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大久保出動
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大久保は、壬生に裏拳を食らって追い出されてから、福岡空港へ移動していた。
一人ではない。SPや福岡県警の人員を連れてである。
東京へ戻るためではない。故に空港のラウンジではなく、航空自衛隊春日基地板付地区の会議室に陣取り、空自や陸自に指示を出していた。
無論、国会議員だからと言って自衛隊への指揮権などあるはずもない。
だが、彼らは指示に従い、ヘリを準備した。
無論、しかるべき指揮系統より、指示に従うよう命令が出ているからである。
そして日が変わり、壬生が呼び出されたことを知ってから、大久保は動いた。
「待機させておいたヘリを出動させる。ヘリは、宇美川に沿って飛行。」
福岡空港近くを流れる多々良川と合流する川の名を告げる。
「箱崎埠頭と香椎浜埠頭の間多々良川の河口上空に進出せよ。」
「了解しました。」
「陸自の分隊にも連絡してくれ。ヘリに搭乗するようにと。それと。」
ここまではまっとうな指示であった。
なぜに東区に行かねばならないのか、という疑問はあるが、対テロ作戦の一環と説明されている以上、従わざるを得ない。
「スコップは無いか?」
「はい、スコップですか?」
突然の単語に、応対していた一尉は戸惑った。
「無いかね。無ければ陸自に借りられないか。彼らの車両に搭載されていないか。」
「かしこまりました。陸自の方にスコップが無いか聞いてみます。」
「急いでくれ。テロリストに対抗するのに必要と思われるからな。」
「具体的には?」
スコップでどうテロリストと戦うのか?
一尉は、さすがに疑問を抑えられなかった。
「地面を掘る。具体的には砂浜だな。」
塹壕でも掘るのか?
「数は一つでいい。私が使うだけだからな。」
「一つで、よろしいのですか?」
対テロリストに使うと言って、自分一人分だけ?
さすがに理解できなかった。
「有効かどうか、老い先短い私が試すためだ。一つでいい。」
今、福岡で暗躍していると言うテロリストが、特殊な機材を運用しているらしいことは、一尉も把握していた。
その対策として、スコップ。
しかも、有効かどうかは不明で、議員自ら効果を検証する。
訳が分からない。
「後、SP達は置いていく。夜も遅いので、ここで待機させてくれ。」
「先生、お待ち下さい!」
おいていかれては警護にならない。さすがに声を上げた。
「大丈夫だ。県警の人間と陸自の一個分隊がいるからな。」
「しかし……。」
SPも東署でアキムに吹っ飛ばされた一人である。
銃の通用しない相手に、陸自一個分隊といえど、役に立つのか?
「心配するな。私に万が一のことがあっても、君達の処遇に影響は出ない。その辺は根回し済みだ。私に万が一のことがあれば速やかに東京に戻り、次の国家公安委員長を警護してくれ。」
「そういうことを心配しているわけではありませんが。」
「わかった。だが、指示に従え。これは、警視庁にも話は通っている。」
そう言われては、警視庁の一員でしかない彼らも逆らえない。
「何、私が死ぬと決まったわけではない。事が終われば、明日にでも東京に戻るつもりだ。牧野総理と一緒にな。ここ福岡空港で合流しよう。」
そう言って大久保は立ち上がった。
「では、出動だ。」
一人ではない。SPや福岡県警の人員を連れてである。
東京へ戻るためではない。故に空港のラウンジではなく、航空自衛隊春日基地板付地区の会議室に陣取り、空自や陸自に指示を出していた。
無論、国会議員だからと言って自衛隊への指揮権などあるはずもない。
だが、彼らは指示に従い、ヘリを準備した。
無論、しかるべき指揮系統より、指示に従うよう命令が出ているからである。
そして日が変わり、壬生が呼び出されたことを知ってから、大久保は動いた。
「待機させておいたヘリを出動させる。ヘリは、宇美川に沿って飛行。」
福岡空港近くを流れる多々良川と合流する川の名を告げる。
「箱崎埠頭と香椎浜埠頭の間多々良川の河口上空に進出せよ。」
「了解しました。」
「陸自の分隊にも連絡してくれ。ヘリに搭乗するようにと。それと。」
ここまではまっとうな指示であった。
なぜに東区に行かねばならないのか、という疑問はあるが、対テロ作戦の一環と説明されている以上、従わざるを得ない。
「スコップは無いか?」
「はい、スコップですか?」
突然の単語に、応対していた一尉は戸惑った。
「無いかね。無ければ陸自に借りられないか。彼らの車両に搭載されていないか。」
「かしこまりました。陸自の方にスコップが無いか聞いてみます。」
「急いでくれ。テロリストに対抗するのに必要と思われるからな。」
「具体的には?」
スコップでどうテロリストと戦うのか?
一尉は、さすがに疑問を抑えられなかった。
「地面を掘る。具体的には砂浜だな。」
塹壕でも掘るのか?
「数は一つでいい。私が使うだけだからな。」
「一つで、よろしいのですか?」
対テロリストに使うと言って、自分一人分だけ?
さすがに理解できなかった。
「有効かどうか、老い先短い私が試すためだ。一つでいい。」
今、福岡で暗躍していると言うテロリストが、特殊な機材を運用しているらしいことは、一尉も把握していた。
その対策として、スコップ。
しかも、有効かどうかは不明で、議員自ら効果を検証する。
訳が分からない。
「後、SP達は置いていく。夜も遅いので、ここで待機させてくれ。」
「先生、お待ち下さい!」
おいていかれては警護にならない。さすがに声を上げた。
「大丈夫だ。県警の人間と陸自の一個分隊がいるからな。」
「しかし……。」
SPも東署でアキムに吹っ飛ばされた一人である。
銃の通用しない相手に、陸自一個分隊といえど、役に立つのか?
「心配するな。私に万が一のことがあっても、君達の処遇に影響は出ない。その辺は根回し済みだ。私に万が一のことがあれば速やかに東京に戻り、次の国家公安委員長を警護してくれ。」
「そういうことを心配しているわけではありませんが。」
「わかった。だが、指示に従え。これは、警視庁にも話は通っている。」
そう言われては、警視庁の一員でしかない彼らも逆らえない。
「何、私が死ぬと決まったわけではない。事が終われば、明日にでも東京に戻るつもりだ。牧野総理と一緒にな。ここ福岡空港で合流しよう。」
そう言って大久保は立ち上がった。
「では、出動だ。」
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