古からの侵略者

久保 倫

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対峙

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「アキム……?」

 突然の乱入者に壬生の動きも止まった。

 2mの長身は、ただでさえ、人目を引く。
 そんな男が4人のやはり長身の男達を引き連れていると、人の視線はそこに集中する。

 無論、妙子も秋夢を見ている。
 小倉の陰に隠れる位置から。

「有希、あの人がぜんざい広場で会ったって言う人なの?」
「う、うん。」

 あの時は、壬生がいて守ってくれたからさほど恐怖を感じることは無かったが、今壬生は側にいない。

 エントランスの中央でアキムと対峙している。

「今、殴っている男は、大臣おおおみなのだろう。」
「お、おおおみ……。」

 壬生も頭の回転が悪いわけではないが、秋夢の言っている単語の意味が瞬時に理解できなかった。

「秋夢様。」
 秋夢の後ろに控える頭一つ低いベレー帽の男が耳打ちする。
「そうか、厳奈寺ゲンナジ。」
 耳打ちされた秋夢は、壬生に向かい直す。
「大臣と呼ぶらしいが、政府の権力者なのだろう。お前が今殴っていた男は。」
「そうだが。」
「そのような男を殴るということは、今の支配者どもに反抗する意志があるのか?」
「いや。」

 そこまではさすがに考えていない。逮捕されるなら抵抗する気はない。

「無いのか。今まで闇討ちした空手家の誰よりも強いお主を仲間にできればと思ったが。」
「は?」

 壬生は、間の抜けた声が出てしまった。

「誰よりも強いだって?」

 被害にあった空手家全てを壬生は知っているわけではないが、それでも師範クラスの高段者であることを、壬生は、ニュースで知っている。
 初段レベルの壬生が勝てる相手ではない。

「お前、何を言っているんだ?僕が最強だって?お前たちが闇討ちした人は、心技体、全てにおいて僕より……。」
「壬生さん、そんなことより、今、アキムが空手家闇討ちしたって言ったわ。」

 永倉の言葉で壬生は、はっと気がついた。
 自分が強いなどと言われ、そっちに意識が行ってしまったが、確かに「闇討ちした」と言った。

「署長、あちらのお嬢さんの言うようにこの5人を確保したまえ。空手家連続襲撃事件の容疑者としてだ。今、闇討ちしたと言ったのだから構うことは無い。私が証人となる。」

 大久保の言葉で署長が、秋夢の方を向く。
 付き従う署員達もさっと動き、秋夢達を包囲する。

「君達が、ここ数日の空手家襲撃事件を実行したのかね?」
「そうだが。」
 そう言って秋夢は、自分達を包囲する警官達を見回した。
 秋夢のみならず、他の4人も同様に見回す。

 警官達に包囲されながら、秋夢達に臆した気配は無い。
 むしろその堂々とした態度で、警官達を威圧しているかのようであった。

「どうやらこの木っ葉共、我らを捕縛する気の様ですな。」
「構うな、李作。それより壬生よ。」
「何だ?」
「我らの仲間にならぬか?豊かな富を約束しよう。」
「ふん、何を言い出すかと思えば。」
「富だけでは足らぬか?」
「そういう問題じゃない。」

 壬生は、永倉の方に視線を向けた。

「あんな永倉さんのような、か弱い女の子相手に引ったくりをやる程度の奴らに言われてもな。頭がおかしいとしか思えん。」

「壬生さん、私に気が付いてくれたんだ。」
 思わず大きな声を出してしまった。

 アキム達の視線が永倉の方に一瞬向いた。
 さすがに怖くなってしまい、妙子の後ろに隠れようとする。

「何すんの。」
「叔母さん、年長者で保護者でしょ。」
「うるさい、アタシだって怖いわ。」
 叔母と姪は、どちらが後ろになるかで、ぐるぐると回る。

 さすがに無視して構わないと思ったのか、視線は壬生に戻った。

「まぁ確かにそんなこともやった。何しろ今の世のことがよくわからぬ故、慎重にならざるを得なかったのでな。」
「今の世?」

 さすがに壬生は戸惑う。

「なんだその言い方は?まるでどこか別の世から来たみたいじゃないか。」
「そんなところだ。詳しく知りたくば、仲間になるといい。教えてやるぞ。」
「断る、怪しさ満載過ぎる。」

 全く壬生の言う通りである。
 永倉もそう思わざるを得ない。

「そもそもどうやって富を得るかも話してくれん。誤魔化されはしない。」
「それか。簡単だ。我々は、今福岡と呼ばれるこの地を手に入れる。支配することで得られるものの中からお主に相応の分け前を与えよう。」
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