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終結③
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「ええっと。」
隣の壬生の方を見る。
「よさぬか、小僧。特定の男女をその意に関わらず結びつけるようなものであるまいが。」
「さようでしたな。」
東郷がかしこまる。
「ふふ、おかしな絵柄ですね。貫禄ある東郷さんが、10代の女の子にお説教されるのって。」
貫禄ある老将を小娘が説教するのは、違和感があり過ぎる。
ましてや、小僧呼ばわりである。
「そうは言うが、市杵島姫命が天照大御神から生まれたのは、間違いない。と言うことは、見た目は小娘でも、実際は……。」
「こぉ~ぞぉ~おぉ~。」
日清日露戦争で命がけの修羅場をくぐった古豪の顔が青ざめる。
「東郷さん?」
「お嬢さん、八百万の神々の世界においては、序列などいろいろあるのだよ。」
それは、恐ろしい罰とかでしょうか?
と聞きたかったが止めた。
下手に を刺激して東郷さんが何かされてはかわいそうだ。
「序列って、ひょっとして、ずっと下っ端じゃねえか?新しい神なんて簡単にゃ生まれねえだろうし。」
松野の言葉に、一瞬、東郷が滂沱の涙を流したように見えたのは、気のせいだろうか。
「さて、わらわ達は帰るが、その前に娘。」
「私ですか?」
なんだろう?
まさかさっきのやりとりが、何か地雷を踏んだかな。
「鬼に囚われておったのに、すぐに助けてやらんで悪かったの。」
「いえ、そちらも事情があったでしょうし。」
神罰が下るとかでは無さそうな言葉にほっとする。
「なんぞ加護でも授けようか。何か望みはあるや?」
えっと何がいいかなぁ。
急に言われても、すぐに出ない。
「彼女は、漫画家志望なので、絵をうまくするとかできませんか?」
壬生さん、ナイス!
「絵の上達か。お安い御用じゃ。」
そういうや、市杵島姫命の体を白煙が包む。
白煙が晴れると、市杵島姫命は装いを変え、琵琶を持っていた。
「わらわは、仏教界一の美女、弁才天と合習されておる。その芸事を加護する力は、わらわにもあるのじゃ。」
ベベンッ!
美女と言う所を念入りに強調しながら琵琶を鳴らす。
「娘よ。これで、精進すれば精進しただけ必ず絵は上達する。励めよ。」
「はい、頑張ります。」
「すぐに上手くしてくれないのですね。」
壬生が口を挟んだ。
「そうしたら、そこでこの娘の絵心の成長は止まる。それでは困ろう。」
「はい。」
その通りだ。絵は上手くなりたい。それもできるだけ高いレベルに。
「いい返事じゃ。精進せよ。絵がうまくなるに上限は無いのだからな。」
それだけ言って、市杵島姫命と東郷は消えた。
隣の壬生の方を見る。
「よさぬか、小僧。特定の男女をその意に関わらず結びつけるようなものであるまいが。」
「さようでしたな。」
東郷がかしこまる。
「ふふ、おかしな絵柄ですね。貫禄ある東郷さんが、10代の女の子にお説教されるのって。」
貫禄ある老将を小娘が説教するのは、違和感があり過ぎる。
ましてや、小僧呼ばわりである。
「そうは言うが、市杵島姫命が天照大御神から生まれたのは、間違いない。と言うことは、見た目は小娘でも、実際は……。」
「こぉ~ぞぉ~おぉ~。」
日清日露戦争で命がけの修羅場をくぐった古豪の顔が青ざめる。
「東郷さん?」
「お嬢さん、八百万の神々の世界においては、序列などいろいろあるのだよ。」
それは、恐ろしい罰とかでしょうか?
と聞きたかったが止めた。
下手に を刺激して東郷さんが何かされてはかわいそうだ。
「序列って、ひょっとして、ずっと下っ端じゃねえか?新しい神なんて簡単にゃ生まれねえだろうし。」
松野の言葉に、一瞬、東郷が滂沱の涙を流したように見えたのは、気のせいだろうか。
「さて、わらわ達は帰るが、その前に娘。」
「私ですか?」
なんだろう?
まさかさっきのやりとりが、何か地雷を踏んだかな。
「鬼に囚われておったのに、すぐに助けてやらんで悪かったの。」
「いえ、そちらも事情があったでしょうし。」
神罰が下るとかでは無さそうな言葉にほっとする。
「なんぞ加護でも授けようか。何か望みはあるや?」
えっと何がいいかなぁ。
急に言われても、すぐに出ない。
「彼女は、漫画家志望なので、絵をうまくするとかできませんか?」
壬生さん、ナイス!
「絵の上達か。お安い御用じゃ。」
そういうや、市杵島姫命の体を白煙が包む。
白煙が晴れると、市杵島姫命は装いを変え、琵琶を持っていた。
「わらわは、仏教界一の美女、弁才天と合習されておる。その芸事を加護する力は、わらわにもあるのじゃ。」
ベベンッ!
美女と言う所を念入りに強調しながら琵琶を鳴らす。
「娘よ。これで、精進すれば精進しただけ必ず絵は上達する。励めよ。」
「はい、頑張ります。」
「すぐに上手くしてくれないのですね。」
壬生が口を挟んだ。
「そうしたら、そこでこの娘の絵心の成長は止まる。それでは困ろう。」
「はい。」
その通りだ。絵は上手くなりたい。それもできるだけ高いレベルに。
「いい返事じゃ。精進せよ。絵がうまくなるに上限は無いのだからな。」
それだけ言って、市杵島姫命と東郷は消えた。
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