37 / 77
分析(3)
しおりを挟む
「そもそも上納金を得ると言いますが、どうして払うんでしょう。」
「色々あるな。例として半グレの中には、ボッタクリバーを経営するものがある。」
「それは、安い値段で呼び込んでものすごいお金を払えというお店ですよね。」
警察24時のような番組で見たことはある。
「そう、払ってもらえればいいが、払わず揉めた場合、ヤクザが出てくる。このために払うんだ。」
「他にもお客同士の喧嘩の仲裁もあるわよ。」
蔵良が過去の経験を披露した。
「それくらい警察を呼べば。」
「警察呼んだら他のお客がシラケるし、見られたくないのもあるからさ。」
「見られたくないって?」
「未成年が働いていることもあるから。まだ20以下の飲酒は違法だよ。」
「18才とかいるってことですか。」
「昔の同僚の中には中学生からやってるってのもいたよ。普通にビール呑んでたって。」
「え~!」
にわかに信じ難い話だった。
「地方から上京してきた子の話さ。」
「蔵良さんも?」
「あたしはしてない。そもそもキャバ自体が無いような田舎だったんだよ。」
蔵良は、タバコに火を点けた。
「ま、世の中お嬢ちゃんには想像もつかないことがあるってこと。」
紫煙をくゆらす蔵良を見て、黒江はこの数日で自分が垣間見た世界のことを考えた。自分のことを世間知らずと思ってはいたが、知らぬことが想像を越えていた。DV、犯罪、本で読んだことはあるが、目の前の人間から語られたことはない。せいぜい、親とニュースを見ながら話をする程度だった。
超能力者と知り合いたい。そう思って上京してきたが、こういった世界を垣間見るとは思ってなかった。考えるだけで、なんというか、膨大な何かに圧倒されそうである。
とりあえず、手を動かそう。というか動かすことでごまかそう。
目の前のPCの設定に集中する。
吉良も蔵良も目の前のPCを見つめている。
「先生、設定終わりました。」
「ありがとう、やっと君のパソコンを返せるね。」
吉良は、黒江のPCを閉じ、SDカードを抜いてから黒江に返した。
「いいえ、お役に立ててよかったです。」
「今日は、この辺にしておこう。」
「もうやめるんですか?」
時計を見ると3時半を過ぎたくらいだった。
「そんなに急がなくてもいいしね。それに本来今日は休日だ。年寄りにオーバーワークさせないでくれ。」
「そうでした、失礼しました。」
ここしばらく休み同然だったので曜日の感覚が狂っているな、と黒江は思った。
「では、今日はもうお終いだ。根を詰めてもしょうがないからね。」
5時過ぎ、吉良が事務所のカギを開けようとすると蔵良が階段を上がってきた。
「蔵良君。」
「先生、今日はもうお終いではなかったのですか。」
「いや、忘れ物をね。君は?」
「では、私も忘れ物を。」
蔵良は笑いながら吉良に近寄った。
「先生は、分析をすすめるのでしょう。」
「あぁ、早いところカタをつけたい。」
「お手伝いします。あたしは、正職員ですから。アルバイトとは責任感が違いますよ。」
「事務所の財務状況としては、休日出勤は厳しいのだがね。」
「先生、お嬢ちゃんに世の中の裏側を見せたくないのでしょう。」
「君もかね?」
「あたしは、先生の意向に沿うだけです。お嬢ちゃんはどうでもいいですよ。せいぜい、あの坊やとひっつけばいいのにと思うくらいです。」
「私もそう思っているよ。悪い青年ではないのだから。」
「あの坊やが悪いです。やるべきことをしないのだから。その気はあるのに。」
「手厳しいね。」
吉良はカギを開け、事務所に入った。電気をつける。
「さて、あんまり遅くならないようにしよう。」
「色々あるな。例として半グレの中には、ボッタクリバーを経営するものがある。」
「それは、安い値段で呼び込んでものすごいお金を払えというお店ですよね。」
警察24時のような番組で見たことはある。
「そう、払ってもらえればいいが、払わず揉めた場合、ヤクザが出てくる。このために払うんだ。」
「他にもお客同士の喧嘩の仲裁もあるわよ。」
蔵良が過去の経験を披露した。
「それくらい警察を呼べば。」
「警察呼んだら他のお客がシラケるし、見られたくないのもあるからさ。」
「見られたくないって?」
「未成年が働いていることもあるから。まだ20以下の飲酒は違法だよ。」
「18才とかいるってことですか。」
「昔の同僚の中には中学生からやってるってのもいたよ。普通にビール呑んでたって。」
「え~!」
にわかに信じ難い話だった。
「地方から上京してきた子の話さ。」
「蔵良さんも?」
「あたしはしてない。そもそもキャバ自体が無いような田舎だったんだよ。」
蔵良は、タバコに火を点けた。
「ま、世の中お嬢ちゃんには想像もつかないことがあるってこと。」
紫煙をくゆらす蔵良を見て、黒江はこの数日で自分が垣間見た世界のことを考えた。自分のことを世間知らずと思ってはいたが、知らぬことが想像を越えていた。DV、犯罪、本で読んだことはあるが、目の前の人間から語られたことはない。せいぜい、親とニュースを見ながら話をする程度だった。
超能力者と知り合いたい。そう思って上京してきたが、こういった世界を垣間見るとは思ってなかった。考えるだけで、なんというか、膨大な何かに圧倒されそうである。
とりあえず、手を動かそう。というか動かすことでごまかそう。
目の前のPCの設定に集中する。
吉良も蔵良も目の前のPCを見つめている。
「先生、設定終わりました。」
「ありがとう、やっと君のパソコンを返せるね。」
吉良は、黒江のPCを閉じ、SDカードを抜いてから黒江に返した。
「いいえ、お役に立ててよかったです。」
「今日は、この辺にしておこう。」
「もうやめるんですか?」
時計を見ると3時半を過ぎたくらいだった。
「そんなに急がなくてもいいしね。それに本来今日は休日だ。年寄りにオーバーワークさせないでくれ。」
「そうでした、失礼しました。」
ここしばらく休み同然だったので曜日の感覚が狂っているな、と黒江は思った。
「では、今日はもうお終いだ。根を詰めてもしょうがないからね。」
5時過ぎ、吉良が事務所のカギを開けようとすると蔵良が階段を上がってきた。
「蔵良君。」
「先生、今日はもうお終いではなかったのですか。」
「いや、忘れ物をね。君は?」
「では、私も忘れ物を。」
蔵良は笑いながら吉良に近寄った。
「先生は、分析をすすめるのでしょう。」
「あぁ、早いところカタをつけたい。」
「お手伝いします。あたしは、正職員ですから。アルバイトとは責任感が違いますよ。」
「事務所の財務状況としては、休日出勤は厳しいのだがね。」
「先生、お嬢ちゃんに世の中の裏側を見せたくないのでしょう。」
「君もかね?」
「あたしは、先生の意向に沿うだけです。お嬢ちゃんはどうでもいいですよ。せいぜい、あの坊やとひっつけばいいのにと思うくらいです。」
「私もそう思っているよ。悪い青年ではないのだから。」
「あの坊やが悪いです。やるべきことをしないのだから。その気はあるのに。」
「手厳しいね。」
吉良はカギを開け、事務所に入った。電気をつける。
「さて、あんまり遅くならないようにしよう。」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる