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マンション②
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二人はガンを飛ばし合う。
そこに人がいれば、火花が実際に散っているのが見えたかもしれない
「歳を考えて下さい。痛いですよ。」
冗談じゃない、こんな叔母がいると知れたら壬生さん、足が遠のくかもしれない。
「うるさい、お黙り。そんな短いスカートで出かけるなんて、あんたもその気でしょ。」
「これくらい、10代なら普通ですよ。」
そう、普通普通。
「嘘おっしゃい。そんな短いのイベントでしか見たこと無いよ。普段はもう少し長いかデニムじゃないの。」
「最近、年相応にもう少し足を出そうと思うようになりまして。いや、10代なんてすぐ終わっちゃいますから。」
そう言いながらこれ見よがしに足を妙子に見せつける。
「くっ。」
ほほほ、歳ってのが理解できたかしら。
「ええい、フシダラな。タイツ履かないと家から出さないからね。」
「ええ、車で案内してくれるから、タイツなんて履いたら暑いですよ。」
「お黙り、貸したげるから履きなさい。」
「嫌です。」
「風邪ひくわよ、貸したげるから履きなさい。」
「大丈夫です。若いですから。」
「ええい、実力行使じゃ。」
「なにすんですか!」
女二人バタバタと取っ組み合う。
「叔母さんのヘンターイ!」
「大人しくおし。」
「やだ、エッチ。」
低い声で怒鳴りながら二人は、攻防を繰り広げる。
「あ、バックプリント。」
「どこ見てんですか!」
「ほほほ、おこちゃまねえ。」
そう言いながら、妙子は和知の足をとってベッドに押し倒す。
「ほれ、タイツ履いて隠しなさい。」
「カワイイからいいんです!」
「見せる気!そんなフシダラなこと許しません!」
女二人低い声で唸り合いつつドタバタと取っ組み合う。
そんな最中時計の針が11時を示した。
同時にインターフォンが鳴った。
「壬生です。永倉さん、迎えに来ました。」
二人の動きが止まる。
「「壬生さん、いらっしゃい。」」
女二人、低い声から高い声に変えて返事をする。
「「ちょっと待って下さいね。」」
永倉は、立ち上がって素早く乱れたスカートを直す。
髪を手で整えながら鏡を見る。
妙子も同様に服や髪形をチェックする。
こすれたファンデとかついてないよね。
足をチェックする。
膝のあたりにファンデがついていたのでウェットティッシュで素早く拭き取る。
妙子は、乱れた口紅を拭き取っている。
ラッキー、これなら。
「壬生さん、今ドア開けますね。」
「こらっ。」
小さな声で妙子が抗議する。
構うことなく永倉は、玄関のドアを開けるべく部屋を出る。
妙子は悔し気な顔をしつつ、部屋に残る。乱れたメイクを見せるわけにはいかない以上やむを得ない。
ふふふ、リップ程度でいい10代と張り合おうとするからですよ。
永倉は、勝者の優越感を感じつつドアを開けた。
ドアの外に昨日と違う、ジャンバーにジーンズ姿の壬生がいた。
デニムは、ユニクロのスキニーだった。細身の壬生によく似合っている。
足長ッ!
裾上げいらないんじゃなかろうか。
アタシがスキニー買った時、結構裾切られた……。
いやいや、メンズとレディスは違うから、違うから。
「永倉さん、おはようございます。」
そんなことを考えていると知る由もない壬生がにこやかに挨拶してくる。
「壬生さん、おはようございます。今日はお誘いありがとうございます。よろしくお願いします。」
先ほどまで取っ組み合い争っていたなどと感じさせぬ声で永倉も挨拶する。
「いえ、楽しんでもらえるよう努力しますんで、こちらこそよろしくお願いします。」
壬生の返事を聞きながら、永倉は下駄箱に置いておいたバッグを手にし、ハンガーにかけていたダウンももう一方の手に持つ。
「まぁまぁ、壬生クン。コーヒーでも飲んでいかない?」
部屋から顔を出さずに妙子が声をかけてくる。
出たなオジャマ虫。そのために家に来させたんだな。
「いえ、お気遣いなく。姪御さんお預かりします。」
壬生さん、ナイス!
「じゃ、叔母さん、行ってきます。」
壬生の言葉への返事を待たず、永倉は靴を履いて玄関の外に出た。
「では、夕方にはこちらに送ります。失礼します。」
妙子に頭を下げる壬生を引っ張って永倉はドアを閉めた。
そこに人がいれば、火花が実際に散っているのが見えたかもしれない
「歳を考えて下さい。痛いですよ。」
冗談じゃない、こんな叔母がいると知れたら壬生さん、足が遠のくかもしれない。
「うるさい、お黙り。そんな短いスカートで出かけるなんて、あんたもその気でしょ。」
「これくらい、10代なら普通ですよ。」
そう、普通普通。
「嘘おっしゃい。そんな短いのイベントでしか見たこと無いよ。普段はもう少し長いかデニムじゃないの。」
「最近、年相応にもう少し足を出そうと思うようになりまして。いや、10代なんてすぐ終わっちゃいますから。」
そう言いながらこれ見よがしに足を妙子に見せつける。
「くっ。」
ほほほ、歳ってのが理解できたかしら。
「ええい、フシダラな。タイツ履かないと家から出さないからね。」
「ええ、車で案内してくれるから、タイツなんて履いたら暑いですよ。」
「お黙り、貸したげるから履きなさい。」
「嫌です。」
「風邪ひくわよ、貸したげるから履きなさい。」
「大丈夫です。若いですから。」
「ええい、実力行使じゃ。」
「なにすんですか!」
女二人バタバタと取っ組み合う。
「叔母さんのヘンターイ!」
「大人しくおし。」
「やだ、エッチ。」
低い声で怒鳴りながら二人は、攻防を繰り広げる。
「あ、バックプリント。」
「どこ見てんですか!」
「ほほほ、おこちゃまねえ。」
そう言いながら、妙子は和知の足をとってベッドに押し倒す。
「ほれ、タイツ履いて隠しなさい。」
「カワイイからいいんです!」
「見せる気!そんなフシダラなこと許しません!」
女二人低い声で唸り合いつつドタバタと取っ組み合う。
そんな最中時計の針が11時を示した。
同時にインターフォンが鳴った。
「壬生です。永倉さん、迎えに来ました。」
二人の動きが止まる。
「「壬生さん、いらっしゃい。」」
女二人、低い声から高い声に変えて返事をする。
「「ちょっと待って下さいね。」」
永倉は、立ち上がって素早く乱れたスカートを直す。
髪を手で整えながら鏡を見る。
妙子も同様に服や髪形をチェックする。
こすれたファンデとかついてないよね。
足をチェックする。
膝のあたりにファンデがついていたのでウェットティッシュで素早く拭き取る。
妙子は、乱れた口紅を拭き取っている。
ラッキー、これなら。
「壬生さん、今ドア開けますね。」
「こらっ。」
小さな声で妙子が抗議する。
構うことなく永倉は、玄関のドアを開けるべく部屋を出る。
妙子は悔し気な顔をしつつ、部屋に残る。乱れたメイクを見せるわけにはいかない以上やむを得ない。
ふふふ、リップ程度でいい10代と張り合おうとするからですよ。
永倉は、勝者の優越感を感じつつドアを開けた。
ドアの外に昨日と違う、ジャンバーにジーンズ姿の壬生がいた。
デニムは、ユニクロのスキニーだった。細身の壬生によく似合っている。
足長ッ!
裾上げいらないんじゃなかろうか。
アタシがスキニー買った時、結構裾切られた……。
いやいや、メンズとレディスは違うから、違うから。
「永倉さん、おはようございます。」
そんなことを考えていると知る由もない壬生がにこやかに挨拶してくる。
「壬生さん、おはようございます。今日はお誘いありがとうございます。よろしくお願いします。」
先ほどまで取っ組み合い争っていたなどと感じさせぬ声で永倉も挨拶する。
「いえ、楽しんでもらえるよう努力しますんで、こちらこそよろしくお願いします。」
壬生の返事を聞きながら、永倉は下駄箱に置いておいたバッグを手にし、ハンガーにかけていたダウンももう一方の手に持つ。
「まぁまぁ、壬生クン。コーヒーでも飲んでいかない?」
部屋から顔を出さずに妙子が声をかけてくる。
出たなオジャマ虫。そのために家に来させたんだな。
「いえ、お気遣いなく。姪御さんお預かりします。」
壬生さん、ナイス!
「じゃ、叔母さん、行ってきます。」
壬生の言葉への返事を待たず、永倉は靴を履いて玄関の外に出た。
「では、夕方にはこちらに送ります。失礼します。」
妙子に頭を下げる壬生を引っ張って永倉はドアを閉めた。
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