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弁護士事務所に行く前に
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「どんな超能力なんですか?」
「どんな超能力って、そっちが先に教えるべきじゃない。勝手についてきてどんな超能力か教えろって、こっちばっかしてやってるだけじゃないか。」
「それなら、俺から。」
白野は肩に回されている手をほどき、黒江と蔵良の間に割り込んで黒江の肩の手もほどいた。黒江を押すように下がり、手の届かない間合いを取る。
そして、蔵良のスーツの胸ポケットの金属製のボールペンに意識を集中する。
「なんだい、人のおっぱい見て。見たいのかい。あたしはそんなに大きくないよ。」
蔵良の冗談を無視して意識を集中するが動かない。
「どうしたの?」
「すいません、胸ポケットのボールペン固定したりしてませんか?」
「そんな変なことしやしないよ。使えないじゃないか。」
妙なこと言いだすね、そう思いながら胸ポケットから引き抜き右手の手のひらにのせて白野に見せた。
「ほらね。」
白野は右手のボールペンに改めて意識を集中する。
「白野さん、どうしたの?」
黒江の目には、蔵良の手のひらのボールペンをつまむ青い指が見えている。
「動かない。妙に重いんだと思う、蔵良さんのボールペン。」
「ひょっとして念動力ってやつかい?この程度も動かせないなんてしょぼいね。」
「ボールペンくらいいつでも動かせるんですけどね。」
「しょうがないさ、こいつはね。」
蔵良は右手でペン先を左手で軸を持ち、左右に引っ張るや否や、右手を白野の喉元に突き付けた。
「えっ。」
「ボールペンじゃない…。」
蔵良の右手には、柄がペン先のナイフが握られていた。鋭い切っ先がのどに突き付けられている。
「ペンナイフ程度のおもちゃさ。気休めだね。」
さすがに白野も動揺した。半歩後ろに下がる。
右手がかすかに震える何かに触れた。
見るとそれは黒江の右手だった。
あぁ、黒江さんも怖いんだ。そう思うと白野は落ち着けた。黒江の指先をそっと握り、振り向いて大丈夫と無理に笑った。
左手で蔵良の手を握った。
「しょぼい超能力ですんません。もう引っ込めてもらえますか。」
「すまないね、ちょっと冗談が過ぎたようだね。お嬢ちゃんも心配しなさんな。こいつで人をどうこうしたことはないよ。」
蔵良は、笑いながらナイフを元に戻した。
「しかし、しょぼい超能力だってのは否定しないよ。」
「もう一つ、遠くを見る超能力があります。」
「へぇ、今すぐ使えるかい?」
「はい。」
白野は目を閉じた。
黒江の視界に『Mark2eyeball』が白野の前に現れるのが見えた。
『Mark2Eyeball』が蔵良の後ろに回り込む。
「蔵良さん、シルバーの髪を止める…ええと。」
「バレットだよ。」
小声で黒江が教えてくれた。
「バレットしてますね。」
「正解だけど、あんたに後姿を隠した覚えはないから証拠にならないよ。どっか遠く、どこにしようか?」
「たいていの所は見る自信はありますが、遠いところだと時間がかかります。例えば、そこのビルの裏を見ようと思えば3分くらい欲しいですね。」
「欠点もあるってかい。時間がかかるのはごめんだね。このバッグの中身を当てるのは?」
左肩のトートバッグを白野につきつけた。
「ファスナーで密閉されているのは無理です。隙間がわずかにあれば大丈夫ですけど。」
「隙間が必要ねぇ。今更、ファスナーを少しでも開ける気にはなれない。超能力以外の手段で見られるような気がするしね。」
空っぽだからいいひっかけになると思ったんだけど、難しいねぇ。
蔵良は考えた。
そして右足を半歩前に出した。
「それなら、あたしの下着の色を当ててもらおうか。」
「えっ?」
「足の細さには自信があってね。パンツだけど、隙間は十分あるはずさ。」
「わかりました、やってみます。」
「ちょっちょっとぉ。」
黒江の視界の中で『Mark2eyeball』がはらばいになると、蔵良の右足のかかとからパンツの裾に足を突っ込み始めた。
「やっやだぁ~なにやってんのぉ。」
何言ってんだ、この子?
蔵良は、動揺し始めた黒江をいぶかしげな眼で見た。
黒江の目の前で『Mark2eyeball』はパンツの裾にサイズを合わせるかのように小さくなっていき、白野とつながる線だけ残して、入り切ってしまった。
「あの、蔵良さん、なんともないんですか?」
「なんともないけど。」
「ああ~ん、もう。」
どうしようか迷う表情を黒江がする中、白野が口を開いた。
「肌色ですね。」
「…正解だよ。」
「このおバカぁ~。」
黒江は、バッグの留め金の部分で白野のこめかみをぶん殴った。
「どんな超能力って、そっちが先に教えるべきじゃない。勝手についてきてどんな超能力か教えろって、こっちばっかしてやってるだけじゃないか。」
「それなら、俺から。」
白野は肩に回されている手をほどき、黒江と蔵良の間に割り込んで黒江の肩の手もほどいた。黒江を押すように下がり、手の届かない間合いを取る。
そして、蔵良のスーツの胸ポケットの金属製のボールペンに意識を集中する。
「なんだい、人のおっぱい見て。見たいのかい。あたしはそんなに大きくないよ。」
蔵良の冗談を無視して意識を集中するが動かない。
「どうしたの?」
「すいません、胸ポケットのボールペン固定したりしてませんか?」
「そんな変なことしやしないよ。使えないじゃないか。」
妙なこと言いだすね、そう思いながら胸ポケットから引き抜き右手の手のひらにのせて白野に見せた。
「ほらね。」
白野は右手のボールペンに改めて意識を集中する。
「白野さん、どうしたの?」
黒江の目には、蔵良の手のひらのボールペンをつまむ青い指が見えている。
「動かない。妙に重いんだと思う、蔵良さんのボールペン。」
「ひょっとして念動力ってやつかい?この程度も動かせないなんてしょぼいね。」
「ボールペンくらいいつでも動かせるんですけどね。」
「しょうがないさ、こいつはね。」
蔵良は右手でペン先を左手で軸を持ち、左右に引っ張るや否や、右手を白野の喉元に突き付けた。
「えっ。」
「ボールペンじゃない…。」
蔵良の右手には、柄がペン先のナイフが握られていた。鋭い切っ先がのどに突き付けられている。
「ペンナイフ程度のおもちゃさ。気休めだね。」
さすがに白野も動揺した。半歩後ろに下がる。
右手がかすかに震える何かに触れた。
見るとそれは黒江の右手だった。
あぁ、黒江さんも怖いんだ。そう思うと白野は落ち着けた。黒江の指先をそっと握り、振り向いて大丈夫と無理に笑った。
左手で蔵良の手を握った。
「しょぼい超能力ですんません。もう引っ込めてもらえますか。」
「すまないね、ちょっと冗談が過ぎたようだね。お嬢ちゃんも心配しなさんな。こいつで人をどうこうしたことはないよ。」
蔵良は、笑いながらナイフを元に戻した。
「しかし、しょぼい超能力だってのは否定しないよ。」
「もう一つ、遠くを見る超能力があります。」
「へぇ、今すぐ使えるかい?」
「はい。」
白野は目を閉じた。
黒江の視界に『Mark2eyeball』が白野の前に現れるのが見えた。
『Mark2Eyeball』が蔵良の後ろに回り込む。
「蔵良さん、シルバーの髪を止める…ええと。」
「バレットだよ。」
小声で黒江が教えてくれた。
「バレットしてますね。」
「正解だけど、あんたに後姿を隠した覚えはないから証拠にならないよ。どっか遠く、どこにしようか?」
「たいていの所は見る自信はありますが、遠いところだと時間がかかります。例えば、そこのビルの裏を見ようと思えば3分くらい欲しいですね。」
「欠点もあるってかい。時間がかかるのはごめんだね。このバッグの中身を当てるのは?」
左肩のトートバッグを白野につきつけた。
「ファスナーで密閉されているのは無理です。隙間がわずかにあれば大丈夫ですけど。」
「隙間が必要ねぇ。今更、ファスナーを少しでも開ける気にはなれない。超能力以外の手段で見られるような気がするしね。」
空っぽだからいいひっかけになると思ったんだけど、難しいねぇ。
蔵良は考えた。
そして右足を半歩前に出した。
「それなら、あたしの下着の色を当ててもらおうか。」
「えっ?」
「足の細さには自信があってね。パンツだけど、隙間は十分あるはずさ。」
「わかりました、やってみます。」
「ちょっちょっとぉ。」
黒江の視界の中で『Mark2eyeball』がはらばいになると、蔵良の右足のかかとからパンツの裾に足を突っ込み始めた。
「やっやだぁ~なにやってんのぉ。」
何言ってんだ、この子?
蔵良は、動揺し始めた黒江をいぶかしげな眼で見た。
黒江の目の前で『Mark2eyeball』はパンツの裾にサイズを合わせるかのように小さくなっていき、白野とつながる線だけ残して、入り切ってしまった。
「あの、蔵良さん、なんともないんですか?」
「なんともないけど。」
「ああ~ん、もう。」
どうしようか迷う表情を黒江がする中、白野が口を開いた。
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