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嵐
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ナレーション そして12月23日。この日北海にいた船乗りは口を揃える。
「この日の嵐は、近年まれにみる嵐だった。」と。
ロイデマン チクショウ、舵輪が言うこと聞かねえ。舵が。
ルックナー キルヒアイス、ロイデマンを補助しろ。針路を北西に保て。嵐を抜けたらイギリス本土やドーバー海峡でした、なんて洒落にならん。
キルヒアイス 了解!
エルトマン 艦長、気圧計上昇の気配ありません!
舞台上の帆が、ワイヤーで引っ張られ上手に消える。一枚だけでなく二枚、三枚と
パーミェン 帆が破れました!1枚だけじゃない。あぁ2枚3枚も。
ピーチ 索具が切れて暴れておる。索具に殴られて負傷する者が出ておるぞ!
プライス 舷側のへりが海面につかる!
舞台上で天井から下がるワイヤーが、青色の布を引き上げ、そして落とす
シュミット 波が降ってくる!滝のようだ!
クラウス 船内に浸水!
ルックナー プライス、拿捕隊の全員でポンプを動かせ!排水を継続しろ。手すきの要員は、バケツでも何でも使って水をかいだせ!
パーミェン 船長!帆をすべて下すべきです!
ルックナー ダメだ!今、風だけで15ノット出せているんだぞ。このスピードに物を言わせて英国海軍の封鎖を突破する!
クリンチ 艦長!無茶過ぎます!
ルックナー 無茶は承知だ!だが、これくらいやらないで英国海軍を出し抜けるか!あいつらは世界最強の海軍だぞ。
クリンチ こんな嵐では、その英国海軍の艦も港に避退しています。
ルックナー 言わずともわかっている。だからこそ海に出ていなければならん!
クリンチ 敵がいないところを行けと?
ルックナー そうだ!それが通商破壊戦の原則ではないか。強敵はこれを避け、か弱い獲物のみを狙う。
クリンチ この嵐も強敵です!
ルックナー 総員の協力があれば勝てる敵だ!英国海軍の砲の方が、オレには恐ろしい。「ゼーアドラー」の砲じゃ、アウトレンジされて終いだからな。
お前達、ここが踏ん張り所だ!ドイツ海軍の航海術がイギリス海軍を上回ることを示すんだ!機雷原を突破したお前達ならできる!
総員 了解!
クリンチ 大した伯爵様だ。総員に自信を植え付けられている。
ルックナー この嵐と夜の闇があれば、シェットランド諸島とオークリー諸島との間を突破できるかもしれん。そうすれば多少は、早く大西洋に出て狩りができ………とっとっとぉ!
ロイデマン 風向き変わりました。逆風、北西風です。
ルックナー なんだ?こちらが航路について考えたら風向きが急に変わった。オレに行くなとでも言っているような……。
パーミェン なんて風だ。マストが折れちまいそうだ。
ルックナー 根拠は無い。ただの勘だ。だが、こういう時船乗りの勘はバカにできん。
ロイデマン タッキング、まずは取舵だ、キルヒアイス手伝え。
ルックナー いや面舵だ。シェットラント諸島を迂回し、フェロー諸島よりの航路で大西洋に出る!
ロイデマン・キルヒアイス 面舵了解!
クリンチ 艦長、北極に近寄るのですか?逆風になったとはいえオークニー諸島とシェットラント諸島の間を抜けるくらいは簡単です。
ルックナー そうだ。このまま直進しても行けるのかもしれんが、それでは上手くいきすぎる。
ここは、一度迂回する。何事も上手くいっている時こそ慎重になるべきだ。
暗転
ナレーション 戦後、同時期に出撃したUボートの1隻は、オ-クニー諸島とシェットラント諸島の間を通過しようとして消息を絶った。原因は不明であるが、機雷原が敷設されていた可能性は否定できない。
「この日の嵐は、近年まれにみる嵐だった。」と。
ロイデマン チクショウ、舵輪が言うこと聞かねえ。舵が。
ルックナー キルヒアイス、ロイデマンを補助しろ。針路を北西に保て。嵐を抜けたらイギリス本土やドーバー海峡でした、なんて洒落にならん。
キルヒアイス 了解!
エルトマン 艦長、気圧計上昇の気配ありません!
舞台上の帆が、ワイヤーで引っ張られ上手に消える。一枚だけでなく二枚、三枚と
パーミェン 帆が破れました!1枚だけじゃない。あぁ2枚3枚も。
ピーチ 索具が切れて暴れておる。索具に殴られて負傷する者が出ておるぞ!
プライス 舷側のへりが海面につかる!
舞台上で天井から下がるワイヤーが、青色の布を引き上げ、そして落とす
シュミット 波が降ってくる!滝のようだ!
クラウス 船内に浸水!
ルックナー プライス、拿捕隊の全員でポンプを動かせ!排水を継続しろ。手すきの要員は、バケツでも何でも使って水をかいだせ!
パーミェン 船長!帆をすべて下すべきです!
ルックナー ダメだ!今、風だけで15ノット出せているんだぞ。このスピードに物を言わせて英国海軍の封鎖を突破する!
クリンチ 艦長!無茶過ぎます!
ルックナー 無茶は承知だ!だが、これくらいやらないで英国海軍を出し抜けるか!あいつらは世界最強の海軍だぞ。
クリンチ こんな嵐では、その英国海軍の艦も港に避退しています。
ルックナー 言わずともわかっている。だからこそ海に出ていなければならん!
クリンチ 敵がいないところを行けと?
ルックナー そうだ!それが通商破壊戦の原則ではないか。強敵はこれを避け、か弱い獲物のみを狙う。
クリンチ この嵐も強敵です!
ルックナー 総員の協力があれば勝てる敵だ!英国海軍の砲の方が、オレには恐ろしい。「ゼーアドラー」の砲じゃ、アウトレンジされて終いだからな。
お前達、ここが踏ん張り所だ!ドイツ海軍の航海術がイギリス海軍を上回ることを示すんだ!機雷原を突破したお前達ならできる!
総員 了解!
クリンチ 大した伯爵様だ。総員に自信を植え付けられている。
ルックナー この嵐と夜の闇があれば、シェットランド諸島とオークリー諸島との間を突破できるかもしれん。そうすれば多少は、早く大西洋に出て狩りができ………とっとっとぉ!
ロイデマン 風向き変わりました。逆風、北西風です。
ルックナー なんだ?こちらが航路について考えたら風向きが急に変わった。オレに行くなとでも言っているような……。
パーミェン なんて風だ。マストが折れちまいそうだ。
ルックナー 根拠は無い。ただの勘だ。だが、こういう時船乗りの勘はバカにできん。
ロイデマン タッキング、まずは取舵だ、キルヒアイス手伝え。
ルックナー いや面舵だ。シェットラント諸島を迂回し、フェロー諸島よりの航路で大西洋に出る!
ロイデマン・キルヒアイス 面舵了解!
クリンチ 艦長、北極に近寄るのですか?逆風になったとはいえオークニー諸島とシェットラント諸島の間を抜けるくらいは簡単です。
ルックナー そうだ。このまま直進しても行けるのかもしれんが、それでは上手くいきすぎる。
ここは、一度迂回する。何事も上手くいっている時こそ慎重になるべきだ。
暗転
ナレーション 戦後、同時期に出撃したUボートの1隻は、オ-クニー諸島とシェットラント諸島の間を通過しようとして消息を絶った。原因は不明であるが、機雷原が敷設されていた可能性は否定できない。
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