古からの侵略者

久保 倫

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目を覚まさせて

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「会長。」
「その辺にしておけ、小倉。」
「会長、誤解しないで下さい。自分は会長と朗さんを和解させようと。」
「あぁ、それとその嬢ちゃんの口抑えてんのとどういう関係があるんだ」
「い、いや、これは。」

 小倉は、永倉から手を離した。

 永倉は、そのまま小倉から離れる。


「で、こいつはどういうことなんだ?説明してくれねえか?」
「あ、はい。」
「いや、お前じゃなくて。」

 春吉は会議室の中を見回した。

「お手数だがよ、そちらの姉さんに説明頂こう。」

 春吉が指名したのは、妙子だった。

「私ですか?」
「あんたも嬢ちゃんよりの人間だが、小倉に聞くよりはいいだろうよ。頼む。」
「はぁ。」

 ヤクザ相手に下手なことはできない。
 無鉄砲な姪と違うのだ。

 妙子は、ゆっくりと会議室であったことを話した。


「ふうん、そんなことがあったのかい。」

 春吉の視線が小倉に向く。

「会長。」
「まずは、朗からどきな。おめえみてえなデケエ図体が乗っかかっちゃ、朗が苦しいだろうよ。」
「す、すいません。」

 小倉の巨体が、跳ねるように壬生からどく。

 壬生は、立ち上がり埃を払った。

「壬生さん、大丈夫?」
「あぁ、これくらい平気です。それより永倉さんこそ、大丈夫ですか?」
「私は平気です。口掴まれただけなんで。」


 そんな二人のやり取りを春吉は、暖かい目で見ていた。


「会長、よろしいのですか?あの小娘のせいで、朗さんが。」
「ちっと口つぐんでな。」

 春吉の一言で小倉は、黙ってしまった。

「朗、おめえ、俺を許せねえか。」
「まあね。」
 春吉の問い掛けに壬生は短く答えた。
「そうか。」

「会長!」
「小倉、ちっと口つぐんでろ、と言ったぞ。」
「は、はい。」

 壬生と小倉との態度の差がはげしい。

「許せねえから、無視する。無視して新しい道を進むか。」
「そうだね。」
「どこに行くんだ?」
「お前に言うことじゃない。」

 壬生の回答に好意というものは、微塵も感じられなかった。

「おい、おめえ、誰に口きいて。」

 松野が壬生に絡む。

 だが、

「黙れ。」

 松野の方を向くことさえせず、ただ、威圧感だけ込めて春吉は命じた。

「……。」

 松野と春吉とでは、貫目が違いすぎる。あっさりと松野は沈黙させられてしまった。

「朗、しばらくあの二人の厄介になるのか?」
「あぁ。」
「わかった。」
「わかったって、ちょっと待って、あの二人に手を出すな。」

 あっさりと望んだ回答を得られたが、それがかえって壬生の警戒心を刺激した。

「何が言いたい、朗」
「あの二人の周りをうろちょろするような真似はしないでくれ。特に永倉さんには。彼女には未来があるんだ。」
「わかった。こっちもヒマじゃないからな。」
「約束しろ。」
「約束する。あの二人に士道会は関わらねえ。安心しろ。」
「もし約束を破ったら。」
「わかった、怖い顔すんな、美男子が台なしだぞ。そう思わねえか、嬢ちゃん。」

 急に話しを振られ、永倉は、反応に困ってた。


 いや、壬生さん、怒っても笑顔と違う魅力があるから。


 て、違うか。

「会長さん、壬生さんとは?」

 やり直したいんじゃないのかな。

「ふふ、お嬢ちゃん。あんたには感謝するぜ。」

 何をだろう?

「朗の目を覚ましてくれたことよ。」
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