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奪還
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黒いスクーターは、無灯火のまま、全速で突っ込んで来る。
「壬生さんっ!」
とっさのことに永倉も、秋夢達も硬直する中、壬生は情け容赦なく厳奈寺に突っ込んだ。
厳奈寺は、吹っ飛ばされ、四阿の柱にぶつかってそのまま起き上がらなくなった。
「厳奈寺!!」
秋夢達は、跳ね飛ばされた厳奈寺に意識がいっている。
「永倉さん、早く乗って下さい!」
厳奈寺をはねた反動を利用してスクーターを停止させ、壬生は、後部シートを叩きながら叫ぶ。
携帯を握ったまま、永倉はスクーターの後部に飛び乗った。
「しっかり掴まって。」
言われるまま、壬生の腰に手を回し、壬生が背負っているバッグを押しつぶしながら密着する。
細っ!
壬生さん、細いなぁ。
下手すれば、私より細いんじゃない。
そんなことを考えていたら、スクーターは、急発進する。
ウィリーしながら。
「きゃ、きゃああぁっ!」
「くっ!」
壬生は体重をかけて、辛うじて抑え込む。
「ごめんなさい、私が重くて。」
「違います。アクセルを開け過ぎたんです!」
そんなやり取りをしながら、壬生は、スクーターをUターンさせる。
「逃げるかっ!」
壬生にしてみれば、永倉の安全さえ確保できれば、後は野となれ山となれである。
「妙子さん、永倉さん救助しました。」
壬生は、イヤホンマイクに向かって叫ぶ。
「叔母さん、人払いの結界、消えたと思います!」
永倉も大声で叫ぶ。
あの厳奈寺という鬼が維持していた。
厳奈寺が気絶した以上、結界は消えたと思っていいだろう。
「わかったわ。二人に知らせる。無事に逃げて頂戴!」
壬生の耳を妙子の叫びが打つ。
「逃がすものか!」
火球や雷撃が背中から襲ってくるのが、バックミラー越しにわかる。
蛇行してかわすが、次々と襲い掛かるのをかわし切れるか。
これから、狭い入り口に入るのに。
「壬生さん、私のことは気にしないで。大丈夫、壬生さん同様、火球とか消せるから。信じて!」
信じようが信じまいが、もはや直進するしかない。
壬生は、アクセルを開け直進する。
「かまいたちの術!」
壬生は、右に恐るべき風を感じた。
「木が!」
二人の前で木が倒れ、行く手を、壬生が入ってきた入り口を塞ぐ。
「ちいっ!」
壬生は、スクーターを左に旋回させる。
「きゃあぁぁっ!!」
無理な旋回に、スクーターは奇跡的に応え、辛うじて転倒は免れる。
公園の中で舗装されている道をスクーターを走らせながら、壬生は、もう一つの出入口のことを考える。
ウォーキングで来たことのある妙子の情報では、出入り口の先は階段である。
やむを得ないな。
壬生は、再度アクセルを全開にし、秋夢達の方に向かう。
電撃や火球が襲い掛かるが、打ち消せるのはわかっている。
気にせず、スクーターを走らせる。
「逃がすかぁっ!」
秋夢達が立ちふさがるが、間をこれ以上ない集中力を発揮してすり抜ける。
2度やれと言われてもできないだろう。
壬生は、そのままもう一つの出入り口に向かいながら減速する。
「壬生さん?」
「ここまでです。永倉さん、逃げて下さい。秋夢達は食い止めますから。」
階段ぎりぎりにスクーターを止め、壬生は微笑んだ。
「壬生さんっ!」
とっさのことに永倉も、秋夢達も硬直する中、壬生は情け容赦なく厳奈寺に突っ込んだ。
厳奈寺は、吹っ飛ばされ、四阿の柱にぶつかってそのまま起き上がらなくなった。
「厳奈寺!!」
秋夢達は、跳ね飛ばされた厳奈寺に意識がいっている。
「永倉さん、早く乗って下さい!」
厳奈寺をはねた反動を利用してスクーターを停止させ、壬生は、後部シートを叩きながら叫ぶ。
携帯を握ったまま、永倉はスクーターの後部に飛び乗った。
「しっかり掴まって。」
言われるまま、壬生の腰に手を回し、壬生が背負っているバッグを押しつぶしながら密着する。
細っ!
壬生さん、細いなぁ。
下手すれば、私より細いんじゃない。
そんなことを考えていたら、スクーターは、急発進する。
ウィリーしながら。
「きゃ、きゃああぁっ!」
「くっ!」
壬生は体重をかけて、辛うじて抑え込む。
「ごめんなさい、私が重くて。」
「違います。アクセルを開け過ぎたんです!」
そんなやり取りをしながら、壬生は、スクーターをUターンさせる。
「逃げるかっ!」
壬生にしてみれば、永倉の安全さえ確保できれば、後は野となれ山となれである。
「妙子さん、永倉さん救助しました。」
壬生は、イヤホンマイクに向かって叫ぶ。
「叔母さん、人払いの結界、消えたと思います!」
永倉も大声で叫ぶ。
あの厳奈寺という鬼が維持していた。
厳奈寺が気絶した以上、結界は消えたと思っていいだろう。
「わかったわ。二人に知らせる。無事に逃げて頂戴!」
壬生の耳を妙子の叫びが打つ。
「逃がすものか!」
火球や雷撃が背中から襲ってくるのが、バックミラー越しにわかる。
蛇行してかわすが、次々と襲い掛かるのをかわし切れるか。
これから、狭い入り口に入るのに。
「壬生さん、私のことは気にしないで。大丈夫、壬生さん同様、火球とか消せるから。信じて!」
信じようが信じまいが、もはや直進するしかない。
壬生は、アクセルを開け直進する。
「かまいたちの術!」
壬生は、右に恐るべき風を感じた。
「木が!」
二人の前で木が倒れ、行く手を、壬生が入ってきた入り口を塞ぐ。
「ちいっ!」
壬生は、スクーターを左に旋回させる。
「きゃあぁぁっ!!」
無理な旋回に、スクーターは奇跡的に応え、辛うじて転倒は免れる。
公園の中で舗装されている道をスクーターを走らせながら、壬生は、もう一つの出入口のことを考える。
ウォーキングで来たことのある妙子の情報では、出入り口の先は階段である。
やむを得ないな。
壬生は、再度アクセルを全開にし、秋夢達の方に向かう。
電撃や火球が襲い掛かるが、打ち消せるのはわかっている。
気にせず、スクーターを走らせる。
「逃がすかぁっ!」
秋夢達が立ちふさがるが、間をこれ以上ない集中力を発揮してすり抜ける。
2度やれと言われてもできないだろう。
壬生は、そのままもう一つの出入り口に向かいながら減速する。
「壬生さん?」
「ここまでです。永倉さん、逃げて下さい。秋夢達は食い止めますから。」
階段ぎりぎりにスクーターを止め、壬生は微笑んだ。
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