おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

文字の大きさ
上 下
14 / 77

吉良弁護士事務所

しおりを挟む
「痛い、痛いって黒江さん。」
「うるさいわね!おバカおバカおバカぁ~~~。」
 バッグで殴ってくる黒江に白野は防戦一方だった。
「あんたら痴話喧嘩はやめな。目立ってしょうがない。」
 蔵良の言葉に二人は周囲を見回した。確かに視線が集まっているような…。
「ほら行くよ、ついといで。」
 歩き始めた蔵良に、慌ててついて行く二人だった。

「ここだよ。」
 蔵良が止まったのは、古い雑居ビルだった。
 蔵良はエントランスに入り、エレベーターを無視して階段に向かう。
「超能力見せてあげるから階段の方においで。」
 エレベーターの前に立とうとした二人は、蔵良について階段に移動した。
「踊り場を見てな。」
 蔵良の指さした照明の切れた薄暗い踊り場に二人は視線を向けた。
「行くよ。」
 そう言うや否や、蔵良は踊り場に二人に背を向けて立っていた。
「どうだい、あたしの『テレポート』」。
 蔵良は振り返って言った。
「黒江さん、見えた?」
「はい、一瞬のうちに階段に青い光の線が走ったかと思うと蔵良さんが現れました。多分、蔵良さんが移動した跡に青い光が一瞬残るんじゃないかと思います。」
「あたしが移動した後に青い光が残るってのは、初めて聞いたよ。」
「黒江さんは、超能力を見ることができるようなんです。」
「そうかい、タクシーの中でお嬢ちゃんに発火能力も見せたけど、そん時は?」
「タバコの先に青い光が集まったと思うと火が付きました。」
「そんな感じなんだ。おもしろいね。」
「蔵良さんは、どうやって『テレポート』に目覚めたんですか?」
「その辺の話は、事務所でしよう。3階の『吉良弁護士事務所』。狭いビルだし看板があるからすぐわかるよ。」
 そう言うや蔵良は消えた。
「『テレポート』使ったのかな?」
「えぇ、青く光りましたから。」

 「吉良弁護士事務所」のプレートが張り付けられたドアの横のインターフォンを白野は押した。
「蔵良君が連れてきた子たちかな。入りなさい。」
「失礼します。」
 そう言って白野はドアを開けた。
 ドアを開けるとパーティーションに囲まれた応接セットがあり、蔵良と禿頭で白い口髭をたくわえた老人が並んで座っていた。
 禿頭の老人が立ち上がった。
「吉良岩男です。白野さんと黒江さんだね。蔵良君から名前は連絡されてます。おかけ下さい。」
 二人は、応接セットのソファに腰を下ろした。
「あの、先生も超能力者だと蔵良さんから伺いました。どんな…。」
「名刺もまだ、渡してないんだけどな。」
「すいません、学生でよくそういう儀礼がわからなくて。」
「いや、気にしないでいいよ。君たち名刺は持ってないだろうからいいけど、私の名刺は受け取って欲しい。」
 そう言って吉良は二人に名刺を渡した。
 名刺は、白地に「弁護士 吉良岩男」と印刷されており、名前の下に数字が印刷されていた。
「名前の下の数字は、弁護士としての登録番号だ。検索すると私が東京弁護士会所属の弁護士であることが分かってもらえると思う。」
「はい。」
「ひょっとしたら、本当に弁護士なのだろうかと疑われているんじゃないかと思ってね。」
「そんなことはありません。ただ、俺は、そちらの蔵良さんを使い何をされているのかを知りたいと思っています。」
「そうだろうね。うさん臭く思われても仕方ない。何しろ人を一人破滅させようとしているのだからね。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ルナール古書店の秘密

志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。  その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。  それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。  そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。  先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。  表紙は写真ACより引用しています

えふえむ三人娘の物語

えふえむ
キャラ文芸
えふえむ三人娘の小説です。 ボブカット:アンナ(杏奈)ちゃん 三つ編み:チエ(千絵)ちゃん ポニテ:サキ(沙希)ちゃん

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...