1916年帆装巡洋艦「ゼーアドラー」出撃す

久保 倫

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賓客と

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ルックナー 手隙総員デッキに集合せよ。本艦はこれより「ブリティッシュ・ヨーマン」号よりの賓客を迎え入れる。最敬礼を以って迎え入れよ。

 「ゼーアドラー」セット上に捕虜達を含めたキャストが並ぶ。

ルックナー 貴殿らも並ばれるか?
「パーシー」号船長 妻が参加するのに夫が参加しないのはおかしいだろう。
「パーシー」号船長夫人 艦長、ダメかしら?
「ランディー・アイランド」号船長 いいだろう艦長?
「グラディス・ロイヤル」号船長 我等も退屈しているのだ。コンサートなどを我等にも参加させてくれているが、それ以外にも刺激が欲しい。
「シャルル・グノー」船長 フランス人の名誉に賭けて誓う。ご婦人に失礼は働かぬ。
ルックナー わかった。参加を許可する。
クリンチ よろしいのですか?
ルックナー 軍人ばかりが出迎えても、ご婦人の緊張も簡単に解けないだろう。民間人がいた方が安心するだろうし、な。
クリンチ わかりました。

「ブエノス・アイレス」号船長 ふぅ、女性が来ると言うのに不在など、イタリア男児の沽券に関わるからのう。許可に感謝するぞ、艦長殿。
「アントナン」号船長 さすがイタリア人。

ロイデマン 拿捕隊戻ります。

 女性客 おどおどしながらセットに乗り込んで来る。

女性客 あ、あの
ルックナー 総員、麗しきご婦人の来艦である。美しき賓客に敬礼!

 全員 敬礼する

女性客 えぇ?何事でしょう?

 「パーシー」号船長夫人 女性に花束を持って近寄る。

「パーシー」号船長夫人 海賊船「ゼーアドラー」へようこそ。こちらは艦長と私からの歓迎の花束です。お受け取り下さい。
女性客 は、はい。

 女性客 花束を受けとる。
 キャスト 全員拍手。


ルックナー 私が海賊船「ゼーアドラー」艦長、フェリックス・フォン・ルックナーです。
女性客 フォン?ドイツ貴族でしょうか?本当に海賊なのですか?
ルックナー はは、本当は本艦「ゼーアドラー」は、ドイツ海軍の仮装巡洋艦です。私が艦長のルックナー伯フェリックス。お見知りおきを。
女性客 伯爵様なのですか?
ルックナー はい。
「パーシー」号船長夫人 伯爵様は、紳士よ。私も丁重に扱われて快適に楽しく過ごしているわ。貴女も同様に扱うそうよ。
ルックナー ドイツ帝国海軍とルックナー家の名誉に賭けて丁重な待遇をお約束します。艦前方にある弾薬庫に近寄らないといった艦内のルールを遵守して頂きますが。
女性客 わかりました。そんな恐ろしい所には近寄りません。
「パーシー」号船長夫人 さぁ、キャビンに行きましょう。お茶とお菓子があるの。一緒におしゃべりしながら頂きましょう。
女性客 はい。

 二人 奈落に消える。

ルックナー やっと約束を果たせた。
クリンチ 肩の荷が下りましたな。
ルックナー 全くだ。船長夫人が性格のいいご婦人だけに心苦しかったからな。
クリンチ 今日はラッキーデイですな。

エルトマン 帆船を発見!フランス国旗を掲げています!船名「ラ・ロシュフコー」号。

ルックナー 2隻目だと?本当に今日はラッキーデイだ!総員、戦闘配置!
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