二人はどうやら気付いてしまったようだ。
お互い微笑を浮かべた上で、知らぬ存ぜぬで通してくれるつもりらしい。.....ありがとう。
まず最初に口を開いたのはニケさんだ。
「私は正妻の座が欲しいですね」
「う.....」
やはり、そこは避けて通れぬ道らしい。
さっきもそれで険悪になりかけていたし。
「え、えっと.....。怒ってます?」
「いえ、少しも」
ニケさんにっこり。
笑顔が怖い!美しい笑顔なのに!!
「ふふっ。冗談ですよ。ちゃんと理解はしていますので、ご安心ください」
「あ、ありがとうございます」
ふぅ~。
ホッと一安心。
ただ理解はしていても、納得はしていないみたいだ。
こればっかりはすぐに解決できるものではないので今はどうしようもない。ニケさんの寛大な心に感謝だ。
「ちゃんと約束通り愛してくださいね?」
「はい。それは命をかけても!」
包丁を持ったまま自然に寄り添ってくるニケさんの、美しい上目遣いのお願いに胸を張って答えた。
これだけは自信を持って言える。
約束だから愛しているんじゃない。心から愛しているのだから。
「歩様.....。ありがとうございます♡
歩様にとっての障害は、このニケが全て取り除いていきますので安心して命をかけて頂いていいですよ?」
「HAHAHA。.....ほ、ほどほどに、でお願いします」
渇いた笑いしか出ない。
ニケさんにはそれを為すだけの力があるからこそ余計リアルに感じる。
・・・。
ニケさんといい雰囲気を楽しんだ後、空気を読んで黙っていたラピスさんが口を開いた。
「私は何もいりません。今、とても幸せですから。
アユムさんがこれからもずっと私の側にいてくれればそれ以上は何も望みません」
「ラピスさん.....」
ラピスさんはその言葉通り、とても幸せそうな笑顔で微笑んでいた。
欲がない訳じゃない。
むしろ欲だらけの人だ。
それでも、その他の全てよりも、俺と一緒に居られることに勝るもの無しだと言う。
ラピスさんのこういう一途な心に、俺はぐいぐい押され、次第に惹かれていったんだよなぁ.....。
ニケさんの時同様、ラピスさんがお玉を持ったまま俺の手を恥ずかしそうに握ってきたので、そのまま自然な流れでいい雰囲気を楽しもうとしたら、
「当然です。今以上を望むなんて私が許しません。ラズリはもっと歩様に感謝すべきです」
「「.....」」
ニケさんが断固たる意志を持って口を挟んできた。
ヘリオとはまた違った形での俺への愛。
嬉しいことは嬉しいのだが、空気というものが.....。
そして、自分の時だけいい雰囲気を邪魔されたのだから、当然ラピスさんが不満に思わない訳がない。
「ニケ様ずるいですよぉ.....。先程までアユムさんといちゃいちゃされたじゃないですかぁ.....」
「何言ってるんですか。ラズリは何も望まないのでは?」
確かに言ったなぁ.....。
ただ、身も蓋もないとはこのことだ。
一見純真に思えたセリフも、リアルに当てはめてしまうと理不尽この上ない。
「姑息なことを考えていないで素直になりなさい」
「うぅ.....。ムードというものが.....」
「.....」
ニケさんのアドバイスが辛辣すぎる件。
ラピスさん.....。頑張れ!とにかく頑張れ!!
「もうっ!わかりましたっ!私もいちゃいちゃしたいんです!
ニケ様と同じようにいっぱい愛してください!これでいいですかっ!?」
「ま、任せてください」
もはややけくそ気味のお願いになってしまっている。
ちょっとかわいそうではあるが、これもニケさんなりの思いやり.....なのかな。
なんやかんやあったが、とりあえず、二人の欲しいものを聞きだすことができた。
最後はヘリオだけだ。帰ってきたらさっさと聞き出してしまおう。
あっ!ちなみにラピスさんともちゃんといちゃいちゃしました。
□□□□ ~聞き込み開始part.3~ □□□□
聞き込みも残すところヘリオのみとなった。
ただ聞き出すことのなんと疲れることよ.....。
リビングに戻り、言い出しっぺであるアテナを見てみると、
「.....こーんちゃーん.....(-ω-)Zzz」
「.....歩.....くーん.....ちゅー.....Zzz」
「.....おかわ.....り.....なのだ.....Zzz」
「.....」
おやつを食べて満足したのか、ちびっこ組と一緒にお昼寝をしていた。
これぐらいいつものことだ。なんてことはない。
さてと.....。
───ゲシッ!
「ぎゃふ!?」
俺に踏んづけられたアテナは女の子が出しちゃいけない声で喘いだ。
ちょうどゴミ虫を見るような目で眺めていただけに、いい鳴き声だったと付け加えておこう。
「いたーい(´;ω;`)ふつー、寝てるおんなのこ踏むー?」
「踏まれたくないなら寝るな」
「だってーねむいんだもーん(´-ε -`)」
「だもーんじゃねえ。誰のために頑張ってると思ってんだ」
今やアテナよりも俺の方が必死になっているという事実が微妙に腹が立つ。
「でー?おわったー?」
「あとはヘリオだけだ」
「そっかー!ありがとー(*´∀`*)」
「.....」
そしてもっと腹が立つのが、アテナの裏表のない純真無垢な笑顔を見るだけで、アテナのわがままを許してしまいそうになる甘い俺自身だ。
しかし、
「いっしょにみかんたべよー!」
「まだ食べんのかよ.....」
「はーやーくー( ´∀` )」
「はいはい」
やっぱりかわいいので、まぁいいかな。
何かで見たことのある『かわいいは正義』って、こういうことをいうのだろう。
その後、しばらくアテナとこたつでまったりしていたら、少し大人びた凛々しい声が耳をついた。
「ただいまなのじゃ」
どうやらヘリオが学校から帰ってきたようだ。
「コンちゃんかえってきたーo(≧∇≦)o」
ヘリオの声を聞くなり喜び勇む義姉のアテナ。
シスコンぶりは何年経っても褪せることがない。本当に仲の良い姉妹だ。
玄関にてヘリオを出迎える。
「おかえり、ヘリオ」
「コンちゃん、おかえりー!」
「ただいまなのじゃ。.....妾に何か用かの?」
さすがヘリオ。
話が早くて助かる。
玄関で話すのもあれなので、リビングに移動しつつ話を進める。
「どうしてそう思った?」
「普段妾を出迎えぬであろう。それが今日は違った。何か用がある証拠なのじゃ」
「なるほど。でもたまたまだったり、そういう気分の日もあるかもしれないぞ?」
「主だけならばな。ただ今日は姉さまも一緒なのじゃ。
つまり姉さま絡みで妾に何か用があると見て間違いないのじゃ」
う~む。結構鋭い。
つまりヘリオは、アテナが出迎えにきた→俺に無理矢理連れてこられた→ヘリオに用がある、とそう結論付けたらしい。
アテナの存在意義(笑)
何はともあれ、ヘリオも疲れているようだし、いつものように労をいたわろうと思う。
右手にブラシを装備。その瞬間、ヘリオの尻尾がぶんぶんと勢いよく振られる様は何ともかわいらしい。
「主!早く!早くなのじゃ!」
「少し落ち着け。.....お客さん。尻尾が凝ってますね~」
「あ"~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
そこ!そこいいのじゃ~!もっと強くしてほしいのじゃ~!」
まるであっつあつの風呂に入った時のおっさんのようなあえぎ声を上げるヘリオ。
ブラッシングされている時のヘリオは本当に幸せそうだ。
もっとやって!もっとやって!と、俺の腕にバシバシと主張する尻尾がお気に入りで、ヘリオのもふもふを堪能できるこの時間は至福のひとときとも言える。
「くふ~。.....それで?妾に何の用なのじゃ?」
余程満足したのか、ちょっと上気した表情でそう尋ねてくるヘリオさんはどこか色っぽい。
まぁ、元々誘惑ばかりしてくるエロ狐だから仕方がないが.....。
とりあえず、夕飯の時間も近いので早々に本題に入る。
「欲しいもの.....じゃと?唐突じゃな」
「.....」
サプライズがバレないよう注意して尋ねたつもりだが、これがなかなかに難しい。
ニケさんやラピスさんにはどうやらバレてしまったようだし、ヘリオもニケさん達に劣らず察しがいいので困難極まる。
「欲しいもの.....」
「.....」
ジッと俺の真意を探ろうと見つめてくる。
目が合うと逸らされるが、尻尾が代わりに反応するので面白い。
「なるほど。クリスマスじゃな。.....さしずめ、姉さまがサンタクロースをやりたいと言うたのであろう?」
「.....いや、まぁ、そうなんだけどさ。そこは察して、わからない振りをするとかないのか?」
「無用な気遣いであろう。ズボラな姉さまのこと、きっと姉さま自身が内緒にできないはずなのじゃ」
「.....」
ヘリオの推察が鋭すぎる。
俺の代わりにアテナの世話をよく任せていた影響か、アテナのことをよくわかっていらっしゃる。
「とりあえず欲しいものを言ってくれ。可能なら用意するからさ」
「妾の願いはただ一つ。主との間に子を設けることじゃ」
「.....お前は本当にブレないよな?」
「何度も言うておるが、生物として優秀な遺伝子を残そうと思うのは当然であろう?
それが好きな男なら尚更じゃ。むしろ妾からすれば、主のほうが余程頑固者だと思うのじゃ」
こういう考え方は嫌いじゃない。
むしろヘリオらしいし、だからこそ若いながらも頼れる存在なのだから。
ただ.....。
「主のことじゃ。どうせ世間体なぞを気にしておるのであろう?」
ぐぅの音も出ない。
まさにそれだ。
「第三者の目など気にする必要などないのじゃ。別に迷惑をかけている訳でもないのだからな」
「いや、でも、学生妊娠とか色々大変だろ?周りの目もそうだが、ヘリオの体も心配だし。
それに、せっかく慣れてきた学校だって休学とかしないといけなくなると思うぞ?」
「無用な心配じゃな」
俺の言い訳がましい意見をバッサリ。
本当、こういう強気な態度は憧れるものがある。
「以前も話したと思うがの、妾の一族はみな今の妾よりも若いときに出産をしておる。
それが普通であり常識なのじゃ。主の世界の常識を妾に押し付けるでない。それは妾の一族への侮辱なのじゃ」
「押し付けが侮辱だと言うなら、ヘリオの常識を俺に押し付けている件はどうなるんだ?」
「知らぬ。全ては主の気持ち次第であろう?」
いや、この子、本当にすげぇな.....。
「それに、この妾じゃぞ?育児と学業が両立できぬと思うのか?」
「いやいや。まだ経験すらしていないことに対しての考え方が甘すぎるだろ。現実はもっと.....」
「大変なことぐらい承知しておる」
またもやバッサリ。
ヘリオの中では、もうそんなことをぐだぐだ議論する段階ではないようだ。.....女は度胸ってやつか。
そして、ヘリオは世間体についても語る。
「それと主が一番気にしておる世間の目など端から考慮する必要などない」
「色々と言われるぞ?色々と噂されるぞ?色々と注目を浴びるぞ?.....ストレスにならないか?」
「気にせんな。有象無象の目など元より興味すらない。
それに妾が妊娠したところで、世間がどうこうなるほどの脆い名声を築いてきたつもりもない。
祝福はあれど揶揄などないし、揶揄する輩は再び黙らせれば良いだけなのじゃ」
常に自信満々なヘリオらしい堂々とした意見にちょっとホの字。
この子、男に生まれたほうが良かったんじゃないだろうか。少なくとも俺よりも男らしい。
「何バカなことを言うておるのじゃ。妾は主の子を設けられることに幸せを感じておるぞ」
「.....俺なんかでいいのか?もっといい人だってたくさん.....」
「鬱陶しい考え方だのぅ。
いくら主が主自身を卑下しようとも、妾の中の主の評価は覆らぬ。妾にとって主は最高の男なのじゃ」
照れる。
そして、この強烈な後押しに何度救われたことか.....。
「それに.....」
「まだあるのか?」
ヘリオが先程よりも更に真顔になって訴える。
「例え世間が何と言おうとも、世間よりも妾達を尊重して欲しいものじゃな」
「.....悪い。確かにその通りだ」
「くふふ。本当に頼りない主人なのじゃ。これは妾がもっと頑張らねばな!」
ヘリオはそう言うと、尻尾を嬉しそうにたなびかせながら両手を口にあてる仕草でかわいく微笑んだ。
本当に頼りになる相棒だ。
と、その時、
───ガシッ!
へ?
「それでは主の了解も得たことだし、早速子作りを始めようかの!」
「.....は!?ちょ!?」
俺の上着の襟首を掴み、寝室に向かおうとするヘリオ。.....うおおおおお!逃げられん!
力を失った今の俺では、ヘリオにすら抵抗することも敵わない現実。
「~♪今日は寝かさぬぞ?妾が孕むまで付き合ってもらうのじゃ」
「.....だ、誰も許可なんかしてねぇ!」
「はぁ.....。今さら女々しいのじゃ。
もう童貞でもないのだから、バンバン孕ませば良い。みなもそれを望んでおる」
「童貞ではないせよ、そんな無節操に妊娠などさせられるかっ!」
秘技脱皮の術で逃れようとするも、今度は首根っこを掴まれてしまう始末。
異世界でも味わったが、力無きものは力有るものには逆らえない理不尽。
まさか現代日本でも物理的な力の理不尽に苛まれるとは微塵も思わなかった。
(.....ま、まずい!このままではヘリオに襲われる!)
「くふふ。母上や義母上、義父上の喜ぶ顔が目に浮かぶようじゃ♪」
「責任重大!?」
「子供の名前はどうしようかのぅ♪あ~楽しみなのじゃ♪待っておれ、我が子よ!今迎えに行くのじゃ!!」
「いやあああああ!ニケさん助けてーーーーー!!」
あまり大きくない家中に俺の絶叫が響き渡る。
うっとりとした表情で自分の世界に籠ってしまったヘリオには、もはや説得による解決は望めないと判断した俺は祈る気持ちで叫んだ。これが俺にできる唯一の解決策と信じて.....。
その後、般若のような形相で飛んできたニケさんにヘリオが制圧されたことは想像に難くはないだろう。
・・・。
こうして、ようやくみんなの欲しいものを全て聞き終えることができた。
必要なものは明日買うとして、これでようやくクリスマスを迎えることができる。
俺とアテナのクリスマスはこれからだ!
クリスマスver.特別編 完
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後書き
次回、本編!
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今日のひとこま
~もう一つのクリスマス~
2xxx年12月26日 某所。
「お呼び出しして申し訳ありません」
「いいよ、いいよ。あたしもアユムッちに会いたかったからね」
俺が今、家族に内緒でこっそりと会っているのは狩猟の女神ことアルテミス様だ。
「それで?あたしになんか用があるらしいけど、なんなんだい?」
「これを渡そうと思いまして」
「なんだい、これは?」
「プレゼントです。1日遅いですが、アルテミス様、メリークリスマス」
「ふ~ん。クリスマスね~」
「あれ?あまり興味ないですか?」
「そうだね~。あたしは毎日がお祭り状態だからね。
普段の日もクリスマスも特段変わるものじゃないね~。あひゃひゃひゃひゃひゃw」
「アルテミス様は相変わらずですね」
香ばしい香りをぷんぷんと撒き散らしながら豪快に笑うアルテミス様はやはりアルテミス様だった。
くぅうううう!たまんねぇな!この匂い!!
───ガサガサガサ
俺の了解も得ず、プレゼントを開けるアルテミス様。
うん、わかってた。
「これは?」
「スマホです」
「そんなことは知ってるよ。なんでこれをあたしに?」
「余計なお世話かもしれないですが、スマホがあればいつでも話せるかなって」
「!?」
「今はまだ気軽に会える状況じゃないのはわかってはいます。だからこそ、会話だけでも、と思った次第で」
「アユムっち.....」
「俺はアルテミス様だけを仲間外れにする気はありません」
「嬉しいね~。こんなあたしにも優しいのはアユムっちだけだよ」
「いえいえ。アルテミス様のお気持ちは素直に嬉しいですからね。
だから.....、早くニケさんと仲直りしてくださいよ?」
「う、う~ん。あたしはそうしたいんだけどね~。必要なら謝るつもりもあるんだけど.....。
ね~?アユムっち。あたしのために何とかしてくれないかい?」
「場を設けることはできます。.....ですが、その後は二人で何とかしてくださいよ?」
「あたしが殺されちゃうよ。その後も何とかしておくれ。たくさん匂いを嗅いでいいからさ」
「う、う~ん。魅力的な提案ですが、ニケさん怒ると怖いんですよね.....」
「そうなんだよね~。いっそのこと、デメテルのようにあたし達も逃避行をしてみるかい?」
「それこそ冗談では済まなくなりますよ?」
「愛する女の為に体を張るのは男の役目だろ?」
「ずるいですよ、こういう時に男を出すなんて.....」
「はぁ~。なんとかしてみるかね~」
「協力はいくらでもするので頑張ってください。スマホでいつでも連絡できますし」
「そうするかね。ありがとう、アユムっち」
「いえいえ」
「で?今日はこの後、時間あるんだろ?とことん付き合ってもらうよ?」
「仰せのままに」
このあとめちゃくちゃ楽しんだ。
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