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第二章 王国国立学園入学。
Ep.13.0-⑥ 今、自分にできる全てを。-⑥
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情緒不安定になって興奮したグレイブは言葉にならない奇声を上げながら次々と切り掛かって来る。
動きは先程より少し早くなっているものの、先程以上に動きが荒く、隙も増えた。
……さて……挑発で冷静さを欠く事はできたが……。
コイツをどう攻略するか……。
体力を温存すべく、避けることに重点を置きつつ、頭をフル回転させる。
このグレイブという男は力任せにこの巨剣を振るっているだけ。
つまり、剣に頼りっぱなしであるという事。
コイツ自身のポテンシャルは他の黒ローブの連中に比べると異様なほど高い事紛れもない事実だが、この巨剣を破壊、もしくは使用不能な状態にまで持って行く事ができればコイツは無力化する事ができる筈だ。
しかし、コイツの巨剣は恐らく、いや、戦っている感触からして間違いなく魔鉱製だ。
破壊するのには俺のこの金属製の剣では少々心もとない……。
右の上部からグレイブによって振るい落とされた巨剣を避け、その勢いのまま左に回り込む。
その時、グレイブが巨剣を持ち直すのに少々バランスを崩してほんの一瞬だが、隙ができる。
……!
そこで気が着いた。
いける……!
この巨剣を使用不能な状態に、持っていける……!
柄と剣身の間だ!!
コイツの巨剣はその巨大さ故にバランスが悪いと考えられる。
先程から戦っていたのを思い返してみると、コイツは振り下ろした直後、剣を持ち直す時にほんの一瞬だけではあるものの、バランスを崩す。
それに元々、剣というものは柄と剣身の間のところはどうしても脆くなってしまいがちだ。
いくら魔鉱でできているからと言ってもそんなに根本的に剣の弱点が変わるはずがない。
さらに、コイツの巨剣の場合、攻撃できる面積や威力も大きくなっている分、必然的にタイムロスや脆い部分も増える。
そう、バランスを崩している隙を突き、柄と剣身の間を破壊すればいいのだ。
上手くタイミングを見極める必要がある上に、一度失敗してしまったら対策されて次はもうないだろう。
一度きりのチャンスだ。
落ち着いて息を整え、汗を拭いつつ、タイミングを伺う。
どうやら相手も相当消耗しているようで、攻撃のスピードも落ちている。
やれる。
いや……やる……!
グレイブが巨剣を振り降ろした瞬間、少し下がり、再び剣身に溜めた魔術を剣先に集中させ、構える。
ガンッ!!
地面に巨剣がぶつかり、持ち直そうとしてバランスを少し、崩す。
『イフリート!』
叫ぶかの如く、力強く詠唱し、柄の付け根を狙って先が紅く発光した剣を押し出す。
ガンッッ!!!!
剣先が狙った所に突き刺さる。
が、折れない。
まずい!
もう、次は、ない……!!!
「うおおおお!!!!!!!!」
一気に魔術を剣に流し込みながら、剣を全力で押さえつける。
「ぐ……!!
っ……!!!!」
グレイブも必死で押し返そうとするするが、押し返す事ができない。
パッキン!
!!!!!!!
それは、心地のいいような音だった。
即座に後方へ下がる。
ドーンッ!
まるで大砲を地面に落としたかのようなけたたましい音を周囲に響かせながら、巨剣の剣身は、地面に落下した。
俺とグレイブ、両者の間に一瞬、沈黙が発生する。
「グレイブ、俺の勝ち、という事でいいな?」
そう尋ねたのと同時にグレイブが膝から崩れ落ち、地面に座り込んだ。
戦意を喪失した……のか……?
グレイブの目の前に立ち、剣先を向ける。
カラン。
手から滑り落ちた残された柄が、剣身とは対照的に、どこか儚い音を立てて落下した。
「……ない。……ではない。……ではない」
……?
何かぶつぶつと呟いているようだが、聞き取れない。
「なんだ?
何と言った?」
一応、聞き返す。
「……我の負けではない」
ボソリと呟くように、だが何処か力強く、グレイブは呟いた。
……は?
まさかコイツ、まだ何か持っているのか……!?
急いで少し下がり、声を張り上げる。
「ど……どういう事だ!」
そう聞き返した俺の方に向かってグレイブはゆっくりと顔を上げた。
その顔はまたしても、あの恐ろしい笑顔だった。
「いいだろう……特別に教えてやる。
まだ、終わりではない。
我は一人ではないのだから」
?
一人ではない?
何なんだ、コイツ……!?
負けたショックでおかしくなったのか……!?
「何を言っている?
ひとまず降参しろ!
間も無く騎士団が到着するはずだ!」
少し威圧的な態度を取る。
ただの出まかせに踊らされてたまるか。
「ヒャヒャヒャヒャ!
そうかそうか、分からぬか!
愚かだな、レナード・アルフェリスよ!」
***
こんばんは、まだゴールデンウィークだと信じてやまない錦木れるむです。
これからも頑張りますのでどうぞ応援よろしくお願い致します!
ご気軽にコメントお願い致します。必ず返信させていただきます。応援、感想コメント頂けると嬉しいです。また、表現や、言葉などに間違えなどがあったら指摘してくださるとありがたいです。よろしければ、♡、☆、フォローもよろしくお願いいたします!
動きは先程より少し早くなっているものの、先程以上に動きが荒く、隙も増えた。
……さて……挑発で冷静さを欠く事はできたが……。
コイツをどう攻略するか……。
体力を温存すべく、避けることに重点を置きつつ、頭をフル回転させる。
このグレイブという男は力任せにこの巨剣を振るっているだけ。
つまり、剣に頼りっぱなしであるという事。
コイツ自身のポテンシャルは他の黒ローブの連中に比べると異様なほど高い事紛れもない事実だが、この巨剣を破壊、もしくは使用不能な状態にまで持って行く事ができればコイツは無力化する事ができる筈だ。
しかし、コイツの巨剣は恐らく、いや、戦っている感触からして間違いなく魔鉱製だ。
破壊するのには俺のこの金属製の剣では少々心もとない……。
右の上部からグレイブによって振るい落とされた巨剣を避け、その勢いのまま左に回り込む。
その時、グレイブが巨剣を持ち直すのに少々バランスを崩してほんの一瞬だが、隙ができる。
……!
そこで気が着いた。
いける……!
この巨剣を使用不能な状態に、持っていける……!
柄と剣身の間だ!!
コイツの巨剣はその巨大さ故にバランスが悪いと考えられる。
先程から戦っていたのを思い返してみると、コイツは振り下ろした直後、剣を持ち直す時にほんの一瞬だけではあるものの、バランスを崩す。
それに元々、剣というものは柄と剣身の間のところはどうしても脆くなってしまいがちだ。
いくら魔鉱でできているからと言ってもそんなに根本的に剣の弱点が変わるはずがない。
さらに、コイツの巨剣の場合、攻撃できる面積や威力も大きくなっている分、必然的にタイムロスや脆い部分も増える。
そう、バランスを崩している隙を突き、柄と剣身の間を破壊すればいいのだ。
上手くタイミングを見極める必要がある上に、一度失敗してしまったら対策されて次はもうないだろう。
一度きりのチャンスだ。
落ち着いて息を整え、汗を拭いつつ、タイミングを伺う。
どうやら相手も相当消耗しているようで、攻撃のスピードも落ちている。
やれる。
いや……やる……!
グレイブが巨剣を振り降ろした瞬間、少し下がり、再び剣身に溜めた魔術を剣先に集中させ、構える。
ガンッ!!
地面に巨剣がぶつかり、持ち直そうとしてバランスを少し、崩す。
『イフリート!』
叫ぶかの如く、力強く詠唱し、柄の付け根を狙って先が紅く発光した剣を押し出す。
ガンッッ!!!!
剣先が狙った所に突き刺さる。
が、折れない。
まずい!
もう、次は、ない……!!!
「うおおおお!!!!!!!!」
一気に魔術を剣に流し込みながら、剣を全力で押さえつける。
「ぐ……!!
っ……!!!!」
グレイブも必死で押し返そうとするするが、押し返す事ができない。
パッキン!
!!!!!!!
それは、心地のいいような音だった。
即座に後方へ下がる。
ドーンッ!
まるで大砲を地面に落としたかのようなけたたましい音を周囲に響かせながら、巨剣の剣身は、地面に落下した。
俺とグレイブ、両者の間に一瞬、沈黙が発生する。
「グレイブ、俺の勝ち、という事でいいな?」
そう尋ねたのと同時にグレイブが膝から崩れ落ち、地面に座り込んだ。
戦意を喪失した……のか……?
グレイブの目の前に立ち、剣先を向ける。
カラン。
手から滑り落ちた残された柄が、剣身とは対照的に、どこか儚い音を立てて落下した。
「……ない。……ではない。……ではない」
……?
何かぶつぶつと呟いているようだが、聞き取れない。
「なんだ?
何と言った?」
一応、聞き返す。
「……我の負けではない」
ボソリと呟くように、だが何処か力強く、グレイブは呟いた。
……は?
まさかコイツ、まだ何か持っているのか……!?
急いで少し下がり、声を張り上げる。
「ど……どういう事だ!」
そう聞き返した俺の方に向かってグレイブはゆっくりと顔を上げた。
その顔はまたしても、あの恐ろしい笑顔だった。
「いいだろう……特別に教えてやる。
まだ、終わりではない。
我は一人ではないのだから」
?
一人ではない?
何なんだ、コイツ……!?
負けたショックでおかしくなったのか……!?
「何を言っている?
ひとまず降参しろ!
間も無く騎士団が到着するはずだ!」
少し威圧的な態度を取る。
ただの出まかせに踊らされてたまるか。
「ヒャヒャヒャヒャ!
そうかそうか、分からぬか!
愚かだな、レナード・アルフェリスよ!」
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