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第6章 安らぎの時間と魔剣フォルキナ
~大と中と小~情愛へのけじめ①
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帝都エクスペイン・『南区』冒険者ギルド 19時
あたりは既に薄暗くなっている。
想像以上に時間をくった。
それもこれも全て、スハイツ達や委員長達が素材回収にもたもたしていたせいだ。
.....はぁ。
さっさと換金して帰りたい。
そんな訳で俺達は、ぞろぞろと連れだって冒険者ギルド内に入った
ギルド内に入るやいなや、一斉に集まる視線。
俺はこのギルド特有のノリがあまり好きじゃない。
入ってくる人の価値を見定めるような、物色されている感覚。
うん。さっさと換金して帰ろう。
てか、男共は俺を見るな!神圧で黙らせるぞ?
早く帰りたい俺は受付カウンターへと歩き出す。
「こんばんは、ヒルダ。換金とリアを.....」
俺は、もはやおなじみの受付嬢であるヒルダに声を掛けたのだが、
「「こんばんは。ユウジさん!」」
うおっ!?びっくりした!
先に返事が返ってきたのは、同じ受付嬢であるユリとアズサからだった。
「こ、こんばんは。ユリ、アズサ」
「もう!ユウジさんはヒルダさんばっかり!たまには私にも声を掛けてくださいよ!」
こうおっしゃるのは、ユリ。
彼女とは、ヒルダやリアがいない時に、ヒルダの代わりに声を掛けた縁で知り合った。
「なに言ってるんですか!私はユウジさんの専属なんですから、私だけに声を掛けてくれるのは当然なんです!」
そんなユリに反論するかの如く反応したのはヒルダだ。
あ、あの専属って.....
ヒルダは優秀だから優先してるだけなんだが?
そんな呆れている俺の前で、いがみ合うヒルダとユリ。
あきらかに窓口2つ分の業務が滞っている。
もうやだ、この展開。
ちゃんと仕事しろよ!二人とも!
.....そのうち俺は冒険者ギルド出禁になるんじゃね?
そんなことを考えながら、いがみ合っている二人を無視して、別の窓口に向かう。
「ユウジさんも大変ですね」
大変ですねって.....なに他人事のように言ってんの。
こうなった原因はお前らだろ。
苦笑しながら声を掛けてきたのは、アズサだ。
「勘弁してくれよ。二人にもちゃんと声は掛けるからさ。毎回こんな事態になってたら、リアに悪いよ」
冒険者ギルドにくると、こんな展開が毎回起こる。
だから結局、換金を頼むのは二人の緩衝材役となっているアズサになることが多い。
.....多い?あれ?
も、もしかして?
アズサはこうなることを計算しているのか!?
俺が改めて女の恐さに戦慄している中、アズサはてきぱきと業務をこなそうとする。
「今日も換金でよろしいですか?」
「あ、あぁ。それと.....」
「副ギルド長ですよね?分かっています」
アズサは分かっているとばかりに、俺の言葉を遮った。
ヒルダだけではなく、実はユリやアズサも優秀だ。
基本的にこのエクスペインの受付嬢はレベルが高い気がする。
容姿、才能。いずれも他の都市より抜きん出ている。
抜きん出ているのは確かなのだが.....
俺は今だにいがみ合っているヒルダ達に視線を向ける。
.....はぁ。
なんでこう残念な娘ばかりなんだろう。
そろそろ換金する場所を変えようかな?
と、真剣に考え始めていた。
でも、ヒルダにユリ、アズサは美人なんだよなぁ。
話せなくなるのは、もったいない気がしないでもない!
と、結局いつも決め切れずにいた。
話すなら、やっぱり可愛い娘か美人に限るよな!
□□□□ ~衝撃の事実~ □□□□
換金が終わるまでしばらく待っていると、
「ユウジさん。お待たせしました」
リアがやってきた。
アズサがちゃんと呼んできてくれたらしい。
「毎度毎度、この娘達がすみません」
リアはそう言うと、ペコリッと頭を下げた。
それに合わせるように、ヒルダとユリも頭を下げる。
「リアのせいじゃないしさ。むしろ毎回迷惑かけてごめんな」
「ユウジさんがそう言うなら.....貴方達もちゃんと反省しなさい。ユウジさんが出禁になってもいいの?」
「「は~い」」
さすが副ギルド長。
貫禄あるなぁ。できる女って感じがする。
リアがヒルダやユリにビシッと注意を促す姿は様になる。
.....それにしても、
俺の出禁の話がさらっと出たんだが!?
「えっと.....俺って実はやばかったりする?」
「.....言いにくいんですが、エクスペインのギルドと言う括りで言いますと、ユウジさんの存在じたいが迷惑以外のなにものでもないんです」
ちょっ!?
存在じたいが、ってなんだよ!?
俺が想像以上の答えに衝撃を受けている中、リアは話を続けた。
「まずですね。ユウジさんはクエストを全くやらないですよね?Sランク冒険者とは、全ての冒険者の模範となる存在です。だから本来は率先してクエストを消化して欲しいのがギルド側の希望です。あかりさんがいい例です」
えー。やだよ。
俺がSランク冒険者になったのはエステルの為だし。
しかもあかりがいい例って.....
そのせいで、俺はあかりとの時間がなかなか取れないんだからさ。
「無理。却下!」
俺の言葉にリアは、分かってますよ、とばかりに微笑んだ。
分かってるじゃないか!さすが俺の嫁!
ちなみにアイサは、やれやれとばかりにため息をつき、委員長はジト目を向けている。
なんと言われようとやだ!めんどくさい!
リアの話はまだ続く。
てか、まだ続くのかよ!?
「あとですね。ユウジさんがいらっしゃると、業務が滞ると多くの冒険者から苦情がきてるんですよ。実際、私も何度も目撃していますし」
ちょっと待て!
それは俺が原因なのか!?
要はヒルダ、ユリ、アズサの3人娘の件だろ?
それはそちらの問題では?
.....いや、俺がくるとそうなるんだし、俺が原因か?
「最後にですね。これも他の冒険者からの苦情なんですが.....」
まだあるの!?
てか、他の冒険者からの苦情が多いな!
「ユウジさんが大量に素材を流すから、市場の価格破壊が進んでいるらしいですよ?エクスペインで素材買い取りをしてもらっても儲からない、と聞きました。なにやら今回も大量に素材を持ってきたとか.....自覚ありますか?」
うっ。
仕方がないじゃん?
出さないと、どんどん素材貯まる一方なんだし?
だから俺は、
「全くない。そもそも誰のおかげで市場に豊富な素材が溢れてると思ってんだよ。俺が素材を大量に提供してるからだろ?言うなれば、俺がエクスペイン経済を支えてるのと一緒だ。もっと言えば、俺がエクスペインであり、エクスペインが俺みたいなもんだ。他の冒険者が飢えようと知ったこっちゃない。仮に俺がいなくなったら、冒険者は儲かるかもしれないが、それ以外の人は困ることになるぞ?」
あえてみんなに分かりやすいように事実を述べた。
リアの言う通り、確かに俺のせいで市場の価格破壊が進んでいるのは確かだろう。
冒険者が儲からないのも間違いないはずだ。
しかし冒険者が儲からない裏で、恩恵を受けている人がいるのも確かだろう。
エクスペイン近郊では滅多に手に入らない珍しい素材。
また価格破壊が起きるほどに入荷されることで、安価に手に入れることができるようになったはずだ。
一部の冒険者の幸せよりも、多くの人々の幸せだな!
なんか勇者っぽい!
そんな俺の言葉を聞いたみんなは様々な反応を見せた。
「ステキ.....その傲慢で不遜な態度が痺れます!」
ヒルダはうっとりした表情で俺を見つめてくる。
ギルド職員としてはきっと間違った反応だろうが、出会った時からこうだし問題ないな。
「ヒルダさんからあらかた聞いてましたが、本当にユウジさんってこんな感じなんですね」
一方、驚いていたのがユリにアズサだ。
初めて目の当たりにした俺、という人柄に衝撃を受けている。
ヒルダよりかは多少まとも寄りな感性の持ち主なのかもしれない。
そして最後は、
「本当にユウジさんは相変わらずですね。非常識すぎます」
当然リアだ。毎度のことながら呆れている。
リアは常識人だからな。
出会った当初から俺の行動には呆れっぱなしだった。
そんな常識人であるリアが、非常識な存在である俺を慕ってくれている。
世の中なにがあるかわからないものだ。
だから俺は、そんな愛しいリアを強引に抱き寄せた。
「ユウジさん!?」
強引なリアには、強引な態度が一番いい。
驚いた顔のリアを見るのはとても新鮮だ。
「こんな非常識な俺は嫌いか?」
「嫌いだなんてそんな.....私はユウジさんを愛しています」
・・・。
リアの愛情表現はいつもストレートだ。
なんか照れる。
抱き寄せられた胸の中で恥ずかしそうに微笑むリア。
そんな美しい笑顔に添えられた耳元のイヤリングが微かに揺れる。
『情愛のイヤリング』
かつて俺がリアにプレゼントしたマジックアイテムだ。
込めた想いは、永遠の愛と尊敬。
俺はイヤリングにそっと触れ、一言褒めた。
「大切にしてくれているんだな。似合うよ。きれいだ」
「ありがとうございます。でもユウジさん?」
なんだ?
俺の褒め方に間違いがあったか?
「きれいなのは私とイヤリング。どちらですか?」
お、おぅ?
新たな攻め口で来たな。
少し甘えたい気分なのか?
他のお嫁さんに比べて、リアだけ月1ぐらいでしかまともな時間が取れない。
これは俺がリアとの関係をみんなに内緒にしているからだ。
そう、マリーの事とかがあるので今までは内緒にしていた。
でも俺は、18歳になったことでいろいろけじめをつけようと決意している。
それはリアとの関係も.....
「ユウジさん?どうしました?」
おっと。考えこんでいたか。
リアが不安そうな表情で、俺の顔色を伺ってきた。
まずはこの不安そうな表情を笑顔で彩りたい。
そう思った俺は、
「悪い。リアがあまりにもきれいだったから見惚れてた」
決まった?決まっただろ!?
言った俺もちょっとどうかと思うぐらいの気障ったらしい言葉だ。
ただ、その結果はすぐに分かった。
顔をりんごのように真っ赤にしたリアが、恥ずかしそうに俺の胸の中に顔を埋めたからだ。
気障な言葉って、言う人も恥ずかしいけど、言われたほうも案外恥ずかしいものだよな。
お互いが恥ずかしい思いをしながらもいちゃいちゃしていたら、リアが既視感のある質問をしてきた。
「ユウジさん。きれいって.....」
「?」
「アカリさんよりもですか?」
うぉい!
それってまんま、あかりのそれと一緒じゃねぇか!
お前ら、本当に仲いいな!
だから俺の答えは決まっている。
「あかり.....よりもきれいだ」
「え!?」
きっと予想外な答えだったんだろう。
今まで見たことがないぐらいの驚いた顔をしている。
.....ふふふ。俺をナメるなよ?
いつまでもお前らに翻弄される俺だと思うな!
「ユウジさん!嬉しいです!アカリさんに報告しなきゃ!」
あっ.....
それはやめてください!お願いします!
「ごめん。あかりと同じぐらいきれいかな?」
「なんで言い直すんですか~!」
リアの怒声がギルド内に響き渡った。
ごめんよ?リア
だって、あかりが悲しむじゃん?
まだまだリアとあかりには振り回される運命らしい。
□□□□ ~幸せな3つの話・小~ □□□□
「ユウジさん❤」
俺に抱きしめられてご満悦なリア。可愛い。
正直このままずっといちゃいちゃしていたいのだが、周りの視線が痛い。
アイサや委員長からはそれはもう突き刺さるよう視線が飛んで来ている。
それはそうだろう。
だってアイサと委員長は俺とリアの関係を知らないだろうから。
一方ヒルダ達からはジト目で見られている。見られているのは主にリアだが。
それはそうだろう。
だって業務停滞を注意していた本人が、業務を停滞させているのだから。
これ以上はリアの副ギルド長としての権威が失墜し、部下に示しがつかなくなる恐れがある。
だから俺は、リアとのいちゃいちゃタイムを惜しみながらも本題に入ることにした。
「リアにとって嬉しい話を3つ用意してきた。大・中・小とあるが、どれから聞きたい?」
俺はギュッと抱きしめながら、リアに尋ねた。
「3つですか?でしたら小からでお願いします」
小からか。リアはあれか?
好きなものは最後に残すタイプか?
「わかった。小だが、明日デートしよう。できれば一日俺に時間をくれ」
「デートはいいんですが、一日ですか?」
なにを当たり前な、といった表情をしているリア。
多分一日の意味を理解していないのだろう。
しかしそれは、今までを鑑みると仕方がないことだ。
これまでのデートは基本リアのお家デートで、一緒にいれるのも夕方までだった。
ちゃんと一日の意味を理解させる必要があるだろう。
「そう一日。つまり夜も一緒にいたい。話したいこともあるから」
「.....え?」
一日の意味を理解したリアは、みるみるうちに真っ赤になっていく
「急だったし、無理か?」
「い、いえ。よ、よろしくお願いします」
よろしくされました!
こういうところがウブなのは、できる女とのギャップで萌える。
「あっ。もしかしたら、デートはエステルも一緒になるだろうけどいいかな?」
多分というか、絶対なるはず。
これまでの休日も毎回訪ねてきていたし。
「そういえば、エステル様が一緒にいないのは珍しいですね?」
やっぱり気付くよな。
もはや俺とエステルはワンセットみたいな扱いされてたし。
そこで俺は、リアにエステルのことを簡単に教えた。
夏休みが終わったので、仕方なく実家に戻ることになったのだと。
そうしたらリアからは、戻るのが普通で仕方なくというのは変だとツッコまれた。
確かにおっしゃる通りで。さすが常識人。
「わかりました。私は別に構いませんよ。エステル様の気持ちは痛いほど分かりますから」
エステルのなんの気持ちがわかるのかは俺にはわからないが、正直助かる。
リアも嫉妬しちゃう娘なんだが、あかりとエステルに関しては気にしていない節がある。
.....本当、女の子はよくわからない。
最後に、これだけは伝えないとリアが勘違いしちゃう案件が残っていた。
俺は周りに聞こえないように、リアの耳元にぽつりっと囁く。
「安心しろ?夜は二人っきりだから」
「///」
リアの頬がみるみる赤くなっていく様はなんとも可愛らしい。
俺がそんなことを考えていたら、
「い、一日デートは私としては嬉しいんですが、ユウジさんは大丈夫なんですか?」
リアがもっともなことを聞いてきた。
俺とリアの関係はみんなには秘密にしている。
つまり、リアが言いたいのはそういうことなんだろう。
みんなにバレてしまうのではないか、と。
これがリアの魅力の一つだと思っている。
関係を秘密にしているのはあくまで俺の都合だ。
リアには無理を言って協力してもらっている。
リアにだって不満はきっとあるはずだ。
それなのに俺を気遣える優しさ。
大人の余裕なのだろう。
だから俺はリアに、大中小のうちの中を話すことにした。
□□□□ ~幸せな3つの話・中~ □□□□
「中なんだが、みんなに俺とリアの関係を打ち明けようと思う」
「よろしいんですか?なにか事情があって秘密にされていたのでは?」
その通り。
でもそれらを引っくるめて決意したんだ。
「これはあかり達にも話したんだが、実は18歳になったら.....」
俺が話したのは、以前サーシャやセリーヌ達にも話した内容だ。
まだリアには話したことがなかったので、ちゃんと話すことにした
18歳になったらリア達と正式に結婚するつもりでいること。
結婚式は訳あって先送りだけど必ず挙げるつもりでいること。
先送りの理由は後で教えること。
イリアス式の結婚の儀式を執り行う予定であること。
儀式の内容は既にサーシャから教わっていること。
「伝えるのは遅くなったけど、リアにもそのつもりでいてほしい。だからこの機会にみんなに打ち明けようと思う」
もっと早くリアには伝えるべきだった。
全ては俺の決意が固まらなかったのが原因だ。
「今後は堂々とお付き合いしてもいいんですか?」
「その通りだ」
お家デートやわざわざ隠れてまで他国に行く必要もない。
「ゆ、ユウジさんの恋人として胸を張ってもいいんですか?」
「その通りだ」
隠す必要はない。自他認める俺の愛しい嫁の一人だ。
「そ、そ、それじゃあもう、わ、わ、わたしも.....」
「リア.....」
よほど感極まっているのか、リアの顔は既に涙でひどいことになっている。
かつて王都でリアを振った時に泣かれた以上だ。
俺はリアが落ち着くまで、優しく抱きしめた。
愛しさと感謝と、そして謝罪の想いを込めて抱きしめた。
俺はリアの優しさに甘えすぎた。
そのせいでリアには寂しい思いをたくさんさせてしまった。
だからこれからはリアにはたくさん幸せになってほしい。
リアの幸せが俺にあるなら、俺の幸せもまたリアとともにある。
.....一緒に幸せになろう、リア!
胸を貸してから10分後、だいぶリアが落ち着いたみたいだ。
「ご、ごめんなさい。お恥ずかしいところをお見せしました」
「気にするな。落ち着いたか?」
リアは思いっきり泣いてしまったせいか、恥ずかしそうにしている
そんなリアが可愛らしかったので、頭をなでてあげた。
「はぅ.....エステル様が気に入られる訳がわかりました」
気持ち良さそうになでられているリアを見ると、幸せな気持ちになる。
俺は中の話をしたつもりだが、リアからは大並な反応だったことに少なからず驚いている。
それだけ寂しい思いをさせていたのだと改めて反省した。
「ユウジさん。一つ確認させてください」
なんだろう?
でもリアの表情から伺えるのは嬉しさだ。
「今後は私も、アカリさん達みたいに当たり前のようにユウジさんの隣にいていいんですよね?」
俺の嫁なら当たり前のことだが、リアにとってはそれが当たり前じゃなかった。
だからこそ、改めて確認したいんだろう。
「当然だ。むしろいつも側にいて俺を支えてほしい。頼りにしているぞ?リア」
「はい!ユウジさんのお役に立つことこそ、私の幸せなんですから!」
大袈裟だろ、と苦笑しつつも、そこにはかつて王都で見たきれいな笑顔である花が咲いていた。
そう、ペチュニアという花が。
花言葉は『決して貴方を諦めない』
俺を決して諦めなかったリアの決意がようやく満開に花開くことになった。
だから俺は、
「リア・・・愛している」
「ユウジさん・・・愛しています」
愛と尊敬の想いを込めて、そっとキスを交わした。
情愛の愛民とのキスは、涙の味がした。
それはきっと幸せな味なんだと思う。
□□□□ ~幸せな3つの話・大~ □□□□
俺は今、少し後悔している。
なぜ後悔しているのか。
それは残りの大の話が、実は中で話すことだったんじゃないか、と思い始めたからだ。
正直、中の話をした後のリアの喜びようは尋常ではなかった。
多分それが俺とリアの間での想いの違いだったんだと思う。
リアに寂しい思いをさせているのは分かっていた。
俺は、リアが他のお嫁さん達と比べて、俺といちゃいちゃできる時間があまりにも少ないから寂しいのだと思っていた。
しかしリアは、俺との関係を隠さなければいけないことに、当たり前である関係を当たり前ではない状況にしなければならなかったことに寂しさを感じていた。
寂しさの理由が明確に違いすぎる!
やばいよ!やばいよ!
大の話はあきらかに俺が勘違いした結果の産物である。
そんな狼狽した俺とは裏腹に、リアがそれはもう興奮した状態で嬉しそうに尋ねてきた。
「ユウジさん!それでは大のお話をお願いします。小や中だけでも、これ以上ないぐらいかなり幸せだったので大は想像がつきません。楽しみで仕方がないです!」
よ、余計なハードル上げんな!
話しづらいわ!
「え、えっと.....」
「勿体振らずに教えてください。ユウジさんのことだから、きっとすごいことなんですよね?楽しみです!これ以上ないぐらいユウジさんのこと好きになりました!」
眩しい!眩しすぎる!
リアの笑顔が俺に多大なプレッシャーを与えているよ!
でも今言わないと、ますますハードルが上がっていく気がする。
仕方がない。『覚悟』を決めるか.....
「だ、大の話なんだが、俺の家で一緒に暮らさないか?」
「.....え?それが大ですか?」
リアはきょとんとしている。
嬉しくないはずはないだろうが、期待外れといった感じだろうか。
やっぱり中と大は逆だったのかもしれない。
「あ、リアが嫌じゃなければ、だけどな」
「あ、はい。ぜひ喜んで」
・・・。
リアが喜んでるのはわかるよ?
でもさっきの中の反応を見た後だと微妙に見える。
くそっ!失敗した!
どうすんだよ!この微妙な空気!
完全に蛇足感モードじゃねぇか!
なにかないか!?
この空気を打開できるなら、俺は悪魔にも魂を売る!
・・・。
しばらくした後、なにかないかと考えた末に出した俺の答えは.....
「本当に嫌じゃないのか?」
「どういう意味ですか?」
リアが首を傾げる。
俺の質問の意図がわからないようだ。
「一緒に暮らし始めたら、いつぞやみたいにだらしない生活をするのが難しくなるぞ?」
「なっ!?ちょっ!?ユウジさん!それは言わないでください!」
そう、俺が出した答えはリアを弄ることだ。
リアが微妙な反応をしたのが悪いんだから、リアを弄ることで責任をとってもらえばいい!
悪魔的な発想!
ナイス俺!
「「「え?あの副ギルド長が私生活はだらしがないんですか?」」」
俺の言葉に、ヒルダ達が興味を持ったようだ。
リアが慌てて否定している。
リアはギルドではバリバリのキャリアウーマンなのだが、私生活は結構ひどい。
脱いだ服は脱ぎっぱなし。
私生活の服装は一張羅のジャージ。
休日は身嗜みを整える訳でもなく寝起きのまま。
まぁゴミ屋敷とかそういうのではないので、まだマシだが。
つまり人の目がないと、とことん怠けるタイプみたいだ。
オンオフをうまく切り替えているとも言える。
「いちお、うちにはうちのルールがあるから、一人暮らしの時よりも制約があるが大丈夫か?」
一人暮らしは自由だもんなぁ。
誰に迷惑かけるでもなく、怒られもしないし。
「自由が減る代わりに、ユウジさんと毎日一緒に入れるんですから嬉しいですよ。自由よりユウジさんです」
おぉ!アイサ、よく聞いとけ!
これがお嫁さんの実力だぞ!
「一人暮らしの時よりも騒がしくなるが大丈夫か?うちにはちびっこがたくさんいるしさ」
一人暮らしは気楽なんだよなぁ。
気を遣わなくていいし、静かだし。
「問題ないですよ。私は子供好きですし。多少騒がしいぐらいのほうが、寂しくならないですしね」
あぁ、確かにリアは子供好きそうだよな。
面倒見いいし、叱る時は叱る。褒める時は褒める。
それができるいいお母さんになりそうだ。
「ありがとう。リア。一緒に暮らせて嬉しいよ。ルール以外は存分に怠けてくれても構わないからさ。だらしがないリアも俺は好きだぞ」
「だから言わないでくださいって!絶対わざとですよね!ユウジさんのいじわる!」
いじわる?
いじわるなのかな?
本当は怠けたいんじゃないの?
とりあえず、幸せな3つの話はこれでおしまい。
途中、大と中の話が逆になってしまうというトラブルがあったが、俺はリアに対して一つのけじめをつけることができた。
「リア。これからは寂しい思いをさせることがないように全力で幸せにしていくよ」
「ユウジさんの側にいる限り寂しいことなんてきっとありません。毎日が幸せなことばかりになるはずです」
リアからは幸せオーラが漂っている。
やはり『覚悟』した結果は正解だった。
俺はリアを抱き寄せ見つめあい、
「リア・・・愛している」
「ユウジさん・・・愛しています」
そして、明日のデートでの再会を約束して、一時の別れの口づけを交わした
あたりは既に薄暗くなっている。
想像以上に時間をくった。
それもこれも全て、スハイツ達や委員長達が素材回収にもたもたしていたせいだ。
.....はぁ。
さっさと換金して帰りたい。
そんな訳で俺達は、ぞろぞろと連れだって冒険者ギルド内に入った
ギルド内に入るやいなや、一斉に集まる視線。
俺はこのギルド特有のノリがあまり好きじゃない。
入ってくる人の価値を見定めるような、物色されている感覚。
うん。さっさと換金して帰ろう。
てか、男共は俺を見るな!神圧で黙らせるぞ?
早く帰りたい俺は受付カウンターへと歩き出す。
「こんばんは、ヒルダ。換金とリアを.....」
俺は、もはやおなじみの受付嬢であるヒルダに声を掛けたのだが、
「「こんばんは。ユウジさん!」」
うおっ!?びっくりした!
先に返事が返ってきたのは、同じ受付嬢であるユリとアズサからだった。
「こ、こんばんは。ユリ、アズサ」
「もう!ユウジさんはヒルダさんばっかり!たまには私にも声を掛けてくださいよ!」
こうおっしゃるのは、ユリ。
彼女とは、ヒルダやリアがいない時に、ヒルダの代わりに声を掛けた縁で知り合った。
「なに言ってるんですか!私はユウジさんの専属なんですから、私だけに声を掛けてくれるのは当然なんです!」
そんなユリに反論するかの如く反応したのはヒルダだ。
あ、あの専属って.....
ヒルダは優秀だから優先してるだけなんだが?
そんな呆れている俺の前で、いがみ合うヒルダとユリ。
あきらかに窓口2つ分の業務が滞っている。
もうやだ、この展開。
ちゃんと仕事しろよ!二人とも!
.....そのうち俺は冒険者ギルド出禁になるんじゃね?
そんなことを考えながら、いがみ合っている二人を無視して、別の窓口に向かう。
「ユウジさんも大変ですね」
大変ですねって.....なに他人事のように言ってんの。
こうなった原因はお前らだろ。
苦笑しながら声を掛けてきたのは、アズサだ。
「勘弁してくれよ。二人にもちゃんと声は掛けるからさ。毎回こんな事態になってたら、リアに悪いよ」
冒険者ギルドにくると、こんな展開が毎回起こる。
だから結局、換金を頼むのは二人の緩衝材役となっているアズサになることが多い。
.....多い?あれ?
も、もしかして?
アズサはこうなることを計算しているのか!?
俺が改めて女の恐さに戦慄している中、アズサはてきぱきと業務をこなそうとする。
「今日も換金でよろしいですか?」
「あ、あぁ。それと.....」
「副ギルド長ですよね?分かっています」
アズサは分かっているとばかりに、俺の言葉を遮った。
ヒルダだけではなく、実はユリやアズサも優秀だ。
基本的にこのエクスペインの受付嬢はレベルが高い気がする。
容姿、才能。いずれも他の都市より抜きん出ている。
抜きん出ているのは確かなのだが.....
俺は今だにいがみ合っているヒルダ達に視線を向ける。
.....はぁ。
なんでこう残念な娘ばかりなんだろう。
そろそろ換金する場所を変えようかな?
と、真剣に考え始めていた。
でも、ヒルダにユリ、アズサは美人なんだよなぁ。
話せなくなるのは、もったいない気がしないでもない!
と、結局いつも決め切れずにいた。
話すなら、やっぱり可愛い娘か美人に限るよな!
□□□□ ~衝撃の事実~ □□□□
換金が終わるまでしばらく待っていると、
「ユウジさん。お待たせしました」
リアがやってきた。
アズサがちゃんと呼んできてくれたらしい。
「毎度毎度、この娘達がすみません」
リアはそう言うと、ペコリッと頭を下げた。
それに合わせるように、ヒルダとユリも頭を下げる。
「リアのせいじゃないしさ。むしろ毎回迷惑かけてごめんな」
「ユウジさんがそう言うなら.....貴方達もちゃんと反省しなさい。ユウジさんが出禁になってもいいの?」
「「は~い」」
さすが副ギルド長。
貫禄あるなぁ。できる女って感じがする。
リアがヒルダやユリにビシッと注意を促す姿は様になる。
.....それにしても、
俺の出禁の話がさらっと出たんだが!?
「えっと.....俺って実はやばかったりする?」
「.....言いにくいんですが、エクスペインのギルドと言う括りで言いますと、ユウジさんの存在じたいが迷惑以外のなにものでもないんです」
ちょっ!?
存在じたいが、ってなんだよ!?
俺が想像以上の答えに衝撃を受けている中、リアは話を続けた。
「まずですね。ユウジさんはクエストを全くやらないですよね?Sランク冒険者とは、全ての冒険者の模範となる存在です。だから本来は率先してクエストを消化して欲しいのがギルド側の希望です。あかりさんがいい例です」
えー。やだよ。
俺がSランク冒険者になったのはエステルの為だし。
しかもあかりがいい例って.....
そのせいで、俺はあかりとの時間がなかなか取れないんだからさ。
「無理。却下!」
俺の言葉にリアは、分かってますよ、とばかりに微笑んだ。
分かってるじゃないか!さすが俺の嫁!
ちなみにアイサは、やれやれとばかりにため息をつき、委員長はジト目を向けている。
なんと言われようとやだ!めんどくさい!
リアの話はまだ続く。
てか、まだ続くのかよ!?
「あとですね。ユウジさんがいらっしゃると、業務が滞ると多くの冒険者から苦情がきてるんですよ。実際、私も何度も目撃していますし」
ちょっと待て!
それは俺が原因なのか!?
要はヒルダ、ユリ、アズサの3人娘の件だろ?
それはそちらの問題では?
.....いや、俺がくるとそうなるんだし、俺が原因か?
「最後にですね。これも他の冒険者からの苦情なんですが.....」
まだあるの!?
てか、他の冒険者からの苦情が多いな!
「ユウジさんが大量に素材を流すから、市場の価格破壊が進んでいるらしいですよ?エクスペインで素材買い取りをしてもらっても儲からない、と聞きました。なにやら今回も大量に素材を持ってきたとか.....自覚ありますか?」
うっ。
仕方がないじゃん?
出さないと、どんどん素材貯まる一方なんだし?
だから俺は、
「全くない。そもそも誰のおかげで市場に豊富な素材が溢れてると思ってんだよ。俺が素材を大量に提供してるからだろ?言うなれば、俺がエクスペイン経済を支えてるのと一緒だ。もっと言えば、俺がエクスペインであり、エクスペインが俺みたいなもんだ。他の冒険者が飢えようと知ったこっちゃない。仮に俺がいなくなったら、冒険者は儲かるかもしれないが、それ以外の人は困ることになるぞ?」
あえてみんなに分かりやすいように事実を述べた。
リアの言う通り、確かに俺のせいで市場の価格破壊が進んでいるのは確かだろう。
冒険者が儲からないのも間違いないはずだ。
しかし冒険者が儲からない裏で、恩恵を受けている人がいるのも確かだろう。
エクスペイン近郊では滅多に手に入らない珍しい素材。
また価格破壊が起きるほどに入荷されることで、安価に手に入れることができるようになったはずだ。
一部の冒険者の幸せよりも、多くの人々の幸せだな!
なんか勇者っぽい!
そんな俺の言葉を聞いたみんなは様々な反応を見せた。
「ステキ.....その傲慢で不遜な態度が痺れます!」
ヒルダはうっとりした表情で俺を見つめてくる。
ギルド職員としてはきっと間違った反応だろうが、出会った時からこうだし問題ないな。
「ヒルダさんからあらかた聞いてましたが、本当にユウジさんってこんな感じなんですね」
一方、驚いていたのがユリにアズサだ。
初めて目の当たりにした俺、という人柄に衝撃を受けている。
ヒルダよりかは多少まとも寄りな感性の持ち主なのかもしれない。
そして最後は、
「本当にユウジさんは相変わらずですね。非常識すぎます」
当然リアだ。毎度のことながら呆れている。
リアは常識人だからな。
出会った当初から俺の行動には呆れっぱなしだった。
そんな常識人であるリアが、非常識な存在である俺を慕ってくれている。
世の中なにがあるかわからないものだ。
だから俺は、そんな愛しいリアを強引に抱き寄せた。
「ユウジさん!?」
強引なリアには、強引な態度が一番いい。
驚いた顔のリアを見るのはとても新鮮だ。
「こんな非常識な俺は嫌いか?」
「嫌いだなんてそんな.....私はユウジさんを愛しています」
・・・。
リアの愛情表現はいつもストレートだ。
なんか照れる。
抱き寄せられた胸の中で恥ずかしそうに微笑むリア。
そんな美しい笑顔に添えられた耳元のイヤリングが微かに揺れる。
『情愛のイヤリング』
かつて俺がリアにプレゼントしたマジックアイテムだ。
込めた想いは、永遠の愛と尊敬。
俺はイヤリングにそっと触れ、一言褒めた。
「大切にしてくれているんだな。似合うよ。きれいだ」
「ありがとうございます。でもユウジさん?」
なんだ?
俺の褒め方に間違いがあったか?
「きれいなのは私とイヤリング。どちらですか?」
お、おぅ?
新たな攻め口で来たな。
少し甘えたい気分なのか?
他のお嫁さんに比べて、リアだけ月1ぐらいでしかまともな時間が取れない。
これは俺がリアとの関係をみんなに内緒にしているからだ。
そう、マリーの事とかがあるので今までは内緒にしていた。
でも俺は、18歳になったことでいろいろけじめをつけようと決意している。
それはリアとの関係も.....
「ユウジさん?どうしました?」
おっと。考えこんでいたか。
リアが不安そうな表情で、俺の顔色を伺ってきた。
まずはこの不安そうな表情を笑顔で彩りたい。
そう思った俺は、
「悪い。リアがあまりにもきれいだったから見惚れてた」
決まった?決まっただろ!?
言った俺もちょっとどうかと思うぐらいの気障ったらしい言葉だ。
ただ、その結果はすぐに分かった。
顔をりんごのように真っ赤にしたリアが、恥ずかしそうに俺の胸の中に顔を埋めたからだ。
気障な言葉って、言う人も恥ずかしいけど、言われたほうも案外恥ずかしいものだよな。
お互いが恥ずかしい思いをしながらもいちゃいちゃしていたら、リアが既視感のある質問をしてきた。
「ユウジさん。きれいって.....」
「?」
「アカリさんよりもですか?」
うぉい!
それってまんま、あかりのそれと一緒じゃねぇか!
お前ら、本当に仲いいな!
だから俺の答えは決まっている。
「あかり.....よりもきれいだ」
「え!?」
きっと予想外な答えだったんだろう。
今まで見たことがないぐらいの驚いた顔をしている。
.....ふふふ。俺をナメるなよ?
いつまでもお前らに翻弄される俺だと思うな!
「ユウジさん!嬉しいです!アカリさんに報告しなきゃ!」
あっ.....
それはやめてください!お願いします!
「ごめん。あかりと同じぐらいきれいかな?」
「なんで言い直すんですか~!」
リアの怒声がギルド内に響き渡った。
ごめんよ?リア
だって、あかりが悲しむじゃん?
まだまだリアとあかりには振り回される運命らしい。
□□□□ ~幸せな3つの話・小~ □□□□
「ユウジさん❤」
俺に抱きしめられてご満悦なリア。可愛い。
正直このままずっといちゃいちゃしていたいのだが、周りの視線が痛い。
アイサや委員長からはそれはもう突き刺さるよう視線が飛んで来ている。
それはそうだろう。
だってアイサと委員長は俺とリアの関係を知らないだろうから。
一方ヒルダ達からはジト目で見られている。見られているのは主にリアだが。
それはそうだろう。
だって業務停滞を注意していた本人が、業務を停滞させているのだから。
これ以上はリアの副ギルド長としての権威が失墜し、部下に示しがつかなくなる恐れがある。
だから俺は、リアとのいちゃいちゃタイムを惜しみながらも本題に入ることにした。
「リアにとって嬉しい話を3つ用意してきた。大・中・小とあるが、どれから聞きたい?」
俺はギュッと抱きしめながら、リアに尋ねた。
「3つですか?でしたら小からでお願いします」
小からか。リアはあれか?
好きなものは最後に残すタイプか?
「わかった。小だが、明日デートしよう。できれば一日俺に時間をくれ」
「デートはいいんですが、一日ですか?」
なにを当たり前な、といった表情をしているリア。
多分一日の意味を理解していないのだろう。
しかしそれは、今までを鑑みると仕方がないことだ。
これまでのデートは基本リアのお家デートで、一緒にいれるのも夕方までだった。
ちゃんと一日の意味を理解させる必要があるだろう。
「そう一日。つまり夜も一緒にいたい。話したいこともあるから」
「.....え?」
一日の意味を理解したリアは、みるみるうちに真っ赤になっていく
「急だったし、無理か?」
「い、いえ。よ、よろしくお願いします」
よろしくされました!
こういうところがウブなのは、できる女とのギャップで萌える。
「あっ。もしかしたら、デートはエステルも一緒になるだろうけどいいかな?」
多分というか、絶対なるはず。
これまでの休日も毎回訪ねてきていたし。
「そういえば、エステル様が一緒にいないのは珍しいですね?」
やっぱり気付くよな。
もはや俺とエステルはワンセットみたいな扱いされてたし。
そこで俺は、リアにエステルのことを簡単に教えた。
夏休みが終わったので、仕方なく実家に戻ることになったのだと。
そうしたらリアからは、戻るのが普通で仕方なくというのは変だとツッコまれた。
確かにおっしゃる通りで。さすが常識人。
「わかりました。私は別に構いませんよ。エステル様の気持ちは痛いほど分かりますから」
エステルのなんの気持ちがわかるのかは俺にはわからないが、正直助かる。
リアも嫉妬しちゃう娘なんだが、あかりとエステルに関しては気にしていない節がある。
.....本当、女の子はよくわからない。
最後に、これだけは伝えないとリアが勘違いしちゃう案件が残っていた。
俺は周りに聞こえないように、リアの耳元にぽつりっと囁く。
「安心しろ?夜は二人っきりだから」
「///」
リアの頬がみるみる赤くなっていく様はなんとも可愛らしい。
俺がそんなことを考えていたら、
「い、一日デートは私としては嬉しいんですが、ユウジさんは大丈夫なんですか?」
リアがもっともなことを聞いてきた。
俺とリアの関係はみんなには秘密にしている。
つまり、リアが言いたいのはそういうことなんだろう。
みんなにバレてしまうのではないか、と。
これがリアの魅力の一つだと思っている。
関係を秘密にしているのはあくまで俺の都合だ。
リアには無理を言って協力してもらっている。
リアにだって不満はきっとあるはずだ。
それなのに俺を気遣える優しさ。
大人の余裕なのだろう。
だから俺はリアに、大中小のうちの中を話すことにした。
□□□□ ~幸せな3つの話・中~ □□□□
「中なんだが、みんなに俺とリアの関係を打ち明けようと思う」
「よろしいんですか?なにか事情があって秘密にされていたのでは?」
その通り。
でもそれらを引っくるめて決意したんだ。
「これはあかり達にも話したんだが、実は18歳になったら.....」
俺が話したのは、以前サーシャやセリーヌ達にも話した内容だ。
まだリアには話したことがなかったので、ちゃんと話すことにした
18歳になったらリア達と正式に結婚するつもりでいること。
結婚式は訳あって先送りだけど必ず挙げるつもりでいること。
先送りの理由は後で教えること。
イリアス式の結婚の儀式を執り行う予定であること。
儀式の内容は既にサーシャから教わっていること。
「伝えるのは遅くなったけど、リアにもそのつもりでいてほしい。だからこの機会にみんなに打ち明けようと思う」
もっと早くリアには伝えるべきだった。
全ては俺の決意が固まらなかったのが原因だ。
「今後は堂々とお付き合いしてもいいんですか?」
「その通りだ」
お家デートやわざわざ隠れてまで他国に行く必要もない。
「ゆ、ユウジさんの恋人として胸を張ってもいいんですか?」
「その通りだ」
隠す必要はない。自他認める俺の愛しい嫁の一人だ。
「そ、そ、それじゃあもう、わ、わ、わたしも.....」
「リア.....」
よほど感極まっているのか、リアの顔は既に涙でひどいことになっている。
かつて王都でリアを振った時に泣かれた以上だ。
俺はリアが落ち着くまで、優しく抱きしめた。
愛しさと感謝と、そして謝罪の想いを込めて抱きしめた。
俺はリアの優しさに甘えすぎた。
そのせいでリアには寂しい思いをたくさんさせてしまった。
だからこれからはリアにはたくさん幸せになってほしい。
リアの幸せが俺にあるなら、俺の幸せもまたリアとともにある。
.....一緒に幸せになろう、リア!
胸を貸してから10分後、だいぶリアが落ち着いたみたいだ。
「ご、ごめんなさい。お恥ずかしいところをお見せしました」
「気にするな。落ち着いたか?」
リアは思いっきり泣いてしまったせいか、恥ずかしそうにしている
そんなリアが可愛らしかったので、頭をなでてあげた。
「はぅ.....エステル様が気に入られる訳がわかりました」
気持ち良さそうになでられているリアを見ると、幸せな気持ちになる。
俺は中の話をしたつもりだが、リアからは大並な反応だったことに少なからず驚いている。
それだけ寂しい思いをさせていたのだと改めて反省した。
「ユウジさん。一つ確認させてください」
なんだろう?
でもリアの表情から伺えるのは嬉しさだ。
「今後は私も、アカリさん達みたいに当たり前のようにユウジさんの隣にいていいんですよね?」
俺の嫁なら当たり前のことだが、リアにとってはそれが当たり前じゃなかった。
だからこそ、改めて確認したいんだろう。
「当然だ。むしろいつも側にいて俺を支えてほしい。頼りにしているぞ?リア」
「はい!ユウジさんのお役に立つことこそ、私の幸せなんですから!」
大袈裟だろ、と苦笑しつつも、そこにはかつて王都で見たきれいな笑顔である花が咲いていた。
そう、ペチュニアという花が。
花言葉は『決して貴方を諦めない』
俺を決して諦めなかったリアの決意がようやく満開に花開くことになった。
だから俺は、
「リア・・・愛している」
「ユウジさん・・・愛しています」
愛と尊敬の想いを込めて、そっとキスを交わした。
情愛の愛民とのキスは、涙の味がした。
それはきっと幸せな味なんだと思う。
□□□□ ~幸せな3つの話・大~ □□□□
俺は今、少し後悔している。
なぜ後悔しているのか。
それは残りの大の話が、実は中で話すことだったんじゃないか、と思い始めたからだ。
正直、中の話をした後のリアの喜びようは尋常ではなかった。
多分それが俺とリアの間での想いの違いだったんだと思う。
リアに寂しい思いをさせているのは分かっていた。
俺は、リアが他のお嫁さん達と比べて、俺といちゃいちゃできる時間があまりにも少ないから寂しいのだと思っていた。
しかしリアは、俺との関係を隠さなければいけないことに、当たり前である関係を当たり前ではない状況にしなければならなかったことに寂しさを感じていた。
寂しさの理由が明確に違いすぎる!
やばいよ!やばいよ!
大の話はあきらかに俺が勘違いした結果の産物である。
そんな狼狽した俺とは裏腹に、リアがそれはもう興奮した状態で嬉しそうに尋ねてきた。
「ユウジさん!それでは大のお話をお願いします。小や中だけでも、これ以上ないぐらいかなり幸せだったので大は想像がつきません。楽しみで仕方がないです!」
よ、余計なハードル上げんな!
話しづらいわ!
「え、えっと.....」
「勿体振らずに教えてください。ユウジさんのことだから、きっとすごいことなんですよね?楽しみです!これ以上ないぐらいユウジさんのこと好きになりました!」
眩しい!眩しすぎる!
リアの笑顔が俺に多大なプレッシャーを与えているよ!
でも今言わないと、ますますハードルが上がっていく気がする。
仕方がない。『覚悟』を決めるか.....
「だ、大の話なんだが、俺の家で一緒に暮らさないか?」
「.....え?それが大ですか?」
リアはきょとんとしている。
嬉しくないはずはないだろうが、期待外れといった感じだろうか。
やっぱり中と大は逆だったのかもしれない。
「あ、リアが嫌じゃなければ、だけどな」
「あ、はい。ぜひ喜んで」
・・・。
リアが喜んでるのはわかるよ?
でもさっきの中の反応を見た後だと微妙に見える。
くそっ!失敗した!
どうすんだよ!この微妙な空気!
完全に蛇足感モードじゃねぇか!
なにかないか!?
この空気を打開できるなら、俺は悪魔にも魂を売る!
・・・。
しばらくした後、なにかないかと考えた末に出した俺の答えは.....
「本当に嫌じゃないのか?」
「どういう意味ですか?」
リアが首を傾げる。
俺の質問の意図がわからないようだ。
「一緒に暮らし始めたら、いつぞやみたいにだらしない生活をするのが難しくなるぞ?」
「なっ!?ちょっ!?ユウジさん!それは言わないでください!」
そう、俺が出した答えはリアを弄ることだ。
リアが微妙な反応をしたのが悪いんだから、リアを弄ることで責任をとってもらえばいい!
悪魔的な発想!
ナイス俺!
「「「え?あの副ギルド長が私生活はだらしがないんですか?」」」
俺の言葉に、ヒルダ達が興味を持ったようだ。
リアが慌てて否定している。
リアはギルドではバリバリのキャリアウーマンなのだが、私生活は結構ひどい。
脱いだ服は脱ぎっぱなし。
私生活の服装は一張羅のジャージ。
休日は身嗜みを整える訳でもなく寝起きのまま。
まぁゴミ屋敷とかそういうのではないので、まだマシだが。
つまり人の目がないと、とことん怠けるタイプみたいだ。
オンオフをうまく切り替えているとも言える。
「いちお、うちにはうちのルールがあるから、一人暮らしの時よりも制約があるが大丈夫か?」
一人暮らしは自由だもんなぁ。
誰に迷惑かけるでもなく、怒られもしないし。
「自由が減る代わりに、ユウジさんと毎日一緒に入れるんですから嬉しいですよ。自由よりユウジさんです」
おぉ!アイサ、よく聞いとけ!
これがお嫁さんの実力だぞ!
「一人暮らしの時よりも騒がしくなるが大丈夫か?うちにはちびっこがたくさんいるしさ」
一人暮らしは気楽なんだよなぁ。
気を遣わなくていいし、静かだし。
「問題ないですよ。私は子供好きですし。多少騒がしいぐらいのほうが、寂しくならないですしね」
あぁ、確かにリアは子供好きそうだよな。
面倒見いいし、叱る時は叱る。褒める時は褒める。
それができるいいお母さんになりそうだ。
「ありがとう。リア。一緒に暮らせて嬉しいよ。ルール以外は存分に怠けてくれても構わないからさ。だらしがないリアも俺は好きだぞ」
「だから言わないでくださいって!絶対わざとですよね!ユウジさんのいじわる!」
いじわる?
いじわるなのかな?
本当は怠けたいんじゃないの?
とりあえず、幸せな3つの話はこれでおしまい。
途中、大と中の話が逆になってしまうというトラブルがあったが、俺はリアに対して一つのけじめをつけることができた。
「リア。これからは寂しい思いをさせることがないように全力で幸せにしていくよ」
「ユウジさんの側にいる限り寂しいことなんてきっとありません。毎日が幸せなことばかりになるはずです」
リアからは幸せオーラが漂っている。
やはり『覚悟』した結果は正解だった。
俺はリアを抱き寄せ見つめあい、
「リア・・・愛している」
「ユウジさん・・・愛しています」
そして、明日のデートでの再会を約束して、一時の別れの口づけを交わした
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